キツネの女王

わんころ餅

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世界の謎じゃ

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「それだよ!セイラさん!」

「えっ!?」

「ポチお殿、図面は描くことできるか?」

「多少なら描けるよ?お絵描きくらいだけど」

「あ、あのぅ……?」

「にゃんちゃん!ウチたちは何をしたらいいかな!?」

「材料を持ってこよう!多分鉄がかなりいると思う……かな?」

「よーし、いっくぞー!」

「えっと……!」

 セイラはいきなり手際良く動き始める四人に対し、置いてけぼりになってしまう。
 声をかけても集中しているのか、返事が一つも返ってこず、握り拳を作ってプルプルと震える。
 そして偶々目の前を通ったポチおの頭に鉄槌を浴びせる。

「話を聞きなさいっ!」

「ウボァー!?」

 腕力のない鳥人族でも魔力を込めればそれなりの殴打力になるため、ポチおはなす術もなく地面に叩きつけられた。

「全く!あなたたちは勝手に動かないでくださいっ!今からどうするのか説明がないから、わたくしはどう動けばいいのですかっ!?」

「……セイラさんは一番の功労者じゃない?」

「え……?」

「一番のヒントをくれたヒトになるな……!」

「ええっ……?」
 
「そうです!魔道具のこと分からないけど、さっきの大事な発言がみんなにハマりましたよ!」

「えええ……」

「ヒントがなかったらガルド君もポチお君もどうすればいいか分かんなかったし、セイラ様はナイスアプローチだよ!」

 結局、自身のどういう発言で彼らのやる気を上げたのか不明であり、頭を抱えることになる。
 すると、ポチおが簡単な絵を持ってきてセイラに見せる。
 渦巻き貝のような見た目をした部分とそれから伸びるアンテナのようなものが描かれてあった。
 
「このグルグルに【魔素】?を入れて、魔法を発動させて【太陽】に直接転送できるようなものを作りたいんだけど、このグルグルに魔素を集める魔法とこのアンテナから集めた魔素を太陽に転送する魔法って存在する?」

「……ああ、【魔素】のことだったのですか……。えっと、【吸収】か【収束】の魔法を使えば集めることができること思います。【転送】の魔法は存在しますが、おそらくこの世界に使い手はいないかと……」

「それって、使い手が死んだから?」

 セイラは頷く。
 ポチおはがっくしと肩を落とし、落胆する。
 セイラはポチおの説明を聴き、絵をじっくりと見ると、一つ指摘する。

「【吸収】や【収束】で集めるのはわかったのですが、逆の【放出】か【発散】を考えないといけませんよ?普通に使う魔法とは違って、溜め込むと魔道具に負荷がかかって故障の元になるので、反対魔法で力を逃す必要があります」

「へぇ……!扇風機みたいだな……」

「センプウキ……?」

「ごめんごめん……!地上にある機械と同じなんだなぁって」

 ポチおが謝りながら設計図と睨めっこしていると、セイラは一つ気がついた。

「もしかして、この世界は地上と同じような環境にするために色々なものを魔法や魔力、魔素で補っている……?」

「……!そうか、地上は色んなものがここに比べて充実しているから魔法が必要ない。逆にこの世界は色んなものが足りないから魔法で補っている……そんな関係なのか……」

「じゃあ、【太陽】はウチ達の世界に足りないものを作ってくれる存在になるはずだった……?でも、どうして魔素が足りないの?アレってこの世界で無くなることってないはずだけど……」

 ライラの指摘でセイラとガルドは魔素がなぜ不足する事態になったのか分からず、考え込む。
 ポチおは難しい顔をしていると、にゃんがポンと肩に手を置く。

「大丈夫。分かってくれるよ?」

 そんな言葉をかけられ、ポチおは安心したような表情に変わり、頷く。

「きっと……地上の仕業だと思う。」

 セイラ、ガルド、ライラはポチおを見る。

「地上の世界は石油や石炭とかの燃料がなくなってな……。【新人類】の実験が始まった。おそらく、それまでも……ふくさんがいた頃にも同じような実験はあったはず……。……失敗作は何で生まれた……?」

「……失敗作……魔物の事ですね。」

「悩んでも仕方ないよ!まずはヴォルフさまを助ける?ために魔道具作らなきゃ!」

 ライラは難しい説明が嫌になってきたのか魔道具製作の続きを急かす。
 本来の目的を思い出した一同は作業再開する。
 セイラがブツブツと独り言を言いながら歩いていると、何かにぶつかる。

「あ、ごめんなさい。前をみて……ヴォルフ様!?帰ってきたのですか!?」
 
「ああ。今帰ったところ」

「戻ったのじゃ。……なぜ作業をしておるのか?【みすりる】の余りでもあったのかの?」

 ふくがドサッとミスリルの原石を置く。
 その量に驚いていると、セイラはその場に座り、頭を下げる。

「ふく様、採ってきてもらえて助かったのですが……、実は……ミスリルを精製できたようです」

「ほう……!どうやったら作れるのかわかったのかの?」

「……お、お叱りはないのですか……?」

「あるわけないじゃろう。作れるようになったのは良い事じゃろう?採取以外で材料が手に入るなら良い方法じゃ」

 ふくは嬉しそうに背伸びをすると裏庭に向かっていく。
 セイラは安心して、ホッとすると作業を再開するのである。
 設計図と睨めっこをし、どのように加工していこうかと考えていると裏庭から大きな声が聞こえた。

「せいらーっ!!」

 ふくが般若のような形相で加工場に走って乗り込んでくる。
 完全に怒っているふくに腰を抜かしたセイラはその場に座り込む。
 今まで生きてきて感じたことのない魔力の威圧感で怯えてしまい、足元に水溜りを作り、震え上がる。

「お前達もじゃ!なぜ風呂ができておらんのじゃ!」

 ふくの言葉にハッとする。
 ヴォルフの為の魔道具作りは確かにあったのだが、お風呂を作るという、当初の目的を皆忘れており、ふくに叱られることになる。
 その日は急ピッチでお風呂を作ることになったのであった。
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