キツネの女王

わんころ餅

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魔物が言葉を使ったのじゃ

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 ふくたち四人は突如現れた二つの魔物に戦闘態勢になる。
 ライラとガルドは魔物から発せられる強大な魔力に気圧され、ジリジリと後ろに下がる。
 今までに会ってきた魔物は確かに強いものだったが、この二つの魔物の実力はそれらを遥かに凌駕していた。

「……っ!?」

「……ら、ライラさん……!私の後ろに……!」

 何一つ表情を変えなかったのはヴォルフとふくだった。
 二人の魔力は魔物の魔力と比べるまでもない差があるあった。
 衝撃波の魔法、【絶対】の魔法はドラゴンですら防ぐ事ができず、魔物もこの力には何もできないためである。
 ゆっくりと歩みを進めていく魔物は驚く事をして一同は凍りつく。

「……えっと~。ここはどこ?」

「し……し……」

「「「「しゃべったーっ!?!!!?!」」」」

 なんと魔物は言葉を発したのだ。
 驚かれている魔物は頭をポリポリと掻き、もう一人の魔物と首を傾げていた。

「ねぇ、キミたちここの住人?凄いっ!モフモフだ!獣人だよ!」

 走ってモフモフしようと接近するとふくたちは同じ速さで逃げる。

「な、なんじゃ……!?この者たち……」

「オイラはオクト!こっちはセブ。人類強化実験で失敗作で捨てられた元ニンゲンさ!」

 オクトに紹介されたセブはお辞儀をする。
 オクトとセブは敵意こそないものの魔力を隠蔽していないことから魔法を使った事がないのだと理解する。

「それにしてもじゃ、お前の魔法の力は異常に強いの……わしの足元にもお――」

「凄いよ、セブ!日本語喋れるっ!キツネさん!日本人?何県出身?いつの実験者?それとそれとね――」

「やかましいのじゃ!」

 ――パチンッ!

 衝撃波の魔法がオクトとセブを襲い、暴風が吹き荒れる。
 砂埃が立ち込め視界を塞ぐ。
 いきなり殺意の高い魔法を使い、ヴォルフは恐る恐るふくに訊く。

「お、おいおい……やりすぎじゃないか?」

「たわけ!相手は魔物じゃ!言葉巧みに騙して命を取るやもしれんのじゃ!それに見てみるのじゃ、あやつらわしの魔法、手加減したが耐えておる」

 砂埃が晴れていき、魔力をドーム状にして盾を作ったオクトとセブが立っていた。
 盾に亀裂が入り、粉々になって砕ける。
 オクトは膝をついて俯くと、セブがふくを睨みつけた瞬間、一瞬でふくの目の前に姿を現す。
 セブの爪がふくを切り裂く瞬間、その時は来る事なかった。
 【絶対】の魔法で首から下を完全に停止され、宙に固定されたままふくに威嚇をする。

「オクトさんを……よくも……!」

「まあまあ、落ち着きなって。ふくも、頭を冷やして?」

 オクトと名乗る魔物はばたりと倒れる。
 その倒れ方は魔力切れであり、気絶したようだ。
 それを見たセブと名乗る魔物は魔力を昂らせていく。
 顔に紋様が浮かび上がり、瞳の色が金色になっていく。

「王族変異……!?」

「早く殺すのじゃ!らいら!がるど!魔法の準備をするのじゃ!」

 ライラとガルドは急いで魔法の準備をしていくが、急にセブの頭がガクッと落ちた。

「魔力切れだ……」

「……なんと間抜けな魔物じゃ……。早うとどめを刺さぬと寝首を掻かれてしまうのじゃ」

「いや、少しだけ様子を見ないか?コイツら獣人だよ?」

 魔力が無くなり、直視できなかった身体は段々と姿が見えるようになる。
 オクトは全身が茶色や金色のような毛並みをし、お腹の部分だけ白い毛に覆われ、大きな垂れ耳が特徴の犬族の男性であった。
 そして、セブは全身白色や銀が入った毛並みをし、その華奢な体付きは猫族であった。
 魔物と勘違いしている者は獣人であり、ふくの頭が混乱する。

「なぜ穴から這い出て、魔物と同じような感じがしたのじゃ……?」

「それも含めてコイツらに聴いてみよう?」

「私もそれがいいと思います。危ないかもしれませんが、なんと言うか……」

「敵意が感じられなかったの!最後の猫のヒトはふく様に敵対したけど、多分……犬のヒトが倒れたから報復したのかな……?」

「うむむ……お前たちまで……。しょうがないのじゃ……。今日はこの辺りで野宿でもするのじゃ。準備するぞ、らいら」

 ふくは木を一本生やし、風魔法で切り刻む。
 ガルドはそれを綺麗に組み上げていき、ライラが点火する。
 炎はゴウゴウ燃えるが、凍土は解けることがない。
 ライラがすぐ側に座り、ガルドを温める。
 一方ヴォルフはオクトとセブを見張っていた。


 オクトが目を覚ますと目の前に火が広がっていた。

「うわわわわわっ!?」

「うわっ、びっくりした」

 慌てて飛び起きたオクトにヴォルフは一瞬ビックリし、立ち上がる。
 体格差が激しく、オクトはしょんぼりする。
 すると、眠っているセブが目に入り、髪を撫でる。

「なあ、犬っころ」

「犬っころ?」

「お前だ、お前」

「え、オイラは犬になったの……!?」

「知らなかったのかよ」

 オクトは嬉しそうに犬獣人の体を眺めながら尻尾をふる。
 言葉が通じていき、どんどん魔物でないと思い始めていく。

「目的はなんだ?」

「目的?オイラたち、失敗作は捨てられたんだ。目的なんてないよ?」

「それじゃあ、辻褄が合わないんだ。オレたちが魔物と呼んでいるヤツはオレたちの世界を壊しているんだ。ふくが気を張っているのはそう言う事」

 オクトはどう説明したら良いのか分からずシュンとなってしまう。
 すると、穴から再び這い出てくるものが現れた。

「魔物じゃ!戦闘の準備をするのじゃ!ぼるふはそ奴らを見ておれ!」

「え……!?大丈夫なの!?」

「あれは……不適合者……!?オイラも協力するよ!」

 オクトが魔力を込めた瞬間、恐ろしく速い手刀でドスリと首を打ち付けられ、気を失った。
 その光景を見た三人はジトーとした目でヴォルフを見つめるのであった。
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