80 / 108
炭鉱の中に入っていくのじゃ
しおりを挟む
南の地域に到着したふくとヴォルフ。
ここはかつて鳥人族が統治していた場所であり、大地の至る所が黒く蝕まれていた。
魔物のコアである魔障石から出たどす黒い靄に大地が侵された証でもあり、至る所に生活があった痕跡が残っていた。
「こりゃ酷いな……」
「うむ、セイラのいた地域であるのは間違いないであろう。ライラとガルドを連れてくるべきじゃったか……?いや、国の守りの要として置いておく必要があるしの……困った物じゃ」
「ふくの使う元素魔法は何故か吸収されないしな。どうする?逃げに徹するか?」
「あり得ぬの。わしは魔物のを倒し、民を……お前の作った世界を守る役目があるのじゃ。最近はそのために来たのではないかと思うておる。玉藻が生きられなかった分、わしが……」
「……そうだね。それに、もしかしたらアイツらが【太陽】を強くしたら、魔物に対して何かチカラを手にするかもしれないし、頑張ろっか!」
元気付けようと気を遣うヴォルフに微笑み、頭を撫で、首周りのもふもふに顔を埋める。
「ありがとう、大好きじゃ……」
ふくはヴォルフに聴こえないような声で呟いた。
それはヴォルフの耳にはしっかりと届いており、聴こえないように呟いたことにも気付いており、あえて表情や仕草に出さないようにしたのであった。
しばらく歩いて探索していると洞窟を発見する二人。
看板のようなものが建てられてあり、それには文字が描いてあった。
「なんじゃ?この言葉は……?」
「……炭鉱らしいよ?」
「ぼるふは分かるのかの?」
「多少は。でも、文字を扱うのは稀な種族だよ。もしかしたらふくや犬っころ、ニャンコ、ツノマルみたいにこの世界に落とされたニンゲンがいるかもしれないね」
「……綱彦じゃ。まあ、死んだやつは良い……。そうか……別にわしらだけの特別なものではないじゃろうの」
「ふくは特別だよ?」
ヴォルフがふくのことを特別扱いすることに疑問に思い、首を傾げる。
「この世界に来たニンゲンはこの世界のものを食べると獣人になるんだ。えっと、草を食べたら草食動物になるし、肉を食べたら肉食動物になる……みたいな?」
「……なんじゃそれは。……キノコを食べたらどうなるのじゃ?」
「キノコ……?うーん……鹿?多分なんでも食べられるやつになるんじゃないの?」
ふくはそれを聴き、安心すると共にもう一つの疑問を思い浮かべた。
「わしはこの世界で初めて口にしたのは水じゃが……これは食べ物ではないから変化しなかったのかの?」
「きっとそうだろうね。ふくと出会った時はまだニンゲンだったし、最初に食べたのはオレの血だよ。だから、神に近い存在になったんだと思う」
「ぼるふの血が最初の食事となったのか……。まあ良い、お前とこうして二人で歩けるのじゃ。感謝しておるぞ?」
「えへへ……嬉しいや」
「……なんじゃ、気持ち悪い笑いをしおって」
「えぇ……!?」
ふくはヴォルフの頬に軽く口付けをする。
突然のことでボーっとしていると先を歩いていたふくが振り返る。
「何をしておる。早く行くのじゃ」
「ま、待ってよ!」
先々進むふくの後を走って追いかけるヴォルフ。
彼の速さなら直ぐに追いつくので問題はなかった。
坑道のなかは非常に暗くふくの目をもってしても視認することが不可能であった。
「『光よ、周りを照らせ』」
ふくが詠唱をすると坑道の中に配置された石が光り始めた。
自分の周りだけを明るくする予定だったが、突然石が共鳴したことで戸惑っていると、ヴォルフがふくの手を握る。
「大丈夫。これは魔道具だよ。【光】の魔法や【光源】の魔法で反応する種類のものだと思う。鳥人族はこんなものまで作っていたのか……」
「奴らは鳥目じゃろ?鳥は闇を見ることができぬと聞いたことがあるのじゃ」
「あれはね、ニワトリ位だけだよ。他の鳥は多少苦手意識はあるけど夜に飛ぶことができる。ニワトリは夜は見えないから眠るだけなんだよ。夜中にハトが鳴いたりするでしょ?」
「そ、そうじゃったのか……!?」
ふくが驚くとヴォルフは頷き、鳥人族は夜でも動くことができる種族であることを同時に分からせられる。
明るくなった坑道を見渡すと、どす黒い靄の影響が及んでおり、設備は殆ど朽ちて使えなくなっていた。
光を放つ魔道具も所々侵食されドロドロに溶けた跡があり、それは使い物にならないものになっている。
坑道を進んでいき、広い場所に出てくる。
それまでの坑道のような風景とは違い遺跡のような広大な採掘場であった。
やはりと言うべきか、どす黒い靄は採掘場にも侵食は進んでおり、靄も釜場に溜まっており、侵入することを拒んでいるようだった。
「『浄化の光よ、悪き塊を打ち払え』」
ふくは豆粒のような光を採掘場に投げ入れ、爆散させる。
全ての靄は浄化の光に打ち払われ消滅すると、漸く採掘場に入ることができるようになり、ヴォルフに跨る。
「さあ、ミスリルを手に入れてとっとと戻るのじゃ!」
「ミスリルってこれの事かい?」
「「!!?」」
穴の底から声がし、二人は臨戦態勢をとる。
カツカツとした音が採掘場の壁を反響し、ふくはゴクリと唾を飲み込む。
「返事もしてくれないのか……。さっきの光は凄かったね。ボクらの成功者、【新人類】が作った黒い靄を簡単に打ち消すとは……。キミたちは一体何者?」
「……お前こそ何者じゃ?わしらの国に何の用じゃ!」
「おおっ!絶滅危惧種の言葉『~じゃ』だ!ボクらのいた時代には、もう聴くことができないからね。感動モノだよ!」
一人で盛り上がっている【それ】を他所に、ヴォルフは絶対零度の冷気で採掘場ごと、凍らせる。
恐るべき速さで凍らせ、一瞬でも魔力による防御が遅ければふくでも凍る程の攻撃だった。
ここはかつて鳥人族が統治していた場所であり、大地の至る所が黒く蝕まれていた。
魔物のコアである魔障石から出たどす黒い靄に大地が侵された証でもあり、至る所に生活があった痕跡が残っていた。
「こりゃ酷いな……」
「うむ、セイラのいた地域であるのは間違いないであろう。ライラとガルドを連れてくるべきじゃったか……?いや、国の守りの要として置いておく必要があるしの……困った物じゃ」
「ふくの使う元素魔法は何故か吸収されないしな。どうする?逃げに徹するか?」
「あり得ぬの。わしは魔物のを倒し、民を……お前の作った世界を守る役目があるのじゃ。最近はそのために来たのではないかと思うておる。玉藻が生きられなかった分、わしが……」
「……そうだね。それに、もしかしたらアイツらが【太陽】を強くしたら、魔物に対して何かチカラを手にするかもしれないし、頑張ろっか!」
元気付けようと気を遣うヴォルフに微笑み、頭を撫で、首周りのもふもふに顔を埋める。
「ありがとう、大好きじゃ……」
ふくはヴォルフに聴こえないような声で呟いた。
それはヴォルフの耳にはしっかりと届いており、聴こえないように呟いたことにも気付いており、あえて表情や仕草に出さないようにしたのであった。
しばらく歩いて探索していると洞窟を発見する二人。
看板のようなものが建てられてあり、それには文字が描いてあった。
「なんじゃ?この言葉は……?」
「……炭鉱らしいよ?」
「ぼるふは分かるのかの?」
「多少は。でも、文字を扱うのは稀な種族だよ。もしかしたらふくや犬っころ、ニャンコ、ツノマルみたいにこの世界に落とされたニンゲンがいるかもしれないね」
「……綱彦じゃ。まあ、死んだやつは良い……。そうか……別にわしらだけの特別なものではないじゃろうの」
「ふくは特別だよ?」
ヴォルフがふくのことを特別扱いすることに疑問に思い、首を傾げる。
「この世界に来たニンゲンはこの世界のものを食べると獣人になるんだ。えっと、草を食べたら草食動物になるし、肉を食べたら肉食動物になる……みたいな?」
「……なんじゃそれは。……キノコを食べたらどうなるのじゃ?」
「キノコ……?うーん……鹿?多分なんでも食べられるやつになるんじゃないの?」
ふくはそれを聴き、安心すると共にもう一つの疑問を思い浮かべた。
「わしはこの世界で初めて口にしたのは水じゃが……これは食べ物ではないから変化しなかったのかの?」
「きっとそうだろうね。ふくと出会った時はまだニンゲンだったし、最初に食べたのはオレの血だよ。だから、神に近い存在になったんだと思う」
「ぼるふの血が最初の食事となったのか……。まあ良い、お前とこうして二人で歩けるのじゃ。感謝しておるぞ?」
「えへへ……嬉しいや」
「……なんじゃ、気持ち悪い笑いをしおって」
「えぇ……!?」
ふくはヴォルフの頬に軽く口付けをする。
突然のことでボーっとしていると先を歩いていたふくが振り返る。
「何をしておる。早く行くのじゃ」
「ま、待ってよ!」
先々進むふくの後を走って追いかけるヴォルフ。
彼の速さなら直ぐに追いつくので問題はなかった。
坑道のなかは非常に暗くふくの目をもってしても視認することが不可能であった。
「『光よ、周りを照らせ』」
ふくが詠唱をすると坑道の中に配置された石が光り始めた。
自分の周りだけを明るくする予定だったが、突然石が共鳴したことで戸惑っていると、ヴォルフがふくの手を握る。
「大丈夫。これは魔道具だよ。【光】の魔法や【光源】の魔法で反応する種類のものだと思う。鳥人族はこんなものまで作っていたのか……」
「奴らは鳥目じゃろ?鳥は闇を見ることができぬと聞いたことがあるのじゃ」
「あれはね、ニワトリ位だけだよ。他の鳥は多少苦手意識はあるけど夜に飛ぶことができる。ニワトリは夜は見えないから眠るだけなんだよ。夜中にハトが鳴いたりするでしょ?」
「そ、そうじゃったのか……!?」
ふくが驚くとヴォルフは頷き、鳥人族は夜でも動くことができる種族であることを同時に分からせられる。
明るくなった坑道を見渡すと、どす黒い靄の影響が及んでおり、設備は殆ど朽ちて使えなくなっていた。
光を放つ魔道具も所々侵食されドロドロに溶けた跡があり、それは使い物にならないものになっている。
坑道を進んでいき、広い場所に出てくる。
それまでの坑道のような風景とは違い遺跡のような広大な採掘場であった。
やはりと言うべきか、どす黒い靄は採掘場にも侵食は進んでおり、靄も釜場に溜まっており、侵入することを拒んでいるようだった。
「『浄化の光よ、悪き塊を打ち払え』」
ふくは豆粒のような光を採掘場に投げ入れ、爆散させる。
全ての靄は浄化の光に打ち払われ消滅すると、漸く採掘場に入ることができるようになり、ヴォルフに跨る。
「さあ、ミスリルを手に入れてとっとと戻るのじゃ!」
「ミスリルってこれの事かい?」
「「!!?」」
穴の底から声がし、二人は臨戦態勢をとる。
カツカツとした音が採掘場の壁を反響し、ふくはゴクリと唾を飲み込む。
「返事もしてくれないのか……。さっきの光は凄かったね。ボクらの成功者、【新人類】が作った黒い靄を簡単に打ち消すとは……。キミたちは一体何者?」
「……お前こそ何者じゃ?わしらの国に何の用じゃ!」
「おおっ!絶滅危惧種の言葉『~じゃ』だ!ボクらのいた時代には、もう聴くことができないからね。感動モノだよ!」
一人で盛り上がっている【それ】を他所に、ヴォルフは絶対零度の冷気で採掘場ごと、凍らせる。
恐るべき速さで凍らせ、一瞬でも魔力による防御が遅ければふくでも凍る程の攻撃だった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セカンドライフは寮母さん 魔王を討伐した冒険者は魔法学園女子寮の管理人になりました
今卓&
ファンタジー
その日、魔法学園女子寮に新しい寮母さんが就任しました、彼女は二人の養女を連れており、学園講師と共に女子寮を訪れます、その日からかしましい新たな女子寮の日常が紡がれ始めました。
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!
最強の獣人傭兵は、子供を拾って聖女になって。〜終戦で暇になった、その先の物語〜
べあうるふ
ファンタジー
※同様の作品を小説家になろうにも載せております。
この世界には二つの種族がいる。
一つは人間。そしてもうひとつは獣人。
兄弟王のいさかいをきっかけに始まった百年戦争、その只中に生を受けた獣人、ラッシュ。
傭兵としてひたすら戦い続けてきた彼に突如として訪れた、親代わりだったギルド長の死、そして終戦。
自由という文字すら学んでいなかった彼の元に現れたのは、人間の子供だった。
ここから始まる、傭兵獣人のもうひとつの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる