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秘密が解かれていくのじゃ
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ふくが目を開けると書庫に到着しており、いつもの光景で安心すると共に、懐かしさを感じた。
よくよく考えてみると、綱彦に【命令】を受けた時から書庫には立ち寄っていない事を思い出す。
いつも通り、落ちている本を拾い、中を見る。
「【妖狐】……。尾が三本以上に増えたキツネ族の事。希少な魔法と莫大な魔力を持つ事で野狐から【昇華】することがある。尾は最大で九本まで増え、九尾の狐と成るとその力は神に匹敵する。特徴として体毛が野狐よりも色が薄く、変わった魔法を持っていることが多い」
本を読み終え、書庫の椅子に座る。
そして、和式の部屋であるこの空間の天井を眺めて考え事をする。
「わしは、ぼるふと情事に及んだ事で野狐族ではなくなったのか……。【妖狐】か……そう言えば、藤原家もたしか狐憑きと呼ばれておったことがあったのぅ……」
ふくは気づいていないが、この空間では考え事がすべて口にされている。
そもそもふくの頭の中にある魔法の空間な為、考える事を考えるような事になってしまうため、魔法側でこのような処理になっていた。
「……のう。わしの魔法については知ることができるかの?」
虚空に向けて、言葉を放つと一冊の本がドサッと落ちる。
近付いて表紙を見ると【魔法大全】の本であった。
開かれたページを眺め、音読する。
「【森羅万象】。全ての物事を知ることができる魔法。系統外魔法であり、創造神の持っていた魔法。自ら知りたいものを調べる魔法であり、勝手に知ることができる魔法ではない。……わしの魔法はそんな大層なものじゃったのか……。ぼるふの魔法を知りたいのじゃが……」
どこからともなく風が吹き、【魔法大全】のページが捲られる。
そして、示されたページを見て、再び音読を始める。
「【絶対】。物事の結末を決める魔法。系統外魔法であり、氷狼族の神にのみ与えられる魔法。物理的、時間的、空間的なものに干渉でき、この魔法によって結末を決められたものは等しく塵となる。加減は可能で季節を凍期にしたり、腐敗を止めたりすることも可能。ぼるふのやつも大概じゃの」
ふくは二冊の本を棚に戻し、帰る準備をする。
ふと思い出した事を魔法に向かって問いただす。
「わしやぼるふが【それ】と呼んでおる【異形の怪物】については分かるのかの?」
そう訊ねると、収めたばかりの本が落ちる。
本の角が足の甲に当たり、しばらく悶絶する。
恨めしそうに落ちた本を見ると、先程【妖狐】について調べた本であり、この本には種族のことが書かれてあるようだ。
恐る恐る、開かれたページを見ると、あまりの空白に驚いた。
「【名前無し】正体不明の生き物。地底世界では存在しない生物であり、地上世界から来たものである。ニンゲンと他の生き物を無理やり交配や改造をすることで生まれる。この時、体内に魔障石が形成され心臓の代わりに生かし続ける……か」
ふくは今までの【それ】との記憶に嫌な顔をしていると、もう一冊の本が落ちる。
持っていた本を収め、落ちた本を拾う。
「【魔障石】。特定の生き物の体内で形成される結石。作り立ての状態であれば様々な力に変換できるが、生き物の体内に存在し続けると邪気と瘴気を蓄え始める。石は非常に硬く、元素魔法以外で破壊すると邪気と瘴気が混ざり合ったものが放出され、全てを死へと追いやる。元素魔法なら容易に破壊でき、【浄化】などの事象魔法や付与魔法で無理やり破壊すると邪気と瘴気が漏れる。……そう言うことじゃったのか……」
ふくはコムギ、チュータロー、犬の集落、野狐族の村を思い出して涙を流す。
「もっと早くに知ることができたなら……お前たちを救えたかもしれんのに……。今になってこのような事を知ったとして、何になる……」
ふくは膝を抱え、瞳を閉じた。
§
ふくが目を開けるとヴォルフの腹の上で眠っていた。
焚き火の熱とヴォルフの体毛でしっかりと温められ、体が凍えることはなかった。
「ふく、おかえり。魔力切れ、大丈夫?」
「……そうか、わしはあの空間におる間、魔力を使い続けるのじゃったのか……。そうじゃ、ぼるふ。わしはどうやら【妖狐】と呼ばれるものになったようじゃ。お前様は知っておるのか、」
「【妖狐】ってキツネの神様だね。やっぱり、オレと繋がったからそうなったのかもね!おめでとう」
ヴォルフな嬉しそうに尻尾を振り、ニコニコとしていた。
それ以上追求してこなくなり、彼の中で納得のいくような結果であったことがわかる。
「ネズミ、犬、野狐、鳥、竜人の国を襲った奴らじゃが、あの石の対処が分かったのじゃ」
ふくがそう告げると、聞き耳を立てていたライラがガルドを引き連れてふくのそばに来る。
「あれは【魔障石】というものらしいのじゃ。無害のまま壊すには元素魔法でのみ中身を出さずに砕くことが出来るようじゃ。わしとぼるふは持っておる魔法が系統外魔法らしくての、今後はお前たちにも協力をしてもらいたいのじゃ」
「で、ですが……ウチたちは【それ】に対抗できる力はないけど……」
「ぼるふが言っておったろう?お前たちが番いになれば良いのじゃ」
ライラとガルドはお互いを見つめる。
「「ええ~~っ!??!!?!?」」
二人は揃って驚きのあまり叫ぶのだった。
息はとてもピッタリで満足そうな顔をするふくであり、ライラとガルドはお互い恥ずかしそうにそっぽ向くのである。
よくよく考えてみると、綱彦に【命令】を受けた時から書庫には立ち寄っていない事を思い出す。
いつも通り、落ちている本を拾い、中を見る。
「【妖狐】……。尾が三本以上に増えたキツネ族の事。希少な魔法と莫大な魔力を持つ事で野狐から【昇華】することがある。尾は最大で九本まで増え、九尾の狐と成るとその力は神に匹敵する。特徴として体毛が野狐よりも色が薄く、変わった魔法を持っていることが多い」
本を読み終え、書庫の椅子に座る。
そして、和式の部屋であるこの空間の天井を眺めて考え事をする。
「わしは、ぼるふと情事に及んだ事で野狐族ではなくなったのか……。【妖狐】か……そう言えば、藤原家もたしか狐憑きと呼ばれておったことがあったのぅ……」
ふくは気づいていないが、この空間では考え事がすべて口にされている。
そもそもふくの頭の中にある魔法の空間な為、考える事を考えるような事になってしまうため、魔法側でこのような処理になっていた。
「……のう。わしの魔法については知ることができるかの?」
虚空に向けて、言葉を放つと一冊の本がドサッと落ちる。
近付いて表紙を見ると【魔法大全】の本であった。
開かれたページを眺め、音読する。
「【森羅万象】。全ての物事を知ることができる魔法。系統外魔法であり、創造神の持っていた魔法。自ら知りたいものを調べる魔法であり、勝手に知ることができる魔法ではない。……わしの魔法はそんな大層なものじゃったのか……。ぼるふの魔法を知りたいのじゃが……」
どこからともなく風が吹き、【魔法大全】のページが捲られる。
そして、示されたページを見て、再び音読を始める。
「【絶対】。物事の結末を決める魔法。系統外魔法であり、氷狼族の神にのみ与えられる魔法。物理的、時間的、空間的なものに干渉でき、この魔法によって結末を決められたものは等しく塵となる。加減は可能で季節を凍期にしたり、腐敗を止めたりすることも可能。ぼるふのやつも大概じゃの」
ふくは二冊の本を棚に戻し、帰る準備をする。
ふと思い出した事を魔法に向かって問いただす。
「わしやぼるふが【それ】と呼んでおる【異形の怪物】については分かるのかの?」
そう訊ねると、収めたばかりの本が落ちる。
本の角が足の甲に当たり、しばらく悶絶する。
恨めしそうに落ちた本を見ると、先程【妖狐】について調べた本であり、この本には種族のことが書かれてあるようだ。
恐る恐る、開かれたページを見ると、あまりの空白に驚いた。
「【名前無し】正体不明の生き物。地底世界では存在しない生物であり、地上世界から来たものである。ニンゲンと他の生き物を無理やり交配や改造をすることで生まれる。この時、体内に魔障石が形成され心臓の代わりに生かし続ける……か」
ふくは今までの【それ】との記憶に嫌な顔をしていると、もう一冊の本が落ちる。
持っていた本を収め、落ちた本を拾う。
「【魔障石】。特定の生き物の体内で形成される結石。作り立ての状態であれば様々な力に変換できるが、生き物の体内に存在し続けると邪気と瘴気を蓄え始める。石は非常に硬く、元素魔法以外で破壊すると邪気と瘴気が混ざり合ったものが放出され、全てを死へと追いやる。元素魔法なら容易に破壊でき、【浄化】などの事象魔法や付与魔法で無理やり破壊すると邪気と瘴気が漏れる。……そう言うことじゃったのか……」
ふくはコムギ、チュータロー、犬の集落、野狐族の村を思い出して涙を流す。
「もっと早くに知ることができたなら……お前たちを救えたかもしれんのに……。今になってこのような事を知ったとして、何になる……」
ふくは膝を抱え、瞳を閉じた。
§
ふくが目を開けるとヴォルフの腹の上で眠っていた。
焚き火の熱とヴォルフの体毛でしっかりと温められ、体が凍えることはなかった。
「ふく、おかえり。魔力切れ、大丈夫?」
「……そうか、わしはあの空間におる間、魔力を使い続けるのじゃったのか……。そうじゃ、ぼるふ。わしはどうやら【妖狐】と呼ばれるものになったようじゃ。お前様は知っておるのか、」
「【妖狐】ってキツネの神様だね。やっぱり、オレと繋がったからそうなったのかもね!おめでとう」
ヴォルフな嬉しそうに尻尾を振り、ニコニコとしていた。
それ以上追求してこなくなり、彼の中で納得のいくような結果であったことがわかる。
「ネズミ、犬、野狐、鳥、竜人の国を襲った奴らじゃが、あの石の対処が分かったのじゃ」
ふくがそう告げると、聞き耳を立てていたライラがガルドを引き連れてふくのそばに来る。
「あれは【魔障石】というものらしいのじゃ。無害のまま壊すには元素魔法でのみ中身を出さずに砕くことが出来るようじゃ。わしとぼるふは持っておる魔法が系統外魔法らしくての、今後はお前たちにも協力をしてもらいたいのじゃ」
「で、ですが……ウチたちは【それ】に対抗できる力はないけど……」
「ぼるふが言っておったろう?お前たちが番いになれば良いのじゃ」
ライラとガルドはお互いを見つめる。
「「ええ~~っ!??!!?!?」」
二人は揃って驚きのあまり叫ぶのだった。
息はとてもピッタリで満足そうな顔をするふくであり、ライラとガルドはお互い恥ずかしそうにそっぽ向くのである。
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