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第一部・巻き戻りのやり直し
ようこそ!パラレルワールド。
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九歳の六月はなにかとやり始めた頃だったか。とにかく前の人生を歩む必要がなくなったって解放感が大きかったような思い出がある。
○◇○◇○◇
6月になった…なってしまったよ。ナンテコッタ。
結局、あれだけ注意していたおかげもあるのか事故は起こらなかったわ……。
前の時間軸では5月に事故にあったんだよな。俺、あんなに酷いケガだったから、事故があった時期は大体いつだったか確実に覚えているんだ。なのに事故は起こらなかった。
……これで一つの仮説が崩れたんだ。
この世界が前の時間軸aと同じであり、前と同じ結果が必ず起こる。時間軸を守るため同じ時刻で同じような結果が出ないと時間軸が崩壊する、という仮説がね。
仮説が崩れた事によって、この世界は前の時間軸aから分岐した時間軸bというパラレルワールドだ、という仮説がより濃厚となったんだ。というか、ほぼ決まりだわこれ。
パラレルワールドって何?と言われると非常に難しいんだけど、今ボクたちが生きている世界のある時点から分岐して、並行に存在する世界がある、っていう理論。
この事象に例えて言うと、九歳の五月にケガをした俺は、他の分岐した世界(時間軸)がなければ、巻き戻りしたらまた九歳の五月にケガをする時間軸aにいることになるんだ。
だけど今現在ケガひとつ負わず生きてるって事は、どこか別の分岐した世界である時間軸bに住んでると証明することができるんだよ。
まあ時間軸の名前はaとかbとかじゃないにしても事故という事に気をつけていた俺は無意識のうちにパラレルワールドに移行したんだわ。
この事がわかって俺はホッとしたし、一気に肩の力が抜けたよ。
同じ時間軸だったらそれを整えるための『修正力』があるから、消される可能性やなんらかの別の事件が起こる可能性があったんだわ。
あと、前の時間軸であった災害や、なんらかの事件が『ない』という他の世界もあるんだから、それが起こっても見殺しする罪悪感に苛まれる事もないと思うね。もう俺達は分岐した世界に住んでるんだから、誰かの人生が自分のせいで変わっても、それは別の分岐ができた結果であったって事で、無理に修正する必要はないし、自分の責任として頑張らなくて良いんだ。何かがあったら分岐して、また何かがあったら分岐する。パラレルワールドってそれ自体が不定形でいくつも存在しているの。
……だからパラレルワールドであるこの世界の未来はまだ定まっていなくて、これからの選択の結果で未来は確定するんだ。人間はありもしない不安に突き動かされるものだけど、不安を感じて行動したらその分岐を呼んでしまう。だからできるだけ不安要素を取り除いて生きたいと思う。
蛇足になるけど、もしかしたら分岐した世界には剣と魔法の世界があるかもしれないし、サイバーパンクな世界があるかもしれない。超能力世界があるかも。エルフさんみたいな異種族が生まれる可能性だってある。あの耳触ってみたいわー。
パラレルワールドがあるというのはそれぐらい可能性がある話なんだよな。
「ふぅ。やったぜ」
俺はそう言いながら歩いた。歩いた先の未来はわからない。だからそれをこの手に掴むようにがんばるんだって、下校中腕を突き上げてたらきむっちょに見つかり笑われたわ。いいんだ、俺は笑われても。
六月になってからボクの毎日のスケジュールが変化したんだ。自分にした公約実行しなきゃなって……学校から帰ってきてからランニングして、そのあと図書館行くか友達と遊ぶ。夜寝る前に筋トレ、という感じにして……雨で外にランニング行けない事もあるけど、ひとまずはその生活を送っているんだ。自分を律して今までの自分を変える事ってとても気持ちいいもんだ。周りからどう見られようとほっとこうと思ってる。
弱点解消の為、クラスのいろんな子と、親戚のおっちゃん目線ではあるけども話すようになったんだけど、これがなかなかどうして難しい。特にテレビとかゲームとかやっていないからなかなか話題を作れなくて大変だわ。
天気とか、なんか話せばいいんだっけ?昔営業マンしてたのすっかりわすれたよ。そんなに気を遣って喋る事もないから余計そうなのかもしれないな。
女の子は話すと顔が赤くなったりするので可愛いね。この顔だからだろうか?
リア充ってもっとすんなり話できるんだろうなぁ。リア充ってすごい。改めてそう思った。
………………………………………
【異世界理論】取得
○◇○◇○◇
6月になった…なってしまったよ。ナンテコッタ。
結局、あれだけ注意していたおかげもあるのか事故は起こらなかったわ……。
前の時間軸では5月に事故にあったんだよな。俺、あんなに酷いケガだったから、事故があった時期は大体いつだったか確実に覚えているんだ。なのに事故は起こらなかった。
……これで一つの仮説が崩れたんだ。
この世界が前の時間軸aと同じであり、前と同じ結果が必ず起こる。時間軸を守るため同じ時刻で同じような結果が出ないと時間軸が崩壊する、という仮説がね。
仮説が崩れた事によって、この世界は前の時間軸aから分岐した時間軸bというパラレルワールドだ、という仮説がより濃厚となったんだ。というか、ほぼ決まりだわこれ。
パラレルワールドって何?と言われると非常に難しいんだけど、今ボクたちが生きている世界のある時点から分岐して、並行に存在する世界がある、っていう理論。
この事象に例えて言うと、九歳の五月にケガをした俺は、他の分岐した世界(時間軸)がなければ、巻き戻りしたらまた九歳の五月にケガをする時間軸aにいることになるんだ。
だけど今現在ケガひとつ負わず生きてるって事は、どこか別の分岐した世界である時間軸bに住んでると証明することができるんだよ。
まあ時間軸の名前はaとかbとかじゃないにしても事故という事に気をつけていた俺は無意識のうちにパラレルワールドに移行したんだわ。
この事がわかって俺はホッとしたし、一気に肩の力が抜けたよ。
同じ時間軸だったらそれを整えるための『修正力』があるから、消される可能性やなんらかの別の事件が起こる可能性があったんだわ。
あと、前の時間軸であった災害や、なんらかの事件が『ない』という他の世界もあるんだから、それが起こっても見殺しする罪悪感に苛まれる事もないと思うね。もう俺達は分岐した世界に住んでるんだから、誰かの人生が自分のせいで変わっても、それは別の分岐ができた結果であったって事で、無理に修正する必要はないし、自分の責任として頑張らなくて良いんだ。何かがあったら分岐して、また何かがあったら分岐する。パラレルワールドってそれ自体が不定形でいくつも存在しているの。
……だからパラレルワールドであるこの世界の未来はまだ定まっていなくて、これからの選択の結果で未来は確定するんだ。人間はありもしない不安に突き動かされるものだけど、不安を感じて行動したらその分岐を呼んでしまう。だからできるだけ不安要素を取り除いて生きたいと思う。
蛇足になるけど、もしかしたら分岐した世界には剣と魔法の世界があるかもしれないし、サイバーパンクな世界があるかもしれない。超能力世界があるかも。エルフさんみたいな異種族が生まれる可能性だってある。あの耳触ってみたいわー。
パラレルワールドがあるというのはそれぐらい可能性がある話なんだよな。
「ふぅ。やったぜ」
俺はそう言いながら歩いた。歩いた先の未来はわからない。だからそれをこの手に掴むようにがんばるんだって、下校中腕を突き上げてたらきむっちょに見つかり笑われたわ。いいんだ、俺は笑われても。
六月になってからボクの毎日のスケジュールが変化したんだ。自分にした公約実行しなきゃなって……学校から帰ってきてからランニングして、そのあと図書館行くか友達と遊ぶ。夜寝る前に筋トレ、という感じにして……雨で外にランニング行けない事もあるけど、ひとまずはその生活を送っているんだ。自分を律して今までの自分を変える事ってとても気持ちいいもんだ。周りからどう見られようとほっとこうと思ってる。
弱点解消の為、クラスのいろんな子と、親戚のおっちゃん目線ではあるけども話すようになったんだけど、これがなかなかどうして難しい。特にテレビとかゲームとかやっていないからなかなか話題を作れなくて大変だわ。
天気とか、なんか話せばいいんだっけ?昔営業マンしてたのすっかりわすれたよ。そんなに気を遣って喋る事もないから余計そうなのかもしれないな。
女の子は話すと顔が赤くなったりするので可愛いね。この顔だからだろうか?
リア充ってもっとすんなり話できるんだろうなぁ。リア充ってすごい。改めてそう思った。
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