キツネの女王

わんころ餅

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地上は大変だったようじゃ

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 ふくは目を輝かせてオクトに迫り、鼻息を荒くする。

「早う、早う続きを話すのじゃ!」

「わ、わかりましたって!おほんっ。【新人類】はふくさんのように金色の瞳と赤い紋様があるのが見た目の特徴です。そして、恐らくですが……あの狼のヒト……、より強いと思います」

「そうじゃろうな」

 二人は眠っているヴォルフを見てお互い共通の認識をする。

「ふくさんは、どうしてそう思ったのでしょうか?」

「単純じゃ。わしらが生まれるうんと前にこの世界に封印されておる。あやつより強いものがおっても不思議ではない。……じゃが、ぼるふは神じゃ。人間ごときがあやつを超えるというならば、わしと同じように神になったということなのじゃろう」

「そういうことなのですね……。オイラは一度だけ【新人類】を見たのですが、魔力?だけでそう判断しました」

「ふむ……。よほど強力な力を持って居るようじゃな。続きはどうなっておるのじゃ?」

 ふくの興味は新人類には向いていなかったようで、本筋を進めることにする。

「俺たち失敗作は完全に獣人化したもの、一部獣人化し人として生きられるものの二種類がいました。どちらも失敗作であることは変わらないのですが……完全に獣人化したものオイラたち八人より遅く作られたヒトと一部だけ獣人化したものにはあるものが体の中に生まれていました。光り輝く力の結晶が……」

「……魔物にも石がおったが、違うのかの?」

「不適合者の石は力にならない程弱いので――」

「噓を言うでない!魔物の持っておった石はわしらの国を、民を、すべてを破壊し、二度と使えぬまで滅ぼすものじゃ!力にならぬわけがなかろう!」

 ふくは魔物の石に力が無いということに怒りを表すが、オクトはわからずにいた。
 
「えっと……オイラのいた世界じゃ、処理が面倒なだけの存在だったし、処理場に放り込まれるだけの存在だったんだ。気を悪くしたのならごめんなさい……」

「……っ。もうよい、続きを話さんか」

 オクトから謝罪され、本当に嘘偽りを言っていないことが態度で分かり、怒りの矛先をどこに向けるべきか悩みつつ、続きを促す。

「……その結晶が新たな燃料となったのです。燃やさず使え、使う人は簡単に使える、そんな便利なものでした。ですが、それはニンゲンの命そのものであり、死ねば消えますが、抜き取れば人は死んで結晶が残ります。日本は大量の被験者を作り、失敗したものと処理したものを処分場という名の【大穴】に放り込んでいきました。オイラもセブも、新人類や実験に反対して捕まって捨てられました。そしたらこの世界に来たんです……これが全てです」

「一つ質問するのじゃ。お前は不適合者とは自然の理から反したものじゃと思うか?」

「……少なくとも、オイラやセブのような獣人、失敗作、不適合者、そして【新人類】は自然の摂理から大きく外れた存在だと認識しています」

「……じゃからわしの魔法でもあいまいな回答しか得られんわけじゃ……。おくとよ、お前は本当の名はあるのかの?」

「それを言うと、ふくさんにもあるわけでしょ?人間のころの名前は今になっても要りますか?」

「むぅ……確かに必要ないものじゃの……。じゃが……」

「オクトは言いにくい、でしょ?」

 ふくは申し訳なさそうに頷く。
 オクトよりも昔から日本を知っている日本人には難しい名前であり、別に言えないわけでもないが、ふくは正しい名前を呼びたかっただけである。
 オクトは腕を組んで少し悩むが、「まあいっか」と言ってふくに体を向ける。

「オイラやセブのことは『わんこ』と『にゃんこ』と呼ぶといいよ」

 あまりにも適当で見た目通りの名前であり、逆にふくは慌てる。

「そ、そんな適当な名前でよいわけがあるものか!もっと良い名があるはずじゃ!」

「えぇ……じゃあ『ポチお』と『にゃん』でいいよ。それなら発音も難しくないでしょ?」

「……わしを馬鹿にしておらんか?もうよい、これからはポチおと呼ぶことにする。それでよいな?」

 オクト、もといポチおは頷いて肯定する。
 終わった瞬間、ヴォルフは「くあぁ……」と大きなあくびをして起きる。

「終わった?」

「聞いておったのか?」

「うん、全部聞いてとりあえず魔物は面倒なのはわかった」

「そんな話はしてはおらぬ。故郷のことが少しでも知ることができて安心したのじゃ。国が滅んでなかっただけでも良い収穫じゃ」

「わんこ、お前はこれからどうするんだ?この世界は魔力だけじゃどうにもならないことばかりだぞ?」

「う~ん……、オイラにできることがあれば少しでも協力させてくれるかな?それについていくってことで」

「だとよ。ふく、どうする?」

 ふくは腕を組んで悩んでいるとライラとガルドも起きていく、そして最後にセブ……にゃんが起き上がる。
 さまざまなヒトから「ぐぅぅぅ」と腹の虫が鳴っていく。
 困ったような表情を浮かべ、腰に手を当ててため息をつく。

「まずは国に帰って腹ごしらえをしてからじゃの……。さあ、帰るのじゃ」

 ふくはヴォルフの背に乗って国のある方角へ歩いていくことになった。
 その間、ポチおとにゃんはヴォルフの氷の手枷によって拘束をされ、国へと連れていかれるのである。
 
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