16 / 108
たくさん魔法を使ったのじゃ
しおりを挟む
結局、コムギの説明ではふくの理解力が追い付かず、書庫に頼って何とか理解することができた。
「全くもって空気とは不思議なものじゃのう。目には見えぬものが複数組み合わさり、ちょうどよい塩梅でのみヒトが過ごすことができるとはの」
「はい。わたくしは風魔法を操れないのですが、きっと酸素だけを取り出すことができて【灼熱】を使用することができるかもしれません」
「ちょっといいか?」
突然ヴォルフが話しかけて二人の傍に座る。
コムギはふくに慣れたがヴォルフには慣れておらず、委縮して固まる。
彼女にとって邪神ヴォルフは相当怖いものだと認識し、耳をペタリと倒して悲しさを表現する。
「ぼるふ、何の用じゃ?」
「空気の中から燃えるやつを絞るのは【炎】の複合魔法だぞ?」
「どう違うというのじゃ?」
ヴォルフから【炎】という新たな複合魔法を告げられ、ふくは疑問を持つ。
「【炎】は圧倒的な火力で焼き尽くす魔法で、【灼熱】火と熱を使って焼いていく魔法だったはず。どっちも強い火なんだけど、効率よく長時間燃やすなら【灼熱】だよ。」
ふくは手をポンと叩き、理解する。
「竃の火をくべるのが【灼熱】じゃの!あれなら確かに風を送って火力と熱を底上げできるの」
「カマド……ってなんですか?」
どうやら本当に料理というものがこの世界にはないらしく、竃の存在をネズミ族もヴォルフも理解していないようであった。
「……色々教えんとならんようじゃの。まずは畑からじゃ。ぼるふよ、灰になるまで焼くなら【灼熱】とやらで十分なのじゃな?」
ヴォルフは自信満々で頷くと再び風と火の魔力を手に取り考える。
幼少期の頃、母より竈の火の焚き方を思い出す。
(風は火の近くで吹かせず、少し離れたところから風を送る……。そして一か所に空気を当てず、竈の中の空気をまわすように吹かせる……)
人間の時代の頃を思い出し、自身の母のことを思い出していると、掌には火の魔力が一つ、風の魔力が六つできており、火の魔力を囲むように風の魔力が均一な間隔で並んでいた。
それを上空へ抛り投げると拍手を二度、パンッ……パンッと鳴らし、そのまま手を合わせる。
ヴォルフ、コムギ、チュータロー、ネズミ族一同はふくの行動に釘付けとなる。
ふくは意識を集中すると舞いながら詠唱を開始する。
「『炎の神よ、小さな火種をその風により大きく昇華し、供物を焼き尽くせ……。土地の神よ、供物の灰より新たな魂の芽吹きを……。この地を豊かなものにし、繁栄を促さん……』」
炎はドーム状に燃え盛り、周りに延焼しないようにふくは風をコントロールしていた。
高熱効果力の炎は見る見る魔獣の死体を焼いていき、骨も灰となった。
燃焼物がなくなり、ふくは【灼熱】を打ち消し、土の魔法へ転換し、地面を耕し水の魔法でを少々練り込んで湿潤なものにする。
一度にすべての元素を使ったことでふくの疲労が極限まで達するが、気力を振り絞り、再び拍手を二度鳴らす。
「『豊穣の神よ、この畑にそなたの力を以って恵みを与えん!』」
息を切らし、跪きつつ手を祈るように組む。
表情からも非常に苦しいものだと理解でき、コムギはふくの元へ走るが、ヴォルフに首根っこを咥えられ持ち上げられる。
そしてそのまま背中にポイっと投げ乗せられ、コムギは反発する。
「な、なんでこんなことするの!?ふく様苦しんでるよ!」
「オレたちには何もできやしない。ふくは今集中しているんだ……邪魔したら殺されるよ?」
「そんなことないもん!わたしはふく様に認められたネズミ族よ!邪神のくせに分かったことを言わないで!」
「……そろそろ終わるみたいだぞ」
そういうと息を切らしたふくが天を見つめながら立ちすくんでいた。
ヴォルフはいち早くふくの傍に座ると、わかっていたかのようにふくはヴォルフの上に倒れる。
倒れたふくを見て焦った表情をするコムギを横目にヴォルフはふくに声をかける。
「ふく、ご苦労様。畑にはいっぱい緑色の小さいヤツ出てきたよ。」
「……そう……か。なら……上手く……いったようじゃ……の」
そう返すと寝息を立て始めた。
完全に魔力が底を尽きた様子である。
健やかに眠っているふくを見てヴォルフは微笑む。
遅れてやってきたコムギは慌てて看病しようとするが止められる。
「ふくは魔力がなくなっただけ。オレの魔力で回復できるから、そっとしてあげてくれ」
「……わかりました。でも!ふく様にヘンな事したら許さないから!」
コムギは怒ったようなそんな表情を見せて畑の様子を見に行った。
「ヘンな事ってなんだよ……」
ヴォルフはネズミ族がふくのことを守ろうとしていることが伝わり、自身が創った生命に不思議な感覚を抱きつつ、周りを見ると、畑の周囲にネズミ族が集まり活気に満ち溢れていた。
まだ新芽が芽吹いただけでこの騒ぎで作物ができたらどうなるのか想像するが、段々と退屈になり、考えるのをやめた。
「ふくが創った畑、みんな喜んでいるよ。キミは本当に凄いな……」
ふくが目を覚ますまでヴォルフは一歩たりとも動かずにふくを守ったのであった。
「全くもって空気とは不思議なものじゃのう。目には見えぬものが複数組み合わさり、ちょうどよい塩梅でのみヒトが過ごすことができるとはの」
「はい。わたくしは風魔法を操れないのですが、きっと酸素だけを取り出すことができて【灼熱】を使用することができるかもしれません」
「ちょっといいか?」
突然ヴォルフが話しかけて二人の傍に座る。
コムギはふくに慣れたがヴォルフには慣れておらず、委縮して固まる。
彼女にとって邪神ヴォルフは相当怖いものだと認識し、耳をペタリと倒して悲しさを表現する。
「ぼるふ、何の用じゃ?」
「空気の中から燃えるやつを絞るのは【炎】の複合魔法だぞ?」
「どう違うというのじゃ?」
ヴォルフから【炎】という新たな複合魔法を告げられ、ふくは疑問を持つ。
「【炎】は圧倒的な火力で焼き尽くす魔法で、【灼熱】火と熱を使って焼いていく魔法だったはず。どっちも強い火なんだけど、効率よく長時間燃やすなら【灼熱】だよ。」
ふくは手をポンと叩き、理解する。
「竃の火をくべるのが【灼熱】じゃの!あれなら確かに風を送って火力と熱を底上げできるの」
「カマド……ってなんですか?」
どうやら本当に料理というものがこの世界にはないらしく、竃の存在をネズミ族もヴォルフも理解していないようであった。
「……色々教えんとならんようじゃの。まずは畑からじゃ。ぼるふよ、灰になるまで焼くなら【灼熱】とやらで十分なのじゃな?」
ヴォルフは自信満々で頷くと再び風と火の魔力を手に取り考える。
幼少期の頃、母より竈の火の焚き方を思い出す。
(風は火の近くで吹かせず、少し離れたところから風を送る……。そして一か所に空気を当てず、竈の中の空気をまわすように吹かせる……)
人間の時代の頃を思い出し、自身の母のことを思い出していると、掌には火の魔力が一つ、風の魔力が六つできており、火の魔力を囲むように風の魔力が均一な間隔で並んでいた。
それを上空へ抛り投げると拍手を二度、パンッ……パンッと鳴らし、そのまま手を合わせる。
ヴォルフ、コムギ、チュータロー、ネズミ族一同はふくの行動に釘付けとなる。
ふくは意識を集中すると舞いながら詠唱を開始する。
「『炎の神よ、小さな火種をその風により大きく昇華し、供物を焼き尽くせ……。土地の神よ、供物の灰より新たな魂の芽吹きを……。この地を豊かなものにし、繁栄を促さん……』」
炎はドーム状に燃え盛り、周りに延焼しないようにふくは風をコントロールしていた。
高熱効果力の炎は見る見る魔獣の死体を焼いていき、骨も灰となった。
燃焼物がなくなり、ふくは【灼熱】を打ち消し、土の魔法へ転換し、地面を耕し水の魔法でを少々練り込んで湿潤なものにする。
一度にすべての元素を使ったことでふくの疲労が極限まで達するが、気力を振り絞り、再び拍手を二度鳴らす。
「『豊穣の神よ、この畑にそなたの力を以って恵みを与えん!』」
息を切らし、跪きつつ手を祈るように組む。
表情からも非常に苦しいものだと理解でき、コムギはふくの元へ走るが、ヴォルフに首根っこを咥えられ持ち上げられる。
そしてそのまま背中にポイっと投げ乗せられ、コムギは反発する。
「な、なんでこんなことするの!?ふく様苦しんでるよ!」
「オレたちには何もできやしない。ふくは今集中しているんだ……邪魔したら殺されるよ?」
「そんなことないもん!わたしはふく様に認められたネズミ族よ!邪神のくせに分かったことを言わないで!」
「……そろそろ終わるみたいだぞ」
そういうと息を切らしたふくが天を見つめながら立ちすくんでいた。
ヴォルフはいち早くふくの傍に座ると、わかっていたかのようにふくはヴォルフの上に倒れる。
倒れたふくを見て焦った表情をするコムギを横目にヴォルフはふくに声をかける。
「ふく、ご苦労様。畑にはいっぱい緑色の小さいヤツ出てきたよ。」
「……そう……か。なら……上手く……いったようじゃ……の」
そう返すと寝息を立て始めた。
完全に魔力が底を尽きた様子である。
健やかに眠っているふくを見てヴォルフは微笑む。
遅れてやってきたコムギは慌てて看病しようとするが止められる。
「ふくは魔力がなくなっただけ。オレの魔力で回復できるから、そっとしてあげてくれ」
「……わかりました。でも!ふく様にヘンな事したら許さないから!」
コムギは怒ったようなそんな表情を見せて畑の様子を見に行った。
「ヘンな事ってなんだよ……」
ヴォルフはネズミ族がふくのことを守ろうとしていることが伝わり、自身が創った生命に不思議な感覚を抱きつつ、周りを見ると、畑の周囲にネズミ族が集まり活気に満ち溢れていた。
まだ新芽が芽吹いただけでこの騒ぎで作物ができたらどうなるのか想像するが、段々と退屈になり、考えるのをやめた。
「ふくが創った畑、みんな喜んでいるよ。キミは本当に凄いな……」
ふくが目を覚ますまでヴォルフは一歩たりとも動かずにふくを守ったのであった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
おきつね様の溺愛!? 美味ごはん作れば、もふもふ認定撤回かも? ~妖狐(ようこ)そ! あやかしアパートへ~
にけみ柚寿
キャラ文芸
1人暮らしを始めることになった主人公・紗季音。
アパートの近くの神社で紗季音が出会ったあやかしは、美形の妖狐!?
妖狐の興恒(おきつね)は、紗季音のことを「自分の恋人」が人型に変身している、とカン違いしているらしい。
紗季音は、自分が「谷沼 紗季音(たにぬま さきね)」というただの人間であり、キツネが化けているわけではないと伝えるが……。
興恒いわく、彼の恋人はキツネのあやかしではなくタヌキのあやかし。種族の違いから周囲に恋路を邪魔され、ずっと会えずにいたそうだ。
「タヌキでないなら、なぜ『谷沼 紗季音』などと名乗る。その名、順序を変えれば『まさにたぬきね』。つまり『まさにタヌキね』ではないか」
アパートに居すわる気満々の興恒に紗季音は……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる