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「そう、上手ですよ」
色づいた声で褒めながら、グレンは俺の頭を撫でた。耳朶を指先で擽るように撫でられて、腰にゾクゾクとした震えが走る。
口一杯に含んだ性器に舌を這わせて、収まり切らなかった分は掌で愛撫した。強弱を付けて優しく揉むと、舌にじんわりと苦味が広がる。前は吐き気がして死にそうな気分になったが、今はそこまで思わなくなった。流石に美味しいとは思えないが、口を開けろと言われて大人しく開けられる程度には抵抗がなくなってきている。不味いなと、自分でも分かってる。けれど、拒否できない以上は慣れるしかない。
「強く吸って」
「んんっ、ぅ……っ」
じゅるっ、と音を立てて吸い上げると、一際大きく膨張した剛直がビクンと跳ねるのを感じた。その一瞬あと、口内に精液が叩きつけられる。反射的に逃げようと頭を下げたが、うなじを指先で擽られて何とか堪えた。どぷっどぷっ、と生々しく舌の上を跳ねる感触に眉を寄せながらも、グレンの服に皺が刻まれるほど強くしがみついた。
「っう……」
最後の一滴が吐き出されるまで、ぎゅっと目を閉じて受け止めた。ずるりと口から引き抜かれる感覚に、漸く目を開ける。
苦いもので口内が一杯になる。早く吐き出してしまいたいが、手で頬を包むようにして顔を上げさせられた。その先に、言われる言葉はもう知っている。うんざりしつつもグレンを見ると、目元を赤く染めた彼は唇を指でなぞった。
「口を開けて、見せてください」
親指を突っ込まれて、ぐちゃぐちゃと音を立てて舌を嬲られる。
「いっぱいですね。飲めますか?」
「……っん」
疑問系ではあるが、俺の答えなんて一つしかない。引き攣ったような喉を、ぎこちなく上下させる。ごくん、と言われるまま飲み込むと、グレンは満足そうに目を細めた。額に張り付いた髪を退けられて、額に唇が下りてくる。
「いい子」
キスの合間に紡がれるたった三文字に、俺の意思とは関係なく身体が歓喜に震えた。
腕を引かれて、ベッドに乗り上げる。キスをしながら押し倒されて、太腿を撫で上げられた。グレンの胸に手を当てて遠ざけようとするが、そこに大した力が篭もってないのは自分でもわかる。
優しく手首を握られて、血管が浮く部分に唇が触れる。あ、と短く言葉を漏らすと、グレンは赤い瞳を柔らかく綻ばせた。
貴方にしか救えない。
本当は、あの言葉に酷く胸を打たれた。痛いくらいの歓喜が身体を熱くさせて、だからこそグレンの顔を見に自分から足を運んだのだ。多分、俺はそこから間違えていた。
自覚はなかったが、俺は人より承認欲求が強いのだと思う。自分のしたことが認められたり、他人から褒められたりする事に喜びを見い出してしまう。本当は父と母に褒めてほしいけれど、俺は二人の思う俺になれていないから中々認めてもらえない。二人が褒めてくれないのを仕方がないと思う一方で、頑張っているのにと自分勝手に苛立つ気持ちが抑えられない。骨が軋むほど強く抱き締めて、お前で良かったと痛くなるくらい頭を撫でてほしいなんて。人には言えない醜い欲ばかりだ。
多分、それをグレンに気づかれた。押さえつけるよりも褒めて、優しくして、身動きを取れないように言葉で縛りつけてくる。
グレンは太腿にキスをすると、俺の性器を躊躇なくぱくりと食べた。いつも肩やうなじを噛まれるから怯えてしまうが、優しく愛撫されて爪先をきゅうっと丸めてしまう。
「ぁう、グレンっ。それ、いいから……っ」
「気持ちいいですか?」
ちゅうっと音を立てて先端を吸われて、裏筋を指で撫で上げられると堪らない。半泣きでグレンの後ろ髪をぐいぐいと引っ張るが、離してくれる気配は全くない。
突っ込まれて揺さぶられるのはまだいい。命令されるのも言い訳が効くから構わないが、グレンから奉仕されるのは何だか駄目な気がする。今更だが、ぐずぐずとと鼻を鳴らしながら、引き剥がそうと髪を引っ張った。
「離せって……っ」
「んっ……少し煩いですよ」
「ひっ」
亀頭部分に軽く歯を立てられて、びくりと内腿が震える。そこまで痛くはないが、グレンに急所を握られているのが怖くなった。怯えから小刻みに身体が震えてしまう。グレンはばつが悪そうな顔をしてから性器から口を離して、俺の足を膝に乗せるようにした。そうして、するりと太腿を撫でたあと、奥へと指を伸ばしてくる。穴の縁を優しく揉んだあと、性器から滲み出た先走りを借りて指を押し込んできた。圧迫感に小さく呻くと、宥めるようなキスが降ってくる。
「大丈夫ですよ。いい子にしてれば痛いことはしませんから」
入り口を広げるように中でくるりと回され、次第に指の数が増やされていく。くちゅくちゅと響く水音に、段々と頭がぼんやりしてきた。
「んっ……」
気持ちが良い所を探り当てられて、ぞわりと怖気に似た快感がせり上がってくる。
「ひぁっ、あ、ぐれん、やあっ」
「やじゃないでしょう。気持ちいいって言ってみてください」
物凄く楽しそうなグレンを見つつ、喘ぐ事しか出来ないのが悔しい。仕返しで肩を引き寄せて爪を立ててやると、グレンは瞳を蕩けさせた。
「ふふ、甘えたですね」
違うそうじゃないと言ってやりたかったが、グレンの口に飲み込まれた。ベッドの中のこいつは、脳が溶けてるとしか思えない。普段の性欲なんてありませんみたいな顔に恋する淑女たちに、こいつの本性を叩きつけてやりたい。
グレンの顔が胸に寄せられて、力の籠もらない身体を何とか動かして首を振った。
「ぁ…っ、舐めるな……っ」
「どうして? ここ虐められるの好きでしょう」
「やっ、頭、おかしくなるから……やめ……ぅ……っ」
「使い物にならなくなっても、おかしくなっても。貴方でしたら面倒を見てあげますから大丈夫ですよ」
その言葉に本気を感じて、熱が引きそうになる。けれど、その前にぷくりと立ち上がった突起に噛み付かれて甘ったるい喘ぎが漏れた。ゾクゾクとした痺れを感じて、足先にまで力がこもる。痛いけど、気持ちがいい。思わず背をのけぞらせると、グレンの唇に更に押し付けるような体勢になってしまった。まるで自分から強請っているみたいで恥ずかしくて、頬と言わず耳の先まで熱くなる。
痛みのせいで熱を持ち、過敏になった先端を舐められると、腰にずくんっと響くような快感が襲ってきた。
「あ゛っ、ぅあッ」
指を引き抜かれて、内に収まっていた質量が消える。それに僅かな寂しさを覚えてしまって唇を噛んだ。嫌だった筈だ。その筈なのに、繰り返すうちに身体は慣れるどころか他人の熱を求めて火照る。
グレンは宥めるように、俺にキスをした。労るような優しい接触に、背がむず痒くなる。
「力を抜いて」
足を横に倒されて、後孔に熱が押し当てられた。ぎゅうっと両手で枕を抱き締めるが、片手を取られて肩へと誘導される。どうやら掴めと言いたいらしいが、そうすると身体が自然とグレンの方を向く体勢になってしまう。顔が見えてしまうので、個人的には拒否したい。が、従わなければ先に進みも戻りもしないだろう。渋々グレンの肩に手を置いた。
「蓮……」
何て声で人の名前を呼ぶんだ。命令するときの冷たさは感じられず、砂糖を溶かしたみたいに甘い声だった。
ずぷぷっ、と熱が押し入ってくる。何度目かになるので痛みは殆どないが、挿入時の圧迫感はなかなか慣れない。眉を寄せて、グレンの肩に爪を立てた。
「ふっ、んん……ぅ゛……っ」
グレンは挿入の苦しさに呻く俺を、じっと見下ろしている。そのまま、ゆっくりと腰を押し進めて根本まで飲み込ませると、満足そうに目を細めた。褒めるようにキスをされて、ぼんやりとしたまま視線を下に落とす。
「全部、入りましたよ」
「はぁっ、は……っ」
腹が熱い。グレンのものが内蔵を押し上げて、腹の奥まで満たしている。グレンの肩から手を離して、身体を横にしたまま荒い呼吸を繰り返した。初めに感じた屈辱は、もう大分薄れている。そうなる程に繰り返していた。なし崩しにずるずると、名前のない行為を何度も。
グレンは俺を背後から抱くように寝そべると、ぴたりと肌を合わせるようにくっついてくる。掌で熱を埋めた腹を撫でられて、下腹がゾクゾクと疼いた。
「ぁ、あっ、やっ、ああ……っ」
ゆっくりと腰を揺らされ、腹側のしこりを抉られると声が抑えられない。正常位や後背位では擦れない場所が深く抉られて、いつもより脳がどろどろに溶ける。力なく手を振り回して逃げようとするが、胸に回わされた腕に引き寄せられて余計に深く繋がる羽目になった。
「あぅッ、あ、さっきから、ぁ゛…っ、そこ、ばっかぁ……っ」
視界がパチパチと弾ける。気持ち良いところを突かれると同時に、胸の突起を摘まれると、びくんと腰が跳ねた。胸と腰の回路が繋がってしまったみたいに腰の疼きが強くなる。
「いつも私ばかりですから、今日は蓮の気持ちいいところが知りたいです」
「い、やだっ」
ふざけるな、頼むから止めてくれ。本当に頭がおかしくなる。
うなじを甘く噛まれて、赤くなった突起を指で回すように弄られる。それと同時に前立腺まで擦られたりしたら、脳味噌は跡形もなく溶けるしかない。
「あっ、あぁ……も、だめ」
腰が震える度に、先端から蜜が滴り落ちる。軽く達する度に腸壁が蠢いて、グレンの性器を愛撫した。
「はっ……かわいい……」
耳の裏に唇を押し付けられたかと思えば、軽く食まれる。熱い舌の感触に身震いすると、胸の尖りを指で擦られて腰が重くなった。神経を直接触られているような強烈な刺激に、視界がチカチカと明滅する。
「ふっ、ぅ……んん……っ」
血を見たあと、昂ぶる気持ちは分かる。知りたくもなかったが、殺し殺されるかもしれない危機感は不思議な高揚を誘った。だから、それを鎮める為の行為であることは分かるのだが、何だってそれを俺に求めるのか。
胸の尖りを弾かれて、じんっとした痛みと刺激に腰が跳ねる。咄嗟に引こうとしたが、掴まれて奥までねじ込まれた。ビリビリとした痺れに襲われ、爪先が攣りそうになる。
「グレン……もう、むり……」
息も絶え絶えに告げると、グレンは漸く俺の中から抜いてくれた。ほっと安堵する間もなくひっくり返されて、後孔に熱が押し当てられた。待って、と言う前にずぷずぷと音を立てながら挿入され、行き止まりを押し上げられる。
「ぁぐっ……んっ、んん……っ」
腰を高く上げさせられて、獣の交尾を思わせるような体勢で奥深くを無遠慮に穿たれる。ごつごつと骨盤に腰骨が当たるほど、深く深くと貪られた。
「も、入らない……っ」
こないで、と必死に懇願しても律動は激しさを増すばかりで、全然止まってくれない。達したばかりで痙攣する中を、グレンの剛直が容赦なく擦りあげてくるせいで視界が弾け飛ぶ。腹からごちゅっごちゅっと内蔵を叩くような音がして、得体の知れない恐怖が指先を震わせた。
「グレンっ、こわい、おくむり……もっ、むり……っ」
既に限界まで高められていた身体に、この激しさは毒だ。腰を叩き付けられる度に尻はきゅんきゅんと締まり、結合部分は濁った音を立てている。奥へ奥へと押し付けられる剛直は、容赦なく肉壁を割り開き快感を無理やり引き摺りだす。
「あっ、あっ、ああっ……!」
「蓮、私の名前を呼べますか?」
「グレン、グレンっ、お腹苦し……っ」
腹の奥がじんじんして、燃えるように熱い。
ごりゅっと最奥を押し上げられて、視界が真っ白に塗り潰された。声にならない媚声が唇から飛び出て、全身が大きく震える。
「あ……あ、ああ……」
腹の奥でグレンの熱を感じながら、くたりと全身が弛緩する。頬が濡れていくのを自覚しながら呆然としていると、顎を掴まれて唇を重ねられた。
「蓮……」
甘ったるい声を聞きながら、俺は疲労から瞼を下ろした。グレンが暇を見ては回復魔法を掛けてくれるので身体的な傷は直ぐに癒える。けれど、それでは精神的な疲れまでは取り除けなかった。
強く抱き留めてくる腕に身を任せながら、見えない明日が俺の胸を重くさせた。
夜明けは、未だに兆しすら見せない。
色づいた声で褒めながら、グレンは俺の頭を撫でた。耳朶を指先で擽るように撫でられて、腰にゾクゾクとした震えが走る。
口一杯に含んだ性器に舌を這わせて、収まり切らなかった分は掌で愛撫した。強弱を付けて優しく揉むと、舌にじんわりと苦味が広がる。前は吐き気がして死にそうな気分になったが、今はそこまで思わなくなった。流石に美味しいとは思えないが、口を開けろと言われて大人しく開けられる程度には抵抗がなくなってきている。不味いなと、自分でも分かってる。けれど、拒否できない以上は慣れるしかない。
「強く吸って」
「んんっ、ぅ……っ」
じゅるっ、と音を立てて吸い上げると、一際大きく膨張した剛直がビクンと跳ねるのを感じた。その一瞬あと、口内に精液が叩きつけられる。反射的に逃げようと頭を下げたが、うなじを指先で擽られて何とか堪えた。どぷっどぷっ、と生々しく舌の上を跳ねる感触に眉を寄せながらも、グレンの服に皺が刻まれるほど強くしがみついた。
「っう……」
最後の一滴が吐き出されるまで、ぎゅっと目を閉じて受け止めた。ずるりと口から引き抜かれる感覚に、漸く目を開ける。
苦いもので口内が一杯になる。早く吐き出してしまいたいが、手で頬を包むようにして顔を上げさせられた。その先に、言われる言葉はもう知っている。うんざりしつつもグレンを見ると、目元を赤く染めた彼は唇を指でなぞった。
「口を開けて、見せてください」
親指を突っ込まれて、ぐちゃぐちゃと音を立てて舌を嬲られる。
「いっぱいですね。飲めますか?」
「……っん」
疑問系ではあるが、俺の答えなんて一つしかない。引き攣ったような喉を、ぎこちなく上下させる。ごくん、と言われるまま飲み込むと、グレンは満足そうに目を細めた。額に張り付いた髪を退けられて、額に唇が下りてくる。
「いい子」
キスの合間に紡がれるたった三文字に、俺の意思とは関係なく身体が歓喜に震えた。
腕を引かれて、ベッドに乗り上げる。キスをしながら押し倒されて、太腿を撫で上げられた。グレンの胸に手を当てて遠ざけようとするが、そこに大した力が篭もってないのは自分でもわかる。
優しく手首を握られて、血管が浮く部分に唇が触れる。あ、と短く言葉を漏らすと、グレンは赤い瞳を柔らかく綻ばせた。
貴方にしか救えない。
本当は、あの言葉に酷く胸を打たれた。痛いくらいの歓喜が身体を熱くさせて、だからこそグレンの顔を見に自分から足を運んだのだ。多分、俺はそこから間違えていた。
自覚はなかったが、俺は人より承認欲求が強いのだと思う。自分のしたことが認められたり、他人から褒められたりする事に喜びを見い出してしまう。本当は父と母に褒めてほしいけれど、俺は二人の思う俺になれていないから中々認めてもらえない。二人が褒めてくれないのを仕方がないと思う一方で、頑張っているのにと自分勝手に苛立つ気持ちが抑えられない。骨が軋むほど強く抱き締めて、お前で良かったと痛くなるくらい頭を撫でてほしいなんて。人には言えない醜い欲ばかりだ。
多分、それをグレンに気づかれた。押さえつけるよりも褒めて、優しくして、身動きを取れないように言葉で縛りつけてくる。
グレンは太腿にキスをすると、俺の性器を躊躇なくぱくりと食べた。いつも肩やうなじを噛まれるから怯えてしまうが、優しく愛撫されて爪先をきゅうっと丸めてしまう。
「ぁう、グレンっ。それ、いいから……っ」
「気持ちいいですか?」
ちゅうっと音を立てて先端を吸われて、裏筋を指で撫で上げられると堪らない。半泣きでグレンの後ろ髪をぐいぐいと引っ張るが、離してくれる気配は全くない。
突っ込まれて揺さぶられるのはまだいい。命令されるのも言い訳が効くから構わないが、グレンから奉仕されるのは何だか駄目な気がする。今更だが、ぐずぐずとと鼻を鳴らしながら、引き剥がそうと髪を引っ張った。
「離せって……っ」
「んっ……少し煩いですよ」
「ひっ」
亀頭部分に軽く歯を立てられて、びくりと内腿が震える。そこまで痛くはないが、グレンに急所を握られているのが怖くなった。怯えから小刻みに身体が震えてしまう。グレンはばつが悪そうな顔をしてから性器から口を離して、俺の足を膝に乗せるようにした。そうして、するりと太腿を撫でたあと、奥へと指を伸ばしてくる。穴の縁を優しく揉んだあと、性器から滲み出た先走りを借りて指を押し込んできた。圧迫感に小さく呻くと、宥めるようなキスが降ってくる。
「大丈夫ですよ。いい子にしてれば痛いことはしませんから」
入り口を広げるように中でくるりと回され、次第に指の数が増やされていく。くちゅくちゅと響く水音に、段々と頭がぼんやりしてきた。
「んっ……」
気持ちが良い所を探り当てられて、ぞわりと怖気に似た快感がせり上がってくる。
「ひぁっ、あ、ぐれん、やあっ」
「やじゃないでしょう。気持ちいいって言ってみてください」
物凄く楽しそうなグレンを見つつ、喘ぐ事しか出来ないのが悔しい。仕返しで肩を引き寄せて爪を立ててやると、グレンは瞳を蕩けさせた。
「ふふ、甘えたですね」
違うそうじゃないと言ってやりたかったが、グレンの口に飲み込まれた。ベッドの中のこいつは、脳が溶けてるとしか思えない。普段の性欲なんてありませんみたいな顔に恋する淑女たちに、こいつの本性を叩きつけてやりたい。
グレンの顔が胸に寄せられて、力の籠もらない身体を何とか動かして首を振った。
「ぁ…っ、舐めるな……っ」
「どうして? ここ虐められるの好きでしょう」
「やっ、頭、おかしくなるから……やめ……ぅ……っ」
「使い物にならなくなっても、おかしくなっても。貴方でしたら面倒を見てあげますから大丈夫ですよ」
その言葉に本気を感じて、熱が引きそうになる。けれど、その前にぷくりと立ち上がった突起に噛み付かれて甘ったるい喘ぎが漏れた。ゾクゾクとした痺れを感じて、足先にまで力がこもる。痛いけど、気持ちがいい。思わず背をのけぞらせると、グレンの唇に更に押し付けるような体勢になってしまった。まるで自分から強請っているみたいで恥ずかしくて、頬と言わず耳の先まで熱くなる。
痛みのせいで熱を持ち、過敏になった先端を舐められると、腰にずくんっと響くような快感が襲ってきた。
「あ゛っ、ぅあッ」
指を引き抜かれて、内に収まっていた質量が消える。それに僅かな寂しさを覚えてしまって唇を噛んだ。嫌だった筈だ。その筈なのに、繰り返すうちに身体は慣れるどころか他人の熱を求めて火照る。
グレンは宥めるように、俺にキスをした。労るような優しい接触に、背がむず痒くなる。
「力を抜いて」
足を横に倒されて、後孔に熱が押し当てられた。ぎゅうっと両手で枕を抱き締めるが、片手を取られて肩へと誘導される。どうやら掴めと言いたいらしいが、そうすると身体が自然とグレンの方を向く体勢になってしまう。顔が見えてしまうので、個人的には拒否したい。が、従わなければ先に進みも戻りもしないだろう。渋々グレンの肩に手を置いた。
「蓮……」
何て声で人の名前を呼ぶんだ。命令するときの冷たさは感じられず、砂糖を溶かしたみたいに甘い声だった。
ずぷぷっ、と熱が押し入ってくる。何度目かになるので痛みは殆どないが、挿入時の圧迫感はなかなか慣れない。眉を寄せて、グレンの肩に爪を立てた。
「ふっ、んん……ぅ゛……っ」
グレンは挿入の苦しさに呻く俺を、じっと見下ろしている。そのまま、ゆっくりと腰を押し進めて根本まで飲み込ませると、満足そうに目を細めた。褒めるようにキスをされて、ぼんやりとしたまま視線を下に落とす。
「全部、入りましたよ」
「はぁっ、は……っ」
腹が熱い。グレンのものが内蔵を押し上げて、腹の奥まで満たしている。グレンの肩から手を離して、身体を横にしたまま荒い呼吸を繰り返した。初めに感じた屈辱は、もう大分薄れている。そうなる程に繰り返していた。なし崩しにずるずると、名前のない行為を何度も。
グレンは俺を背後から抱くように寝そべると、ぴたりと肌を合わせるようにくっついてくる。掌で熱を埋めた腹を撫でられて、下腹がゾクゾクと疼いた。
「ぁ、あっ、やっ、ああ……っ」
ゆっくりと腰を揺らされ、腹側のしこりを抉られると声が抑えられない。正常位や後背位では擦れない場所が深く抉られて、いつもより脳がどろどろに溶ける。力なく手を振り回して逃げようとするが、胸に回わされた腕に引き寄せられて余計に深く繋がる羽目になった。
「あぅッ、あ、さっきから、ぁ゛…っ、そこ、ばっかぁ……っ」
視界がパチパチと弾ける。気持ち良いところを突かれると同時に、胸の突起を摘まれると、びくんと腰が跳ねた。胸と腰の回路が繋がってしまったみたいに腰の疼きが強くなる。
「いつも私ばかりですから、今日は蓮の気持ちいいところが知りたいです」
「い、やだっ」
ふざけるな、頼むから止めてくれ。本当に頭がおかしくなる。
うなじを甘く噛まれて、赤くなった突起を指で回すように弄られる。それと同時に前立腺まで擦られたりしたら、脳味噌は跡形もなく溶けるしかない。
「あっ、あぁ……も、だめ」
腰が震える度に、先端から蜜が滴り落ちる。軽く達する度に腸壁が蠢いて、グレンの性器を愛撫した。
「はっ……かわいい……」
耳の裏に唇を押し付けられたかと思えば、軽く食まれる。熱い舌の感触に身震いすると、胸の尖りを指で擦られて腰が重くなった。神経を直接触られているような強烈な刺激に、視界がチカチカと明滅する。
「ふっ、ぅ……んん……っ」
血を見たあと、昂ぶる気持ちは分かる。知りたくもなかったが、殺し殺されるかもしれない危機感は不思議な高揚を誘った。だから、それを鎮める為の行為であることは分かるのだが、何だってそれを俺に求めるのか。
胸の尖りを弾かれて、じんっとした痛みと刺激に腰が跳ねる。咄嗟に引こうとしたが、掴まれて奥までねじ込まれた。ビリビリとした痺れに襲われ、爪先が攣りそうになる。
「グレン……もう、むり……」
息も絶え絶えに告げると、グレンは漸く俺の中から抜いてくれた。ほっと安堵する間もなくひっくり返されて、後孔に熱が押し当てられた。待って、と言う前にずぷずぷと音を立てながら挿入され、行き止まりを押し上げられる。
「ぁぐっ……んっ、んん……っ」
腰を高く上げさせられて、獣の交尾を思わせるような体勢で奥深くを無遠慮に穿たれる。ごつごつと骨盤に腰骨が当たるほど、深く深くと貪られた。
「も、入らない……っ」
こないで、と必死に懇願しても律動は激しさを増すばかりで、全然止まってくれない。達したばかりで痙攣する中を、グレンの剛直が容赦なく擦りあげてくるせいで視界が弾け飛ぶ。腹からごちゅっごちゅっと内蔵を叩くような音がして、得体の知れない恐怖が指先を震わせた。
「グレンっ、こわい、おくむり……もっ、むり……っ」
既に限界まで高められていた身体に、この激しさは毒だ。腰を叩き付けられる度に尻はきゅんきゅんと締まり、結合部分は濁った音を立てている。奥へ奥へと押し付けられる剛直は、容赦なく肉壁を割り開き快感を無理やり引き摺りだす。
「あっ、あっ、ああっ……!」
「蓮、私の名前を呼べますか?」
「グレン、グレンっ、お腹苦し……っ」
腹の奥がじんじんして、燃えるように熱い。
ごりゅっと最奥を押し上げられて、視界が真っ白に塗り潰された。声にならない媚声が唇から飛び出て、全身が大きく震える。
「あ……あ、ああ……」
腹の奥でグレンの熱を感じながら、くたりと全身が弛緩する。頬が濡れていくのを自覚しながら呆然としていると、顎を掴まれて唇を重ねられた。
「蓮……」
甘ったるい声を聞きながら、俺は疲労から瞼を下ろした。グレンが暇を見ては回復魔法を掛けてくれるので身体的な傷は直ぐに癒える。けれど、それでは精神的な疲れまでは取り除けなかった。
強く抱き留めてくる腕に身を任せながら、見えない明日が俺の胸を重くさせた。
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普通の男の子がヤンデレや変態に愛されるだけの短編集、はじめました。
山田ハメ太郎
BL
タイトル通りです。
お話ごとに章分けしており、ひとつの章が大体1万文字以下のショート詰め合わせです。
サクッと読めますので、お好きなお話からどうぞ。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
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