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黒い龍なのじゃ
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――パチンッ!!
手始めに衝撃波の魔法を魔物に向けて放つ。
バキバキと鱗や堅殻を剥がしながら腕を吹き飛ばす。
魔物は衝撃波の魔法の威力を見て後退する。
ボドボドと緑色の体液を流し、千切れた右腕を見る。
「うわ、えっぐ……血の色が緑色だ……。腕の再生は力を込めたらできるんだっけ?」
再生させようと傷口に力を込めると腕は生えてこず、逆に傷口が凍りつき、再生を許さなかった。
「再生を許すと思ったか?散々ふくの国を滅茶苦茶にして、タダで済むと思うなよ?ニンゲン」
【太陽】が活性化したことにより、魔力の総量が多くなり、その支配力は魔物の魔力と鬩ぎ合う事もせず、易々と貫通し、魔物の身体を凍らせることができた。
「……」
無言で凍ってしまった部分を眺めていると両翼を吹き飛ばされる。
痛みを感じていないのか、吹き飛ばされた翼の事など気にもせずヴォルフを睨みつける。
その眼は非常に冷酷なもので、ヴォルフの【絶対】による凍結と同じような冷たさであり、魔力が込められていた。
ヴォルフは何か不穏な気配を感じ、巨大な氷柱で魔物を埋めて、ふくを乗せてその場から離れる。
氷柱ごと二人がいた場所をドーム状のどす黒い靄が覆う。
「わしの庭で好き勝手させぬ!」
指をパチンと鳴らし、聖なる光の力を持った衝撃波がどす黒い靄を浄化させ、蝕まれた大地も同時に浄化させる。
靄が晴れると、そこには大きな体躯の漆黒の鱗を持つ龍が立っていた。
「……彼奴は龍に……!?」
「みたいだな……龍に意識を喰われるなんて、想像するだけで嫌になる……!」
「他の龍どもと同じように、ぼるふの【絶対】で凍らせることはできるのかの?」
「うーん……魔力量が跳ね上がっているから直接凍らせることは出来ないかもしれない……」
遠くからでもその大きさがわかるその龍は立っているだけで土地を【暗黒】で蝕んでいくのが見える。
ふくは指をパチンと鳴らし、翼膜に衝撃波を当てる。
しかし、竜人形態であった時は吹き飛ばした威力と同じであったのだが、全くと言っていいほど効果が無く、聖なる光の力ですら土地を浄化することが出来なかった。
「わしの魔法を受けつけぬか……。ぼるふよ、わしは【梓弓】を使ってあの龍を斃す。それまで彼奴の気を引きつけておいてくれぬかの?」
「わかった!絶対倒してよ!」
ふくを降ろし、神速の如き速さで黒い龍の元へ走って行った。
ふくは精神を統一し、魔力をジワジワと増やしていく。
「『清浄なる光よ。我が神器にその力を乗せ、その真価を発揮せよ。我の仇なす者を聖なる光と炎の如く闇を討ち滅ぼす力を以って、全てをあるべき姿へと戻し、浄化せよ!!』」
ふくの弓は今まで反り弓の形をしていたが、遠くから狙うことを考え、大弓の形に【梓弓】を形状変化させた。
そして、明確な意思と指示を込めた詠唱により、魔法の威力は確約され、それを矢に込めていく。
ふくが九尾の狐に成ったことで膨大な魔力を使った矢に聖なる光の魔法を練り込んでいくと目も開けられないような光を発する。
それに耐えながらふくは慎重に練り込んでいく。
チャンスは一度きり。
ふくは全魔力をその一矢に全て賭けていた。
ヴォルフは黒い龍と対峙し、睨み合う。
龍王とヴォルフは殆ど同じ大きさであり、ふくの約四倍程の体躯をしている。
それよりも大きい生き物はいつも食用として狩られている草食魔獣くらいしかいなかった。
尤も海に領地を広げていない為、ヴォルフの出会ったことのない生物(創っている為、ただ存在を忘れているだけ)は除外するのだが、黒い龍は草食魔獣の二倍程大きいものであった。
現存する龍種では最大の大きさであり、体格差は凄まじかった。
その大きさゆえに町の住居は破壊され、【暗黒】によって使えない土地へと変わっていく。
ヴォルフはその様を見て、魔力を昂らせる。
魔力量だけなら黒い龍に負けていない為、攻撃は通ると見込む。
「『絶対零度』」
ヴォルフの短い詠唱は回避することを許さない。
元々完璧に使いこなしている【絶対】の魔法は詠唱をしたところで威力は変わらない。
はずだった。
黒い龍の足元から完全凍結させていき、動きを制限する。
四つの脚は全て凍り、動けなくなってしまうが、黒い龍は冷静に凍っていない部分から引きちぎり、飛び上がる。
緑の体液を流しながらも四肢をズルんと再生させて、着地する。
そして、再び四肢が凍りつく。
「さて……お前は何回再生できるのか、試してみようか?そのまま『息の根を止めて』くれると助かるんだが?」
ふくと混ざり合った魔力は【絶対】の引き出しを増やし、適用範囲が広がり、【太陽】が元の輝きを取り戻した時に、本来の干渉力と速度が戻った。
ヴォルフの得意な会話の中に詠唱を混ぜる技術で黒い龍の心臓とも言える魔障石に亀裂を入れた。
黒い龍は激痛で身体を硬直させているところを、すかさず全身を氷像へと変えた。
「ふく!今だ!」
完全に練り込まれた矢は時々虹色のような光を発し、先ほどのような光が漏れず安定する。
弓矢を上空へ掲げて、キリキリと引き絞り狙いを定める。
反り弓と違い大弓は長距離を飛ばすためにかなりの腕力を要する。
真っ白になりそうな程力を込めて、チャンスを待つ。
『ふく!今だ!』
その声を聞き、ふくは全魔力を矢に注ぎ、矢を射たのだった。
手始めに衝撃波の魔法を魔物に向けて放つ。
バキバキと鱗や堅殻を剥がしながら腕を吹き飛ばす。
魔物は衝撃波の魔法の威力を見て後退する。
ボドボドと緑色の体液を流し、千切れた右腕を見る。
「うわ、えっぐ……血の色が緑色だ……。腕の再生は力を込めたらできるんだっけ?」
再生させようと傷口に力を込めると腕は生えてこず、逆に傷口が凍りつき、再生を許さなかった。
「再生を許すと思ったか?散々ふくの国を滅茶苦茶にして、タダで済むと思うなよ?ニンゲン」
【太陽】が活性化したことにより、魔力の総量が多くなり、その支配力は魔物の魔力と鬩ぎ合う事もせず、易々と貫通し、魔物の身体を凍らせることができた。
「……」
無言で凍ってしまった部分を眺めていると両翼を吹き飛ばされる。
痛みを感じていないのか、吹き飛ばされた翼の事など気にもせずヴォルフを睨みつける。
その眼は非常に冷酷なもので、ヴォルフの【絶対】による凍結と同じような冷たさであり、魔力が込められていた。
ヴォルフは何か不穏な気配を感じ、巨大な氷柱で魔物を埋めて、ふくを乗せてその場から離れる。
氷柱ごと二人がいた場所をドーム状のどす黒い靄が覆う。
「わしの庭で好き勝手させぬ!」
指をパチンと鳴らし、聖なる光の力を持った衝撃波がどす黒い靄を浄化させ、蝕まれた大地も同時に浄化させる。
靄が晴れると、そこには大きな体躯の漆黒の鱗を持つ龍が立っていた。
「……彼奴は龍に……!?」
「みたいだな……龍に意識を喰われるなんて、想像するだけで嫌になる……!」
「他の龍どもと同じように、ぼるふの【絶対】で凍らせることはできるのかの?」
「うーん……魔力量が跳ね上がっているから直接凍らせることは出来ないかもしれない……」
遠くからでもその大きさがわかるその龍は立っているだけで土地を【暗黒】で蝕んでいくのが見える。
ふくは指をパチンと鳴らし、翼膜に衝撃波を当てる。
しかし、竜人形態であった時は吹き飛ばした威力と同じであったのだが、全くと言っていいほど効果が無く、聖なる光の力ですら土地を浄化することが出来なかった。
「わしの魔法を受けつけぬか……。ぼるふよ、わしは【梓弓】を使ってあの龍を斃す。それまで彼奴の気を引きつけておいてくれぬかの?」
「わかった!絶対倒してよ!」
ふくを降ろし、神速の如き速さで黒い龍の元へ走って行った。
ふくは精神を統一し、魔力をジワジワと増やしていく。
「『清浄なる光よ。我が神器にその力を乗せ、その真価を発揮せよ。我の仇なす者を聖なる光と炎の如く闇を討ち滅ぼす力を以って、全てをあるべき姿へと戻し、浄化せよ!!』」
ふくの弓は今まで反り弓の形をしていたが、遠くから狙うことを考え、大弓の形に【梓弓】を形状変化させた。
そして、明確な意思と指示を込めた詠唱により、魔法の威力は確約され、それを矢に込めていく。
ふくが九尾の狐に成ったことで膨大な魔力を使った矢に聖なる光の魔法を練り込んでいくと目も開けられないような光を発する。
それに耐えながらふくは慎重に練り込んでいく。
チャンスは一度きり。
ふくは全魔力をその一矢に全て賭けていた。
ヴォルフは黒い龍と対峙し、睨み合う。
龍王とヴォルフは殆ど同じ大きさであり、ふくの約四倍程の体躯をしている。
それよりも大きい生き物はいつも食用として狩られている草食魔獣くらいしかいなかった。
尤も海に領地を広げていない為、ヴォルフの出会ったことのない生物(創っている為、ただ存在を忘れているだけ)は除外するのだが、黒い龍は草食魔獣の二倍程大きいものであった。
現存する龍種では最大の大きさであり、体格差は凄まじかった。
その大きさゆえに町の住居は破壊され、【暗黒】によって使えない土地へと変わっていく。
ヴォルフはその様を見て、魔力を昂らせる。
魔力量だけなら黒い龍に負けていない為、攻撃は通ると見込む。
「『絶対零度』」
ヴォルフの短い詠唱は回避することを許さない。
元々完璧に使いこなしている【絶対】の魔法は詠唱をしたところで威力は変わらない。
はずだった。
黒い龍の足元から完全凍結させていき、動きを制限する。
四つの脚は全て凍り、動けなくなってしまうが、黒い龍は冷静に凍っていない部分から引きちぎり、飛び上がる。
緑の体液を流しながらも四肢をズルんと再生させて、着地する。
そして、再び四肢が凍りつく。
「さて……お前は何回再生できるのか、試してみようか?そのまま『息の根を止めて』くれると助かるんだが?」
ふくと混ざり合った魔力は【絶対】の引き出しを増やし、適用範囲が広がり、【太陽】が元の輝きを取り戻した時に、本来の干渉力と速度が戻った。
ヴォルフの得意な会話の中に詠唱を混ぜる技術で黒い龍の心臓とも言える魔障石に亀裂を入れた。
黒い龍は激痛で身体を硬直させているところを、すかさず全身を氷像へと変えた。
「ふく!今だ!」
完全に練り込まれた矢は時々虹色のような光を発し、先ほどのような光が漏れず安定する。
弓矢を上空へ掲げて、キリキリと引き絞り狙いを定める。
反り弓と違い大弓は長距離を飛ばすためにかなりの腕力を要する。
真っ白になりそうな程力を込めて、チャンスを待つ。
『ふく!今だ!』
その声を聞き、ふくは全魔力を矢に注ぎ、矢を射たのだった。
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