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風が強いのじゃ
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ふくたちは岩の山に囲まれた地帯を歩く。
ここには植物や水が一切存在せず、乾いた空気と砂塵が吹き溢れる場所であった。
ふくの目には砂が入り込むことがあまりなく、改めてこの肉体の良さを知る。
それでも風が行く手を阻み思うように進むことができなかった。
「むう……。こうも風が吹き溢れると歩きづらくてたまらんのう……」
「うーん……。この辺りはこんなに土地も枯れていなかった気がするんだよね。なにか良くないこと起きているのかな……」
「お前は自分の領地のことも把握しておらんのか?土地が枯れるのはこの場所に腐った土などが落ちとらんからの。それにこの風は木が生えておらんことによって遮るものがないのじゃ。……ぼるふよ、土の魔法というものは存在するのかの?」
「あるよ!でも、土の魔法は扱いが難しいから使い手が少ないんだ。だからオレでもちょっとわからない……」
その話を聞き、ふくは考えながら風に立ち向かっていると洞穴のような横穴を見つける。
ヴォルフに指で合図を送り、横穴へと入っていく。
「やれやれなのじゃ。中々前に進めんのう」
「ごめんね。オレがあんまり国のことを管理していないからこんな目に遭わせちゃって……」
「別に良いのじゃ。わしらの旅はぶらぶら歩くだけではない。わしは神であるお前に付き添っておるのじゃ。お前が統治しきれておらんところを直して歩く。これがわしらができることじゃろうて」
「どうしてそこまでするの?オレは確かに神だけど、村の人みたいに突き放したっていいはずなんだけど……」
「どうしてもこうしてもないの。わしはお前に命を救われ、この肉体を与えられた。わしがこの世界に来たのは、お前を助けよと天命を与えられたのじゃないかと思うておる。ただそれだけじゃ」
ため息をつきながらヴォルフの額をツンツンと小突く。
すると横穴の奥から足音が聞こえ、二人は身構える。
明るい灰色の体毛を持ち大きな瞳、毛の生えていない尻尾、丸みを帯びた耳、そして特徴的な前歯。
そう、ネズミだった。
「む、ネズミか。すぐに退治せぬと疫病をまき散らすぞ。凍らせるのじゃ」
「ま、待ってくれよ!いきなり殺すなんてひどいじゃないか!?」
いきなり殺されそうになったネズミは慌てて弁解する。
ふくはネズミが言葉を使うことが出る事に少しだけ嫌な顔をする。
「しゃべるネズミ……村の者と似ておるの」
「うん、オレの作った人間だね。どうするの?殺してもいいの?」
「待つのじゃ。この者の言い分を聴こうではないか?そこのネズミよ、わしらに何の用じゃ?」
ふくたちのやり取りを見て少々怖気づいたネズミだが、ふくが話を聞く体勢となり安心して話そうとした瞬間、ふくが何も着ていないことに気が付き鼻血を噴き出して気を失った。
そんなネズミを見てふくとヴォルフは目を合わせて首をかしげる。
とりあえずネズミが目を覚ますまで待つことにした。
ネズミが目を覚ますとキツネと狼に見られてシャカシャカと後ずさりする。
「待つのじゃ。お前はわし等に用があってきたのではないのか?」
ふくにそう訊かれると思い出したのか正座をする。
「あ、あの……!さっきの話でこの土地を何とかしようって聞こえたけど、それは本当なの……?」
「もちろんじゃ。この神ヴォルフが放置して瘦せこけた大地を元に戻すためにわしらは旅をしておるのじゃ。して、お前は土の魔法を知っておるかの?」
「し、知ってはいるけど……誰も使えないし、それに使い手は死んじゃったし……」
ふくは土魔法の使い手が死んだと聞き、ヴォルフを睨む。
睨まれたヴォルフは頭が千切れんばかりに首を横に振る。
「寿命で死んだのか?」
「ふく。獣人の寿命はざっと五百年だよ。オレがそう決めたから」
「「ご……五百年!?」」
ふくとネズミは圧倒的な寿命設定を聴き、驚きのあまり叫ぶ。
横穴の岩はかなり硬いのか二人の声はよく反響した。
なぜ二人がそんなに驚いているのかわかっておらず聞き返す。
「ど、どうして二人ともそんなに驚くの?なんか悪いことした?短かった?」
「逆じゃよ。地上の人間なぞ齢五十年生きれば大往生じゃ」
「寿命で死ぬ事は今のところ無さそうだね……。ボクたち弱いから魔獣に殺されるんだ。どれだけ長生きでも十五年くらいしか生きられないんだ。それに誰一人として子供を作ることができないから、減っていく一方なんだ」
「ぼるふよ、お前……子を成すことが出来ないとは言わせんぞ?」
「こ、子供は作れるようにしているよ!五百歳が寿命として、五十歳ほどで身体が完成するようにしてるから、その後なら出来るはずだよ?」
「誰もそこまで生きとらん。お前の設計はポンコツじゃったの」
ポンコツと言われ、ヴォルフはがっくしと肩を落とした。
この世界の住人についてはほとんど知らないふくではあったが、どうやら個人個人は弱くできているようで、魔獣に命を脅かされているようだった。
ヴォルフは容易く魔獣を仕留めてふくに肉を提供するが、普通の人はそんな簡単に獲れるものではないのだろうと村の門番たちの反応を思い出して気が付く。
「ネズミよ。お前たちの困りごとは何なのじゃ?」
ふくがそう訊ねるとネズミは握りこぶしを作り、ふくの目を確りと見つめた。
ここには植物や水が一切存在せず、乾いた空気と砂塵が吹き溢れる場所であった。
ふくの目には砂が入り込むことがあまりなく、改めてこの肉体の良さを知る。
それでも風が行く手を阻み思うように進むことができなかった。
「むう……。こうも風が吹き溢れると歩きづらくてたまらんのう……」
「うーん……。この辺りはこんなに土地も枯れていなかった気がするんだよね。なにか良くないこと起きているのかな……」
「お前は自分の領地のことも把握しておらんのか?土地が枯れるのはこの場所に腐った土などが落ちとらんからの。それにこの風は木が生えておらんことによって遮るものがないのじゃ。……ぼるふよ、土の魔法というものは存在するのかの?」
「あるよ!でも、土の魔法は扱いが難しいから使い手が少ないんだ。だからオレでもちょっとわからない……」
その話を聞き、ふくは考えながら風に立ち向かっていると洞穴のような横穴を見つける。
ヴォルフに指で合図を送り、横穴へと入っていく。
「やれやれなのじゃ。中々前に進めんのう」
「ごめんね。オレがあんまり国のことを管理していないからこんな目に遭わせちゃって……」
「別に良いのじゃ。わしらの旅はぶらぶら歩くだけではない。わしは神であるお前に付き添っておるのじゃ。お前が統治しきれておらんところを直して歩く。これがわしらができることじゃろうて」
「どうしてそこまでするの?オレは確かに神だけど、村の人みたいに突き放したっていいはずなんだけど……」
「どうしてもこうしてもないの。わしはお前に命を救われ、この肉体を与えられた。わしがこの世界に来たのは、お前を助けよと天命を与えられたのじゃないかと思うておる。ただそれだけじゃ」
ため息をつきながらヴォルフの額をツンツンと小突く。
すると横穴の奥から足音が聞こえ、二人は身構える。
明るい灰色の体毛を持ち大きな瞳、毛の生えていない尻尾、丸みを帯びた耳、そして特徴的な前歯。
そう、ネズミだった。
「む、ネズミか。すぐに退治せぬと疫病をまき散らすぞ。凍らせるのじゃ」
「ま、待ってくれよ!いきなり殺すなんてひどいじゃないか!?」
いきなり殺されそうになったネズミは慌てて弁解する。
ふくはネズミが言葉を使うことが出る事に少しだけ嫌な顔をする。
「しゃべるネズミ……村の者と似ておるの」
「うん、オレの作った人間だね。どうするの?殺してもいいの?」
「待つのじゃ。この者の言い分を聴こうではないか?そこのネズミよ、わしらに何の用じゃ?」
ふくたちのやり取りを見て少々怖気づいたネズミだが、ふくが話を聞く体勢となり安心して話そうとした瞬間、ふくが何も着ていないことに気が付き鼻血を噴き出して気を失った。
そんなネズミを見てふくとヴォルフは目を合わせて首をかしげる。
とりあえずネズミが目を覚ますまで待つことにした。
ネズミが目を覚ますとキツネと狼に見られてシャカシャカと後ずさりする。
「待つのじゃ。お前はわし等に用があってきたのではないのか?」
ふくにそう訊かれると思い出したのか正座をする。
「あ、あの……!さっきの話でこの土地を何とかしようって聞こえたけど、それは本当なの……?」
「もちろんじゃ。この神ヴォルフが放置して瘦せこけた大地を元に戻すためにわしらは旅をしておるのじゃ。して、お前は土の魔法を知っておるかの?」
「し、知ってはいるけど……誰も使えないし、それに使い手は死んじゃったし……」
ふくは土魔法の使い手が死んだと聞き、ヴォルフを睨む。
睨まれたヴォルフは頭が千切れんばかりに首を横に振る。
「寿命で死んだのか?」
「ふく。獣人の寿命はざっと五百年だよ。オレがそう決めたから」
「「ご……五百年!?」」
ふくとネズミは圧倒的な寿命設定を聴き、驚きのあまり叫ぶ。
横穴の岩はかなり硬いのか二人の声はよく反響した。
なぜ二人がそんなに驚いているのかわかっておらず聞き返す。
「ど、どうして二人ともそんなに驚くの?なんか悪いことした?短かった?」
「逆じゃよ。地上の人間なぞ齢五十年生きれば大往生じゃ」
「寿命で死ぬ事は今のところ無さそうだね……。ボクたち弱いから魔獣に殺されるんだ。どれだけ長生きでも十五年くらいしか生きられないんだ。それに誰一人として子供を作ることができないから、減っていく一方なんだ」
「ぼるふよ、お前……子を成すことが出来ないとは言わせんぞ?」
「こ、子供は作れるようにしているよ!五百歳が寿命として、五十歳ほどで身体が完成するようにしてるから、その後なら出来るはずだよ?」
「誰もそこまで生きとらん。お前の設計はポンコツじゃったの」
ポンコツと言われ、ヴォルフはがっくしと肩を落とした。
この世界の住人についてはほとんど知らないふくではあったが、どうやら個人個人は弱くできているようで、魔獣に命を脅かされているようだった。
ヴォルフは容易く魔獣を仕留めてふくに肉を提供するが、普通の人はそんな簡単に獲れるものではないのだろうと村の門番たちの反応を思い出して気が付く。
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