28 / 35
20※
しおりを挟む無骨な手を取り、固い甲に額を当てた。本来なら神聖とも呼べる儀式の筈だが、粘つくような視線が全てを無にしている。薄く目を開けて相手の顔を伺うと、熱の籠もった視線が唇に注がれているがわかった。肌を焼かれそうな熱から目を逸らして、軽く一礼してからお決まりの台詞を吐く。相手への気遣いと鼓舞を含めた言葉だが、きちんと届いているのかは怪しいところだ。
今まで気にしたこともなかったが、グレンと擬似行為を繰り返すうちに、周りの視線に違和感を覚え始めた。
元の世界では感じたことのない視線が、兵士の何人かから向けられている。あちらでも女性から似たようなものを向けられたことはあったが、肌を舐めるような類のものではなかった。
兵士が、俺の手を取る。俺とて小柄ではないが、戦うことを生業としている男の手と比べると華奢に見えた。男として情けなく思うが、今はそんなことよりも手の甲に掛かる熱に意識が持っていかれてしまう。兵士は俺の手を握ると、震える唇を押しつけてきた。
「勇者様……」
何かを乞うような響きを無視して、兵士の手に自らの手を重ね合わせる。祝福を、とだけ返すと兵士は嬉しそうとも残念そうとも取れる表情を浮かべた。
兵士が部屋を出ていくのを見送ってから、俺もグレンの部屋に行かなければと重たい足を踏み出す。扉に手をかけて廊下に出ようと顔を上げると、赤い瞳とぶつかった。え? と音にする前に肩を掴まれて、そのまま部屋に押し込まれる。
「なんで、ここに……」
グレンは俺の言葉を無視し、手首を痛いほどの力で掴んだまま見下ろしてくる。大きな音がして、肩が跳ねた。錠の掛かる音だ。遅れて理解した途端、自分でも馬鹿だと思うが背中を向けて逃げようとした。けれど、腹に回った腕に動きを阻まれる。
うなじに噛みつかれて、口からは甘い吐息が漏れた。口を押さえて声を飲み込むが、腰を撫でられると我慢できない。短く漏れてしまった声に、グレンが舌を打つのが分かった。
「男に触られて興奮したんですか」
「ちが、う」
怒られる筋合いはない筈なのだが、グレンの声には隠しきれない苛立ちが色濃く浮かんでいる。いつからだ。グレンが俺に向けていたのは歪ながらも友愛だったはずだ。そこに性欲なんて含まれてはいなかったのに。
「でも、反応しています」
つつっ、と撫でられて息が詰まる。太腿を滑り落ちていく布の感触に、心臓がどくどくと激しく脈打った。それが期待によるものだとは思いたくないが、自身のものを見たら否定することは出来なかった。露わになった性器はふるりと震えて、先端からとろとろと蜜を滴らしている。カッと発火すると思うほど頬が熱くなった。
「……随分と厭らしくなりましたね」
「は、ぁ……っ」
誰のせいだ。悪態が全て喘ぎ声になるのが、また腹が立つ。肩の傷口を舌先で抉られて、ぶるりと背を震わせた。
「壁に手を付いてください」
腹を支えるように回された腕が、促すようにくっと持ち上げられる。震える足に力を込めて壁に爪を立てると、性器に手が沿わされた。ぬちゃぬちゃと音を立てて、手が前後する。
「ぁ、あぅ、ふっ、ぁ……っう」
耳の裏側を、熱い舌が這う。ゾクゾクとした痺れを感じて膝を震わせると、性器の先端を強めに握られる。とぷっと溢れ出した精液を手に絡めると、グレンは指を後ろへと持っていった。尻の形を確かめるように撫でられて息が上がる。
「ん……っ」
グレンの指が後孔に沿わされた。それは縁をなぞるように動いたあと、つぷりと内部に侵入してくる。んっ、と異物感に耐えきれず声を上げると、宥めるようにうなじを甘く食まれた。どうせするのなら、もっと手酷くしてほしい。触れてくる手が妙に優しく思えて、背がむず痒くなる。こいつの大事な何かになったような、馬鹿なことが過ぎってしまう。
「ん、ぅ……ぁ、ああ……っ」
指が中を掻き混ぜては入口部分まで引かれて、ぐちゅっと音を立てて押し込まれる。もどかしい感覚に自然と腰が揺れた。これも気持ちがいいが、もっと強烈な刺激が欲しい。ゆらゆらと腰を揺らして、気持ちがいい場所を探る。グレンはもう指を動かしてはいない。俺の背や肩に歯を立てて、抉るような痛みを与えてくる。それでも腰が止まらない。みっともない、痛い、でも気持ちがいい。口の端を涎が伝う。腰を突き出すような姿は、まるで獣だ。
「はっ、はは……そんなにここ弄られるの好きですか?」
「ぅあ!?」
不意にグレンの指が、ぐっとある一点を押し上げた。ビリビリとした快感が爪先から頭の天辺まで駆け抜けて、腰と言わず全身が痙攣する。
「あ…っ、ん、んん……っ」
腹側にある小さな膨らみを優しく擦られたり、叩かれたりすると、堪えきれない喘ぎが唇から漏れた。初めは違和感しかなかった筈なのに、最近では指を突っ込まれただけで期待に腰が震えてしまう。
立っていることすらままならなくなり、ずりずりと壁を引っ掻くようにして床に膝をついた。
「あぅ……っ」
指が引き抜かれて、そんなつもりもないのに惜しむような声が漏れた。奥が疼いて、中途半端な熱が腹の底で燻ぶっているのがわかる。
「蓮……」
「んぐっ」
顎を掴まれて、唇を食べられる。尻に擦りつけられる熱が、俺の肌を焼いてしまいそうだ。口からも下からも、ぐちゅぐちゅと阿呆みたいな音が響く。
グレンの息が荒くなるのがわかる。腰を掴む手に力が籠もって、ぶるりと震えた。背中に熱い飛沫が掛かる。なんなら髪にも付いたかもしれない。
「はぁっ、はっ、ぐれん……」
名前を呼ぶと、押さえつけているのか撫でているのか分からない手が下りてきた。くしゃくしゃと俺の髪を撫ぜたあと、腕を掴んで引っくり返してくる。
そのまま、また後孔に指を突っ込んできた。一気に三本も捩じ込まれて、背をしならせる。指がばらばらに中を刺激すると、視界がバチバチと弾ける様な感覚に襲われた。
「あ、っくぅぅ……ッ」
指がごりごりとしこりを擦る。腹がきゅぅぅと切なく鳴って、グレンの指を締め付けるのが自分でもわかった。爪先にまで力が籠もって、ぴんと伸びる。イきそう。そう思うのに、直前で指が引き抜かれた。
「ここに、欲しくはありませんか?」
お前が、の間違いだろ。そう言ってやりたいが、息が弾んで言葉にならない。
グレンも普段は冷ややかな面持ちを赤く染めて、触れた掌は汗ばんでいる。男二人で汗だくになって何をやってるんだ、と冷静な部分が囁くが、奥が疼くのはどうしようもない。散々、指で弄られた前立腺はもっと強い刺激を求めて腰を震わせてくる。欲しい、もっと太くて固いもので気持ちいい所を擦ってほしい。でも、それをグレンに強請るのは嫌だ。
「……要ら、ない」
「本当に?」
真っ赤になった突起に歯を立てられて、ぞくぞくする。ぷくりと膨れた先端を舌で遊ばれると、痛みに似た痺れが身体を震わせた。視界が涙で滲む。どうにも出来ない疼きに身を震わせて「ぐれん」と名前を呼ぶが、その音は妙に舌っ足らずで気持ちが悪い。自分で自分の声に吐き気すら覚えるが、グレンは赤い瞳を甘く蕩けさせた。
「ほら、舌を出して。キスをしましょう」
「んぶ、ぁ、ふっ」
舌をがぶりと噛まれて、治りかけていた傷口から血が滲む。舌先で歯を突かれて、グレンの意図を察して眉を寄せる。歯先に触れる柔らかな感触には中々慣れない。固く瞼を閉じたまま、ぐっと歯を立てると口内の鉄臭さが増した。
唇が離れると、赤黒い糸が俺とグレンを繋げる。それはぷつっと切れて、滴が俺の胸に落ちた。
「加減が上手くなりましたね」
褒めるように頬を撫でられるが、別に上手くなりたくはなかった。
40
お気に入りに追加
37
あなたにおすすめの小説
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
【R18】奴隷に堕ちた騎士
蒼い月
BL
気持ちはR25くらい。妖精族の騎士の美青年が①野盗に捕らえられて調教され②闇オークションにかけられて輪姦され③落札したご主人様に毎日めちゃくちゃに犯され④奴隷品評会で他の奴隷たちの特殊プレイを尻目に乱交し⑤縁あって一緒に自由の身になった両性具有の奴隷少年とよしよし百合セックスをしながらそっと暮らす話。9割は愛のないスケベですが、1割は救済用ラブ。サブヒロインは主人公とくっ付くまで大分可哀想な感じなので、地雷の気配を感じた方は読み飛ばしてください。
※主人公は9割突っ込まれてアンアン言わされる側ですが、終盤1割は突っ込む側なので、攻守逆転が苦手な方はご注意ください。
誤字報告は近況ボードにお願いします。無理やり何となくハピエンですが、不幸な方が抜けたり萌えたりする方は3章くらいまでをおススメします。
※無事に完結しました!
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
【BL-R18】魔王の性奴隷になった勇者
ぬお
BL
※ほぼ性的描写です。
魔王に敗北し、勇者の力を封印されて性奴隷にされてしまった勇者。しかし、勇者は魔王の討伐を諦めていなかった。そんな勇者の心を見透かしていた魔王は逆にそれを利用して、勇者を淫乱に調教する策を思いついたのだった。
※【BL-R18】敗北勇者への快楽調教 の続編という設定です。読まなくても問題ありませんが、読んでください。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/17913308/134446860/
※この話の続編はこちらです。
↓ ↓ ↓
https://www.alphapolis.co.jp/novel/17913308/974452211
浮気をしたら、わんこ系彼氏に腹の中を散々洗われた話。
丹砂 (あかさ)
BL
ストーリーなしです!
エロ特化の短編としてお読み下さい…。
大切な事なのでもう一度。
エロ特化です!
****************************************
『腸内洗浄』『玩具責め』『お仕置き』
性欲に忠実でモラルが低い恋人に、浮気のお仕置きをするお話しです。
キャプションで危ないな、と思った方はそっと見なかった事にして下さい…。
生贄として捧げられたら人外にぐちゃぐちゃにされた
キルキ
BL
生贄になった主人公が、正体不明の何かにめちゃくちゃにされ挙げ句、いっぱい愛してもらう話。こんなタイトルですがハピエンです。
人外✕人間
♡喘ぎな分、いつもより過激です。
以下注意
♡喘ぎ/淫語/直腸責め/快楽墜ち/輪姦/異種姦/複数プレイ/フェラ/二輪挿し/無理矢理要素あり
2024/01/31追記
本作品はキルキのオリジナル小説です。
親友だと思ってた完璧幼馴染に執着されて監禁される平凡男子俺
toki
BL
エリート執着美形×平凡リーマン(幼馴染)
※監禁、無理矢理の要素があります。また、軽度ですが性的描写があります。
pixivでも同タイトルで投稿しています。
https://www.pixiv.net/users/3179376
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/98346398
皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる