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鳥頭と遊んでみるのじゃ
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ジリジリと間合いを確認するジェット。
ホークスの隊員が空を飛び、上空からふくを狙う。
しかし、レオンによってふくとジェットの一騎打ちを邪魔させないように引きつける。
ジェットは抜いても問題のない羽根を抜き、空中に放り投げる。
「『風の力よ、我の羽の矢に空気の道を作り、敵を撃ち抜け!』」
ふわふわと落下していた羽根に空気による推進力を得ることで、ふくに目掛けて矢のように飛翔する。
腕を組んだまま、ふくはニヤリと笑う。
「詠唱とやらは長いものよ。」
ふくは掌を翳し、羽の軌道が急に下向きになり、地面に刺さる。
詠唱を挟まず魔法を行使し、ジェットは驚く。
元素魔法は以前ヴォルフが言っていたようにイメージを明確に言葉にする必要がある。
それは言葉にすると非常に簡単なものだが、頭の中で念じるとなると非常に難しい。
そして、それだけでなく各元素に素養がなければ使うことができないのが通例である。
今回ふくが使ったのは空気の塊を使って羽根の矢を地面に押しつぶした。
それだけなのだが、やはり詠唱を挟まないのはそれだけ高度な魔法技量を持っていることがわかる。
「こんな実力者が獣の国に居たのか……!?」
「鳥頭よ、わしはお前を焼いて食べてみようと思っておるのじゃが、美味しいと思うか?」
「……!?」
凶悪な笑みを浮かべるふくを見てジェットは背筋がゾクっとなり、命の危険を感じる。
(焼いて……食べる……?俺を……?!)
「『灼熱の業火』」
一瞬、気を取られたところに火柱がジェットを襲う。
直撃寸前で何とか回避することができたが、巻き起こる火柱は本当に焼き鳥にする火力であった。
「【灼熱】を……!?まさか、火と風を使うのか……!?」
「まさか!それだけではないぞ?」
両手を広げておにぎりを握るように、手を包み込む。
するとジェットの身体を水塊が包み込み、そのまま窒息を狙いにいく。
(はあ……!?水まで素養が……!?ウソだろ……!そんなヤツ聞いたことない……!仕方ない、剣の魔道具の力を使うしかない……!)
ジェットは剣に魔力を込めて空を斬ると風が巻き起こり、水塊は吹き飛ばされる。
窮地と思われたジェットは何とか水塊から抜け出し、地上に降りる。
ふくを前に空中のアドバンテージは全く意味がないものであった。
「あやつも詠唱をせずに風を出すことができるようじゃの」
「いえ、あれは剣の形をした魔道具です」
レオンがジェットのカラクリの答えを出すが、ふくは首を傾げていた。
「まどうぐ……とは何ぞや?」
「し、知らないのですか……?」
「知るわけなかろう。わしはこの世界に落ちて一月も経っておらん。魔法もこの前使えるようになったばかりじゃからの」
その発言でレオンとジェット、ホークスの隊員たちは凍りついた。
目の前で隊長と互角の勝負をしていた魔法使いは熟練の魔法使いではなく、新人だったのだから。
誰も言葉を出すことができず呆然としているとふくは少し機嫌が悪くなる。
「説明を待ってるのじゃが、誰も喋らんようになったの。まあ良い、あの剣を破壊すれば良いのじゃな」
ふくは魔力を昂らせ、魔法の威力を上げる準備をする。
そしてジェットに向けて冷たく琥珀色に輝く瞳を向け、見下す。
「詠唱とやらは魔法を正確に使うものじゃ。それは最低の威力を保証するものではないのじゃ。詠唱はもっと大きく強い力を行使するためにあるのじゃ」
「言っている意味がわか――」
「『天空より煌めく力よ……その力を一点に集め、全てを破壊――』」
「ふく様!待ってください!竜人がこちらに来ます!」
レオンはふくの魔法が発動する前に止めさせる。
竜人と言う単語を聞き、ふくは魔法を使うのを止める。
「りゅうじんとはなんじゃ?」
「鱗を持ったヒト……と言ったらいいでしょうか……。とにかくアイツらは邪神ヴォルフがいた事で攻めてきませんでしたが、非常に野蛮で見境無く殺してくるくらい残忍です」
「鳥頭」
「ジェットだ……!」
「しらん。鱗持ちが来るようじゃ。とりあえず止めにせぬか?」
意外な提示をされジェットは一瞬迷ったが、ふくを睨みつける。
「竜人もこの国を狙っているんだ!お前たち獣人を支配下に置いた暁には竜人を斃し、この世界を支配する!」
「無理じゃろ」
「無理ですね」
ふくとレオンに無理だと即答される。
イライラした様子でその理由を確かめる。
「なんで……そんなことが言えるんだっ!」
「わしがお前をたべ――」
「ごほんっ!お前たちはホークスとアルバトロスの複合部隊であろう?竜人は総動員で数が違う……!いくら我々を支配下に置いたところで、戦闘能力に差がありすぎて勝ち目はない!それならばふく様と共闘すればワンチャン勝ち目があるはずだ……!」
「そのあとわしがお前を食べるのじゃ。誰が何と言おうが食べてやるのじゃ!」
「ふく様、本当にやめましょう?お腹壊しますって……」
レオンの言っていることは間違いないのだろうとジェットは思う。
それは今まで何度か手合わせをした時に彼は戦況をよく見て、適宜部隊を動かし、何度も撤退を余儀なくされていたからだ。
そのレオンが勝ち目がないといい、目の前の狐を使った方がまだ勝ち目があると言うのだ。
この狐に何があるのか興味が湧いてきた。
「レオン。お前がそこまで言うなら本当にそうなのであろう。だが、俺たちはセイラ様のために動いている……。」
「ならばその『せいら』と言うものをここに寄越すがいい。お前では遊び相手にしかならぬ」
「ふく様!またそんな挑発して!」
「ふざけるな!王が自らの足で戦地に向かうなんてあってたまるか!」
剣の魔道具を掲げた瞬間、ふくとジェット間に巨大が割って入った。
全身鱗を持った竜人が……。
ホークスの隊員が空を飛び、上空からふくを狙う。
しかし、レオンによってふくとジェットの一騎打ちを邪魔させないように引きつける。
ジェットは抜いても問題のない羽根を抜き、空中に放り投げる。
「『風の力よ、我の羽の矢に空気の道を作り、敵を撃ち抜け!』」
ふわふわと落下していた羽根に空気による推進力を得ることで、ふくに目掛けて矢のように飛翔する。
腕を組んだまま、ふくはニヤリと笑う。
「詠唱とやらは長いものよ。」
ふくは掌を翳し、羽の軌道が急に下向きになり、地面に刺さる。
詠唱を挟まず魔法を行使し、ジェットは驚く。
元素魔法は以前ヴォルフが言っていたようにイメージを明確に言葉にする必要がある。
それは言葉にすると非常に簡単なものだが、頭の中で念じるとなると非常に難しい。
そして、それだけでなく各元素に素養がなければ使うことができないのが通例である。
今回ふくが使ったのは空気の塊を使って羽根の矢を地面に押しつぶした。
それだけなのだが、やはり詠唱を挟まないのはそれだけ高度な魔法技量を持っていることがわかる。
「こんな実力者が獣の国に居たのか……!?」
「鳥頭よ、わしはお前を焼いて食べてみようと思っておるのじゃが、美味しいと思うか?」
「……!?」
凶悪な笑みを浮かべるふくを見てジェットは背筋がゾクっとなり、命の危険を感じる。
(焼いて……食べる……?俺を……?!)
「『灼熱の業火』」
一瞬、気を取られたところに火柱がジェットを襲う。
直撃寸前で何とか回避することができたが、巻き起こる火柱は本当に焼き鳥にする火力であった。
「【灼熱】を……!?まさか、火と風を使うのか……!?」
「まさか!それだけではないぞ?」
両手を広げておにぎりを握るように、手を包み込む。
するとジェットの身体を水塊が包み込み、そのまま窒息を狙いにいく。
(はあ……!?水まで素養が……!?ウソだろ……!そんなヤツ聞いたことない……!仕方ない、剣の魔道具の力を使うしかない……!)
ジェットは剣に魔力を込めて空を斬ると風が巻き起こり、水塊は吹き飛ばされる。
窮地と思われたジェットは何とか水塊から抜け出し、地上に降りる。
ふくを前に空中のアドバンテージは全く意味がないものであった。
「あやつも詠唱をせずに風を出すことができるようじゃの」
「いえ、あれは剣の形をした魔道具です」
レオンがジェットのカラクリの答えを出すが、ふくは首を傾げていた。
「まどうぐ……とは何ぞや?」
「し、知らないのですか……?」
「知るわけなかろう。わしはこの世界に落ちて一月も経っておらん。魔法もこの前使えるようになったばかりじゃからの」
その発言でレオンとジェット、ホークスの隊員たちは凍りついた。
目の前で隊長と互角の勝負をしていた魔法使いは熟練の魔法使いではなく、新人だったのだから。
誰も言葉を出すことができず呆然としているとふくは少し機嫌が悪くなる。
「説明を待ってるのじゃが、誰も喋らんようになったの。まあ良い、あの剣を破壊すれば良いのじゃな」
ふくは魔力を昂らせ、魔法の威力を上げる準備をする。
そしてジェットに向けて冷たく琥珀色に輝く瞳を向け、見下す。
「詠唱とやらは魔法を正確に使うものじゃ。それは最低の威力を保証するものではないのじゃ。詠唱はもっと大きく強い力を行使するためにあるのじゃ」
「言っている意味がわか――」
「『天空より煌めく力よ……その力を一点に集め、全てを破壊――』」
「ふく様!待ってください!竜人がこちらに来ます!」
レオンはふくの魔法が発動する前に止めさせる。
竜人と言う単語を聞き、ふくは魔法を使うのを止める。
「りゅうじんとはなんじゃ?」
「鱗を持ったヒト……と言ったらいいでしょうか……。とにかくアイツらは邪神ヴォルフがいた事で攻めてきませんでしたが、非常に野蛮で見境無く殺してくるくらい残忍です」
「鳥頭」
「ジェットだ……!」
「しらん。鱗持ちが来るようじゃ。とりあえず止めにせぬか?」
意外な提示をされジェットは一瞬迷ったが、ふくを睨みつける。
「竜人もこの国を狙っているんだ!お前たち獣人を支配下に置いた暁には竜人を斃し、この世界を支配する!」
「無理じゃろ」
「無理ですね」
ふくとレオンに無理だと即答される。
イライラした様子でその理由を確かめる。
「なんで……そんなことが言えるんだっ!」
「わしがお前をたべ――」
「ごほんっ!お前たちはホークスとアルバトロスの複合部隊であろう?竜人は総動員で数が違う……!いくら我々を支配下に置いたところで、戦闘能力に差がありすぎて勝ち目はない!それならばふく様と共闘すればワンチャン勝ち目があるはずだ……!」
「そのあとわしがお前を食べるのじゃ。誰が何と言おうが食べてやるのじゃ!」
「ふく様、本当にやめましょう?お腹壊しますって……」
レオンの言っていることは間違いないのだろうとジェットは思う。
それは今まで何度か手合わせをした時に彼は戦況をよく見て、適宜部隊を動かし、何度も撤退を余儀なくされていたからだ。
そのレオンが勝ち目がないといい、目の前の狐を使った方がまだ勝ち目があると言うのだ。
この狐に何があるのか興味が湧いてきた。
「レオン。お前がそこまで言うなら本当にそうなのであろう。だが、俺たちはセイラ様のために動いている……。」
「ならばその『せいら』と言うものをここに寄越すがいい。お前では遊び相手にしかならぬ」
「ふく様!またそんな挑発して!」
「ふざけるな!王が自らの足で戦地に向かうなんてあってたまるか!」
剣の魔道具を掲げた瞬間、ふくとジェット間に巨大が割って入った。
全身鱗を持った竜人が……。
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