夜明けには程遠い【完結】

米派

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何故こんな事も出来ないんだ。父が冷たく言い放つ。ごめんなさい、と俺は震える声で、何とかそれだけを返した。服の裾を握りながら、込み上げてくるものを懸命に堪える。父は紙を握り潰すと、短く舌を打った。

「お前は俺の後継ぎなんだ。しっかりしてもらわなくては、引き取った意味がない」

褒めてくれると思った。百点ではなかったけれど、クラスでは一番だったのだ。けれど、父の顔を見て、その考えが如何に甘かったのかを知る。凍てつくような目で睨みつけられて、拳に力が籠もった。泣かないように唇を噛んで、何とか父を見つめ返す。逸らすと反抗的だと言われて、頬が痛くなるからだ。

「遊びにかまけたりするからだ。お前は出来ない子なんだから、人一倍頑張らなければ駄目だろう」
「……はい」

そうだ、俺は頑張らなければならない。せっかく出来た家族に見捨てられない為には、俺は出来損ないのままではいられないのだ。

二人はどうしても子供が出来なかったらしく、跡取りを得るために俺がいる施設を訪ねてきた。その時、その中で選ばれたのが俺だった。そこに大した理由なんて無かったのかもしれない。それでも、俺は家族が出来ることが、嬉しくて堪らなかった。夢見ていた生活とは少し違ったけれど、それでも俺を選んでくれたことがどうしようもなく。

「俺、出来ます。二人が認めてくれるのなら何だってします」

嘘ではない。何だってするし、出来るはずだ。
じっと見返すと、父は何も言わずに丸めた紙をゴミ箱に落とした。

「その言葉、忘れるなよ。次はこんな恥ずかしい点数を取るな」
「はい」

足りないのなら、もっと努力すればいい。もっと、もっと、もっと。俺は出来ない子なんだ。頑張らなければ、後は落ちるだけ。





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