パンドラの箱庭へ

塩豆

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三ノ一

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  「キャァァァァァァ」

  「来ますよ!!」

  2人を標的に据えた瘴人達は、走り出した。赤い目がギラギラと光る。

  「一体ずつ確実に仕留めますよ。カバーは任せてください。」

  「了!!!!」

  覇気のある掛け声と共にモネは、体勢を低く構え、柄に手をかけた。

  先頭の1体が、首をめがけ振り下ろす。首に鋭い爪をつきたてる、、その瞬間。

 「……触らないで」

  刹那的居合。目にも止まらぬ一太刀は、瘴人の腕を切り飛ばした。だが、一連の動きは、まだ終わっていない。抜刀した勢いに乗り、体を回転。胴体を袈裟に両断した。

 「……次。」

  殺気をこめ、押し寄せる敵を次々に肉塊へと変えていく。その立ち振る舞いは、まさに修羅のそれである。

  「三時、一体任せます!」

  「了、、」

  リコの合図に間髪入れず、3体が同時に飛びかかってきた。モネは、他2体をヒラリと躱し、1体を切り伏せる。

  ダァァン……ガチャン

  背後では銃声と共に、2体の死体が転がった。

  「凄い……」

  リコは、敵が重なる一瞬、重なった急所を撃ち抜き、一発で二体を葬ったのだ。まさに研ぎ澄まされた集中力と、洗練された技術のなせる技である。


  「ほら、あと少しです、気を抜かないでください。」


  「了!!!」



 二人は、勇ましい掛け声とともに、残党へ飛び込んだ。


   ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  
  2人の手腕もあってか、程なくして瘴人の群れは壊滅した。リコが死体を処理しているなか、モネは、よいしょと腰を下ろし、水を体に流し込んだ。

  「……っはぁ。」
 
  「お疲れ様です。怪我はありませんか?」

  「……あ。…はい、大丈夫です。一等はご無事ですか?」

  「私は、銃ですから、あなたほど危険ではありませんよ。」

   リコは、ハハッと、軽く笑って見せた。

    一通り休憩すると、2人は、今後の進行について話し合った。日没まであと三時間。日没後の進行は、危険と判断した二人は、数キロ先の沢に、テントを立てることにした。

   街を抜けると街道跡を沿って進んでいく。自然が溢れ、動物も悠々と生きている。どうやら動物は、パンドラの影響を受けないようだ。

  「一等!!見てくださいよ!シカですよ!私初めて見るんですよ~!」

  嬉々として、茂みの奥の鹿を指さしてモネは言う。さっきのキレはどこへやらといった様子。

 「教養を深めることは、いい事ですが、もう少し緊張感を……」

  「少しくらい気を緩めましょうよ~張り詰めてても仕方ないですよ!あっ。」

  小さな悲鳴と共に、モネは、かけたレンガに足をとられ、盛大に顔を地面に強打する。

  「いったぁ~い。」

  半分涙目のモネを見ながら、リコは深いため息、呆れ顔が浮かぶのであった。


 
 
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