キツネの女王

わんころ餅

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二人の信用を確かめるのじゃ

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 ふくは腕を組んで考える。
 思いついたように動き出し、ヴォルフを呼ぶ。

「彼奴らを起こして魔物を倒してもらおうとするかの。仲間なら殺さぬじゃろうて」

「……中々酷い事思いつくね。少なくとも、オクトは協力的だったぞ」

「信用ならぬ。『彼の者たちの意識を取り戻せ』」

 ふくは拍手を一回打つと二人は飛び起きる。
 辺りをキョロキョロとしていると、ヴォルフが目の前に座る。

「ふくがお前たちに魔物を倒せと言っているんだ。出来なければ死んでもらう。できるか?」

「……やるしか信じてもらえないようだね……。セブ、やってみようか……!初めて闘うけど!」

「う、うん……!あ、あの~……魔法ってどうやって使うのでしょうか?」

「えっ……?知らないの?これを……こうする。わかった?」

 ヴォルフは実演でその辺りの木片を凍らせる。
 しかし、説明の仕方がなんとも雑であり、オクトとセブは顔を合わせる。

「わかった?」

「わからないよ……」

「わからんの」

「わかるわけないじゃない!」

「……すみません。わかりません……」

 次々と批判の嵐を受けて地面に伏せ、耳を塞ぐ。
 そんな仕草をする狼は到底神様とは思えないものであった。
 ふくはため息を吐き、オクトとセブの前に立つ。

「魔法については後で教えるのじゃ。お前たちはわしらの前に出て、直接魔物と対峙するのじゃ。頃合いを見てわしは魔物に攻撃を仕掛けるから、それまで耐えて見せよ」

「それならできそうだね、セブ」

「う、うん。訓練の時と同じだね……!」

 そう言うと二人は魔物の前に立ち塞がり、魔力を昂らせる。
 魔力の解放ができる時点で魔法を使う素養があると感じていたが、詠唱をする気配もなく、付与魔法をかけた様子もない。
 彼らは非常に戦い方がヴォルフに似ており、持ち前の肉体の強さが魔物を圧倒する。
 セブは魔物の攻撃をしっかり見て躱し、オクトは犬族の勘というべきか、常に急所を狙って回り込んでは牙で攻撃する。
 オクトが魔物の肉を引きちぎると、魔物は緑の体液を撒き散らす。

「ぶぁあっ!?ペッペッ!腐ってる……!?」

「酷いニオイ……!」

「なんじゃ?お前たちは魔物を知らんのか?」

「知らないよ!こんなのオイラたちの世界にはいたけど、直ぐに『処理』されてたから公にならなかった!」

 腐った体と知り、段々と手数が少なくなり、オクトは凄い勢いで攻撃を受け、岩場に叩きつけられる。

「……ッガ!?」

 背中に衝撃を受け、呼吸ができずにもがくオクトを見て、セブは魔力を最大限まで開放させる。
 すると、やはり紋様が浮かび上がり、金色の瞳に変わっていく。

「ウワアァァァァァッ!!」

 鋭い爪で魔物の半身を引き裂き、蹴り飛ばす。
 魔物はゴロゴロと転がり、直ぐに体を再生させて立ち上がる。
 セブは魔力が無くなり、意識が朦朧とする中、魔物は距離を詰め、ヒトの顔をしていたが頰を割いていき大きなアギトでセブを噛みつきに行く。
 その瞬間、魔物は氷像へ変貌する。

「危なかったな。お前たちが食われるってことは魔物じゃないってことだな」
 
「……あ……りが……」

 セブはそのまま意識を失い、倒れる。
 ふくはそれを見届け、衝撃波の魔法で魔物の体を粉々に打ち砕くとライラとガルドが石を砕いた。
 ライラはオクトの様子を見て、ガルドに運ばせる。

「オクト……?わんこくんは取り敢えず身体は大丈夫そうだよ?【治癒】を使うまでないと思う」

「ちっこいのによくあの一撃を耐えたな」

「致命傷にならないように叩きつけられる瞬間に魔力の壁を使って衝撃を軽くしておるのじゃ。良き判断じゃ。それにしても、ぼるふ。魔物は共喰いせぬのか?」

「うん、ふくは覚えてるか分からないけど、千年前の野狐族の村で大量に出た魔物は魔物同士攻撃や捕食はしなかったよ」

「ふむ……ならばそうなのじゃろう……。ぼるふは此奴らの事を今でも信用しておるのか?」

 ヴォルフは頭を下げて「うーん」と考えると首をプルプルと振り、ふくを真っ直ぐ見つめる。

「うん。全部は信じられないけど、話くらいは聴いてもいいんじゃないかな?」

「……そういう事ならお前の言うとおりにしようかの」

「いいの?」

「判断できるものが少ないのじゃ。神として野生の狼としてお前の判断は鈍ってはおらんと思っておるが、違うかの?」

「えへへ……嬉しい……!」

「なんじゃ、気持ち悪い。変な笑いをするでない!」

「えぇ……」

 その間ガルドは気絶した二人を並べてライラと話していた。

「ガルド君?いくらふわふわで見えないからって裸は身ちゃダメ!」

「わ、わかってるよ!」

「ホントかなぁ……?ウチの裸見てみたいと思う?」

「そ、それは……その、見たいかと言われたら……ごにょごにょ……」

 途中から言葉にならない声を発し、ライラはプクーと頰を膨らませる。
 それを見たガルドは、膝をついてライラを抱きしめる。
 そして、耳元で呟くとボンっとライラの何が爆発した。
 ふらふら~と歩き、その場に座り込む。
 このまま探索しようにも半数が戦闘の役に立たないうえ、周囲は暗がりになってしまった為、焚き火に火をつけ直し、野宿の再開をするのであった。
 国から持ち出した干し肉を取り出し、水の魔法で飲み水を作り出して体を休めるのであった。
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