流転の二人の新世界

リョウ

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第一部・巻き戻りのやり直し

センチメンタル。

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 俺はあの時思いがけない選択を選びだした。ちょっと悲しい気持ちもあったけど。あれはファインプレーだと今でも思う。


○◇○◇○◇



 ある日の図書館での話だ。


 その日俺は友人である近所の小学生きむっちょが「遊ぼう」と誘いに来て、待っていたら直前に「やっぱ無理」と言ってきたんだわ。だからちっと舌打ちをしてランニングをし、図書館に行くコースを不本意ながら選択したんだ……というかそれしかやる事がなかったっていう。

 図書館に行って中学生の勉強をやっていたんだけど、なんとなくやる気が出なかったんだよね。だから俺、本を探しに行くことにしたんだ。

 「どーれーにーしーよーかな♪」なんて鼻歌まじりに本を探すバカ(小心者なので小声で)はスポーツのコーナーに行って目についた本を手に取った……それは剣道の本だったんだ。

 実は俺、前世で高校生の時剣道をやっていたんだよね。
 「懐かしい」と本をとり、ページをめくると思い出がいっぺんに押し寄せてくる。それは走馬灯のように俺の頭に浮かんださ。


 あれは中学二年生の頃のことだったか、ボクはとある格闘マンガにはまっていたんだ。男には大抵あるだろ?強いキャラクターに憧れる時期が。俺はまさしく中二でその病にかかっていたの。
 なんらかの武道をやりたいと思ったのだが、やりたいと思った武術はどこで身につけるかわからないし、近くで学べる武道は体格の良さが勝負の別れ目!みたいなものばかりであきらめかけていた。だって、俺その頃小さかったし。
 そんな時同級生から『剣道』の良さを教えてもらい、高校に入ってから剣道部に入る事を心に決めたの。俺でも強くなれそうかなあ、なんて軽い気持ちで。

 高校で剣道部に入った前世のボクは、必死に稽古に望んださ。高校に入ってすぐに頭角をあらわすヤツはいないんだ。
 いずれ強くなってやる、と思っていたが全くと言うほど強くなれなかったわ。それで悔しい思いをいっぱいしてね。それでも食らいついていったのだけど、結局のところ強くなれなかったんだわ。
 当時の事を思い返してみるとさ、基本ができてない状態で、常に同級生や先輩の強さを見る事で焦っちゃって、上達することを急ぎすぎてしまった後悔があるんだよね。マジでもっと基本をしっかりやれば良かったし、出来てないことを「できてない」と言う勇気は当時の俺にはなかったんだよ。
 あと他の人が必死に練習してたのに、自分は周りの様子を気にして集中してなかったことが結構あったわ。
元々器用な方なのでそれぐらいできる、と過信しちゃうおバカさんだったしね。
 でも剣道大好きだったなぁ。
 あんなに何かに一途に向かったのはないだろうな。なんで剣道やめちゃったんだろうな……一生の趣味にできたはずなのにね。


 もう一つ剣道には苦い思い出があるんだ。こっちの方が確実に苦い。
 当時付き合った彼女と剣道部で出会ったんだ。頭ボブにしてきれいな瞳した可愛い子。性格も俺にはとても合ってるように思えてさ。前世のボクの初恋で最初の彼女だったわ。

 初恋はうまくいかないと言う言葉がある。俺たちの仲も、上手くいかなかったさ。最初は上手くいってたんだ。でもそこから進むのが難しかったな。
 お互いはじめてで距離感が全然つかめなかったよ。どこまで踏み込んでいいのかわからなかったし、どうやって寄り添えば良いのかわからなかったんだ。

 こうしていつのまにかすれ違い、大学進学を期に自然消滅した……。

 それからの俺の人生を振り返ると、特に恋愛面では彼女の影を追いかける人生だったんじゃないかな。
 付き合った別の女性の中に、どうしても彼女の姿を探してしまうんだよ。そしてふとした瞬間、どこかで彼女に出会えないかと思ってしまうんだ。

 それは彼女が亡くなっても続いたんだよね。

 彼女、30歳の若さで亡くなってしまったんだわ……あれほど泣いた日はなかったし、あれほど後悔した日はね、そうそうなかったよ。

 それを慰めてくれた女性がいたけどさ、その子と付き合っても幻影は晴れないんだ。どうしてもあの子の笑顔がちらついて。
マジでかわいそうな事をした。

 「いつでも探しているよ、どっかで君の姿を」って歌う歌があるんだけど、俺の場合それがガチでリアルな状況だったから怖い。

 ああ、また剣道がしたい。
 彼女とまた会いたい。
 そして「あの時はゴメン」て謝りたいなぁ。


………………………………………

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