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魔物とは違う雰囲気なのじゃ
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「ふん、おしゃべりが多すぎるのじゃ」
氷像と化した【それ】を睨みつけて指摘する。
キツネのような手の形を取り、狙いを定め、魔力を昂らせる。
「終わ――」
「ふく伏せて!!」
ふくは突然ヴォルフの尻尾で無理やり伏せられる。
伏せる前のふくの頭部辺りに黒色の光の柱が横切った。
その威力は単純な爆発などのわかりやすいモノではなく、触れた箇所が音も無く、消滅していた。
そして、ふくは非常に苦い表情を浮かべる。
「ぼるふよ。彼奴の魔法、わしの魔力を喰いおった……!」
「……【闇】の魔法か……!あれは面倒だ……。それに、オレの【絶対】を解除できるやつなんて、神の力を持ったやつしかありえないし……」
「……ならば、わしらは本気で彼奴と対峙せねばならぬ、と言う事じゃな?」
「いや~結構ヤバい攻撃してくるもんだね!同じ失敗作と思えない力だよ」
パチパチと拍手をしながら歩いてくる【それ】はヴォルフの【絶対】による停止を受けても何もなかったように振る舞う。
ふくは右の掌を頭上に掲げ、振り下ろす。
左手には石が握られており、石は控えめな光を放っていた。
【それ】に対して強大な重力が降りかかり、グシャという音を立てて地面に穴が空き、地の底へ引き摺り込んでいった。
「偉そうで不愉快なのじゃ。とっとと去ぬるがよい」
腕を組み、不満そうに鼻息を鳴らすと穴から黒い光が立ち上がる。
そして、ふわりと【それ】は穴から浮かび上がる。
その瞬間、ふくは指をパチンと鳴らし、【それ】の身体を粉々に砕いた。
「うわぁ……バラバラだ」
「これぐらいやらねば、死なんじゃろうて。それに、まだ魔障石が残っておるじゃろう。あれを破壊せぬとこの地はいよいよ使い物にならなくなってしまう。【浄化】で最小限に食い止めるから、ぼるふはわしを護るのじゃ」
「う――まだだ……!アイツ……再生するぞ……!」
ふくが魔障石に視線を戻すと散らばった肉片はそのまま消滅し、魔障石から新たな肉体が生まれる。
見た目はほとんど変わらないが、見下したような視線で【それ】は睨みつけてきた。
「失敗作風情がここまでやるとはね……。ならば、これはどうだ!」
どす黒く、ドロドロしたモノが波のようにふくたちを襲う。
「『浄化の光よ、我に仇なすものを清き光で打ち払え!』」
【浄化】の光が爆散し、ドロドロを【それ】に向かって押し返し、光と共に吹き飛ばした。
ドロドロはどす黒い靄と同じく大地を蝕む力があるようで、採掘場の地面が三分の一程黒く染まっていた。
「むう……厄介じゃ。彼奴の魔法は大地を駄目にするのじゃ。このままではどうしようもなくなってしまうのじゃ……」
「……【闇】の魔法はあんな土地を腐らせるような効果はあったか……?使うやつが少なすぎて覚えてないな……」
「さっきから君たちは何を言っているんだい?ボクのチカラは【暗黒】のチカラだよ?【闇】なんて生ぬるいモノと一緒にされては困るね」
ふくは【それ】の言うことに気がつき、目をギュッと閉じた。
§
目を開けた先には大きな本棚が現れる。
ふくは書庫に行き、魔法を調べに来た。
「【暗黒】とやらの魔法を教えるのじゃ!」
今までどす黒い靄としか言い表せずにいたふくは【暗黒】の魔法に辿り着くことができなかった。
そのため、何度か調べようとしても明確な答えは返ってこなかった。
ふくの魔法はなんでも知ることができるが、『知りたいものを明確に指示しなければ答えを知ることが出来ない』と言う制約に辿り着いた。
そして、魔法の基本である詠唱。
詠唱とは『魔法に目的を与える』と言うことを思い出し、書庫の魔法で物事を知るのは詠唱の一部ではないのかと結論付けていた。
そして、【暗黒】について知りたいと指示を与える。
書庫の魔法はそれに応えるように一冊の本を落とす。
それを拾い、ページを捲る。
「【暗黒】。全てを破壊し、二度と使わせない状態へ変える魔法。使用者の負の感情やその地に眠る怨念を利用して発動する。ふむ……魔障石の靄と同じものじゃな。では、この魔法に対抗できる魔法を教えるのじゃ!」
ふくの声が書庫に響き渡るとページが捲られていく。
自動的に開かれていく本が示したものは空白が目立つページだった。
「なんじゃ、やけに白いの。どれどれ……【浄化】【清光】【聖火】の三つを組み合わせることで発動できる魔法。【浄化】は知っておるが、他はなんじゃ?」
ふくがそう呟くと白いページにどんどん書き記されていく。
そして、もう一冊本がドサッと落ちてくる。
それは種族について書かれた本であり、なぜそれが落ちてきたのか不明だったが、ふくはとりあえず見ることにする。
「妖狐の項目じゃな……以前見た時には大したことは書かれとらんかった気がしたのじゃが……。三本以上の尾をもつのは知っておる。尾が増えるごとに使える魔法が増え、八本以上の尾になると三つ以上の複合魔法を扱うことができるようになる。九本の尾になると神のごとき力を扱うことができるようになるといわれる。……わしは七本しか生えとらぬ。どうすればよいのじゃ……」
足りないものが多く、ふくは頭を抱えて悩むことになったのだった。
氷像と化した【それ】を睨みつけて指摘する。
キツネのような手の形を取り、狙いを定め、魔力を昂らせる。
「終わ――」
「ふく伏せて!!」
ふくは突然ヴォルフの尻尾で無理やり伏せられる。
伏せる前のふくの頭部辺りに黒色の光の柱が横切った。
その威力は単純な爆発などのわかりやすいモノではなく、触れた箇所が音も無く、消滅していた。
そして、ふくは非常に苦い表情を浮かべる。
「ぼるふよ。彼奴の魔法、わしの魔力を喰いおった……!」
「……【闇】の魔法か……!あれは面倒だ……。それに、オレの【絶対】を解除できるやつなんて、神の力を持ったやつしかありえないし……」
「……ならば、わしらは本気で彼奴と対峙せねばならぬ、と言う事じゃな?」
「いや~結構ヤバい攻撃してくるもんだね!同じ失敗作と思えない力だよ」
パチパチと拍手をしながら歩いてくる【それ】はヴォルフの【絶対】による停止を受けても何もなかったように振る舞う。
ふくは右の掌を頭上に掲げ、振り下ろす。
左手には石が握られており、石は控えめな光を放っていた。
【それ】に対して強大な重力が降りかかり、グシャという音を立てて地面に穴が空き、地の底へ引き摺り込んでいった。
「偉そうで不愉快なのじゃ。とっとと去ぬるがよい」
腕を組み、不満そうに鼻息を鳴らすと穴から黒い光が立ち上がる。
そして、ふわりと【それ】は穴から浮かび上がる。
その瞬間、ふくは指をパチンと鳴らし、【それ】の身体を粉々に砕いた。
「うわぁ……バラバラだ」
「これぐらいやらねば、死なんじゃろうて。それに、まだ魔障石が残っておるじゃろう。あれを破壊せぬとこの地はいよいよ使い物にならなくなってしまう。【浄化】で最小限に食い止めるから、ぼるふはわしを護るのじゃ」
「う――まだだ……!アイツ……再生するぞ……!」
ふくが魔障石に視線を戻すと散らばった肉片はそのまま消滅し、魔障石から新たな肉体が生まれる。
見た目はほとんど変わらないが、見下したような視線で【それ】は睨みつけてきた。
「失敗作風情がここまでやるとはね……。ならば、これはどうだ!」
どす黒く、ドロドロしたモノが波のようにふくたちを襲う。
「『浄化の光よ、我に仇なすものを清き光で打ち払え!』」
【浄化】の光が爆散し、ドロドロを【それ】に向かって押し返し、光と共に吹き飛ばした。
ドロドロはどす黒い靄と同じく大地を蝕む力があるようで、採掘場の地面が三分の一程黒く染まっていた。
「むう……厄介じゃ。彼奴の魔法は大地を駄目にするのじゃ。このままではどうしようもなくなってしまうのじゃ……」
「……【闇】の魔法はあんな土地を腐らせるような効果はあったか……?使うやつが少なすぎて覚えてないな……」
「さっきから君たちは何を言っているんだい?ボクのチカラは【暗黒】のチカラだよ?【闇】なんて生ぬるいモノと一緒にされては困るね」
ふくは【それ】の言うことに気がつき、目をギュッと閉じた。
§
目を開けた先には大きな本棚が現れる。
ふくは書庫に行き、魔法を調べに来た。
「【暗黒】とやらの魔法を教えるのじゃ!」
今までどす黒い靄としか言い表せずにいたふくは【暗黒】の魔法に辿り着くことができなかった。
そのため、何度か調べようとしても明確な答えは返ってこなかった。
ふくの魔法はなんでも知ることができるが、『知りたいものを明確に指示しなければ答えを知ることが出来ない』と言う制約に辿り着いた。
そして、魔法の基本である詠唱。
詠唱とは『魔法に目的を与える』と言うことを思い出し、書庫の魔法で物事を知るのは詠唱の一部ではないのかと結論付けていた。
そして、【暗黒】について知りたいと指示を与える。
書庫の魔法はそれに応えるように一冊の本を落とす。
それを拾い、ページを捲る。
「【暗黒】。全てを破壊し、二度と使わせない状態へ変える魔法。使用者の負の感情やその地に眠る怨念を利用して発動する。ふむ……魔障石の靄と同じものじゃな。では、この魔法に対抗できる魔法を教えるのじゃ!」
ふくの声が書庫に響き渡るとページが捲られていく。
自動的に開かれていく本が示したものは空白が目立つページだった。
「なんじゃ、やけに白いの。どれどれ……【浄化】【清光】【聖火】の三つを組み合わせることで発動できる魔法。【浄化】は知っておるが、他はなんじゃ?」
ふくがそう呟くと白いページにどんどん書き記されていく。
そして、もう一冊本がドサッと落ちてくる。
それは種族について書かれた本であり、なぜそれが落ちてきたのか不明だったが、ふくはとりあえず見ることにする。
「妖狐の項目じゃな……以前見た時には大したことは書かれとらんかった気がしたのじゃが……。三本以上の尾をもつのは知っておる。尾が増えるごとに使える魔法が増え、八本以上の尾になると三つ以上の複合魔法を扱うことができるようになる。九本の尾になると神のごとき力を扱うことができるようになるといわれる。……わしは七本しか生えとらぬ。どうすればよいのじゃ……」
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