50 / 108
選別をしてみた
しおりを挟む
日もすっかり昇りレオンがヴォルフを起こしに向かうと、すでに起きていることに驚いたのだが、一狩りしてきたのか大量の魔獣の死体が置いており、程よく冷やされていた。
「ヴォルフ様……これは……!?」
「今日から軍の入隊志願者が来るだろ?昼飯とか用意していないと、初っ端から辞めるやつ出るだろう?」
「それほど柔なヒトは来ないと思うのですが……。……ウル殿はどちらへいらっしゃいますか?」
「ウル?」
「羊族の女性ですよ。昨日は一緒にいたと思ったのですが……」
ヴォルフはウルを逃がしたことをどう弁解しようか迷った。
子供の件を伝えればレオンは国中を駆け回り彼女の行方を探し出すだろう。
頭を抱えながらヴォルフは口を開く。
「オレが……逃がした」
「逃がした……?彼女は働き者で優秀だと見込んだのですが……」
「ほ、ほら!子供の面倒を見なきゃだろ?それで帰したんだよ」
「うちで面倒見るのでは?……何を隠しているのか知りませんが、彼女がいないのは判りました。では、コリーに担当させましょう。」
内心コリーに負担をかけてしまったことに謝罪しつつ、このままではボロが出すぎてしまうので話題を変えることにした。
「も、もう集まっているのか?」
レオンは嬉しそうな顔をしてヴォルフを見る。
「予想以上ですよ」
レオンが外に出ていき、ヴォルフもそのあとへ続くと志願者たちが大勢集まっていた。
その数に圧倒され、ポカンとしているとレオンがヴォルフに跪く。
「私も含め、貴方の爪となり牙となります。どうか我々に闘いとは何たる矢を教えていただけぬだろうか?闘いの神 氷狼:ヴォルフよ!」
レオンの掛け声とともに志願者たちは一斉に跪く。
よくよく見ると国民の殆ど、本当に戦闘が苦手なものを除いた人のみ集まっており、国民全体でいうと八割ほどが志願していたのだ。
(多すぎて管理できないや。選別して、のこりは民間兵とかにした方がいいかもな……)
そう考えているとコリーが隣に来て助言する。
「実際戦闘に迎える人数は三十人ほどだと見た方がいいと思います。」
「やっぱりそう思う?残りはどうすんの?」
「防衛隊に配属させて守りを固めるのが良いかと思います」
コリーの意見に反論するところは見当たらず、ヴォルフは了承する。
ヴォルフは前に出て指示を与える。
「今から好きなもの同士で三組の隊を作ってくれ。そして、隊同士で争ってもらう」
「力の差が出てしまい、上手く実力が図れないのでは……?」
「大丈夫、【王族変異】したやつはいないし、戦闘経験くらいしか図れるものはない。ただ、【親愛の契約】で変質した奴がいれば積極的に確保したい」
「見分けがつきますか?私の目には皆同じように見えるのですが……」
レオンが分からないという顔をし、コリーも同様な反応をする。
ヴォルフは胸をドンと叩き、アピールする。
「骨のあるやつはオレが回収する。お前たちは、怪我をする前に戦闘不能者を回収するんだ。いいな?」
レオンとコリーは明確な指示を与えられ、頷く。
三人で話しているとすでに三組のチームができており、次の指示を待っていた。
「それじゃあ、ヤバいヤツはケガしないうちに回収するから、安心して戦ってくれ!では訓練開始!」
「「「おおおぉぉぉっ!!!」」」
大きな声と共に三つ巴の乱戦が始まっていくのであった。
魔法が飛び交い、それを避けつつそれぞれ牙や爪を相手に向けて闘い合う。
武器といったものは石斧や、石槍くらいしかないので誰も使わない。
犬系の種族なら牙、猫系なら爪、蹄を持つ者なら蹴り、前腕が強いものなら殴り、それぞれの種族の戦い方をしていく。
獣人同士の戦いならこの方法は通じるのだが、魔獣相手には殆ど有効打にもならない。
「やはり武具は使わないものですね……」
「まぁ一番使い慣れたものを使うのが良いからかもしれない」
レオンはコリーと同意見のようでヴォルフに意見を聴こうと振り返ると彼の姿はなく、辺りを見渡すと上空から【なに】かが落下し、乱戦している集団を吹き飛ばす。
「ウゥウォォォォォゥッ!!」
狼の咆哮がその場にいるすべての生き物の動きを止める。
いきなり大型の獣が出たことで、戦意を喪失していく。
集団に混ざっていない後方で魔法を放っていた者たちは、詠唱を行い魔法を組み上げる。
「『空気の塊を作り、敵を穿て!』」
「『土をほぐし、動きを止めよ!』」
「『飛び交う石つぶてに切り刻む力を与えん!』」
各々の魔法を放ち、狼を襲う。
しかし、あまりにも小さく、体毛に魔力を込めずとも生身で受けきった。
狼は周りに冷気を出すと、怒号が飛ぶ。
「ヴォルフ様っ!何をなされているのですか!!誰も貴方にかなうものはいませんから下がってください!」
レオンから叱責された狼ことヴォルフは耳と尻尾を垂らして退散しようとする。
集団の奥から、とてつもない魔力を感じその方向へ顔を向けると、大きな火球が飛んできた。
難なくかわすと、奥で膝をつくものがいた。
ヴォルフは一瞬で間合いを詰め、その者に接触すると、悔しそうに睨みつけられる。
「君、合格!」
ヴォルフに合格を言い渡されたのは小さな体をしたウサギ獣人の女の子であった。
「ヴォルフ様……これは……!?」
「今日から軍の入隊志願者が来るだろ?昼飯とか用意していないと、初っ端から辞めるやつ出るだろう?」
「それほど柔なヒトは来ないと思うのですが……。……ウル殿はどちらへいらっしゃいますか?」
「ウル?」
「羊族の女性ですよ。昨日は一緒にいたと思ったのですが……」
ヴォルフはウルを逃がしたことをどう弁解しようか迷った。
子供の件を伝えればレオンは国中を駆け回り彼女の行方を探し出すだろう。
頭を抱えながらヴォルフは口を開く。
「オレが……逃がした」
「逃がした……?彼女は働き者で優秀だと見込んだのですが……」
「ほ、ほら!子供の面倒を見なきゃだろ?それで帰したんだよ」
「うちで面倒見るのでは?……何を隠しているのか知りませんが、彼女がいないのは判りました。では、コリーに担当させましょう。」
内心コリーに負担をかけてしまったことに謝罪しつつ、このままではボロが出すぎてしまうので話題を変えることにした。
「も、もう集まっているのか?」
レオンは嬉しそうな顔をしてヴォルフを見る。
「予想以上ですよ」
レオンが外に出ていき、ヴォルフもそのあとへ続くと志願者たちが大勢集まっていた。
その数に圧倒され、ポカンとしているとレオンがヴォルフに跪く。
「私も含め、貴方の爪となり牙となります。どうか我々に闘いとは何たる矢を教えていただけぬだろうか?闘いの神 氷狼:ヴォルフよ!」
レオンの掛け声とともに志願者たちは一斉に跪く。
よくよく見ると国民の殆ど、本当に戦闘が苦手なものを除いた人のみ集まっており、国民全体でいうと八割ほどが志願していたのだ。
(多すぎて管理できないや。選別して、のこりは民間兵とかにした方がいいかもな……)
そう考えているとコリーが隣に来て助言する。
「実際戦闘に迎える人数は三十人ほどだと見た方がいいと思います。」
「やっぱりそう思う?残りはどうすんの?」
「防衛隊に配属させて守りを固めるのが良いかと思います」
コリーの意見に反論するところは見当たらず、ヴォルフは了承する。
ヴォルフは前に出て指示を与える。
「今から好きなもの同士で三組の隊を作ってくれ。そして、隊同士で争ってもらう」
「力の差が出てしまい、上手く実力が図れないのでは……?」
「大丈夫、【王族変異】したやつはいないし、戦闘経験くらいしか図れるものはない。ただ、【親愛の契約】で変質した奴がいれば積極的に確保したい」
「見分けがつきますか?私の目には皆同じように見えるのですが……」
レオンが分からないという顔をし、コリーも同様な反応をする。
ヴォルフは胸をドンと叩き、アピールする。
「骨のあるやつはオレが回収する。お前たちは、怪我をする前に戦闘不能者を回収するんだ。いいな?」
レオンとコリーは明確な指示を与えられ、頷く。
三人で話しているとすでに三組のチームができており、次の指示を待っていた。
「それじゃあ、ヤバいヤツはケガしないうちに回収するから、安心して戦ってくれ!では訓練開始!」
「「「おおおぉぉぉっ!!!」」」
大きな声と共に三つ巴の乱戦が始まっていくのであった。
魔法が飛び交い、それを避けつつそれぞれ牙や爪を相手に向けて闘い合う。
武器といったものは石斧や、石槍くらいしかないので誰も使わない。
犬系の種族なら牙、猫系なら爪、蹄を持つ者なら蹴り、前腕が強いものなら殴り、それぞれの種族の戦い方をしていく。
獣人同士の戦いならこの方法は通じるのだが、魔獣相手には殆ど有効打にもならない。
「やはり武具は使わないものですね……」
「まぁ一番使い慣れたものを使うのが良いからかもしれない」
レオンはコリーと同意見のようでヴォルフに意見を聴こうと振り返ると彼の姿はなく、辺りを見渡すと上空から【なに】かが落下し、乱戦している集団を吹き飛ばす。
「ウゥウォォォォォゥッ!!」
狼の咆哮がその場にいるすべての生き物の動きを止める。
いきなり大型の獣が出たことで、戦意を喪失していく。
集団に混ざっていない後方で魔法を放っていた者たちは、詠唱を行い魔法を組み上げる。
「『空気の塊を作り、敵を穿て!』」
「『土をほぐし、動きを止めよ!』」
「『飛び交う石つぶてに切り刻む力を与えん!』」
各々の魔法を放ち、狼を襲う。
しかし、あまりにも小さく、体毛に魔力を込めずとも生身で受けきった。
狼は周りに冷気を出すと、怒号が飛ぶ。
「ヴォルフ様っ!何をなされているのですか!!誰も貴方にかなうものはいませんから下がってください!」
レオンから叱責された狼ことヴォルフは耳と尻尾を垂らして退散しようとする。
集団の奥から、とてつもない魔力を感じその方向へ顔を向けると、大きな火球が飛んできた。
難なくかわすと、奥で膝をつくものがいた。
ヴォルフは一瞬で間合いを詰め、その者に接触すると、悔しそうに睨みつけられる。
「君、合格!」
ヴォルフに合格を言い渡されたのは小さな体をしたウサギ獣人の女の子であった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

現代ダンジョンで成り上がり!
カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる!
現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。
舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。
四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。
異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~
蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。
中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。
役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。

氷狼陛下のお茶会と溺愛は比例しない!フェンリル様と会話できるようになったらオプションがついてました!
屋月 トム伽
恋愛
ディティーリア国の末王女のフィリ―ネは、社交なども出させてもらえず、王宮の離れで軟禁同様にひっそりと育っていた。そして、18歳になると大国フェンヴィルム国の陛下に嫁ぐことになった。
どこにいても変わらない。それどころかやっと外に出られるのだと思い、フェンヴィルム国の陛下フェリクスのもとへと行くと、彼はフィリ―ネを「よく来てくれた」と迎え入れてくれた。
そんなフィリ―ネに、フェリクスは毎日一緒にお茶をして欲しいと頼んでくる。
そんなある日フェリクスの幻獣フェンリルに出会う。話相手のいないフィリ―ネはフェンリルと話がしたくて「心を通わせたい」とフェンリルに願う。
望んだとおりフェンリルと言葉が通じるようになったが、フェンリルの幻獣士フェリクスにまで異変が起きてしまい……お互いの心の声が聞こえるようになってしまった。
心の声が聞こえるのは、フェンリル様だけで十分なのですが!
※あらすじは時々書き直します!
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
公爵家に生まれて初日に跡継ぎ失格の烙印を押されましたが今日も元気に生きてます!
小択出新都
ファンタジー
異世界に転生して公爵家の娘に生まれてきたエトワだが、魔力をほとんどもたずに生まれてきたため、生後0ヶ月で跡継ぎ失格の烙印を押されてしまう。
跡継ぎ失格といっても、すぐに家を追い出されたりはしないし、学校にも通わせてもらえるし、15歳までに家を出ればいいから、まあ恵まれてるよね、とのんきに暮らしていたエトワ。
だけど跡継ぎ問題を解決するために、分家から同い年の少年少女たちからその候補が選ばれることになり。
彼らには試練として、エトワ(ともたされた家宝、むしろこっちがメイン)が15歳になるまでの護衛役が命ぜられることになった。
仮の主人というか、実質、案山子みたいなものとして、彼らに護衛されることになったエトワだが、一癖ある男の子たちから、素直な女の子までいろんな子がいて、困惑しつつも彼らの成長を見守ることにするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる