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城で何かあったみたいじゃ
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ふくとヴォルフは再び大穴へ訪れていた。
以前とは違い、二人はより強力な武器を携えて大穴に挑むことになる。
ふくは手を合わせて集中する。
「『清浄なる光よ、悪しきものを聖なる光の力にひれ伏せ!』」
握りこぶしほどの大きさの光の玉を大穴に向けて落とす。
大穴の闇の中に光の玉は吸い込まれ、見えなくなった瞬間、大穴から光の柱が伸びた。
衝撃波の魔法に聖なる光の魔法を組み込んだもので、大量にあった魔物の気配は半分ほどに減った気がした。
ヴォルフはそのまま大穴へと飛び込んでいき、最下層を目指して降りて行った。
先ほどの衝撃を受けても頑丈な大穴を見たふくは少し難しい顔をする。
「ふく、どうしたの?」
「もしかしたらじゃが、この大穴は奴らの出入り口であり、住居かもしれぬ。用心したほうが良いじゃろうな」
「鼻が利くから索敵は任せて!ふくはいつでも魔法が打てるように準備してくれたら大丈夫!」
ふくはヴォルフの頭を撫で、魔力を開放し、いつでも戦闘できるような態勢となる。
大穴のわずかな出っ張りを足場にして飛び降りていくヴォルフ。
大穴の闇はどんどん深まっていき、ふくは【光源】の魔法で周囲を照らす光の玉を作り出す。
そして、以前来た時と同じような横穴を見つける。
ヴォルフはクンクンと鼻を鳴らすと毛を逆立てる。
「ふく、いるよ!」
「うむ。……ぼるふ、体に異常はないかの?」
「大丈夫。あいつらのおかげで今もピンピンしていられるよ」
「そうか、ならよいのじゃ」
ふくが安心した瞬間、どす黒い光がふく達に目掛けて跳んできた。
しかしそれは、ふくの【浄化】の光によって打ち消され、代わりにヴォルフの凍気が魔物に向かって放たれた。
魔物は逃げることができず【絶対】の力に捕らえられ、肉体の原子運動が停止し、体が崩れていく。
ふくは魔晶石からどす黒い靄が出る前に聖なる光で浄化させる。
魔物を倒し、横穴の奥へ進んでいくと、さらに横穴があり、たまたま光を浴びることがなかったようであった。
「このような横穴のさらに横穴は光が届かぬようじゃの。ぼるふの鼻のおかげで見落とすことがなかったのじゃ」
ふくはそう褒めながら頭を撫でていくと、ヴォルフは嬉しそうに尻尾を振る。
「さあ、行くのじゃ」
「わかった!」
二人はさらに大穴の奥へと降りていくのであった。
§
「ライラただいま」
「おかえりなさい!今日もお疲れさまでした」
「ライラほどじゃないさ。レプレもいい子にしていたかな?」
ガルドはレプレと名付けられた娘にデレデレになっていた。
子どま産まれる前と違う一面が見られるようになったガルドに対してライラはにこにこと笑う。
そんな微笑ましい状況で一人の獣人が城の中に入ってきた。
ガルドは訪問者の気配に気が付き、立ち上がる。
「ガルド君?」
「大丈夫。敵意は感じられない」
そう言って、訪問者と対峙する。
羊族の女性で赤子を抱いていた。
その赤子を見てガルドは驚いた顔を浮かべ、思わずつぶやく。
「……まさか、狼族の子供……?」
「えっ!?狼族!?」
ライラがレプレを抱えて走って迫る。
羊族の子供は狼族で間違いなく、慌て始める。
狼族はすでに滅んでしまったというのが千年以上前から言われているのが常識であった。
「アナタ、名前は?この子の父親は?どこで出会ったの?それからそれから――」
ライラが矢継ぎ早に質問をしていき、ガルドが止めに入る。
羊族の女性はそんなライラの様子を見てクスリと笑う。
「私の名前はウルと申します。この子の父親はヴォルフ様です」
「ヴォルフ……?」
「様……?」
お互いの顔を見つめて目を点にする。
そして、二人はじわじわとその意味を理解すると、毛を逆立てて震える。
「「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!?!?!?」」
驚きのあまり、ライラは失神しかけるが、何とか意識を取り戻し、ウルに事情を聴く。
「ヴぉヴぉヴぉヴぉヴォルフ様の……ここここ子供って……」
「驚くのも無理はないですよね。まずは、私のことだけど、ちょうどあなたと入れ替わりで城を去ったの。そして去る前に、私はヴォルフ様の寵愛を受けて、その時に生まれた子供なのです」
「そ、そんなことが……。で、でも……どうして妊娠していたことを黙っていたの?早くに言えば支援だって受けられたはずじゃ……」
「ヴォルフ様の子供とわかれば私やこの子の命が危ないと判断したようなのです。そしてその矢先にふく様のお子様が……」
ライラはふくの子供が綱彦によって消息を絶ったことを思い出し、ヴォルフが隠した意味を知った。
しかし、ヴォルフやふくの居ないこの時期に正体を明かしたのか不明だった。
「ウルさん?今、ヴォルフ様いないけど、どうしてヒミツを明かしたの?今この時期に明かすのはリスクが大きいと思うのだけど……」
「信じられるかわからないのだけど、貴女の子供に引き寄せられたみたいなの。ガブが一人で行こうとするから……」
ウルがそう告げると、ウサギ族であるレプレと狼族であるガブが目を合わすととてもうれしそうな笑みを浮かべ、キャッキャッと可愛らしい声をあげて会話をしているようでライラとウルは目じりが下がったのだった。
「ウルさん。あなたはこれからどうされるのですか?」
「この子を王族として受け入れていただきたいので、ヴォルフ様が帰ってくるまで復興に協力させてください」
「そういうことならもちろん良いよ!ヴォルフ様びっくりするだろうねぇ……」
ウルが参加したことにより、復興の人出が増え、城の中は赤子の声でにぎわうようになったのであった。
以前とは違い、二人はより強力な武器を携えて大穴に挑むことになる。
ふくは手を合わせて集中する。
「『清浄なる光よ、悪しきものを聖なる光の力にひれ伏せ!』」
握りこぶしほどの大きさの光の玉を大穴に向けて落とす。
大穴の闇の中に光の玉は吸い込まれ、見えなくなった瞬間、大穴から光の柱が伸びた。
衝撃波の魔法に聖なる光の魔法を組み込んだもので、大量にあった魔物の気配は半分ほどに減った気がした。
ヴォルフはそのまま大穴へと飛び込んでいき、最下層を目指して降りて行った。
先ほどの衝撃を受けても頑丈な大穴を見たふくは少し難しい顔をする。
「ふく、どうしたの?」
「もしかしたらじゃが、この大穴は奴らの出入り口であり、住居かもしれぬ。用心したほうが良いじゃろうな」
「鼻が利くから索敵は任せて!ふくはいつでも魔法が打てるように準備してくれたら大丈夫!」
ふくはヴォルフの頭を撫で、魔力を開放し、いつでも戦闘できるような態勢となる。
大穴のわずかな出っ張りを足場にして飛び降りていくヴォルフ。
大穴の闇はどんどん深まっていき、ふくは【光源】の魔法で周囲を照らす光の玉を作り出す。
そして、以前来た時と同じような横穴を見つける。
ヴォルフはクンクンと鼻を鳴らすと毛を逆立てる。
「ふく、いるよ!」
「うむ。……ぼるふ、体に異常はないかの?」
「大丈夫。あいつらのおかげで今もピンピンしていられるよ」
「そうか、ならよいのじゃ」
ふくが安心した瞬間、どす黒い光がふく達に目掛けて跳んできた。
しかしそれは、ふくの【浄化】の光によって打ち消され、代わりにヴォルフの凍気が魔物に向かって放たれた。
魔物は逃げることができず【絶対】の力に捕らえられ、肉体の原子運動が停止し、体が崩れていく。
ふくは魔晶石からどす黒い靄が出る前に聖なる光で浄化させる。
魔物を倒し、横穴の奥へ進んでいくと、さらに横穴があり、たまたま光を浴びることがなかったようであった。
「このような横穴のさらに横穴は光が届かぬようじゃの。ぼるふの鼻のおかげで見落とすことがなかったのじゃ」
ふくはそう褒めながら頭を撫でていくと、ヴォルフは嬉しそうに尻尾を振る。
「さあ、行くのじゃ」
「わかった!」
二人はさらに大穴の奥へと降りていくのであった。
§
「ライラただいま」
「おかえりなさい!今日もお疲れさまでした」
「ライラほどじゃないさ。レプレもいい子にしていたかな?」
ガルドはレプレと名付けられた娘にデレデレになっていた。
子どま産まれる前と違う一面が見られるようになったガルドに対してライラはにこにこと笑う。
そんな微笑ましい状況で一人の獣人が城の中に入ってきた。
ガルドは訪問者の気配に気が付き、立ち上がる。
「ガルド君?」
「大丈夫。敵意は感じられない」
そう言って、訪問者と対峙する。
羊族の女性で赤子を抱いていた。
その赤子を見てガルドは驚いた顔を浮かべ、思わずつぶやく。
「……まさか、狼族の子供……?」
「えっ!?狼族!?」
ライラがレプレを抱えて走って迫る。
羊族の子供は狼族で間違いなく、慌て始める。
狼族はすでに滅んでしまったというのが千年以上前から言われているのが常識であった。
「アナタ、名前は?この子の父親は?どこで出会ったの?それからそれから――」
ライラが矢継ぎ早に質問をしていき、ガルドが止めに入る。
羊族の女性はそんなライラの様子を見てクスリと笑う。
「私の名前はウルと申します。この子の父親はヴォルフ様です」
「ヴォルフ……?」
「様……?」
お互いの顔を見つめて目を点にする。
そして、二人はじわじわとその意味を理解すると、毛を逆立てて震える。
「「えええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?!?!?!?」」
驚きのあまり、ライラは失神しかけるが、何とか意識を取り戻し、ウルに事情を聴く。
「ヴぉヴぉヴぉヴぉヴォルフ様の……ここここ子供って……」
「驚くのも無理はないですよね。まずは、私のことだけど、ちょうどあなたと入れ替わりで城を去ったの。そして去る前に、私はヴォルフ様の寵愛を受けて、その時に生まれた子供なのです」
「そ、そんなことが……。で、でも……どうして妊娠していたことを黙っていたの?早くに言えば支援だって受けられたはずじゃ……」
「ヴォルフ様の子供とわかれば私やこの子の命が危ないと判断したようなのです。そしてその矢先にふく様のお子様が……」
ライラはふくの子供が綱彦によって消息を絶ったことを思い出し、ヴォルフが隠した意味を知った。
しかし、ヴォルフやふくの居ないこの時期に正体を明かしたのか不明だった。
「ウルさん?今、ヴォルフ様いないけど、どうしてヒミツを明かしたの?今この時期に明かすのはリスクが大きいと思うのだけど……」
「信じられるかわからないのだけど、貴女の子供に引き寄せられたみたいなの。ガブが一人で行こうとするから……」
ウルがそう告げると、ウサギ族であるレプレと狼族であるガブが目を合わすととてもうれしそうな笑みを浮かべ、キャッキャッと可愛らしい声をあげて会話をしているようでライラとウルは目じりが下がったのだった。
「ウルさん。あなたはこれからどうされるのですか?」
「この子を王族として受け入れていただきたいので、ヴォルフ様が帰ってくるまで復興に協力させてください」
「そういうことならもちろん良いよ!ヴォルフ様びっくりするだろうねぇ……」
ウルが参加したことにより、復興の人出が増え、城の中は赤子の声でにぎわうようになったのであった。
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