81 / 108
魔物とは違う雰囲気なのじゃ
しおりを挟む
「ふん、おしゃべりが多すぎるのじゃ」
氷像と化した【それ】を睨みつけて指摘する。
キツネのような手の形を取り、狙いを定め、魔力を昂らせる。
「終わ――」
「ふく伏せて!!」
ふくは突然ヴォルフの尻尾で無理やり伏せられる。
伏せる前のふくの頭部辺りに黒色の光の柱が横切った。
その威力は単純な爆発などのわかりやすいモノではなく、触れた箇所が音も無く、消滅していた。
そして、ふくは非常に苦い表情を浮かべる。
「ぼるふよ。彼奴の魔法、わしの魔力を喰いおった……!」
「……【闇】の魔法か……!あれは面倒だ……。それに、オレの【絶対】を解除できるやつなんて、神の力を持ったやつしかありえないし……」
「……ならば、わしらは本気で彼奴と対峙せねばならぬ、と言う事じゃな?」
「いや~結構ヤバい攻撃してくるもんだね!同じ失敗作と思えない力だよ」
パチパチと拍手をしながら歩いてくる【それ】はヴォルフの【絶対】による停止を受けても何もなかったように振る舞う。
ふくは右の掌を頭上に掲げ、振り下ろす。
左手には石が握られており、石は控えめな光を放っていた。
【それ】に対して強大な重力が降りかかり、グシャという音を立てて地面に穴が空き、地の底へ引き摺り込んでいった。
「偉そうで不愉快なのじゃ。とっとと去ぬるがよい」
腕を組み、不満そうに鼻息を鳴らすと穴から黒い光が立ち上がる。
そして、ふわりと【それ】は穴から浮かび上がる。
その瞬間、ふくは指をパチンと鳴らし、【それ】の身体を粉々に砕いた。
「うわぁ……バラバラだ」
「これぐらいやらねば、死なんじゃろうて。それに、まだ魔障石が残っておるじゃろう。あれを破壊せぬとこの地はいよいよ使い物にならなくなってしまう。【浄化】で最小限に食い止めるから、ぼるふはわしを護るのじゃ」
「う――まだだ……!アイツ……再生するぞ……!」
ふくが魔障石に視線を戻すと散らばった肉片はそのまま消滅し、魔障石から新たな肉体が生まれる。
見た目はほとんど変わらないが、見下したような視線で【それ】は睨みつけてきた。
「失敗作風情がここまでやるとはね……。ならば、これはどうだ!」
どす黒く、ドロドロしたモノが波のようにふくたちを襲う。
「『浄化の光よ、我に仇なすものを清き光で打ち払え!』」
【浄化】の光が爆散し、ドロドロを【それ】に向かって押し返し、光と共に吹き飛ばした。
ドロドロはどす黒い靄と同じく大地を蝕む力があるようで、採掘場の地面が三分の一程黒く染まっていた。
「むう……厄介じゃ。彼奴の魔法は大地を駄目にするのじゃ。このままではどうしようもなくなってしまうのじゃ……」
「……【闇】の魔法はあんな土地を腐らせるような効果はあったか……?使うやつが少なすぎて覚えてないな……」
「さっきから君たちは何を言っているんだい?ボクのチカラは【暗黒】のチカラだよ?【闇】なんて生ぬるいモノと一緒にされては困るね」
ふくは【それ】の言うことに気がつき、目をギュッと閉じた。
§
目を開けた先には大きな本棚が現れる。
ふくは書庫に行き、魔法を調べに来た。
「【暗黒】とやらの魔法を教えるのじゃ!」
今までどす黒い靄としか言い表せずにいたふくは【暗黒】の魔法に辿り着くことができなかった。
そのため、何度か調べようとしても明確な答えは返ってこなかった。
ふくの魔法はなんでも知ることができるが、『知りたいものを明確に指示しなければ答えを知ることが出来ない』と言う制約に辿り着いた。
そして、魔法の基本である詠唱。
詠唱とは『魔法に目的を与える』と言うことを思い出し、書庫の魔法で物事を知るのは詠唱の一部ではないのかと結論付けていた。
そして、【暗黒】について知りたいと指示を与える。
書庫の魔法はそれに応えるように一冊の本を落とす。
それを拾い、ページを捲る。
「【暗黒】。全てを破壊し、二度と使わせない状態へ変える魔法。使用者の負の感情やその地に眠る怨念を利用して発動する。ふむ……魔障石の靄と同じものじゃな。では、この魔法に対抗できる魔法を教えるのじゃ!」
ふくの声が書庫に響き渡るとページが捲られていく。
自動的に開かれていく本が示したものは空白が目立つページだった。
「なんじゃ、やけに白いの。どれどれ……【浄化】【清光】【聖火】の三つを組み合わせることで発動できる魔法。【浄化】は知っておるが、他はなんじゃ?」
ふくがそう呟くと白いページにどんどん書き記されていく。
そして、もう一冊本がドサッと落ちてくる。
それは種族について書かれた本であり、なぜそれが落ちてきたのか不明だったが、ふくはとりあえず見ることにする。
「妖狐の項目じゃな……以前見た時には大したことは書かれとらんかった気がしたのじゃが……。三本以上の尾をもつのは知っておる。尾が増えるごとに使える魔法が増え、八本以上の尾になると三つ以上の複合魔法を扱うことができるようになる。九本の尾になると神のごとき力を扱うことができるようになるといわれる。……わしは七本しか生えとらぬ。どうすればよいのじゃ……」
足りないものが多く、ふくは頭を抱えて悩むことになったのだった。
氷像と化した【それ】を睨みつけて指摘する。
キツネのような手の形を取り、狙いを定め、魔力を昂らせる。
「終わ――」
「ふく伏せて!!」
ふくは突然ヴォルフの尻尾で無理やり伏せられる。
伏せる前のふくの頭部辺りに黒色の光の柱が横切った。
その威力は単純な爆発などのわかりやすいモノではなく、触れた箇所が音も無く、消滅していた。
そして、ふくは非常に苦い表情を浮かべる。
「ぼるふよ。彼奴の魔法、わしの魔力を喰いおった……!」
「……【闇】の魔法か……!あれは面倒だ……。それに、オレの【絶対】を解除できるやつなんて、神の力を持ったやつしかありえないし……」
「……ならば、わしらは本気で彼奴と対峙せねばならぬ、と言う事じゃな?」
「いや~結構ヤバい攻撃してくるもんだね!同じ失敗作と思えない力だよ」
パチパチと拍手をしながら歩いてくる【それ】はヴォルフの【絶対】による停止を受けても何もなかったように振る舞う。
ふくは右の掌を頭上に掲げ、振り下ろす。
左手には石が握られており、石は控えめな光を放っていた。
【それ】に対して強大な重力が降りかかり、グシャという音を立てて地面に穴が空き、地の底へ引き摺り込んでいった。
「偉そうで不愉快なのじゃ。とっとと去ぬるがよい」
腕を組み、不満そうに鼻息を鳴らすと穴から黒い光が立ち上がる。
そして、ふわりと【それ】は穴から浮かび上がる。
その瞬間、ふくは指をパチンと鳴らし、【それ】の身体を粉々に砕いた。
「うわぁ……バラバラだ」
「これぐらいやらねば、死なんじゃろうて。それに、まだ魔障石が残っておるじゃろう。あれを破壊せぬとこの地はいよいよ使い物にならなくなってしまう。【浄化】で最小限に食い止めるから、ぼるふはわしを護るのじゃ」
「う――まだだ……!アイツ……再生するぞ……!」
ふくが魔障石に視線を戻すと散らばった肉片はそのまま消滅し、魔障石から新たな肉体が生まれる。
見た目はほとんど変わらないが、見下したような視線で【それ】は睨みつけてきた。
「失敗作風情がここまでやるとはね……。ならば、これはどうだ!」
どす黒く、ドロドロしたモノが波のようにふくたちを襲う。
「『浄化の光よ、我に仇なすものを清き光で打ち払え!』」
【浄化】の光が爆散し、ドロドロを【それ】に向かって押し返し、光と共に吹き飛ばした。
ドロドロはどす黒い靄と同じく大地を蝕む力があるようで、採掘場の地面が三分の一程黒く染まっていた。
「むう……厄介じゃ。彼奴の魔法は大地を駄目にするのじゃ。このままではどうしようもなくなってしまうのじゃ……」
「……【闇】の魔法はあんな土地を腐らせるような効果はあったか……?使うやつが少なすぎて覚えてないな……」
「さっきから君たちは何を言っているんだい?ボクのチカラは【暗黒】のチカラだよ?【闇】なんて生ぬるいモノと一緒にされては困るね」
ふくは【それ】の言うことに気がつき、目をギュッと閉じた。
§
目を開けた先には大きな本棚が現れる。
ふくは書庫に行き、魔法を調べに来た。
「【暗黒】とやらの魔法を教えるのじゃ!」
今までどす黒い靄としか言い表せずにいたふくは【暗黒】の魔法に辿り着くことができなかった。
そのため、何度か調べようとしても明確な答えは返ってこなかった。
ふくの魔法はなんでも知ることができるが、『知りたいものを明確に指示しなければ答えを知ることが出来ない』と言う制約に辿り着いた。
そして、魔法の基本である詠唱。
詠唱とは『魔法に目的を与える』と言うことを思い出し、書庫の魔法で物事を知るのは詠唱の一部ではないのかと結論付けていた。
そして、【暗黒】について知りたいと指示を与える。
書庫の魔法はそれに応えるように一冊の本を落とす。
それを拾い、ページを捲る。
「【暗黒】。全てを破壊し、二度と使わせない状態へ変える魔法。使用者の負の感情やその地に眠る怨念を利用して発動する。ふむ……魔障石の靄と同じものじゃな。では、この魔法に対抗できる魔法を教えるのじゃ!」
ふくの声が書庫に響き渡るとページが捲られていく。
自動的に開かれていく本が示したものは空白が目立つページだった。
「なんじゃ、やけに白いの。どれどれ……【浄化】【清光】【聖火】の三つを組み合わせることで発動できる魔法。【浄化】は知っておるが、他はなんじゃ?」
ふくがそう呟くと白いページにどんどん書き記されていく。
そして、もう一冊本がドサッと落ちてくる。
それは種族について書かれた本であり、なぜそれが落ちてきたのか不明だったが、ふくはとりあえず見ることにする。
「妖狐の項目じゃな……以前見た時には大したことは書かれとらんかった気がしたのじゃが……。三本以上の尾をもつのは知っておる。尾が増えるごとに使える魔法が増え、八本以上の尾になると三つ以上の複合魔法を扱うことができるようになる。九本の尾になると神のごとき力を扱うことができるようになるといわれる。……わしは七本しか生えとらぬ。どうすればよいのじゃ……」
足りないものが多く、ふくは頭を抱えて悩むことになったのだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
アラヒフおばさんのゆるゆる異世界生活
ゼウママ
ファンタジー
50歳目前、突然異世界生活が始まる事に。原因は良く聞く神様のミス。私の身にこんな事が起こるなんて…。
「ごめんなさい!もう戻る事も出来ないから、この世界で楽しく過ごして下さい。」と、言われたのでゆっくり生活をする事にした。
現役看護婦の私のゆっくりとしたどたばた異世界生活が始まった。
ゆっくり更新です。はじめての投稿です。
誤字、脱字等有りましたらご指摘下さい。
最強の獣人傭兵は、子供を拾って聖女になって。〜終戦で暇になった、その先の物語〜
べあうるふ
ファンタジー
※同様の作品を小説家になろうにも載せております。
この世界には二つの種族がいる。
一つは人間。そしてもうひとつは獣人。
兄弟王のいさかいをきっかけに始まった百年戦争、その只中に生を受けた獣人、ラッシュ。
傭兵としてひたすら戦い続けてきた彼に突如として訪れた、親代わりだったギルド長の死、そして終戦。
自由という文字すら学んでいなかった彼の元に現れたのは、人間の子供だった。
ここから始まる、傭兵獣人のもうひとつの物語。
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐@書籍発売中
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
スポーツクラブに魔王討伐コースがあったのでダイエット目的で入会してみた
堀 和三盆
ファンタジー
大学入学後。一人暮らしを始めてすぐにゲームにはまってしまい、大学以外は家に引きこもるようになった。そして、あっという間に100キロ超え。もともと少しぽっちゃりはしていたが、ここまでくると動くのもつらい。さすがにこのままじゃまずいと、なけなしの生活費を削ってスポーツクラブに通うことにした。そこで見つけたのが……。
「『魔王討伐コース』……?」
異世界で魔物を倒しながらの運動らしい。最初は弱い魔物から。徐々に強い魔物へとランクを上げていき、最終的に魔王討伐を目指すそうだ。なるほど。あれほどハマったRPGゲームと似たような状況での運動なら、飽きっぽい俺でも続けられるかもしれない。
よし、始めよう! 魔王討伐ダイエット!
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる