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聖なる魔法を調べるのじゃ
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ふくはどうにもならない状況に悩み、悶えていた。
「七本しかないのじゃ。どうしようもないのじゃ……とりあえず、【清光】と【聖火】を扱えるようになるにはどうすればよいのじゃ?」
【魔法大全】の本の白いページにどんどん追加で記入されていく。
元々なかった魔法だったようで非常に時間のかかるものだった。
書き終わったのか白いページだったところが他のページと同じような紙の色に変わる。
「【清光】……【光】の魔法に聖なる力を付与したもの。闇や悪しきものの動きを止めることができる。【聖火】、【火】の元素魔法に聖なる力を付与した魔法。悪意や憎悪に対し聖なる炎で消滅させる。……恐らくじゃが、かなり難しい魔法ではないかの……。」
ふくは【魔法大全】を本棚に戻し、元の世界に戻ろうとした瞬間、種族について書かれた本が目の前を塞ぐ。
「お前には用はないのじゃ。……本棚に戻さなかったから怒っておるのかの?」
ふくは首を傾げ、本を手に取ると本は突然輝きだした。
強い光に目を細めていると、何やらヒトの影が現れる。
驚き、光に耐えながら直視をすると、そこには尾が九本の狐が立っていた。
「お主は誰じゃ……!?」
「我はお前の魔法の書庫そのもの」
「魔法がわしに何の用じゃ?早く帰らねばぼるふが待っておるのじゃ」
「……妖狐に伝わる魔法を伝えに来た」
九本の尾をもつ狐には悪意は感じられず、それどころか感情を読み取ることもできなかった。
それでもふくは、新たな力を身に着けられると聞き、話を聞く態勢になる。
「狐は元来稲荷という名で神の使いをしている。そして、神の使いをしているということは【神器】を扱うことができる。神とヒトの力を持つ者よ。この世界は非常に危険なものに晒されている。どうか【神器】を使いこなし、狼の作った世界を守ってほしい」
「なぜお前が守りに行かぬのじゃ?」
「我はこの世界を守るために地上とこの世界に隔たりを作る魔法と成った。よって我はそこより離れることができない」
「魔法に……なった……!?そのようなことは可能なのか!?」
「神となった者のみできる。狼の神も半分そうなっている」
「【太陽】……じゃな?」
狐は頷く。
ふくは覚悟を決めたような表情をし、腕を組んで狐をまっすぐ見つめる。
「……まあよい。【神器】とやらの使い方を教えるのじゃ」
「両端と真ん中の指を立て、残りの指は曲げる。そして、その指に沿って魔力を流し、弓と矢を魔力で作るのだ」
ふくは言われるように手の形を作ってみる。
ふくたちの指の数は四本しか存在せず、人間の五本指でいうと小指が欠落している形である。
したがって、中指だけ曲げて弓矢のような形にする。
親指と薬指に魔力を流し、魔力で弓を作る。
そして人差し指に魔力を流し、矢を作る。
狐が安心したような表情を浮かべたため、うまく作ることができたようで、ふくも安心する。
「それが【梓弓】だ。今のお主では一度だけ矢を放つことができるだろう。それだけの魔力を要するから細心の注意を払うことだ」
それを聞き、余程威力が大きいものだと理解したふくはゆっくりと【神器】をしまい込む。
狐の姿が段々と朧気になり、最後に一言だけ告げた。
「その矢には魔法を乗せることができる。よく考えて使うことだ」
狐は白い靄となって消えていった。
少し消えていく姿を見てふくは目をゆっくりと閉じる。
「偉そうな魔法なのじゃ」
§
ふくが目を開けると、ヴォルフは息を切らしながらもどす黒い靄とドロドロを【絶対】の魔法で動きを封じていた。
「おかえり、ふく。何かいいこと分かったの?」
「うむ。一度限りしか使えぬ強い魔法なのじゃが、時間は稼げるじゃろうか……?」
「……できるよ。残りの魔力を使えば三秒くらいはアイツも一緒に閉じ込められるかも……!」
「ぼるふ……お前が眠ってしまうのではないのか?」
「……きっとそうなると思う」
「それは許さぬ。二度とわしを一人にするでない。わしが魔法を早く組み上げるだけじゃ」
どうやらふくは以前一人にしたことを根に持っていたようで、ヴォルフが眠りにつくことを許さなかった。
ふくはヴォルフの背に乗ったまま【梓弓】の構えを取る。
ふくの行動を尻目にヴォルフも魔法の展開を早める。
【暗黒】の魔法は動きを少しだけ止められるが、すぐに侵食され、【絶対】の魔法が破られる。
何度も繰り返し、侵食を遅めることしかできなかった。
しかしそれで良い。
【それ】が少しでも【暗黒】の魔法に緩みを生まれさせるとヴォルフの【絶対】がすぐさま襲いかかるため、【暗黒】を使い続けさせることで他の選択肢を与えさせない仕事ができている。
ふくは魔力を昂らせ、弓の形に魔力を集めていく。
書庫の時の半分ほど作り上げると、ふくの目の前が一瞬だけ暗くなり、ヴォルフの上に倒れ込む。
「ふく!?大丈夫!?」
「だ、大丈夫じゃ……!少し目眩がしただけじゃ……!」
ふくの症状は魔力切れに近いもので、【梓弓】は非常に魔力を消費する神器であったようだ。
ふくは目眩に耐えながら、神器【梓弓】を作り上げた。
(……なんて魔力の量じゃ……!あとは……三つの魔法を乗せてやらねば……!まずは【浄化】を乗せる……。清光とはなんじゃ……【光】の魔法は【火】【風】【凝縮】の三つを合わせた魔法……だったはずじゃ……)
ふくは【凝縮】の魔法の塊の中に【火】【風】の魔法を練り込んでいく。
火の魔法一つに対し三つの風の魔法を合わせることで【灼熱】に近いモノとなる。
それを凝縮することで温度がとてつもなく高い塊になり【光】の魔法となって光を発するようになる。
それと聖なる力が必要なのだが、ふくにはそれがわからない。
「まずは、元となる魔法を乗せる……。次は聖なる力じゃ……!」
ふくは矢に【浄化】【光】【火】を乗せて、最後の仕上げである『聖なる力』が何なのか考えるのであった。
「七本しかないのじゃ。どうしようもないのじゃ……とりあえず、【清光】と【聖火】を扱えるようになるにはどうすればよいのじゃ?」
【魔法大全】の本の白いページにどんどん追加で記入されていく。
元々なかった魔法だったようで非常に時間のかかるものだった。
書き終わったのか白いページだったところが他のページと同じような紙の色に変わる。
「【清光】……【光】の魔法に聖なる力を付与したもの。闇や悪しきものの動きを止めることができる。【聖火】、【火】の元素魔法に聖なる力を付与した魔法。悪意や憎悪に対し聖なる炎で消滅させる。……恐らくじゃが、かなり難しい魔法ではないかの……。」
ふくは【魔法大全】を本棚に戻し、元の世界に戻ろうとした瞬間、種族について書かれた本が目の前を塞ぐ。
「お前には用はないのじゃ。……本棚に戻さなかったから怒っておるのかの?」
ふくは首を傾げ、本を手に取ると本は突然輝きだした。
強い光に目を細めていると、何やらヒトの影が現れる。
驚き、光に耐えながら直視をすると、そこには尾が九本の狐が立っていた。
「お主は誰じゃ……!?」
「我はお前の魔法の書庫そのもの」
「魔法がわしに何の用じゃ?早く帰らねばぼるふが待っておるのじゃ」
「……妖狐に伝わる魔法を伝えに来た」
九本の尾をもつ狐には悪意は感じられず、それどころか感情を読み取ることもできなかった。
それでもふくは、新たな力を身に着けられると聞き、話を聞く態勢になる。
「狐は元来稲荷という名で神の使いをしている。そして、神の使いをしているということは【神器】を扱うことができる。神とヒトの力を持つ者よ。この世界は非常に危険なものに晒されている。どうか【神器】を使いこなし、狼の作った世界を守ってほしい」
「なぜお前が守りに行かぬのじゃ?」
「我はこの世界を守るために地上とこの世界に隔たりを作る魔法と成った。よって我はそこより離れることができない」
「魔法に……なった……!?そのようなことは可能なのか!?」
「神となった者のみできる。狼の神も半分そうなっている」
「【太陽】……じゃな?」
狐は頷く。
ふくは覚悟を決めたような表情をし、腕を組んで狐をまっすぐ見つめる。
「……まあよい。【神器】とやらの使い方を教えるのじゃ」
「両端と真ん中の指を立て、残りの指は曲げる。そして、その指に沿って魔力を流し、弓と矢を魔力で作るのだ」
ふくは言われるように手の形を作ってみる。
ふくたちの指の数は四本しか存在せず、人間の五本指でいうと小指が欠落している形である。
したがって、中指だけ曲げて弓矢のような形にする。
親指と薬指に魔力を流し、魔力で弓を作る。
そして人差し指に魔力を流し、矢を作る。
狐が安心したような表情を浮かべたため、うまく作ることができたようで、ふくも安心する。
「それが【梓弓】だ。今のお主では一度だけ矢を放つことができるだろう。それだけの魔力を要するから細心の注意を払うことだ」
それを聞き、余程威力が大きいものだと理解したふくはゆっくりと【神器】をしまい込む。
狐の姿が段々と朧気になり、最後に一言だけ告げた。
「その矢には魔法を乗せることができる。よく考えて使うことだ」
狐は白い靄となって消えていった。
少し消えていく姿を見てふくは目をゆっくりと閉じる。
「偉そうな魔法なのじゃ」
§
ふくが目を開けると、ヴォルフは息を切らしながらもどす黒い靄とドロドロを【絶対】の魔法で動きを封じていた。
「おかえり、ふく。何かいいこと分かったの?」
「うむ。一度限りしか使えぬ強い魔法なのじゃが、時間は稼げるじゃろうか……?」
「……できるよ。残りの魔力を使えば三秒くらいはアイツも一緒に閉じ込められるかも……!」
「ぼるふ……お前が眠ってしまうのではないのか?」
「……きっとそうなると思う」
「それは許さぬ。二度とわしを一人にするでない。わしが魔法を早く組み上げるだけじゃ」
どうやらふくは以前一人にしたことを根に持っていたようで、ヴォルフが眠りにつくことを許さなかった。
ふくはヴォルフの背に乗ったまま【梓弓】の構えを取る。
ふくの行動を尻目にヴォルフも魔法の展開を早める。
【暗黒】の魔法は動きを少しだけ止められるが、すぐに侵食され、【絶対】の魔法が破られる。
何度も繰り返し、侵食を遅めることしかできなかった。
しかしそれで良い。
【それ】が少しでも【暗黒】の魔法に緩みを生まれさせるとヴォルフの【絶対】がすぐさま襲いかかるため、【暗黒】を使い続けさせることで他の選択肢を与えさせない仕事ができている。
ふくは魔力を昂らせ、弓の形に魔力を集めていく。
書庫の時の半分ほど作り上げると、ふくの目の前が一瞬だけ暗くなり、ヴォルフの上に倒れ込む。
「ふく!?大丈夫!?」
「だ、大丈夫じゃ……!少し目眩がしただけじゃ……!」
ふくの症状は魔力切れに近いもので、【梓弓】は非常に魔力を消費する神器であったようだ。
ふくは目眩に耐えながら、神器【梓弓】を作り上げた。
(……なんて魔力の量じゃ……!あとは……三つの魔法を乗せてやらねば……!まずは【浄化】を乗せる……。清光とはなんじゃ……【光】の魔法は【火】【風】【凝縮】の三つを合わせた魔法……だったはずじゃ……)
ふくは【凝縮】の魔法の塊の中に【火】【風】の魔法を練り込んでいく。
火の魔法一つに対し三つの風の魔法を合わせることで【灼熱】に近いモノとなる。
それを凝縮することで温度がとてつもなく高い塊になり【光】の魔法となって光を発するようになる。
それと聖なる力が必要なのだが、ふくにはそれがわからない。
「まずは、元となる魔法を乗せる……。次は聖なる力じゃ……!」
ふくは矢に【浄化】【光】【火】を乗せて、最後の仕上げである『聖なる力』が何なのか考えるのであった。
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