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お風呂が完成したのじゃ
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再びキンキンに冷えた冷水を浴びて、焚き火の火で暖まるふく。
さすがのヴォルフも色々汚れてしまったため同じように水浴びをする。
焚き火の熱を浴びている間、ふと空を見上げると【太陽】が見える。
地上の太陽と違い、弱々しく光る【太陽】はまるでお腹が空き、飢えて苦しんでいるように見える。
「あっ!ここにいた!」
そう声が聞こえ、走ってくるのはライラであった。
ピョンピョンと跳びながらふくたちの所に着くと、ビショビショに濡れているふくとヴォルフを見て察する。
「へ、へぇ……昨日はおたのしみでしたか……。」
「……らいらもそうじゃろう?魔力が漲っておる」
「えっ!?な、なんで……!?」
ライラはニオイを隠して大丈夫だと判断していたが、ふくはライラの魔力の総量が大きくなっていることに気がついていたのだ。
「そ、そんなことより……!お風呂の試作品ができたので、来て欲しいの!」
それを聴き、ふくの目は輝き、ヴォルフの上に乗る。
「さあ、行くのじゃ!お風呂に入りたいのじゃ!もう、水は嫌なのじゃ!」
そう言ってしがみついていた。
ヴォルフの身体の水気は落ちておらず、歩いていくだけで、この寒い気候によって毛は凍っていく。
お風呂に到着する頃にはヴォルフの全身は凍りついており、非常に可哀想な見た目になっていた。
しかし、当の本人は氷狼と言うこともあり、微塵も寒さを感じていないようであった。
ヴォルフの背中からプルプルと震えながらふくが飛び降りると、よろよろとした足取りで湯船に浸かりにいく。
「はあぁぁぁぁ……良いのじゃ……。伸び伸びできて幸せなのじゃ……」
「なんだか、身体の疲れが取れる感じだね……」
「ウチも入る!やっほーぃ!」
水飛沫を上げながら湯船に飛び込んだライラと、そーっと足から入るガルド。
そして、ポチおとにゃんも入ってくる。
それでも、まだまだ広さがあるお風呂。
ふくはポチおを見て、訊ねる。
「ポチおよ。わしとぼるふがミスリルを拾った地での、よりヒトの姿に近い魔物に出会うた。彼奴が【新人類】と言うやつかの?」
「……いや、違うと思う。新人類は絶対に大穴に入ってくることないから、それはないと思う」
「そうか……では、強めの魔物じゃったか……。あれからいくつか分かったことがあっての。まずは、魔物はまだまだやって来ること、ぼるふの心臓はやはり取り返せぬという事、そして魔素が不足しておる事の三つじゃ」
ふくがそういうと、全員の視線がふくに集まる。
「先ずは魔物がやって来る事じゃが、地上のやろうとしておる事が終わらぬ限り続くようじゃ。次にぼるふの心臓じゃが、わしらのおるこの大地……星とやらの心臓と融合して二度と外せぬようになっておるようじゃ。そして、最後は魔素が不足しておるという事なのじゃが、これは先にあげた二つの事とかなり密接に繋がっておるようじゃ」
「はいはい!魔物たちの親玉がやろうとしていることって?」
ライラが手を挙げて質問をすると、ふくは首を横に振り、代わりにポチおがライラの質問に応える。
「地上は燃料がなくなってエネルギーが確保できないって話で、失敗作と不適合者が生まれる限り、こちらの世界に棄てられるってこと」
「じゃ、安定したやつがいっぱいできるようになったら来なくなるって事?」
「残念じゃが、それはないのであろうの。安定した者が生まれれば、この世界を獲りにくるじゃろう。貴重な資源はこの世界にたくさん眠っておる。【みすりる】が良い例になるじゃろう」
「……て事は、戦いはもっと厳しくなるって事だね……」
ライラは鼻から下をお湯に浸けてぶくぶくさせながら不満そうな顔をする。
お風呂の淵に立っていたセイラが小さく手を挙げて質問する。
「ヴォルフ様の心臓は取り戻せないとありましたが、わたくしたちでも同じ結論で魔道具を介して心臓に力を与えてあげる事で、間接的ではありますが、ヴォルフ様の力になれるのではないかと考えております」
「さすがせいらじゃ。その魔道具とやらを作り上げて欲しいのじゃ。このまま行くと、ぼるふは後五百年で死ぬるようでの、そうなると星も死んでしまうようじゃ。即ち滅んでしまうという事じゃ」
「……!では急いで作り上げてきます!」
セイラは走って浴場から出て行った。
「彼奴は急ぎすぎなのじゃ」
「それじゃあ、魔素が不足しているってのは?」
ヴォルフが不思議そうな顔をしてふくに訊ねる。
「うむ。鳥の国に冥骸獣がおらんかったことに気がついたかの?」
「そういえば、確かにいなかったな」
「アレらはわしも見たことないが、怨念と魔素が結びついて生まれるようなのじゃが、魔物が持っておる石に【蓄積】という魔法が組み込まれておっての、魔素を怨念ごと喰らい尽くしておるようなのじゃ。もともとこの世界は魔素に満ち溢れておったようじゃが、いつからか魔素が急激に足りぬようになって行ったようじゃ」
「そうか……。失敗作が生まれる理由がわかった……!魔素が自力で集められない者が獣の姿になるんだ。適合するために自分の強いイメージのケモノに……。そして不適合者は怨念を蓄積して生まれる。……じゃあ、新人類は何を指しているんだ……?」
「きっと、お前たちの言う新人類とやらは、わしらの考えに及ばぬ所におるかもしれぬの。そしての、魔素が魔物によって、新人類とやらによって、奪われておる事で星の……ヴォルフの命が短くなっておるのじゃ」
一同の考えは同じ所へ辿り着く。
「それじゃあ、最初にヴォルフ様の力を戻してあげる事が先だね!」
「そして、魔物や新人類に干渉されないようなものを作る」
「オイラとにゃんはそれをサポートする!」
「だね!」
やる気満々なライラたちを見て、ふくとヴォルフは見つめ合い、頷く。
一方、大穴では多数の邪悪な感情が溢れ出でそうなほどの魔力が蠢いており、今か今かと何かを待っているようだった。
さすがのヴォルフも色々汚れてしまったため同じように水浴びをする。
焚き火の熱を浴びている間、ふと空を見上げると【太陽】が見える。
地上の太陽と違い、弱々しく光る【太陽】はまるでお腹が空き、飢えて苦しんでいるように見える。
「あっ!ここにいた!」
そう声が聞こえ、走ってくるのはライラであった。
ピョンピョンと跳びながらふくたちの所に着くと、ビショビショに濡れているふくとヴォルフを見て察する。
「へ、へぇ……昨日はおたのしみでしたか……。」
「……らいらもそうじゃろう?魔力が漲っておる」
「えっ!?な、なんで……!?」
ライラはニオイを隠して大丈夫だと判断していたが、ふくはライラの魔力の総量が大きくなっていることに気がついていたのだ。
「そ、そんなことより……!お風呂の試作品ができたので、来て欲しいの!」
それを聴き、ふくの目は輝き、ヴォルフの上に乗る。
「さあ、行くのじゃ!お風呂に入りたいのじゃ!もう、水は嫌なのじゃ!」
そう言ってしがみついていた。
ヴォルフの身体の水気は落ちておらず、歩いていくだけで、この寒い気候によって毛は凍っていく。
お風呂に到着する頃にはヴォルフの全身は凍りついており、非常に可哀想な見た目になっていた。
しかし、当の本人は氷狼と言うこともあり、微塵も寒さを感じていないようであった。
ヴォルフの背中からプルプルと震えながらふくが飛び降りると、よろよろとした足取りで湯船に浸かりにいく。
「はあぁぁぁぁ……良いのじゃ……。伸び伸びできて幸せなのじゃ……」
「なんだか、身体の疲れが取れる感じだね……」
「ウチも入る!やっほーぃ!」
水飛沫を上げながら湯船に飛び込んだライラと、そーっと足から入るガルド。
そして、ポチおとにゃんも入ってくる。
それでも、まだまだ広さがあるお風呂。
ふくはポチおを見て、訊ねる。
「ポチおよ。わしとぼるふがミスリルを拾った地での、よりヒトの姿に近い魔物に出会うた。彼奴が【新人類】と言うやつかの?」
「……いや、違うと思う。新人類は絶対に大穴に入ってくることないから、それはないと思う」
「そうか……では、強めの魔物じゃったか……。あれからいくつか分かったことがあっての。まずは、魔物はまだまだやって来ること、ぼるふの心臓はやはり取り返せぬという事、そして魔素が不足しておる事の三つじゃ」
ふくがそういうと、全員の視線がふくに集まる。
「先ずは魔物がやって来る事じゃが、地上のやろうとしておる事が終わらぬ限り続くようじゃ。次にぼるふの心臓じゃが、わしらのおるこの大地……星とやらの心臓と融合して二度と外せぬようになっておるようじゃ。そして、最後は魔素が不足しておるという事なのじゃが、これは先にあげた二つの事とかなり密接に繋がっておるようじゃ」
「はいはい!魔物たちの親玉がやろうとしていることって?」
ライラが手を挙げて質問をすると、ふくは首を横に振り、代わりにポチおがライラの質問に応える。
「地上は燃料がなくなってエネルギーが確保できないって話で、失敗作と不適合者が生まれる限り、こちらの世界に棄てられるってこと」
「じゃ、安定したやつがいっぱいできるようになったら来なくなるって事?」
「残念じゃが、それはないのであろうの。安定した者が生まれれば、この世界を獲りにくるじゃろう。貴重な資源はこの世界にたくさん眠っておる。【みすりる】が良い例になるじゃろう」
「……て事は、戦いはもっと厳しくなるって事だね……」
ライラは鼻から下をお湯に浸けてぶくぶくさせながら不満そうな顔をする。
お風呂の淵に立っていたセイラが小さく手を挙げて質問する。
「ヴォルフ様の心臓は取り戻せないとありましたが、わたくしたちでも同じ結論で魔道具を介して心臓に力を与えてあげる事で、間接的ではありますが、ヴォルフ様の力になれるのではないかと考えております」
「さすがせいらじゃ。その魔道具とやらを作り上げて欲しいのじゃ。このまま行くと、ぼるふは後五百年で死ぬるようでの、そうなると星も死んでしまうようじゃ。即ち滅んでしまうという事じゃ」
「……!では急いで作り上げてきます!」
セイラは走って浴場から出て行った。
「彼奴は急ぎすぎなのじゃ」
「それじゃあ、魔素が不足しているってのは?」
ヴォルフが不思議そうな顔をしてふくに訊ねる。
「うむ。鳥の国に冥骸獣がおらんかったことに気がついたかの?」
「そういえば、確かにいなかったな」
「アレらはわしも見たことないが、怨念と魔素が結びついて生まれるようなのじゃが、魔物が持っておる石に【蓄積】という魔法が組み込まれておっての、魔素を怨念ごと喰らい尽くしておるようなのじゃ。もともとこの世界は魔素に満ち溢れておったようじゃが、いつからか魔素が急激に足りぬようになって行ったようじゃ」
「そうか……。失敗作が生まれる理由がわかった……!魔素が自力で集められない者が獣の姿になるんだ。適合するために自分の強いイメージのケモノに……。そして不適合者は怨念を蓄積して生まれる。……じゃあ、新人類は何を指しているんだ……?」
「きっと、お前たちの言う新人類とやらは、わしらの考えに及ばぬ所におるかもしれぬの。そしての、魔素が魔物によって、新人類とやらによって、奪われておる事で星の……ヴォルフの命が短くなっておるのじゃ」
一同の考えは同じ所へ辿り着く。
「それじゃあ、最初にヴォルフ様の力を戻してあげる事が先だね!」
「そして、魔物や新人類に干渉されないようなものを作る」
「オイラとにゃんはそれをサポートする!」
「だね!」
やる気満々なライラたちを見て、ふくとヴォルフは見つめ合い、頷く。
一方、大穴では多数の邪悪な感情が溢れ出でそうなほどの魔力が蠢いており、今か今かと何かを待っているようだった。
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