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ぼるふの謎なのじゃ
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「縛り付けるって……ヴォルフ様を縛り付けているものはないよ?」
ライラはヴォルフの尻を叩いたりしてふくの言うものを確かめていたが、見えていなかった。
肉は千切れ、骨が砕けた痛みに耐えながら説明をする。
「うぐっ……。お、恐らくじゃが……ぼるふのみしか見えんようじゃ……。わしは、今ぼるふと繋がっておるから見えるのじゃが……。……らいら、少しこの場を頼むのじゃ……」
ふくはライラの返事を待たず、目を閉じて書庫へと向かうのであった。
§
書庫に到着すると、ツカツカと歩き、本棚の前に立つ。
この世界では腕の骨は折れておらず、腕を組んで待つ。
しかし、本は落ちてくることがなかった。
「なぜじゃ!あの鎖について教えるのじゃ!」
ふくの声が書庫に響き渡るが、それでも書庫から返答がなく、本も落ちることがなかった。
「ならば……ぼるふについて教えるのじゃ!」
――ドスッ!
一冊の本が床に落ちる。
ふくはそれを拾い、開くことができるページを見る。
「……ぼるふ。邪神より作られた狼。『神殺し』の能力を持ち、『おうでいん』を殺した存在。神を多く殺したため地の底に縛り付け、禁忌としてその存在を封印した。……わしの魔法よ、この世界の成り立ちを教えるのじゃ」
持っていた本のページが自動的に捲られ、目的のページで止められる。
ふくは再び本にかじりつくように読む。
「地底世界『あびすとら』はぼるふが作った世界。世界の中心は【太陽】にあり、ぼるふの生命の源である。【太陽】にはぼるふの……【心臓】があるじゃと!?」
本を閉じてふくは書庫を歩き回りながら呟く。
「大穴はもしや地上へ繋がっておるのか……?そして、あの【太陽】はぼるふそのもので、離れると死んでしまうのか……?地上に出られないように【太陽】に縛り付けて出られなようにしている……そう考えるのが正しいのじゃろうか……?力を失うのは【心臓】離れるからであり……あの鎖はそれ以上行かぬよう、縛り付けるもの……。」
ふくは目を閉じて元の世界に戻っていった。
§
「……っぐぅあぁぁぁあっ!?」
「ふく様!?」
「すぐ離します!ライラさん、引き抜いてくれるか?」
「任せて!」
一瞬だけ口を開けて、ヴォルフの口からふくの腕を抜き取る。
ボロボロに千切れ、大量の血が流れ、正常な位置に骨は無かった。
「ふく様、この場を頼むって言って、一秒も経ってないですよ?何があったのですか?」
「……書庫では時間がほとんど経たぬのか……!?まあ、よい……。急いでこの穴から抜け出すのじゃ……!がるどよ、お前さんに【怪力】を付与する……。ぼるふとわしを地上に運んで欲しい……」
そう告げるとふくは気を失って倒れた。
完全に失血が限界点に近づいている証拠だった。
ライラは簡単な【止血】の魔法を施し、これ以上の失血を止める。
ガルドは【怪力】の魔法の効果で、ヴォルフを担ぐ事ができるようになり、全員を担いで大穴の淵へ向かって跳んだ。
穴の淵に戻り、ふくとヴォルフを地面に置き、ライラも降ろして地面にへたり込む。
地表に戻った事で、ヴォルフは意識を取り戻し、周りを見る。
「あれ……?オレたち大穴にいたんじゃ……?」
「ヴォルフ様が倒れたから戻ったの。ふく様が何か知ってるみたいだけど……」
突然口の中から血の味がして驚くと、ふくの匂いが混ざっており、一瞬パニックになるが、側で倒れているのを発見し、肉や皮が千切れて骨が砕かれている右腕を見る。
その腕からはヴォルフのニオイがし、鼻を「ピーピー」と鳴らす。
その音で目を覚ますふく。
腕の痛みで表情が苦しそうな感じが読み取れるが、ふくはそんな事お構いなしに左手でヴォルフの顔を撫でていく。
「大丈夫かの……?……うむ、鎖も消えておるの。……そんな顔をするでない……。お前は何も悪くないのじゃ」
「でも……その腕……」
ヴォルフの両目から大粒の涙がボロボロ落ちる。
握り拳サイズの涙が落ちるとなかなかの迫力であり、何よりふくは初めてヴォルフが涙を流しているところを見た。
「ごめん……痛かったろ……」
「なあに、魔法で治すから問題ないのじゃ。『治癒の力よ、腕を治せ』……ほれ、元通りじゃ」
ふくが何一つヴォルフを責めない事に違和感を感じる。
それを読み取ったふくはギュッと抱きしめる。
「生きててよかったのじゃ……。ぼるふが……死ぬかと思って怖かったのじゃ……」
「……うん。オレも、ゴメンね……」
「良いのじゃ……。こうしてお前と話す事ができて、わしは嬉しいのじゃ……」
ふくは反省するヴォルフを慰める様に優しく顔周りの毛を手櫛で解いていく。
ライラは二人のそばに立ち、疑問をぶつけていく。
「ヴォルフ様がどうして倒れたのか、教えて?」
「そう、じゃの……」
ふくは一瞬迷った。
この世界の成り立ち、神であるヴォルフの事、それらを話すということの意味を考える。
ヴォルフが知る必要は大いにあるのだが、ライラやガルドが知る必要があるか考えると少し迷ってしまう。
下手をすれば国どころではなく世界がなくなるからだ。
ふくが迷っていると二つの大きな魔力が大穴から這い出て来た。
一同は今までにない魔力を保有した魔物を見て驚愕するのであった。
ライラはヴォルフの尻を叩いたりしてふくの言うものを確かめていたが、見えていなかった。
肉は千切れ、骨が砕けた痛みに耐えながら説明をする。
「うぐっ……。お、恐らくじゃが……ぼるふのみしか見えんようじゃ……。わしは、今ぼるふと繋がっておるから見えるのじゃが……。……らいら、少しこの場を頼むのじゃ……」
ふくはライラの返事を待たず、目を閉じて書庫へと向かうのであった。
§
書庫に到着すると、ツカツカと歩き、本棚の前に立つ。
この世界では腕の骨は折れておらず、腕を組んで待つ。
しかし、本は落ちてくることがなかった。
「なぜじゃ!あの鎖について教えるのじゃ!」
ふくの声が書庫に響き渡るが、それでも書庫から返答がなく、本も落ちることがなかった。
「ならば……ぼるふについて教えるのじゃ!」
――ドスッ!
一冊の本が床に落ちる。
ふくはそれを拾い、開くことができるページを見る。
「……ぼるふ。邪神より作られた狼。『神殺し』の能力を持ち、『おうでいん』を殺した存在。神を多く殺したため地の底に縛り付け、禁忌としてその存在を封印した。……わしの魔法よ、この世界の成り立ちを教えるのじゃ」
持っていた本のページが自動的に捲られ、目的のページで止められる。
ふくは再び本にかじりつくように読む。
「地底世界『あびすとら』はぼるふが作った世界。世界の中心は【太陽】にあり、ぼるふの生命の源である。【太陽】にはぼるふの……【心臓】があるじゃと!?」
本を閉じてふくは書庫を歩き回りながら呟く。
「大穴はもしや地上へ繋がっておるのか……?そして、あの【太陽】はぼるふそのもので、離れると死んでしまうのか……?地上に出られないように【太陽】に縛り付けて出られなようにしている……そう考えるのが正しいのじゃろうか……?力を失うのは【心臓】離れるからであり……あの鎖はそれ以上行かぬよう、縛り付けるもの……。」
ふくは目を閉じて元の世界に戻っていった。
§
「……っぐぅあぁぁぁあっ!?」
「ふく様!?」
「すぐ離します!ライラさん、引き抜いてくれるか?」
「任せて!」
一瞬だけ口を開けて、ヴォルフの口からふくの腕を抜き取る。
ボロボロに千切れ、大量の血が流れ、正常な位置に骨は無かった。
「ふく様、この場を頼むって言って、一秒も経ってないですよ?何があったのですか?」
「……書庫では時間がほとんど経たぬのか……!?まあ、よい……。急いでこの穴から抜け出すのじゃ……!がるどよ、お前さんに【怪力】を付与する……。ぼるふとわしを地上に運んで欲しい……」
そう告げるとふくは気を失って倒れた。
完全に失血が限界点に近づいている証拠だった。
ライラは簡単な【止血】の魔法を施し、これ以上の失血を止める。
ガルドは【怪力】の魔法の効果で、ヴォルフを担ぐ事ができるようになり、全員を担いで大穴の淵へ向かって跳んだ。
穴の淵に戻り、ふくとヴォルフを地面に置き、ライラも降ろして地面にへたり込む。
地表に戻った事で、ヴォルフは意識を取り戻し、周りを見る。
「あれ……?オレたち大穴にいたんじゃ……?」
「ヴォルフ様が倒れたから戻ったの。ふく様が何か知ってるみたいだけど……」
突然口の中から血の味がして驚くと、ふくの匂いが混ざっており、一瞬パニックになるが、側で倒れているのを発見し、肉や皮が千切れて骨が砕かれている右腕を見る。
その腕からはヴォルフのニオイがし、鼻を「ピーピー」と鳴らす。
その音で目を覚ますふく。
腕の痛みで表情が苦しそうな感じが読み取れるが、ふくはそんな事お構いなしに左手でヴォルフの顔を撫でていく。
「大丈夫かの……?……うむ、鎖も消えておるの。……そんな顔をするでない……。お前は何も悪くないのじゃ」
「でも……その腕……」
ヴォルフの両目から大粒の涙がボロボロ落ちる。
握り拳サイズの涙が落ちるとなかなかの迫力であり、何よりふくは初めてヴォルフが涙を流しているところを見た。
「ごめん……痛かったろ……」
「なあに、魔法で治すから問題ないのじゃ。『治癒の力よ、腕を治せ』……ほれ、元通りじゃ」
ふくが何一つヴォルフを責めない事に違和感を感じる。
それを読み取ったふくはギュッと抱きしめる。
「生きててよかったのじゃ……。ぼるふが……死ぬかと思って怖かったのじゃ……」
「……うん。オレも、ゴメンね……」
「良いのじゃ……。こうしてお前と話す事ができて、わしは嬉しいのじゃ……」
ふくは反省するヴォルフを慰める様に優しく顔周りの毛を手櫛で解いていく。
ライラは二人のそばに立ち、疑問をぶつけていく。
「ヴォルフ様がどうして倒れたのか、教えて?」
「そう、じゃの……」
ふくは一瞬迷った。
この世界の成り立ち、神であるヴォルフの事、それらを話すということの意味を考える。
ヴォルフが知る必要は大いにあるのだが、ライラやガルドが知る必要があるか考えると少し迷ってしまう。
下手をすれば国どころではなく世界がなくなるからだ。
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