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一悶着があったのじゃ
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ネズミの姿をしているヒトたちは直径二メートルほどの太さの木を大人数で運んでいた。
もっと細かく刻んでも良かったのだが、ふくは敢えてそれをしなかった。
それは本人たちが切って持っていけば簡単だと気づいてもらい、そしてどのように切れば良いのか自分の頭で考えて欲しいと思っていた。
しかし、獣人の力は凄まじく、ふくより小柄な体型をしている彼等は、ふくの数倍以上の腕力を持っていたようだ。
一時間も経たず全てを広場に集めるとネズミたちは一斉にふくを見る。
突然全員から注目され、ふくは一瞬怯むがそれでは統率する立場として情けないと思い、睨んで返す。
「なんじゃ?みんなしてわしを見て」
「次の指示を待っているのです。指示をください」
「……何を呆けた事を言っておる。ここはお前たちの村じゃ。お前たちで何とかするのが、この先を生き残る唯一の方法じゃ。わしはお前たちの手助けはせん」
ネズミたちはふくが手助けをしないことに動揺が走る。
ふくが来たことで岩だらけの風が吹きあふれる土地から木々が生い茂り、魔獣も掃討された安全な土地に変わった。
あとは食料不足を何とかするのみなのだが、ここに来てふくは急に手を出さなくなったことに落胆と怒りが込み上がっているようだった。
「……アンタはオレたちの生活を裕福にしてくれるんじゃないのかよ!?ここに来て自分でやれは無いだろ!」
「わしは手を下す事はないが、知恵を貸さないとは言ってはおらん。それにお前たち国民の生活を裕福にするのが王の勤めではないわ。其方こそ思い上がるでないぞ」
「な、なにぃ……!お前ら!コイツを倒してやろうぜ!」
ネズミたちは一斉にふくの元へ牙を向けた。
ふくは落ち着いてヴォルフの背中をトントンと叩くとヴォルフは吼えた。
『ウウォーーゥッ!』
低音であってもこの世界によく響く咆哮であった。
音の衝撃で木々は揺れ、ネズミたちの住処であった岩の横穴は崩れていく。
そしてネズミたちは音を集める機能付きの大きな耳を塞がなければ鼓膜は愚か、その振動で臓器が停止しそうになり、口を開けていた。
ふくは予めその事を知っていたので魔力を身体に纏わり付かせ、軽く耳を塞ぐだけで対処ができた。
「こんなものかな?」
ヴォルフは褒めて欲しそうに背中に乗っているふくの方へと顔を向ける。
流石に殺す寸前はやりすぎなので眉間に爪を刺して落ち着かせる。
「やりすぎじゃ……まあよい。お前たち、わしを殺しにくるのは良いが、その前にわしはヴォルフを従えとる事を忘れるでないぞ?」
そう言うとネズミたちの顔色が一気に青褪める。
目の前のキツネの獣人は倒せても、邪神と云われるヴォルフは誰の手でも倒すことができない。
ネズミたちは次々と戦意を喪失していき、最後まで立ち向かったのは、最初に出会ったネズミだった。
震える足を何度も叩き、一歩、また一歩とふくのところへ進んでいく。
必死の思いでふくの前に立ち、睨みつける。
ふくはネズミの意図を理解し、ヴォルフから飛び降りる。
そして腕を組んで見下す。
「お前は中々度胸があるの。名を何と名乗る」
「ち……チュータロー」
「……忠太郎というのか。では忠太郎、お前は何をしにここへ来た?」
「け、決闘だ!ボクが勝ったら……村のみんなを腹一杯にして、お前をボクの嫁にする!」
ふくは目をまん丸にし、ヴォルフは一瞬ビクッと震え、ネズミたちはザワザワと落ち着きがなくなる。
ふくはニヤリと口角を上げ、牙を向ける。
「良いじゃろう……。わしに喧嘩を売った事を後悔させてやるのじゃ」
二人は並んで歩き、広場の一角に向かい合って立つ。
ヴォルフはふくの後ろで座り、邪魔にならないように伏せる。
ふくは背伸びをし、チュータローは深伸脚でストレッチをする。
(木の魔法はかなり厄介だ……あれは複合魔法だから連発はできないはず……。勝機はそこにあるはずだ……!)
そう考え、武器として石をいくつか手に持つ。
投石は様子見として、攻撃手段としてそれなりに優秀な素材である。
近接武器や魔法や遠距離武器のレンジで戦うことが多い中、中距離の攻撃手段を持っているだけで相手を抑えることが可能である。
チュータローはそれを分かっているほどの戦闘経験はあるが、残念ながら魔獣に対して攻撃力が足らず、いつも敗走していた。
一方ふくは戦闘経験は皆無だが、魔獣の皮を裁断できるほどの攻撃力を持った魔法を扱える。
経験値がどれ程のアドバンテージになるか不明だが、チュータローの目には戦いに関して素人だと判断し、自信を持つ。
他のネズミの一人が二人の間に立ちて合図で二人の注目を引く。
チュータローは拳を握り締めふくを睨み、ふくは腕を組んでチュータローを見下す。
琥珀色の瞳は光で様々な色を反射し、吸い込まれそうなほどの黒色の瞳孔はチュータローを釘付けにさせる。
魔獣の皮で簡単に作られた服を着ているチュータローと全裸のふく。
いくらケモセーフとは言え、豊満な二つの丘陵、魅惑的な大きさをしている臀部は大変危険な見た目である。
チュータロー以外のネズミ族の男どもも魅了しており、ふくは負けられないと悟る。
審判役のネズミは両手を大きく掲げると、二人は臨戦態勢になる。
「……始めっ!!」
号令と共にチュータローは石を投げたのだった。
もっと細かく刻んでも良かったのだが、ふくは敢えてそれをしなかった。
それは本人たちが切って持っていけば簡単だと気づいてもらい、そしてどのように切れば良いのか自分の頭で考えて欲しいと思っていた。
しかし、獣人の力は凄まじく、ふくより小柄な体型をしている彼等は、ふくの数倍以上の腕力を持っていたようだ。
一時間も経たず全てを広場に集めるとネズミたちは一斉にふくを見る。
突然全員から注目され、ふくは一瞬怯むがそれでは統率する立場として情けないと思い、睨んで返す。
「なんじゃ?みんなしてわしを見て」
「次の指示を待っているのです。指示をください」
「……何を呆けた事を言っておる。ここはお前たちの村じゃ。お前たちで何とかするのが、この先を生き残る唯一の方法じゃ。わしはお前たちの手助けはせん」
ネズミたちはふくが手助けをしないことに動揺が走る。
ふくが来たことで岩だらけの風が吹きあふれる土地から木々が生い茂り、魔獣も掃討された安全な土地に変わった。
あとは食料不足を何とかするのみなのだが、ここに来てふくは急に手を出さなくなったことに落胆と怒りが込み上がっているようだった。
「……アンタはオレたちの生活を裕福にしてくれるんじゃないのかよ!?ここに来て自分でやれは無いだろ!」
「わしは手を下す事はないが、知恵を貸さないとは言ってはおらん。それにお前たち国民の生活を裕福にするのが王の勤めではないわ。其方こそ思い上がるでないぞ」
「な、なにぃ……!お前ら!コイツを倒してやろうぜ!」
ネズミたちは一斉にふくの元へ牙を向けた。
ふくは落ち着いてヴォルフの背中をトントンと叩くとヴォルフは吼えた。
『ウウォーーゥッ!』
低音であってもこの世界によく響く咆哮であった。
音の衝撃で木々は揺れ、ネズミたちの住処であった岩の横穴は崩れていく。
そしてネズミたちは音を集める機能付きの大きな耳を塞がなければ鼓膜は愚か、その振動で臓器が停止しそうになり、口を開けていた。
ふくは予めその事を知っていたので魔力を身体に纏わり付かせ、軽く耳を塞ぐだけで対処ができた。
「こんなものかな?」
ヴォルフは褒めて欲しそうに背中に乗っているふくの方へと顔を向ける。
流石に殺す寸前はやりすぎなので眉間に爪を刺して落ち着かせる。
「やりすぎじゃ……まあよい。お前たち、わしを殺しにくるのは良いが、その前にわしはヴォルフを従えとる事を忘れるでないぞ?」
そう言うとネズミたちの顔色が一気に青褪める。
目の前のキツネの獣人は倒せても、邪神と云われるヴォルフは誰の手でも倒すことができない。
ネズミたちは次々と戦意を喪失していき、最後まで立ち向かったのは、最初に出会ったネズミだった。
震える足を何度も叩き、一歩、また一歩とふくのところへ進んでいく。
必死の思いでふくの前に立ち、睨みつける。
ふくはネズミの意図を理解し、ヴォルフから飛び降りる。
そして腕を組んで見下す。
「お前は中々度胸があるの。名を何と名乗る」
「ち……チュータロー」
「……忠太郎というのか。では忠太郎、お前は何をしにここへ来た?」
「け、決闘だ!ボクが勝ったら……村のみんなを腹一杯にして、お前をボクの嫁にする!」
ふくは目をまん丸にし、ヴォルフは一瞬ビクッと震え、ネズミたちはザワザワと落ち着きがなくなる。
ふくはニヤリと口角を上げ、牙を向ける。
「良いじゃろう……。わしに喧嘩を売った事を後悔させてやるのじゃ」
二人は並んで歩き、広場の一角に向かい合って立つ。
ヴォルフはふくの後ろで座り、邪魔にならないように伏せる。
ふくは背伸びをし、チュータローは深伸脚でストレッチをする。
(木の魔法はかなり厄介だ……あれは複合魔法だから連発はできないはず……。勝機はそこにあるはずだ……!)
そう考え、武器として石をいくつか手に持つ。
投石は様子見として、攻撃手段としてそれなりに優秀な素材である。
近接武器や魔法や遠距離武器のレンジで戦うことが多い中、中距離の攻撃手段を持っているだけで相手を抑えることが可能である。
チュータローはそれを分かっているほどの戦闘経験はあるが、残念ながら魔獣に対して攻撃力が足らず、いつも敗走していた。
一方ふくは戦闘経験は皆無だが、魔獣の皮を裁断できるほどの攻撃力を持った魔法を扱える。
経験値がどれ程のアドバンテージになるか不明だが、チュータローの目には戦いに関して素人だと判断し、自信を持つ。
他のネズミの一人が二人の間に立ちて合図で二人の注目を引く。
チュータローは拳を握り締めふくを睨み、ふくは腕を組んでチュータローを見下す。
琥珀色の瞳は光で様々な色を反射し、吸い込まれそうなほどの黒色の瞳孔はチュータローを釘付けにさせる。
魔獣の皮で簡単に作られた服を着ているチュータローと全裸のふく。
いくらケモセーフとは言え、豊満な二つの丘陵、魅惑的な大きさをしている臀部は大変危険な見た目である。
チュータロー以外のネズミ族の男どもも魅了しており、ふくは負けられないと悟る。
審判役のネズミは両手を大きく掲げると、二人は臨戦態勢になる。
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号令と共にチュータローは石を投げたのだった。
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