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不届者がおったのじゃ
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川沿いを進んでいくと荒野から竹林へと変わっていく。
地面も柔らかめなものとなり、脚の負担が少なくなる。
——バチッ!
ふくは竹林を歩いていると何かしびれるものに当たり、周りを確認する。
すると死角から矢が飛んできて、ふくに当たる瞬間、ヴォルフは矢を咥える。
「敵か!?」
「みたいだね……非常に隠れるのがうまくてニオイが捉えきれない……!」
ふくは周りを見渡すが、やはり何も見えない。
埒が明かないのでふくは強硬手段をとることにした。
「わしらを狙う者よ。このまま姿を現さぬというならばこの辺りの竹林をすべて消し去るのじゃ!」
ふくは大声で、隠れているものに向けて脅しをかける。
しかし、脅しと思われたのか姿を現すことがなく竹の葉がカサカサと風に揺られる音しかしなかった。
ふくはため息をつき、ヴォルフの方へ向く。
「ぼるふ、どうやら痛い目に合わぬと分からぬらしい。この竹林全てを二度とはやすことができない土地に変えられるかの?」
「え……!?そんなことしていいの?」
「わしの命を狙っておるのじゃ。身を護るためにもそれくらいせねばならんじゃろう?」
「わ、わかった……!……でも、怒らないでよ?」
迷っているヴォルフを見て少しは成長したのだとふくは感じたが、心を鬼にして手合図でやるように促す。
ヴォルフは容赦をしないふくに戸惑いつつ、竹林地帯全てを凍土へ変えられるほどの魔力を放出した。
その瞬間、二人の前に一人の獣人が現れ、土下座する。
「も、申し訳ございません!こ、攻撃はしないので、どうか村だけは……この一帯には危害を加えないでほしい……!」
「嫌じゃ」
「そこを何とか……!」
都合よく謝罪をしているように見えたふくはヴォルフの尻をポンポンと叩き、命ずる。
「ぼるふ、このクソギツネを食ってしまえ」
今までの様子と違うふくをみてヴォルフは戸惑う。
そしてクソギツネと呼ばれたキツネの見た目をした女はヴォルフの姿を見て泡を吹いて失神した。
「ほ、本当に食べる?」
「食べるわけなかろう。腹を壊すのじゃ」
「ほっ……。で、どうするの?」
「こやつを背負って集落まで行くのじゃ。こりいの集落の時と同じじゃ」
そう言うとふくは先へ歩いて行った。
ヴォルフは急いで獣人の姿になり、キツネの女を拾い上げ、ふくを追いかけた。
進んでいくと何故か進まない気がして立ち止まる。
「ふく、どうしたの?」
「……同じところを歩かされておる気がするの」
「本当に?」
ヴォルフはクンクンとニオイを嗅ぐが、そのような気配はなかった。
しかし、今まで歩いていたところのニオイが全て消えていることに気がついた。
「どうして気づいたの?」
「わからぬが……勘じゃ」
「うぅ……!」
キツネの女は目を覚まし、状況を確認する。
ふくは腕を組んで女を睨む。
女も同じようにふくを睨見返した。
「ぼるふ、こやつの手足を凍らせて動けなくさせるのじゃ」
「それなら簡単だよ」
ヴォルフは女の手足を氷の枷で固定し地面に置く。
その上、氷の檻を作り閉じ込める。
ふくは女を睨み、訊ねる。
「この魔法はどうやって解くのじゃ?」
「答えるわけ……ないだろ……!」
「ほう、それなら邪神のエサにでもなるか?」
「そ、それでも……村を守るためならこの生命を喰らえばいいっ!」
ふくは大きくため息を吐き、ヴォルフの肩に手を載せる。
「村ごと凍らせてしまえ」
短くそう告げた言葉は非常に重く、女は青ざめ、ヴォルフは焦り始める。
顔を見ていないが、完全に怒っている口調でヴォルフはどうしようもなくなってしまう。
村とふくを天秤に掛けるが、どう考えてもふくの方が大きいので仕方無く魔力を解放していく。
その圧力に女は恐怖し、再び気を失った。
ふくは頭を掻き、頭に魔力を集中させるのだった。
§
目を開けると久しぶりの書庫に辿り着く。
そして恒例の本が落下する。
それを拾うと【解術】と書かれたページだった。
「解術は厳密には魔法ではない。……どう言うことじゃ?どれどれ……魔法の起点となっている所に魔力の塊を押し付けることでその魔法を破壊する事ができる」
どうやら魔法ではない方法であり、ふくは困惑する。
そもそも魔法の出所が分かっていればそれを叩けば良いのだが、今回は巧妙に隠されてある。
「どうすれば良いのじゃ……。魔法の出所なんて見える方法はないじゃろうて……」
と呟くとページが自動的にめくられ、【野狐族】と書かれたページになる。
「野狐族……目に特殊な力を持ち、目に魔力を込める事で魔法の痕跡やほんの少し前の出来事を見る事ができる……。ほう、わしはそのような事ができるのか……。ならばやってみるしかないの」
本を棚に戻し、ヴォルフの所へ戻ろうとした時、ふくは虚空に声をかける。
「……お前はわしの魔法で間違い無いのかの?」
何も答えは帰ってこなかった。
ふくはため息をついてヴォルフの所を想像するのであった。
§
「ふく……本当に凍らせても良いんだよね……?」
ヴォルフは恐る恐るふくに訊く。
帰ってきたふくはヴォルフの手を握って首を横に振る。
安心して魔力を解く。
「この癖のある魔法の答えが分かったのじゃ。ぼるふ、見ておくのじゃ」
そう言うとふくは目に魔力をため始めた。
ヴォルフは何をしているのか分からず首を傾げるのである。
地面も柔らかめなものとなり、脚の負担が少なくなる。
——バチッ!
ふくは竹林を歩いていると何かしびれるものに当たり、周りを確認する。
すると死角から矢が飛んできて、ふくに当たる瞬間、ヴォルフは矢を咥える。
「敵か!?」
「みたいだね……非常に隠れるのがうまくてニオイが捉えきれない……!」
ふくは周りを見渡すが、やはり何も見えない。
埒が明かないのでふくは強硬手段をとることにした。
「わしらを狙う者よ。このまま姿を現さぬというならばこの辺りの竹林をすべて消し去るのじゃ!」
ふくは大声で、隠れているものに向けて脅しをかける。
しかし、脅しと思われたのか姿を現すことがなく竹の葉がカサカサと風に揺られる音しかしなかった。
ふくはため息をつき、ヴォルフの方へ向く。
「ぼるふ、どうやら痛い目に合わぬと分からぬらしい。この竹林全てを二度とはやすことができない土地に変えられるかの?」
「え……!?そんなことしていいの?」
「わしの命を狙っておるのじゃ。身を護るためにもそれくらいせねばならんじゃろう?」
「わ、わかった……!……でも、怒らないでよ?」
迷っているヴォルフを見て少しは成長したのだとふくは感じたが、心を鬼にして手合図でやるように促す。
ヴォルフは容赦をしないふくに戸惑いつつ、竹林地帯全てを凍土へ変えられるほどの魔力を放出した。
その瞬間、二人の前に一人の獣人が現れ、土下座する。
「も、申し訳ございません!こ、攻撃はしないので、どうか村だけは……この一帯には危害を加えないでほしい……!」
「嫌じゃ」
「そこを何とか……!」
都合よく謝罪をしているように見えたふくはヴォルフの尻をポンポンと叩き、命ずる。
「ぼるふ、このクソギツネを食ってしまえ」
今までの様子と違うふくをみてヴォルフは戸惑う。
そしてクソギツネと呼ばれたキツネの見た目をした女はヴォルフの姿を見て泡を吹いて失神した。
「ほ、本当に食べる?」
「食べるわけなかろう。腹を壊すのじゃ」
「ほっ……。で、どうするの?」
「こやつを背負って集落まで行くのじゃ。こりいの集落の時と同じじゃ」
そう言うとふくは先へ歩いて行った。
ヴォルフは急いで獣人の姿になり、キツネの女を拾い上げ、ふくを追いかけた。
進んでいくと何故か進まない気がして立ち止まる。
「ふく、どうしたの?」
「……同じところを歩かされておる気がするの」
「本当に?」
ヴォルフはクンクンとニオイを嗅ぐが、そのような気配はなかった。
しかし、今まで歩いていたところのニオイが全て消えていることに気がついた。
「どうして気づいたの?」
「わからぬが……勘じゃ」
「うぅ……!」
キツネの女は目を覚まし、状況を確認する。
ふくは腕を組んで女を睨む。
女も同じようにふくを睨見返した。
「ぼるふ、こやつの手足を凍らせて動けなくさせるのじゃ」
「それなら簡単だよ」
ヴォルフは女の手足を氷の枷で固定し地面に置く。
その上、氷の檻を作り閉じ込める。
ふくは女を睨み、訊ねる。
「この魔法はどうやって解くのじゃ?」
「答えるわけ……ないだろ……!」
「ほう、それなら邪神のエサにでもなるか?」
「そ、それでも……村を守るためならこの生命を喰らえばいいっ!」
ふくは大きくため息を吐き、ヴォルフの肩に手を載せる。
「村ごと凍らせてしまえ」
短くそう告げた言葉は非常に重く、女は青ざめ、ヴォルフは焦り始める。
顔を見ていないが、完全に怒っている口調でヴォルフはどうしようもなくなってしまう。
村とふくを天秤に掛けるが、どう考えてもふくの方が大きいので仕方無く魔力を解放していく。
その圧力に女は恐怖し、再び気を失った。
ふくは頭を掻き、頭に魔力を集中させるのだった。
§
目を開けると久しぶりの書庫に辿り着く。
そして恒例の本が落下する。
それを拾うと【解術】と書かれたページだった。
「解術は厳密には魔法ではない。……どう言うことじゃ?どれどれ……魔法の起点となっている所に魔力の塊を押し付けることでその魔法を破壊する事ができる」
どうやら魔法ではない方法であり、ふくは困惑する。
そもそも魔法の出所が分かっていればそれを叩けば良いのだが、今回は巧妙に隠されてある。
「どうすれば良いのじゃ……。魔法の出所なんて見える方法はないじゃろうて……」
と呟くとページが自動的にめくられ、【野狐族】と書かれたページになる。
「野狐族……目に特殊な力を持ち、目に魔力を込める事で魔法の痕跡やほんの少し前の出来事を見る事ができる……。ほう、わしはそのような事ができるのか……。ならばやってみるしかないの」
本を棚に戻し、ヴォルフの所へ戻ろうとした時、ふくは虚空に声をかける。
「……お前はわしの魔法で間違い無いのかの?」
何も答えは帰ってこなかった。
ふくはため息をついてヴォルフの所を想像するのであった。
§
「ふく……本当に凍らせても良いんだよね……?」
ヴォルフは恐る恐るふくに訊く。
帰ってきたふくはヴォルフの手を握って首を横に振る。
安心して魔力を解く。
「この癖のある魔法の答えが分かったのじゃ。ぼるふ、見ておくのじゃ」
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