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一騎討ちをしてみたのじゃ
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「……始めっ!」
「でりゃあぁぁっ!」
チュータローはふくを自分のものにする為に少しフライング気味に石を投げ飛ばした。
投げた石はふくへ一直線に進み、頭へ直撃する。
痛みと衝撃で尻餅をつき、チュータローの姿を確認しようと目を向けた時にはチュータローが追撃せんとばかり跳躍していた。
因みにふくは運動性能は残念なもので、フライングしなくても投石を避ける事は出来ないのでチュータローの反則は意味をなさなかった。
(もらった……!)
チュータローが勝利を確信し、石のナイフを突き付けようとした瞬間、水塊の中に閉じ込められ、そのまま岩山に向けて叩きつけられた。
「ごほっ……ごほっ!?」
チュータローは全く理解できていないような表情を見せる。
それもそのはず。
この世界で魔法は一人につき一つの魔法しか所持ができないからである。
チュータローはふくの【樹木】と【水】の魔法を見て、この世界のルールから外れた存在であると認識する。
「もしかして……二種類の魔法を使う……のか。……いや、あり得ないっ!ボクはたくさんの魔獣と戦ってきたんだっ!負けるわけには……いか――」
チュータローは目の前に現れたふくに【風】魔法で吹き飛ばされ、叩きつけられる。
そしてもう一つの違和感に気がつく。
「詠唱してない……だって……!?」
「ふむ……このくらいの加減なら殺さずに済みそうじゃの。さてと……お主は負けを認める気は無いのかの?」
「負けなんて認めるわけない!この……デタラメ女っ!」
今度は拳より少し大きめの石礫を投げつける。
流石にこれが当たると流血では済まないのだが、ふくは一度も動かなかった。
飛んでくる石礫に手を翳し、短く詠唱を行う。
「『わしを護れ』」
ふくに向かって飛んできた石礫はふくの目の前でピタリと止まると、力を失ったように地面に落ちた。
ふくは石礫の大きさを見て苦い顔をすると、頬に汗が垂れたような気がして手で拭うと、それは血だった。
最初の一撃で頭部から血を流していたことに気がついておらず、顔面の右半分は血に覆われていた。
チュータローを鋭い眼差しで睨むと上空に向けて手を挙げる。
手をぎゅっと握り締め、振り下ろすと空気の塊がチュータローを襲い、身体からミシミシと音を鳴らしながら地面へ埋めた。
ふくのイメージは『たくさん集めた空気を一箇所に、且つある大きさで圧縮させたものを上から落とす』と言うものだった。
それを詠唱を使わず、手の動きだけで再現させた。
普通の魔法使いではあり得ない動きをし、チュータローは見事に翻弄され、屈服させられた。
圧力を掛け続けるふくは審判役のネズミをギロリと睨むと決闘を止める。
ふくは「ふう……」とため息を吐き、腕を組んでチュータローのいると思われる穴を見続ける。
男どもを数人がかりでチュータローを引きずり上げ、安否を確認する。
外傷は足の骨折が目に見えて分かり、本人から胸部の痛みを伝えられ、肋骨が折れていることがわかる。
ふくとヴォルフはチュータローの元へ行き、側に座る。
「わしの勝ちじゃな。これまで通り、お前たちには自分の力で村の活気を取り戻すのじゃ。じゃが、先程も言ったように、知恵は貸す」
チュータローはゆっくりと身体を起こし、痛みに耐えながらふくを見る。
その表情は屈辱感に溢れていた。
「……今ので分かったでしょ……?ボクたちネズミ族はロクに魔法なんて使えないんだよ……。一族揃いも揃って【掘削】しか使えないんだから……。……文句はそこの邪神ヴォルフに言って……」
ふくはヴォルフをジィッと見つめると、焦ったように弁解を始める。
「いやいや!オレのせいじゃないよ!?創造神の設計図に基づいてお前たちを作ったんだからオレのせいじゃ……ない……よね?」
創造神が悪いと発言したことによりふくは大きくため息をつく。
後頭部をポリポリと掻いてふくは口を開く。
「この際、創造神だのぼるふだのどうでも良い。……わしが手を下す必要があると見たが、最初だけじゃ。これからは自分たちでなんとかせい。出来ぬと言うならば、お前たちは滅びる運命と受け入れるのじゃ」
厳しい一言を突き付けられネズミ族は意気消沈してしまう。
悩み、行動を起こさないネズミ族に痺れを切らし、ふくはイライラしながら広場の中央に足を運ぶ。
目を瞑り、意識を頭の中……書庫へ集中する。
§
目を開けるとやはりというべきか書庫へたどり着いた。
そしていつものように本棚から本が落下する。
『魔法大全』と書かれた本はいつも決められたページが開かれている。
いつものことで疑問にも思わずそのページを見ると【治癒】と書かれた項目だった。
「【治癒】とは体の細胞一つ一つを活性化させ、傷を治していく魔法。治したときに生じる細胞分裂の速度上昇は寿命の前借である。わしの傷や忠太郎の怪我を治すのに使えそうじゃの。あとは……あったのじゃ。【土】魔法は頑固な性質をし、単体では使いにくい。他の元素魔法との親和性は高い。……木を燃やし、土を耕して、混ぜ合わせて水を与える……そんな魔法にすればよいのじゃな。……うむ、そろそろ帰るのじゃ。」
ふくは満足そうな笑みを浮かべて書庫を後にするのだった。
「でりゃあぁぁっ!」
チュータローはふくを自分のものにする為に少しフライング気味に石を投げ飛ばした。
投げた石はふくへ一直線に進み、頭へ直撃する。
痛みと衝撃で尻餅をつき、チュータローの姿を確認しようと目を向けた時にはチュータローが追撃せんとばかり跳躍していた。
因みにふくは運動性能は残念なもので、フライングしなくても投石を避ける事は出来ないのでチュータローの反則は意味をなさなかった。
(もらった……!)
チュータローが勝利を確信し、石のナイフを突き付けようとした瞬間、水塊の中に閉じ込められ、そのまま岩山に向けて叩きつけられた。
「ごほっ……ごほっ!?」
チュータローは全く理解できていないような表情を見せる。
それもそのはず。
この世界で魔法は一人につき一つの魔法しか所持ができないからである。
チュータローはふくの【樹木】と【水】の魔法を見て、この世界のルールから外れた存在であると認識する。
「もしかして……二種類の魔法を使う……のか。……いや、あり得ないっ!ボクはたくさんの魔獣と戦ってきたんだっ!負けるわけには……いか――」
チュータローは目の前に現れたふくに【風】魔法で吹き飛ばされ、叩きつけられる。
そしてもう一つの違和感に気がつく。
「詠唱してない……だって……!?」
「ふむ……このくらいの加減なら殺さずに済みそうじゃの。さてと……お主は負けを認める気は無いのかの?」
「負けなんて認めるわけない!この……デタラメ女っ!」
今度は拳より少し大きめの石礫を投げつける。
流石にこれが当たると流血では済まないのだが、ふくは一度も動かなかった。
飛んでくる石礫に手を翳し、短く詠唱を行う。
「『わしを護れ』」
ふくに向かって飛んできた石礫はふくの目の前でピタリと止まると、力を失ったように地面に落ちた。
ふくは石礫の大きさを見て苦い顔をすると、頬に汗が垂れたような気がして手で拭うと、それは血だった。
最初の一撃で頭部から血を流していたことに気がついておらず、顔面の右半分は血に覆われていた。
チュータローを鋭い眼差しで睨むと上空に向けて手を挙げる。
手をぎゅっと握り締め、振り下ろすと空気の塊がチュータローを襲い、身体からミシミシと音を鳴らしながら地面へ埋めた。
ふくのイメージは『たくさん集めた空気を一箇所に、且つある大きさで圧縮させたものを上から落とす』と言うものだった。
それを詠唱を使わず、手の動きだけで再現させた。
普通の魔法使いではあり得ない動きをし、チュータローは見事に翻弄され、屈服させられた。
圧力を掛け続けるふくは審判役のネズミをギロリと睨むと決闘を止める。
ふくは「ふう……」とため息を吐き、腕を組んでチュータローのいると思われる穴を見続ける。
男どもを数人がかりでチュータローを引きずり上げ、安否を確認する。
外傷は足の骨折が目に見えて分かり、本人から胸部の痛みを伝えられ、肋骨が折れていることがわかる。
ふくとヴォルフはチュータローの元へ行き、側に座る。
「わしの勝ちじゃな。これまで通り、お前たちには自分の力で村の活気を取り戻すのじゃ。じゃが、先程も言ったように、知恵は貸す」
チュータローはゆっくりと身体を起こし、痛みに耐えながらふくを見る。
その表情は屈辱感に溢れていた。
「……今ので分かったでしょ……?ボクたちネズミ族はロクに魔法なんて使えないんだよ……。一族揃いも揃って【掘削】しか使えないんだから……。……文句はそこの邪神ヴォルフに言って……」
ふくはヴォルフをジィッと見つめると、焦ったように弁解を始める。
「いやいや!オレのせいじゃないよ!?創造神の設計図に基づいてお前たちを作ったんだからオレのせいじゃ……ない……よね?」
創造神が悪いと発言したことによりふくは大きくため息をつく。
後頭部をポリポリと掻いてふくは口を開く。
「この際、創造神だのぼるふだのどうでも良い。……わしが手を下す必要があると見たが、最初だけじゃ。これからは自分たちでなんとかせい。出来ぬと言うならば、お前たちは滅びる運命と受け入れるのじゃ」
厳しい一言を突き付けられネズミ族は意気消沈してしまう。
悩み、行動を起こさないネズミ族に痺れを切らし、ふくはイライラしながら広場の中央に足を運ぶ。
目を瞑り、意識を頭の中……書庫へ集中する。
§
目を開けるとやはりというべきか書庫へたどり着いた。
そしていつものように本棚から本が落下する。
『魔法大全』と書かれた本はいつも決められたページが開かれている。
いつものことで疑問にも思わずそのページを見ると【治癒】と書かれた項目だった。
「【治癒】とは体の細胞一つ一つを活性化させ、傷を治していく魔法。治したときに生じる細胞分裂の速度上昇は寿命の前借である。わしの傷や忠太郎の怪我を治すのに使えそうじゃの。あとは……あったのじゃ。【土】魔法は頑固な性質をし、単体では使いにくい。他の元素魔法との親和性は高い。……木を燃やし、土を耕して、混ぜ合わせて水を与える……そんな魔法にすればよいのじゃな。……うむ、そろそろ帰るのじゃ。」
ふくは満足そうな笑みを浮かべて書庫を後にするのだった。
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