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好意を伝えるのは難しいの
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食事は魔獣の焼肉とライラは採取した葉や茎を食べていた。
肉を焼いて食べると美味しいと知ったガルドは舌鼓を打ち、その手は止まる事を知らなかった。
ライラはそんなガルドをチラチラと横目で見ながら黙々と食べていく。
ふくは全ての肉を焼き終え、ライラの隣に座り、食事をする。
「らいらは好いておるのではなかったのかの?」
「……」
「がるどは良い殿方であるとわしは思うのじゃが、お前様にはそうは見えなかったのやもしれんの」
「……嫌いじゃないです。ただ……竜人とウサギですよ?」
「好きなものに種族は関係ないと思うのじゃが?好きなものは好き、それで良いではないか?」
「ふ、ふく様には分かりませんよ!ふく様とヴォルフ様は肉を食べるもの同士じゃないですか!ウチは草食べて、ガルド君は肉を食べる……。下手したらウチも捕食対象かもしれないの!怖いのが……先に来ちゃうの……」
理由を聴き、ふくは困ったように考える。
ウサギは確かに生き物としては食べられる側の者である。
ライラが怖がることはよく分かるのである。
いくら捕食しないと言っても肉食である限り、信頼は得られない。
パートナー制度はつい最近知られたもので他種族とパートナーを結んでください、はいどうぞとは行かないのは食性の違いが大きいからだ。
ふくが困っていると、ヴォルフがライラに一言だけ伝える。
「世の中には、食べずに交尾まで及んだやつだっているんだ。試しに二人で寝てみればいいんじゃないのか?」
「な、な、な……何ですぐ交尾に持っていくのよ!?交尾だけがパートナーじゃないでしょ!?」
「ん?交尾した方が強くなるに決まってるんだぞ?ふくだって強くなってるだろ?」
「ふ、ふく様は【妖狐】だから……」
「残念じゃが、わしは元々野狐族じゃ。ぼるふのヤツと及んだから【妖狐】に成ったのじゃ」
段々と逃げ道が塞がれていき、ライラはどうしようか悩んでいると、ガルドが助け舟を出す。
「あ、あの……ライラさんが決めることなので、皆さんで責め立てるのは、止しませんか?」
「……ガルド君。」
八方塞がりだったライラに逃げ道を作ったガルドはヴォルフとふくにジイっと見られる。
「な、なんでしょうか……?」
「お前はライラのこと好きなのか?」
「え、ええっと……ライラさんがいないと、この環境を生き残れませんし……。でも、信頼はしています」
「良き男じゃ。変態犬とは違うの!そもそもぼるふが氷の世界にするから、がるどが動けんのじゃ。ぼるふは責任を取らねばならんの」
「ええ……」
ガルドが身代わりになることでライラの追求は免れた。
この行動がライラにとって肉食に対する考えが少しずつ変わっていくきっかけになった。
食事を終え、再び歩き出した一行。
凍土が途切れ、海があったであろう場所に到着する。
ヴォルフの魔法は海水ですら凍らせ、すべてを陸続きにする勢いであった。
「ここから先は海です。先には龍神バハムートが住んでいる島があると言われています。見たことは無いのですが……」
「このまま行けば日没してしまうな。どこかで野宿した方がいいだろう」
「流石に海の氷の上では火は使えんしの。それが良いじゃろう」
「では、洞穴をさが――」
ライラは突然姿が消えた。
三人はすぐさま戦闘体勢に入ってライラを連れ去ったものに顔を向ける。
「ドラゴン……翼があるからワイバーンだな」
「らいらを助けるのじゃ……!」
「二人とも、ここは私に任せてもらえますか?二人の魔法だと、恐らくライラさんが巻き添えになってしまいます。私がライラさんを助けるまで待ってください……!」
槍を構えてガルドはドラゴンに突撃を掛ける。
正直言えばドラゴンと真正面からぶつかるのは怖い。
大きな顔から見える牙を見て背中が疼く。
それと同時に治療してもらった記憶が蘇り、鈍っていく決心に喝を入れる。
一方、体が小さく運良く牙と牙の間に挟まったライラは怪我もなかったが、残念な事に高いところが苦手であり、空を飛ばれ、怖気付いていた。
小水が漏れ出ようとそんな事を気にはしていられず、どうにもならない状況を打破しようと考えるが、墜落の二文字が必然的に付いてくるため選択肢がなくなっていく。
(どうしよう……ヴォルフ様の言った通り足手纏いだ……。肉壁にもなれずこんな簡単に死んじゃうなんて……。ガルド君へ……ちゃんと気持ちを言っておけば……良かったのに……ウチのバカ……!)
ポロポロと涙を流し、死への恐怖を感じていると下から叫び声が聞こえる。
目を凝らしてみると、岩の起伏をピョンピョンと飛んでくるヒトが見えた。
ガルドだった。
槍を携え、必死な形相でドラゴンのいる空中を目指す。
翼があればひとっ飛びだったが、竜騎士としての身体能力を活かして跳躍する。
そして、一番高い起伏からギュンっと上空へ跳び上がる。
「ライラさんっ!ドラゴンの口の中に向けて火の魔法を最大火力で放ってください!」
それを聞いたライラは半ばヤケクソで最大火力の火の魔法を放つ。
「『火の力よ、それは球体となり、我が魔力を全て使い、大きな火炎を浴びせよ!』」
ドラゴンの口の中に放たれた魔法はそのまま喉奥に入っていき、ライラは気絶する。
完全な魔力切れによる失神であった。
突如喉袋が爆発し、喉元が内側から破裂する。
その衝撃と痛みでドラゴンは口を開き、ライラを放出する。
その一瞬を見逃さず、ドラゴンの尻尾を足場にし、ライラを抱き抱える。
そのまま下降するとガルドの耳に信じられない事を告げられる。
――下等な小さき生き物よ……、よくも我の体を傷つけおったな……。キサマらは灰も残さず燃やし尽くしてくれる……!
ドラゴンは上空へ飛び上がり、小さな光の粒を落とす。
それは自然落下させているのでゆっくりと落ちていくが、非常に高密度な魔法であると三人は認識する。
ガルドは落下しながら二人に向かって叫ぶ!
「ライラさんは助けました!あの魔法は不味いです!この辺りがなくなってしまいます!」
それを聞いた二人は不敵な笑みを浮かべ、光の玉を見つめるのだった。
肉を焼いて食べると美味しいと知ったガルドは舌鼓を打ち、その手は止まる事を知らなかった。
ライラはそんなガルドをチラチラと横目で見ながら黙々と食べていく。
ふくは全ての肉を焼き終え、ライラの隣に座り、食事をする。
「らいらは好いておるのではなかったのかの?」
「……」
「がるどは良い殿方であるとわしは思うのじゃが、お前様にはそうは見えなかったのやもしれんの」
「……嫌いじゃないです。ただ……竜人とウサギですよ?」
「好きなものに種族は関係ないと思うのじゃが?好きなものは好き、それで良いではないか?」
「ふ、ふく様には分かりませんよ!ふく様とヴォルフ様は肉を食べるもの同士じゃないですか!ウチは草食べて、ガルド君は肉を食べる……。下手したらウチも捕食対象かもしれないの!怖いのが……先に来ちゃうの……」
理由を聴き、ふくは困ったように考える。
ウサギは確かに生き物としては食べられる側の者である。
ライラが怖がることはよく分かるのである。
いくら捕食しないと言っても肉食である限り、信頼は得られない。
パートナー制度はつい最近知られたもので他種族とパートナーを結んでください、はいどうぞとは行かないのは食性の違いが大きいからだ。
ふくが困っていると、ヴォルフがライラに一言だけ伝える。
「世の中には、食べずに交尾まで及んだやつだっているんだ。試しに二人で寝てみればいいんじゃないのか?」
「な、な、な……何ですぐ交尾に持っていくのよ!?交尾だけがパートナーじゃないでしょ!?」
「ん?交尾した方が強くなるに決まってるんだぞ?ふくだって強くなってるだろ?」
「ふ、ふく様は【妖狐】だから……」
「残念じゃが、わしは元々野狐族じゃ。ぼるふのヤツと及んだから【妖狐】に成ったのじゃ」
段々と逃げ道が塞がれていき、ライラはどうしようか悩んでいると、ガルドが助け舟を出す。
「あ、あの……ライラさんが決めることなので、皆さんで責め立てるのは、止しませんか?」
「……ガルド君。」
八方塞がりだったライラに逃げ道を作ったガルドはヴォルフとふくにジイっと見られる。
「な、なんでしょうか……?」
「お前はライラのこと好きなのか?」
「え、ええっと……ライラさんがいないと、この環境を生き残れませんし……。でも、信頼はしています」
「良き男じゃ。変態犬とは違うの!そもそもぼるふが氷の世界にするから、がるどが動けんのじゃ。ぼるふは責任を取らねばならんの」
「ええ……」
ガルドが身代わりになることでライラの追求は免れた。
この行動がライラにとって肉食に対する考えが少しずつ変わっていくきっかけになった。
食事を終え、再び歩き出した一行。
凍土が途切れ、海があったであろう場所に到着する。
ヴォルフの魔法は海水ですら凍らせ、すべてを陸続きにする勢いであった。
「ここから先は海です。先には龍神バハムートが住んでいる島があると言われています。見たことは無いのですが……」
「このまま行けば日没してしまうな。どこかで野宿した方がいいだろう」
「流石に海の氷の上では火は使えんしの。それが良いじゃろう」
「では、洞穴をさが――」
ライラは突然姿が消えた。
三人はすぐさま戦闘体勢に入ってライラを連れ去ったものに顔を向ける。
「ドラゴン……翼があるからワイバーンだな」
「らいらを助けるのじゃ……!」
「二人とも、ここは私に任せてもらえますか?二人の魔法だと、恐らくライラさんが巻き添えになってしまいます。私がライラさんを助けるまで待ってください……!」
槍を構えてガルドはドラゴンに突撃を掛ける。
正直言えばドラゴンと真正面からぶつかるのは怖い。
大きな顔から見える牙を見て背中が疼く。
それと同時に治療してもらった記憶が蘇り、鈍っていく決心に喝を入れる。
一方、体が小さく運良く牙と牙の間に挟まったライラは怪我もなかったが、残念な事に高いところが苦手であり、空を飛ばれ、怖気付いていた。
小水が漏れ出ようとそんな事を気にはしていられず、どうにもならない状況を打破しようと考えるが、墜落の二文字が必然的に付いてくるため選択肢がなくなっていく。
(どうしよう……ヴォルフ様の言った通り足手纏いだ……。肉壁にもなれずこんな簡単に死んじゃうなんて……。ガルド君へ……ちゃんと気持ちを言っておけば……良かったのに……ウチのバカ……!)
ポロポロと涙を流し、死への恐怖を感じていると下から叫び声が聞こえる。
目を凝らしてみると、岩の起伏をピョンピョンと飛んでくるヒトが見えた。
ガルドだった。
槍を携え、必死な形相でドラゴンのいる空中を目指す。
翼があればひとっ飛びだったが、竜騎士としての身体能力を活かして跳躍する。
そして、一番高い起伏からギュンっと上空へ跳び上がる。
「ライラさんっ!ドラゴンの口の中に向けて火の魔法を最大火力で放ってください!」
それを聞いたライラは半ばヤケクソで最大火力の火の魔法を放つ。
「『火の力よ、それは球体となり、我が魔力を全て使い、大きな火炎を浴びせよ!』」
ドラゴンの口の中に放たれた魔法はそのまま喉奥に入っていき、ライラは気絶する。
完全な魔力切れによる失神であった。
突如喉袋が爆発し、喉元が内側から破裂する。
その衝撃と痛みでドラゴンは口を開き、ライラを放出する。
その一瞬を見逃さず、ドラゴンの尻尾を足場にし、ライラを抱き抱える。
そのまま下降するとガルドの耳に信じられない事を告げられる。
――下等な小さき生き物よ……、よくも我の体を傷つけおったな……。キサマらは灰も残さず燃やし尽くしてくれる……!
ドラゴンは上空へ飛び上がり、小さな光の粒を落とす。
それは自然落下させているのでゆっくりと落ちていくが、非常に高密度な魔法であると三人は認識する。
ガルドは落下しながら二人に向かって叫ぶ!
「ライラさんは助けました!あの魔法は不味いです!この辺りがなくなってしまいます!」
それを聞いた二人は不敵な笑みを浮かべ、光の玉を見つめるのだった。
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