32 / 108
久しぶりの風呂なのじゃ
しおりを挟む
コロンに案内され、到着したところは大浴場だった。
ヴォルフが狼の姿になっても二頭分入られるほどの広さだった。
コロンは服を脱ぎ始め、洗い場に椅子などを準備していく。
「ええっと……ヴォルフ様はオスなので……」
「堅いことを言うでない。オレも風呂に入りたいし……」
「変態犬じゃの。ころんよ、すまぬな。あの変態犬はわしから離れぬよう言いつけておるのじゃ。必要ならお前は隠すと良いぞ」
「あ、はい……ご配慮ありがとうございます……!」
三人は洗い場に行くと、コロンは身体を擦る棒を持ち、ふくの背中を洗っていく。
「か、かゆい所はございませんか?」
「うむ、大丈夫なのじゃ。その緑色の液体は薬なのかの?」
「くすり?というものは存じませんが、虫よけの葉っぱをすりつぶして、濾したものになります。これで洗えば付いた虫を払えて、新たに虫が付くのを防いでくれます」
「良いにおいのする薬じゃ。ええのう……」
背中を洗い終えたコロンは前に座り、洗っていく。
「わあ……!」
コロンはふくの豊満な胸の大きさと感触に感動しているようだった。
ふくは感動されて嬉しいような、恥ずかしい気持ちになり、目を背ける。
どうやらすべて洗い終えたようで、ヴォルフの背中を洗っていく。
手つきがぎこちなく、顔もかなり強張っていた。
ヴォルフの恐怖が小さくなるにはまだまだ時間がかかりそうである。
背中を洗い終えると、コロンは一歩下がる。
「あれ?お腹とかは?」
「も、申し訳ございません。さすがに男性の聖域を拝むわけにはいきませんので……」
コロンはうつむいてもじもじする。
小さいとはいえ、そう言ったことを意識する年頃ではあるとふくは感じると、コロンから体擦り棒を取り上げ、ふくが洗っていく。
ごしごしと雑に洗い、男性の象徴も絶に荒っぽくこすり上げていく。
「い、痛い痛い痛いっ!?」
雑に洗うとさすがに神とはいえ痛いものは痛い。
ふくはふんっと鼻息を鳴らし、コロンの元に行く。
「ころんも洗うのじゃ。わしは洗ってもらったからの」
「だ、大丈夫ですよ!?じ、自分で洗えますので——あ、気持ちいいです……」
「じゃろうの。ころんは自由に空を飛ぶことができるのかの?」
「い、いえ……魔力が少ないので少しの間だけです」
長く飛べないことに少ししょんぼりするコロンであったが、ふくは励ましの言葉をかける。
「魔力がなくなって眠るぐらいまで使い切れば長く使えるようになるようじゃ」
ふくの言葉を聞き、コロンは驚く。
基本的に魔力がなくなってしまうと強制的に休眠させられ、その間は無防備になるので誰もそこまでしなかった。
「そ、そうなると襲われたりしませんか?」
「すべて蹴散らすまで戦ってから寝るのじゃ。わしはそれで複合魔法をいくつか使っても平気になったのじゃから、保証はする」
ふくがそう説明するとコロンの目が輝いていた。
やっと心を開いてくれたように感じ、ふくは安心する。
お互い洗い終え、湯船につかると自然とため息がこぼれる。
「ほあ……ええ湯じゃ……。いつぶりかのう……」
ヴォルフは初めての風呂で湯船のお湯に警戒していた。
そんなことをしてコロンはヴォルフの意外な一面をみて思わず笑ってしまう。
すぐに「しまった」と笑うのをやめて、委縮する。
そんなコロンの頭を撫でる。
「あやつを笑っても別に罰はありゃせん。笑いたきゃ笑えばよいのじゃ」
「ふく様はどうしてそんなに優しいのですか?」
「む……それはの……」
コロンにネズミ族の集落であった出来事とは別にコムギとチュータローのことを話した。
成人していないコロンには少々難しい内容だったようだが、異種族でも愛情をもって接していたということが分かり、コロンは自然とふくに懐いていた。
三人は風呂から上がると、衣装が準備されていた。
これで裸から解放されたふくは満足そうな顔をし、ヴォルフは服を着る習慣がないため、しきりに背中や脇などを確認していた。
そして再びコリーの家まで行き、話が始まる。
「私たちがあなたの国に行くことで何をすればよいのですか?」
「うむ……当面は国の要と言える農作物などを育てるために水を引いたりせねばならんじゃろう」
「そうですか。では何人か派遣しましょう。一度に集落から人を出すのは困難ですから」
「それが良いじゃ——」
ドゴオオオオオッ!
突然集落の広場の方から大きな音がし、地鳴りが起こる。
ヴォルフとふくの魔力感知にどす黒いものを感じとる。
ふくは表情を険しくし、走って音のする方へ家を出ていった。
「ふく!一人じゃ危険だ!」
「一体何が起きているのか!?」
「アンタは集落のニンゲンを逃がせ!巻き添え食らってネズミ族と同じ目にあうぞ!」
ヴォルフもふく同様に走っていく。
「コロン。村のヒトを頼む」
「わ、わかりました……!」
(間に合え……!もう、あのような目には合わせられぬ……!)
走っていると突然の浮遊感がしたと思うと、ヴォルフの背中に乗せられる。
ギリィと歯を鳴らし、集落の中央へ向かうのだった。
ヴォルフが狼の姿になっても二頭分入られるほどの広さだった。
コロンは服を脱ぎ始め、洗い場に椅子などを準備していく。
「ええっと……ヴォルフ様はオスなので……」
「堅いことを言うでない。オレも風呂に入りたいし……」
「変態犬じゃの。ころんよ、すまぬな。あの変態犬はわしから離れぬよう言いつけておるのじゃ。必要ならお前は隠すと良いぞ」
「あ、はい……ご配慮ありがとうございます……!」
三人は洗い場に行くと、コロンは身体を擦る棒を持ち、ふくの背中を洗っていく。
「か、かゆい所はございませんか?」
「うむ、大丈夫なのじゃ。その緑色の液体は薬なのかの?」
「くすり?というものは存じませんが、虫よけの葉っぱをすりつぶして、濾したものになります。これで洗えば付いた虫を払えて、新たに虫が付くのを防いでくれます」
「良いにおいのする薬じゃ。ええのう……」
背中を洗い終えたコロンは前に座り、洗っていく。
「わあ……!」
コロンはふくの豊満な胸の大きさと感触に感動しているようだった。
ふくは感動されて嬉しいような、恥ずかしい気持ちになり、目を背ける。
どうやらすべて洗い終えたようで、ヴォルフの背中を洗っていく。
手つきがぎこちなく、顔もかなり強張っていた。
ヴォルフの恐怖が小さくなるにはまだまだ時間がかかりそうである。
背中を洗い終えると、コロンは一歩下がる。
「あれ?お腹とかは?」
「も、申し訳ございません。さすがに男性の聖域を拝むわけにはいきませんので……」
コロンはうつむいてもじもじする。
小さいとはいえ、そう言ったことを意識する年頃ではあるとふくは感じると、コロンから体擦り棒を取り上げ、ふくが洗っていく。
ごしごしと雑に洗い、男性の象徴も絶に荒っぽくこすり上げていく。
「い、痛い痛い痛いっ!?」
雑に洗うとさすがに神とはいえ痛いものは痛い。
ふくはふんっと鼻息を鳴らし、コロンの元に行く。
「ころんも洗うのじゃ。わしは洗ってもらったからの」
「だ、大丈夫ですよ!?じ、自分で洗えますので——あ、気持ちいいです……」
「じゃろうの。ころんは自由に空を飛ぶことができるのかの?」
「い、いえ……魔力が少ないので少しの間だけです」
長く飛べないことに少ししょんぼりするコロンであったが、ふくは励ましの言葉をかける。
「魔力がなくなって眠るぐらいまで使い切れば長く使えるようになるようじゃ」
ふくの言葉を聞き、コロンは驚く。
基本的に魔力がなくなってしまうと強制的に休眠させられ、その間は無防備になるので誰もそこまでしなかった。
「そ、そうなると襲われたりしませんか?」
「すべて蹴散らすまで戦ってから寝るのじゃ。わしはそれで複合魔法をいくつか使っても平気になったのじゃから、保証はする」
ふくがそう説明するとコロンの目が輝いていた。
やっと心を開いてくれたように感じ、ふくは安心する。
お互い洗い終え、湯船につかると自然とため息がこぼれる。
「ほあ……ええ湯じゃ……。いつぶりかのう……」
ヴォルフは初めての風呂で湯船のお湯に警戒していた。
そんなことをしてコロンはヴォルフの意外な一面をみて思わず笑ってしまう。
すぐに「しまった」と笑うのをやめて、委縮する。
そんなコロンの頭を撫でる。
「あやつを笑っても別に罰はありゃせん。笑いたきゃ笑えばよいのじゃ」
「ふく様はどうしてそんなに優しいのですか?」
「む……それはの……」
コロンにネズミ族の集落であった出来事とは別にコムギとチュータローのことを話した。
成人していないコロンには少々難しい内容だったようだが、異種族でも愛情をもって接していたということが分かり、コロンは自然とふくに懐いていた。
三人は風呂から上がると、衣装が準備されていた。
これで裸から解放されたふくは満足そうな顔をし、ヴォルフは服を着る習慣がないため、しきりに背中や脇などを確認していた。
そして再びコリーの家まで行き、話が始まる。
「私たちがあなたの国に行くことで何をすればよいのですか?」
「うむ……当面は国の要と言える農作物などを育てるために水を引いたりせねばならんじゃろう」
「そうですか。では何人か派遣しましょう。一度に集落から人を出すのは困難ですから」
「それが良いじゃ——」
ドゴオオオオオッ!
突然集落の広場の方から大きな音がし、地鳴りが起こる。
ヴォルフとふくの魔力感知にどす黒いものを感じとる。
ふくは表情を険しくし、走って音のする方へ家を出ていった。
「ふく!一人じゃ危険だ!」
「一体何が起きているのか!?」
「アンタは集落のニンゲンを逃がせ!巻き添え食らってネズミ族と同じ目にあうぞ!」
ヴォルフもふく同様に走っていく。
「コロン。村のヒトを頼む」
「わ、わかりました……!」
(間に合え……!もう、あのような目には合わせられぬ……!)
走っていると突然の浮遊感がしたと思うと、ヴォルフの背中に乗せられる。
ギリィと歯を鳴らし、集落の中央へ向かうのだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
荒野のオオカミと砂漠のキツネ
Haruki
恋愛
とあるキツネ族に恋してしまったオオカミ
しかしその二つの種族はとある問題で対立中であった…
そんな国同士のいざこざに巻き込まれるオオカミの葛藤を描いた、
二匹…いや二人の恋物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる