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あの日の気持ちを知る
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「正直言ってオレはふくのことが好きだ。それは千年前からで、今でも気持ちは変わることがない。お前たちの中で、ふくに迫害された種族や個体はいるだろう。それについては本当に申し訳ない。だが、ふくは夫のつ……つ……?つなまろ?」
「綱彦です」
「そ、そのツナ……ヒコ?ってやつが、野狐族全体を操っている可能性が高い」
ヴォルフの考察に観衆たちはどよめく。
それほどの人数の心を操り、長年君臨し続けている綱彦の恐ろしさを感じていた。
「オレや獅子頭、片眼の犬、ツナヒコにはある共通点がある。それはこの顔についた赤い模様、『王族変異』した者の証だ。これは非常に高い魔力を持ち、持っている魔法の強さで模様が変わる。見た感じオレ以外は同じ強さだと思われる。だから力ずくで引きずり降ろそうとすることもできるのだが、今回はそうしない。だからこの件に関して皆は首を突っ込まずにいてくれ。必ず解決すると約束しよう」
観衆から大きな拍手がヴォルフに送られる。
ヴォルフは再び頭を下げ、居城(城と呼べるようなものではないが)に戻った。
狼の姿に戻り、「ふーっ」と大きなため息をついて寝転がる。
(これでいいんだよな……?これがベストなんだよな……?)
不安になりながらもそう自分に言い聞かせていると、三人の獣人がヴォルフの前に跪く。
「なんだ?獅子頭と片眼の犬。それに今朝の羊じゃないか」
羊の女性は前に出てヴォルフの前足を両手で握る。
突然のことで目をまん丸にしていると、羊族の女性は泣き始めた。
なぜ涙を流しているのかわからず、慌てて獣人の姿になって正座する。
「ど、どうしたのだ!?お、オレ怖かった……?」
「違うんです。突然泣いてしまってごめんなさい……。子供は無事、息を吹き返しました。ヴォルフ様のおかげです……!」
ヴォルフは何のことなのか忘れてしまって覚えておらず、難しい顔をする。
レオンが一歩前に出て、助け船を出す。
「ヴォルフ様が今朝斃したドラゴンの生贄にされかけた子供のことです。その子の治療がうまくいき、落ち着きました」
「そりゃよかった」
ヴォルフは興味なさそうに返事をすると羊族の女性は地面に頭をこすりつけるほどのお辞儀をした。
「ヴォルフ様、このご恩は一生忘れません!この身をあなたに捧げたいのですが……」
「いや、子供の面倒見てあげて?その子供が軍門をくぐりたいっていうなら、多少は優遇するからさ」
「おほんっ!」
コリーに咳ばらいをされてヴォルフは何かを間違えたのかと悩む。
悩んでいるヴォルフにコリーは一言告げる。
「ヴォルフ様のところで働きたいと申しているのです」
「え?そうなの?……肉焼いたやつ作れる?」
「あ、はい!魔石を使えば私でもできます!」
そう言うと、コリーは羊族の女性を連れて外へと出ていった。
レオンはたてがみを手櫛で解きながら口を開く。
「あの者の子供も一緒に保護いたしましょうか?」
「そうだな、親子を離す理由にはならないな。それと、魔石を使ったらできるというのは何だ?」
「ああ、あれは石に魔力とその元素を組み込むと簡単に元素魔法を使うことができるという魔道具です。鳥人から技術を提供してもらい、なくてはならないものとなりました」
「ふうん。そうなんだ」
と興味なさそうに話を流していった。
しばらく転寝をして待っていると、香ばしいにおいが部屋の中を充満しヴォルフは目を覚ます。
大きな肉がいくつもヴォルフの目の前に置いてあり、全て調理済みであった。
涎をじゅるりと飲み込み、大きな口で食べようとしたが、思いとどまる。
突然食べることをやめたヴォルフに三人は顔を合わせて首を傾げる。
「まだ、肉は捕りにいけるか?片眼の犬」
「それは可能ですが……」
「獅子頭、この周辺に国民を集めろ。みんなで肉食べるぞってな」
三人はヴォルフの気遣いに感動し、姿勢を正して敬礼する。
「わたくしコリーはヴォルフ様の命をしかと受け取り達成いたします」
「ヴォルフ様の国民にも分け与えようという慈愛の心にレオンは感動いたしました!早速国民に呼びかけてまいります!」
「わ、わたしも草食の方々のために食べ物を探してきます!」
三人は一斉にそれぞれの仕事を全うするため飛び出していった。
ヴォルフはやれやれとため息を吐くと、居城前の広場に焼かれた肉を持っていき、そこで待つことにした。
ヒトはどんどん集まっていき、食糧難に近づきつつある国民たちの飢えを凌ぐ機会となり、心も体も胃袋を掌握した。
これはふくがネズミ族にやった事と同じだった。
国民が嬉しそうに食べるもの、涙を流すものもいる光景を見てヴォルフはより一層国民のために奮起しようと心の中で決意する。
ふくの気持ちが少し分かり夜になっていく空を見つめた。
大盛況の中、食事会は終わり、国民たちは自分たちの住処へと帰っていく。
ヴォルフが【親愛の契約】の真実を告げた事で、人種――種族の壁は取り払われ、既に異種族のパートナーを作った者もいたようである。
寝床に戻り、ドッと疲れを感じたヴォルフは狼の姿に戻り、物思いに更けたような顔をする。
一つの足音が聞こえ、聞き耳を立てているとそばに座りヴォルフの背中の毛を櫛で解いていく。
横目でチラッと見ると羊族の女性であり、レオンやコリーに認められたのか出入りを許されたようだ。
「ヴォルフ様、起きておられますか?」
「……ん?起きてるよ?」
羊族の女性は少し恥ずかしそうに照れ笑いすると頭を下げる。
なぜ頭を下げられたのか分からずキョトンとしていると彼女は口を開く。
「ヴォルフ様に私の身体を捧げたいので……受け取ってください……!」
肉食獣、草食獣の垣根も関係なく彼女は寄り添い、引っ付く。
ヴォルフはそのような事をする気は無く、獣人の姿となり引き剥がそうとすると上目遣いで少し怒った表情をする。
「据え膳食わねば男の恥……ですよ?」
上に跨り、確認しつつ、ヴォルフのものを最も簡単に咥え、甘い吐息が漏れる。
女性主導で進んでいたが、ヴォルフはそのまま体位を変え、押し倒す。
オスの力に少し怯えるが、気丈に振る舞い、ヴォルフを見つめる。
「一度きりだ。肉食獣の恐ろしさを知るといい……!」
この日最も多くのパートナーが結ばれた日となったのであった。
「綱彦です」
「そ、そのツナ……ヒコ?ってやつが、野狐族全体を操っている可能性が高い」
ヴォルフの考察に観衆たちはどよめく。
それほどの人数の心を操り、長年君臨し続けている綱彦の恐ろしさを感じていた。
「オレや獅子頭、片眼の犬、ツナヒコにはある共通点がある。それはこの顔についた赤い模様、『王族変異』した者の証だ。これは非常に高い魔力を持ち、持っている魔法の強さで模様が変わる。見た感じオレ以外は同じ強さだと思われる。だから力ずくで引きずり降ろそうとすることもできるのだが、今回はそうしない。だからこの件に関して皆は首を突っ込まずにいてくれ。必ず解決すると約束しよう」
観衆から大きな拍手がヴォルフに送られる。
ヴォルフは再び頭を下げ、居城(城と呼べるようなものではないが)に戻った。
狼の姿に戻り、「ふーっ」と大きなため息をついて寝転がる。
(これでいいんだよな……?これがベストなんだよな……?)
不安になりながらもそう自分に言い聞かせていると、三人の獣人がヴォルフの前に跪く。
「なんだ?獅子頭と片眼の犬。それに今朝の羊じゃないか」
羊の女性は前に出てヴォルフの前足を両手で握る。
突然のことで目をまん丸にしていると、羊族の女性は泣き始めた。
なぜ涙を流しているのかわからず、慌てて獣人の姿になって正座する。
「ど、どうしたのだ!?お、オレ怖かった……?」
「違うんです。突然泣いてしまってごめんなさい……。子供は無事、息を吹き返しました。ヴォルフ様のおかげです……!」
ヴォルフは何のことなのか忘れてしまって覚えておらず、難しい顔をする。
レオンが一歩前に出て、助け船を出す。
「ヴォルフ様が今朝斃したドラゴンの生贄にされかけた子供のことです。その子の治療がうまくいき、落ち着きました」
「そりゃよかった」
ヴォルフは興味なさそうに返事をすると羊族の女性は地面に頭をこすりつけるほどのお辞儀をした。
「ヴォルフ様、このご恩は一生忘れません!この身をあなたに捧げたいのですが……」
「いや、子供の面倒見てあげて?その子供が軍門をくぐりたいっていうなら、多少は優遇するからさ」
「おほんっ!」
コリーに咳ばらいをされてヴォルフは何かを間違えたのかと悩む。
悩んでいるヴォルフにコリーは一言告げる。
「ヴォルフ様のところで働きたいと申しているのです」
「え?そうなの?……肉焼いたやつ作れる?」
「あ、はい!魔石を使えば私でもできます!」
そう言うと、コリーは羊族の女性を連れて外へと出ていった。
レオンはたてがみを手櫛で解きながら口を開く。
「あの者の子供も一緒に保護いたしましょうか?」
「そうだな、親子を離す理由にはならないな。それと、魔石を使ったらできるというのは何だ?」
「ああ、あれは石に魔力とその元素を組み込むと簡単に元素魔法を使うことができるという魔道具です。鳥人から技術を提供してもらい、なくてはならないものとなりました」
「ふうん。そうなんだ」
と興味なさそうに話を流していった。
しばらく転寝をして待っていると、香ばしいにおいが部屋の中を充満しヴォルフは目を覚ます。
大きな肉がいくつもヴォルフの目の前に置いてあり、全て調理済みであった。
涎をじゅるりと飲み込み、大きな口で食べようとしたが、思いとどまる。
突然食べることをやめたヴォルフに三人は顔を合わせて首を傾げる。
「まだ、肉は捕りにいけるか?片眼の犬」
「それは可能ですが……」
「獅子頭、この周辺に国民を集めろ。みんなで肉食べるぞってな」
三人はヴォルフの気遣いに感動し、姿勢を正して敬礼する。
「わたくしコリーはヴォルフ様の命をしかと受け取り達成いたします」
「ヴォルフ様の国民にも分け与えようという慈愛の心にレオンは感動いたしました!早速国民に呼びかけてまいります!」
「わ、わたしも草食の方々のために食べ物を探してきます!」
三人は一斉にそれぞれの仕事を全うするため飛び出していった。
ヴォルフはやれやれとため息を吐くと、居城前の広場に焼かれた肉を持っていき、そこで待つことにした。
ヒトはどんどん集まっていき、食糧難に近づきつつある国民たちの飢えを凌ぐ機会となり、心も体も胃袋を掌握した。
これはふくがネズミ族にやった事と同じだった。
国民が嬉しそうに食べるもの、涙を流すものもいる光景を見てヴォルフはより一層国民のために奮起しようと心の中で決意する。
ふくの気持ちが少し分かり夜になっていく空を見つめた。
大盛況の中、食事会は終わり、国民たちは自分たちの住処へと帰っていく。
ヴォルフが【親愛の契約】の真実を告げた事で、人種――種族の壁は取り払われ、既に異種族のパートナーを作った者もいたようである。
寝床に戻り、ドッと疲れを感じたヴォルフは狼の姿に戻り、物思いに更けたような顔をする。
一つの足音が聞こえ、聞き耳を立てているとそばに座りヴォルフの背中の毛を櫛で解いていく。
横目でチラッと見ると羊族の女性であり、レオンやコリーに認められたのか出入りを許されたようだ。
「ヴォルフ様、起きておられますか?」
「……ん?起きてるよ?」
羊族の女性は少し恥ずかしそうに照れ笑いすると頭を下げる。
なぜ頭を下げられたのか分からずキョトンとしていると彼女は口を開く。
「ヴォルフ様に私の身体を捧げたいので……受け取ってください……!」
肉食獣、草食獣の垣根も関係なく彼女は寄り添い、引っ付く。
ヴォルフはそのような事をする気は無く、獣人の姿となり引き剥がそうとすると上目遣いで少し怒った表情をする。
「据え膳食わねば男の恥……ですよ?」
上に跨り、確認しつつ、ヴォルフのものを最も簡単に咥え、甘い吐息が漏れる。
女性主導で進んでいたが、ヴォルフはそのまま体位を変え、押し倒す。
オスの力に少し怯えるが、気丈に振る舞い、ヴォルフを見つめる。
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