66 / 108
一歩ずつ進むのじゃ
しおりを挟む
無事に【それ】を斃し、どす黒い石による二次被害も避けられた。
成果とは裏腹に、失ったものはかなり大きいものであった。
国民は全体の二割ほど犠牲となり、気候が冬のように寒くなった影響で動けなくなった者が逃げ遅れ、犠牲となっていた。
そして、レオンとコリーの死が大きかった。
獅子族はもともと数の少ない一族であり、彼は子孫を残すことなく逝ってしまった。
魔法は子供に継承されやすく、成長するまで扱うことはできないが強く、希少な魔法であり、王族変異していればその子供も王族変異する可能性が非常に高いとヴォルフは話していた。
彼の持つ【精霊】魔法は非常に希少なものであり、再び持つものが現れるまで待つことになった。
レオンとコリーは王族変異をしたヒトであったため、戦力的にも精神的にもかなり痛手である。
若い子供達、王族の二人の犠牲者を弔うために棺に入れ、土に埋めていく。
「ぼるふよ、この世界に学舎を作るのは無駄じゃと思うかの?」
「うーん……学舎というものはこの世界に存在はしていないね。でも、ふくが必要だと思うのならばオレは手伝うよ?何をするのか知らないけど……」
「……この世界の生き方を学ばせるのじゃ」
「……?」
ヴォルフはふくの言っていることが理解できず、首を傾げる。
生き方を学ばせるという事が弱肉強食のこの世界で何を学ばせるのか分からなかったからだ。
食うか食われるか、殺すか殺されるか。
そんな世界で学ぶものといえば戦いの事くらいしか思い付かず、頭を抱えて悩む。
そんなヴォルフにふくはため息を吐きながら頭を撫でる。
「ぼるふ、お前はまだこの世界の……ヒトの秘密を持っておるのじゃろう?なぜ、我々は人間の姿ではなくケモノの姿をしておるのか、番いとなった者との魔法が変わる事、王族変異を引き起こすキッカケ……様々な秘密があるじゃろうて。若い子たちはそれを知らぬ。早いうちから知る事ができれば……」
ふくは一瞬言葉を躊躇ったが、手をギュッと握りしめて鋭い瞳孔の金眼で見つめる。
「何は、わしを超える事ができる者も出てくるじゃろうて」
真剣に話した内容にヴォルフはニヤ~と意地悪そうに笑った。
「……出るとは思ってないでしょ?」
「……千年の間はないと思うとる。何じゃ!……わしらの子が、超えるかもしれんじゃろ!」
ふくは下腹部を愛おしそうに撫でながらそう答えると、ヴォルフは申し訳なさそうな顔をする。
そんな顔を見たふくはキッと睨みつける。
「……まさか、子種がないとは申まい?」
「そ、そんな事はない!ただ……」
「ただ?」
妖狐になったふくは威圧感が以前より迫力を増しており、ヴォルフはタジタジになってしまう。
「た、ただ……同じ種族の子供は……非常に出来にくいんだ……。強くなりやすいけど……」
「???」
ふくはヴォルフの言うことを理解できずにいた。
確かに綱彦とは大よそ千年近くは身籠ることは無かった。
そこは理解しているのだが、ヴォルフとできにくいと言うところに疑問を抱いていた。
「……ぼるふとわしは氷狼と妖狐じゃろう?種族は違うと思うのじゃが?」
「えっとね……オレとふくは【神族】になるんだ。だから見た目は違っても、同じ種族になるんだ」
「……そうじゃったのか。それなら、仕方のない事じゃ。じゃが、出来ぬわけではないのであろう?」
ヴォルフはその問いに関してはしっかりと頷く。
それを見て、安心したような顔をしてヴォルフに背を向けた。
「それは良いとして……。獣人、鳥人、竜人の国を作るには皆の考えをまとめる必要があると思うのじゃ。それぞれの種族を孤立させずに皆が手を取り合って協力せぬといかぬじゃろう?」
「そうだね。食性の違いもあるし、そこはみんなに理解してもらったほうが良いだろうね」
「それだけではない。龍や度々出てくる厄介な【ヤツ】。あやつらは数を増やすとわしらだけではどうにもならぬ。せめて大人数でも良いから龍を斃せるくらいまでの実力が欲しいところじゃ。力をつけ、知識を共有する事で皆が死なずに済めば良いと考えた結果が学舎を作る事じゃと思ったのじゃ」
ヴォルフはその考えに否定的な感情はなかった。
いくら二人が現状最強の力を持っていようと、処理の仕方が限定されている【それ】の対応は非常に難しい。
優秀な元素魔法の使い手であるライラとガルドのようなヒトは早々出てくるものではない。
現状彼らしか被害を出さずに仕留める事ができるヒトはいない為、元素魔法の使い手を増やすのは急務であった。
それを担当していたのはレオンだったのでヴォルフは頭を抱える。
「獅子頭に全部任せてたからヤバいかもな……」
「……そういえば、こりぃは野狐族を逃がしておったが、何か目的があったのじゃないのかの?」
「あ、野狐族は元素魔法を持って生まれる事が多いんだった!アイツら育てて、もしかしたら……」
「では早速じゃが、野狐族を追うのじゃ!」
ヴォルフは狼の姿に変わり、ふくを背中に乗せて走った。
少しずつだが、ふくとヴォルフの想いがこの世界を導いていくのであった。
成果とは裏腹に、失ったものはかなり大きいものであった。
国民は全体の二割ほど犠牲となり、気候が冬のように寒くなった影響で動けなくなった者が逃げ遅れ、犠牲となっていた。
そして、レオンとコリーの死が大きかった。
獅子族はもともと数の少ない一族であり、彼は子孫を残すことなく逝ってしまった。
魔法は子供に継承されやすく、成長するまで扱うことはできないが強く、希少な魔法であり、王族変異していればその子供も王族変異する可能性が非常に高いとヴォルフは話していた。
彼の持つ【精霊】魔法は非常に希少なものであり、再び持つものが現れるまで待つことになった。
レオンとコリーは王族変異をしたヒトであったため、戦力的にも精神的にもかなり痛手である。
若い子供達、王族の二人の犠牲者を弔うために棺に入れ、土に埋めていく。
「ぼるふよ、この世界に学舎を作るのは無駄じゃと思うかの?」
「うーん……学舎というものはこの世界に存在はしていないね。でも、ふくが必要だと思うのならばオレは手伝うよ?何をするのか知らないけど……」
「……この世界の生き方を学ばせるのじゃ」
「……?」
ヴォルフはふくの言っていることが理解できず、首を傾げる。
生き方を学ばせるという事が弱肉強食のこの世界で何を学ばせるのか分からなかったからだ。
食うか食われるか、殺すか殺されるか。
そんな世界で学ぶものといえば戦いの事くらいしか思い付かず、頭を抱えて悩む。
そんなヴォルフにふくはため息を吐きながら頭を撫でる。
「ぼるふ、お前はまだこの世界の……ヒトの秘密を持っておるのじゃろう?なぜ、我々は人間の姿ではなくケモノの姿をしておるのか、番いとなった者との魔法が変わる事、王族変異を引き起こすキッカケ……様々な秘密があるじゃろうて。若い子たちはそれを知らぬ。早いうちから知る事ができれば……」
ふくは一瞬言葉を躊躇ったが、手をギュッと握りしめて鋭い瞳孔の金眼で見つめる。
「何は、わしを超える事ができる者も出てくるじゃろうて」
真剣に話した内容にヴォルフはニヤ~と意地悪そうに笑った。
「……出るとは思ってないでしょ?」
「……千年の間はないと思うとる。何じゃ!……わしらの子が、超えるかもしれんじゃろ!」
ふくは下腹部を愛おしそうに撫でながらそう答えると、ヴォルフは申し訳なさそうな顔をする。
そんな顔を見たふくはキッと睨みつける。
「……まさか、子種がないとは申まい?」
「そ、そんな事はない!ただ……」
「ただ?」
妖狐になったふくは威圧感が以前より迫力を増しており、ヴォルフはタジタジになってしまう。
「た、ただ……同じ種族の子供は……非常に出来にくいんだ……。強くなりやすいけど……」
「???」
ふくはヴォルフの言うことを理解できずにいた。
確かに綱彦とは大よそ千年近くは身籠ることは無かった。
そこは理解しているのだが、ヴォルフとできにくいと言うところに疑問を抱いていた。
「……ぼるふとわしは氷狼と妖狐じゃろう?種族は違うと思うのじゃが?」
「えっとね……オレとふくは【神族】になるんだ。だから見た目は違っても、同じ種族になるんだ」
「……そうじゃったのか。それなら、仕方のない事じゃ。じゃが、出来ぬわけではないのであろう?」
ヴォルフはその問いに関してはしっかりと頷く。
それを見て、安心したような顔をしてヴォルフに背を向けた。
「それは良いとして……。獣人、鳥人、竜人の国を作るには皆の考えをまとめる必要があると思うのじゃ。それぞれの種族を孤立させずに皆が手を取り合って協力せぬといかぬじゃろう?」
「そうだね。食性の違いもあるし、そこはみんなに理解してもらったほうが良いだろうね」
「それだけではない。龍や度々出てくる厄介な【ヤツ】。あやつらは数を増やすとわしらだけではどうにもならぬ。せめて大人数でも良いから龍を斃せるくらいまでの実力が欲しいところじゃ。力をつけ、知識を共有する事で皆が死なずに済めば良いと考えた結果が学舎を作る事じゃと思ったのじゃ」
ヴォルフはその考えに否定的な感情はなかった。
いくら二人が現状最強の力を持っていようと、処理の仕方が限定されている【それ】の対応は非常に難しい。
優秀な元素魔法の使い手であるライラとガルドのようなヒトは早々出てくるものではない。
現状彼らしか被害を出さずに仕留める事ができるヒトはいない為、元素魔法の使い手を増やすのは急務であった。
それを担当していたのはレオンだったのでヴォルフは頭を抱える。
「獅子頭に全部任せてたからヤバいかもな……」
「……そういえば、こりぃは野狐族を逃がしておったが、何か目的があったのじゃないのかの?」
「あ、野狐族は元素魔法を持って生まれる事が多いんだった!アイツら育てて、もしかしたら……」
「では早速じゃが、野狐族を追うのじゃ!」
ヴォルフは狼の姿に変わり、ふくを背中に乗せて走った。
少しずつだが、ふくとヴォルフの想いがこの世界を導いていくのであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界日帰りごはん【料理で王国の胃袋を掴みます!】
ちっき
ファンタジー
【書籍化決定しました!】
異世界に行った所で政治改革やら出来るわけでもなくチートも俺TUEEEE!も無く異世界での日常を全力で楽しむ女子高生の物語。
暇な時に異世界ぷらぷら遊びに行く日常にちょっとだけ楽しみが増える程度のスパイスを振りかけて。そんな気分でおでかけしてるのに王国でドタパタと、スパイスってそれ何万スコヴィルですか!

異世界遺跡巡り ~ロマンを求めて異世界冒険~
小狸日
ファンタジー
交通事故に巻き込まれて、異世界に転移した拓(タク)と浩司(コウジ)
そこは、剣と魔法の世界だった。
2千年以上昔の勇者の物語、そこに出てくる勇者の遺産。
新しい世界で遺跡探検と異世界料理を楽しもうと思っていたのだが・・・
気に入らない異世界の常識に小さな喧嘩を売ることにした。

前世は最強の宝の持ち腐れ!?二度目の人生は創造神が書き換えた神級スキルで気ままに冒険者します!!
yoshikazu
ファンタジー
主人公クレイは幼い頃に両親を盗賊に殺され物心付いた時には孤児院にいた。このライリー孤児院は子供達に客の依頼仕事をさせ手間賃を稼ぐ商売を生業にしていた。しかしクレイは仕事も遅く何をやっても上手く出来なかった。そしてある日の夜、無実の罪で雪が積もる極寒の夜へと放り出されてしまう。そしてクレイは極寒の中一人寂しく路地裏で生涯を閉じた。
だがクレイの中には創造神アルフェリアが創造した神の称号とスキルが眠っていた。しかし創造神アルフェリアの手違いで神のスキルが使いたくても使えなかったのだ。
創造神アルフェリアはクレイの魂を呼び寄せお詫びに神の称号とスキルを書き換える。それは経験したスキルを自分のものに出来るものであった。
そしてクレイは元居た世界に転生しゼノアとして二度目の人生を始める。ここから前世での惨めな人生を振り払うように神級スキルを引っ提げて冒険者として突き進む少年ゼノアの物語が始まる。

もふもふで始めるのんびり寄り道生活 ~便利なチートフル活用でVRMMOの世界を冒険します!
ゆるり
ファンタジー
書籍化決定しました!
刊行は3月中旬頃です。
☆第17回ファンタジー小説大賞で【癒し系ほっこり賞】を受賞☆
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~』です)
ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。
最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。
この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう!
……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは?
***
ゲーム生活をのんびり楽しむ話。
バトルもありますが、基本はスローライフ。
主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。
カクヨム様でも公開しております。

収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる