13 / 108
一悶着があったのじゃ
しおりを挟む
ネズミの姿をしているヒトたちは直径二メートルほどの太さの木を大人数で運んでいた。
もっと細かく刻んでも良かったのだが、ふくは敢えてそれをしなかった。
それは本人たちが切って持っていけば簡単だと気づいてもらい、そしてどのように切れば良いのか自分の頭で考えて欲しいと思っていた。
しかし、獣人の力は凄まじく、ふくより小柄な体型をしている彼等は、ふくの数倍以上の腕力を持っていたようだ。
一時間も経たず全てを広場に集めるとネズミたちは一斉にふくを見る。
突然全員から注目され、ふくは一瞬怯むがそれでは統率する立場として情けないと思い、睨んで返す。
「なんじゃ?みんなしてわしを見て」
「次の指示を待っているのです。指示をください」
「……何を呆けた事を言っておる。ここはお前たちの村じゃ。お前たちで何とかするのが、この先を生き残る唯一の方法じゃ。わしはお前たちの手助けはせん」
ネズミたちはふくが手助けをしないことに動揺が走る。
ふくが来たことで岩だらけの風が吹きあふれる土地から木々が生い茂り、魔獣も掃討された安全な土地に変わった。
あとは食料不足を何とかするのみなのだが、ここに来てふくは急に手を出さなくなったことに落胆と怒りが込み上がっているようだった。
「……アンタはオレたちの生活を裕福にしてくれるんじゃないのかよ!?ここに来て自分でやれは無いだろ!」
「わしは手を下す事はないが、知恵を貸さないとは言ってはおらん。それにお前たち国民の生活を裕福にするのが王の勤めではないわ。其方こそ思い上がるでないぞ」
「な、なにぃ……!お前ら!コイツを倒してやろうぜ!」
ネズミたちは一斉にふくの元へ牙を向けた。
ふくは落ち着いてヴォルフの背中をトントンと叩くとヴォルフは吼えた。
『ウウォーーゥッ!』
低音であってもこの世界によく響く咆哮であった。
音の衝撃で木々は揺れ、ネズミたちの住処であった岩の横穴は崩れていく。
そしてネズミたちは音を集める機能付きの大きな耳を塞がなければ鼓膜は愚か、その振動で臓器が停止しそうになり、口を開けていた。
ふくは予めその事を知っていたので魔力を身体に纏わり付かせ、軽く耳を塞ぐだけで対処ができた。
「こんなものかな?」
ヴォルフは褒めて欲しそうに背中に乗っているふくの方へと顔を向ける。
流石に殺す寸前はやりすぎなので眉間に爪を刺して落ち着かせる。
「やりすぎじゃ……まあよい。お前たち、わしを殺しにくるのは良いが、その前にわしはヴォルフを従えとる事を忘れるでないぞ?」
そう言うとネズミたちの顔色が一気に青褪める。
目の前のキツネの獣人は倒せても、邪神と云われるヴォルフは誰の手でも倒すことができない。
ネズミたちは次々と戦意を喪失していき、最後まで立ち向かったのは、最初に出会ったネズミだった。
震える足を何度も叩き、一歩、また一歩とふくのところへ進んでいく。
必死の思いでふくの前に立ち、睨みつける。
ふくはネズミの意図を理解し、ヴォルフから飛び降りる。
そして腕を組んで見下す。
「お前は中々度胸があるの。名を何と名乗る」
「ち……チュータロー」
「……忠太郎というのか。では忠太郎、お前は何をしにここへ来た?」
「け、決闘だ!ボクが勝ったら……村のみんなを腹一杯にして、お前をボクの嫁にする!」
ふくは目をまん丸にし、ヴォルフは一瞬ビクッと震え、ネズミたちはザワザワと落ち着きがなくなる。
ふくはニヤリと口角を上げ、牙を向ける。
「良いじゃろう……。わしに喧嘩を売った事を後悔させてやるのじゃ」
二人は並んで歩き、広場の一角に向かい合って立つ。
ヴォルフはふくの後ろで座り、邪魔にならないように伏せる。
ふくは背伸びをし、チュータローは深伸脚でストレッチをする。
(木の魔法はかなり厄介だ……あれは複合魔法だから連発はできないはず……。勝機はそこにあるはずだ……!)
そう考え、武器として石をいくつか手に持つ。
投石は様子見として、攻撃手段としてそれなりに優秀な素材である。
近接武器や魔法や遠距離武器のレンジで戦うことが多い中、中距離の攻撃手段を持っているだけで相手を抑えることが可能である。
チュータローはそれを分かっているほどの戦闘経験はあるが、残念ながら魔獣に対して攻撃力が足らず、いつも敗走していた。
一方ふくは戦闘経験は皆無だが、魔獣の皮を裁断できるほどの攻撃力を持った魔法を扱える。
経験値がどれ程のアドバンテージになるか不明だが、チュータローの目には戦いに関して素人だと判断し、自信を持つ。
他のネズミの一人が二人の間に立ちて合図で二人の注目を引く。
チュータローは拳を握り締めふくを睨み、ふくは腕を組んでチュータローを見下す。
琥珀色の瞳は光で様々な色を反射し、吸い込まれそうなほどの黒色の瞳孔はチュータローを釘付けにさせる。
魔獣の皮で簡単に作られた服を着ているチュータローと全裸のふく。
いくらケモセーフとは言え、豊満な二つの丘陵、魅惑的な大きさをしている臀部は大変危険な見た目である。
チュータロー以外のネズミ族の男どもも魅了しており、ふくは負けられないと悟る。
審判役のネズミは両手を大きく掲げると、二人は臨戦態勢になる。
「……始めっ!!」
号令と共にチュータローは石を投げたのだった。
もっと細かく刻んでも良かったのだが、ふくは敢えてそれをしなかった。
それは本人たちが切って持っていけば簡単だと気づいてもらい、そしてどのように切れば良いのか自分の頭で考えて欲しいと思っていた。
しかし、獣人の力は凄まじく、ふくより小柄な体型をしている彼等は、ふくの数倍以上の腕力を持っていたようだ。
一時間も経たず全てを広場に集めるとネズミたちは一斉にふくを見る。
突然全員から注目され、ふくは一瞬怯むがそれでは統率する立場として情けないと思い、睨んで返す。
「なんじゃ?みんなしてわしを見て」
「次の指示を待っているのです。指示をください」
「……何を呆けた事を言っておる。ここはお前たちの村じゃ。お前たちで何とかするのが、この先を生き残る唯一の方法じゃ。わしはお前たちの手助けはせん」
ネズミたちはふくが手助けをしないことに動揺が走る。
ふくが来たことで岩だらけの風が吹きあふれる土地から木々が生い茂り、魔獣も掃討された安全な土地に変わった。
あとは食料不足を何とかするのみなのだが、ここに来てふくは急に手を出さなくなったことに落胆と怒りが込み上がっているようだった。
「……アンタはオレたちの生活を裕福にしてくれるんじゃないのかよ!?ここに来て自分でやれは無いだろ!」
「わしは手を下す事はないが、知恵を貸さないとは言ってはおらん。それにお前たち国民の生活を裕福にするのが王の勤めではないわ。其方こそ思い上がるでないぞ」
「な、なにぃ……!お前ら!コイツを倒してやろうぜ!」
ネズミたちは一斉にふくの元へ牙を向けた。
ふくは落ち着いてヴォルフの背中をトントンと叩くとヴォルフは吼えた。
『ウウォーーゥッ!』
低音であってもこの世界によく響く咆哮であった。
音の衝撃で木々は揺れ、ネズミたちの住処であった岩の横穴は崩れていく。
そしてネズミたちは音を集める機能付きの大きな耳を塞がなければ鼓膜は愚か、その振動で臓器が停止しそうになり、口を開けていた。
ふくは予めその事を知っていたので魔力を身体に纏わり付かせ、軽く耳を塞ぐだけで対処ができた。
「こんなものかな?」
ヴォルフは褒めて欲しそうに背中に乗っているふくの方へと顔を向ける。
流石に殺す寸前はやりすぎなので眉間に爪を刺して落ち着かせる。
「やりすぎじゃ……まあよい。お前たち、わしを殺しにくるのは良いが、その前にわしはヴォルフを従えとる事を忘れるでないぞ?」
そう言うとネズミたちの顔色が一気に青褪める。
目の前のキツネの獣人は倒せても、邪神と云われるヴォルフは誰の手でも倒すことができない。
ネズミたちは次々と戦意を喪失していき、最後まで立ち向かったのは、最初に出会ったネズミだった。
震える足を何度も叩き、一歩、また一歩とふくのところへ進んでいく。
必死の思いでふくの前に立ち、睨みつける。
ふくはネズミの意図を理解し、ヴォルフから飛び降りる。
そして腕を組んで見下す。
「お前は中々度胸があるの。名を何と名乗る」
「ち……チュータロー」
「……忠太郎というのか。では忠太郎、お前は何をしにここへ来た?」
「け、決闘だ!ボクが勝ったら……村のみんなを腹一杯にして、お前をボクの嫁にする!」
ふくは目をまん丸にし、ヴォルフは一瞬ビクッと震え、ネズミたちはザワザワと落ち着きがなくなる。
ふくはニヤリと口角を上げ、牙を向ける。
「良いじゃろう……。わしに喧嘩を売った事を後悔させてやるのじゃ」
二人は並んで歩き、広場の一角に向かい合って立つ。
ヴォルフはふくの後ろで座り、邪魔にならないように伏せる。
ふくは背伸びをし、チュータローは深伸脚でストレッチをする。
(木の魔法はかなり厄介だ……あれは複合魔法だから連発はできないはず……。勝機はそこにあるはずだ……!)
そう考え、武器として石をいくつか手に持つ。
投石は様子見として、攻撃手段としてそれなりに優秀な素材である。
近接武器や魔法や遠距離武器のレンジで戦うことが多い中、中距離の攻撃手段を持っているだけで相手を抑えることが可能である。
チュータローはそれを分かっているほどの戦闘経験はあるが、残念ながら魔獣に対して攻撃力が足らず、いつも敗走していた。
一方ふくは戦闘経験は皆無だが、魔獣の皮を裁断できるほどの攻撃力を持った魔法を扱える。
経験値がどれ程のアドバンテージになるか不明だが、チュータローの目には戦いに関して素人だと判断し、自信を持つ。
他のネズミの一人が二人の間に立ちて合図で二人の注目を引く。
チュータローは拳を握り締めふくを睨み、ふくは腕を組んでチュータローを見下す。
琥珀色の瞳は光で様々な色を反射し、吸い込まれそうなほどの黒色の瞳孔はチュータローを釘付けにさせる。
魔獣の皮で簡単に作られた服を着ているチュータローと全裸のふく。
いくらケモセーフとは言え、豊満な二つの丘陵、魅惑的な大きさをしている臀部は大変危険な見た目である。
チュータロー以外のネズミ族の男どもも魅了しており、ふくは負けられないと悟る。
審判役のネズミは両手を大きく掲げると、二人は臨戦態勢になる。
「……始めっ!!」
号令と共にチュータローは石を投げたのだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます
藤なごみ
ファンタジー
※コミカライズスタートしました!
2024年10月下旬にコミック第一巻刊行予定です
2023年9月21日に第一巻、2024年3月21日に第二巻が発売されました
2024年8月中旬第三巻刊行予定です
ある少年は、母親よりネグレクトを受けていた上に住んでいたアパートを追い出されてしまった。
高校進学も出来ずにいたとあるバイト帰りに、酔っ払いに駅のホームから突き飛ばされてしまい、電車にひかれて死んでしまった。
しかしながら再び目を覚ました少年は、見た事もない異世界で赤子として新たに生をうけていた。
だが、赤子ながらに周囲の話を聞く内に、この世界の自分も幼い内に追い出されてしまう事に気づいてしまった。
そんな中、突然見知らぬ金髪の幼女が連れてこられ、一緒に部屋で育てられる事に。
幼女の事を妹として接しながら、この子も一緒に追い出されてしまうことが分かった。
幼い二人で来たる追い出される日に備えます。
基本はお兄ちゃんと妹ちゃんを中心としたストーリーです
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しています
2023/08/30
題名を以下に変更しました
「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきたいと思います」→「転生しても実家を追い出されたので、今度は自分の意志で生きていきます」
書籍化が決定しました
2023/09/01
アルファポリス社様より9月中旬に刊行予定となります
2023/09/06
アルファポリス様より、9月19日に出荷されます
呱々唄七つ先生の素晴らしいイラストとなっております
2024/3/21
アルファポリス様より第二巻が発売されました
2024/4/24
コミカライズスタートしました
2024/8/12
アルファポリス様から第三巻が八月中旬に刊行予定です
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる