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幕間6※
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ちゅ、ちゅ、と痕を残さないように気をつけながら、頬や首筋、鎖骨に唇を触れさせる。
「んっ、エド……くすぐったい」
愛称が鼓膜を揺らし、ゾクゾクと背に痺れが走った。恥ずかしがり屋な彼は、あまり名前を呼んでくれない。歓喜が満ち溢れて、胸を熱くさせる。
「もっと呼んでください」
逃げられないように、優しく優しく腕の中に囲い込む。焦げつくような欲望を笑みの下に抑え込んで、余裕振った顔でヴィクター様をソファに寝かせた。そうして彼の足を、大きく開かせる。彼は恥ずかしそうに顔を俯けはしたものの止めろとは言わなかった。
「嫌になったら言ってくださいね」
「ん……わかった」
嫌だと言われて止まれるかは別として、一応はそう伝えておく。
内腿に唇を触れさせて、それを下ろしていく。触れた先から幸福が湧いてくるような感覚に、自然と息が熱くなった。きめ細かな白い肌の中で、そこだけが薄桃色に色づいている。思わず感嘆の息を漏らすと、掛かったのかヴィクター様は擽ったそうに身動いだ。
「……そんなところ、あまり見るな」
「綺麗です。ヴィクター様は本当にどこも綺麗で」
「う、うるさい。いちいち恥ずかしい奴だな……ふ、ぅっ」
後孔に舌を這わせると、太腿が大きく震えるのが分かった。恥ずかしいのだろうか。見上げた彼は首筋まで赤くして、そっぽを向いてしまっている。穴の周りを舐めて少し解れた所で、尖らせた舌をゆっくりと差し込んだ。抜き差しする度に、内腿が小さく震える。濡れてきたところで指に変えた。
「ひっ」
「大丈夫ですよ」
引きかけた腰を優しく抱き寄せて、一度、後孔から指を引き抜いた。そうして、ぴったりと肌を重ねたまま何もしないで抱き締めていると、ヴィクター様は強張った顔を徐々に緩めてくれる。
「今日は止めておきますか?」
「……いや、続きをしろ。……俺だって、お前が欲しい」
「畏まりました」
跳びかけた理性を手繰り寄せて、首や胸に唇を触れさせながら解れた後孔に指を差し込む。ゆっくりと回すようにして解しつつ、ヴィクター様の気持ちがいい所を探っていく。指を入れてから、明らかに緊張しているヴィクター様にキスをしたり、脇腹を優しく擦ったりして徐々に強張りを解いていった。
「ヴィクター様、好きです。愛しています」
「……う、うるさい奴だな」
そう言いつつもキスに応えてくれるヴィクター様は、素直じゃなくて可愛い。
舌を絡めながらも、指で左右や上下を押してみたりと探っていたらヴィクター様の肩が大きく跳ねた。
「あ……っ」
顔を離すと、目をぱちくりと瞬かせているヴィクター様と目が合う。初めての感覚だったのか、頻りに首を傾げている彼は幼子みたいな愛らしさがあった。
指先に当たるしこりを優しく擦ってやると、ヴィクター様は唇を噛み締めて仰け反った。爪先が布を蹴って、俺の腕から逃げようとする。強くなり過ぎないように腕を掴んで、引き戻した。
「はっ、はぁっ……何だ、これ……」
「大丈夫、俺が傍にいますよ」
「んっ……あ、ああ……」
反応があった一点を狙って、撫でたり押したりを繰り返す。ヴィクター様は口の端から唾液を垂らして身を捩った。顔には戸惑いが滲んでいるが、反応がある箇所を執拗に撫でれば快感に変わっていく。
「んぅ、ふぁっ、んっ、んっ……」
「……そろそろいいか」
いい加減に限界だった。反り返った自分の物を、充分に解した後孔に押し当てる。ひと思いに突き入れたいのを堪えて、ヴィクター様を安心させるために触れるだけのキスをした。
「……挿れても良いですか?」
「ゆ、ゆっくりな」
早まるなよ、と制止され、犯罪者になったような気になる。笑いながら頷けば、ヴィクター様も僅かに口元を緩めてくれた。
ゆっくりと腰を進めると、ヴィクター様は唇を噛み締めた。眉を寄せ、背に縋りつきながらも、俺の事を受け入れようとしてくれている。額には汗が滲み、とても苦しそうだ。だが、それに酷く煽られた。苦痛を堪えてでも俺を受け入れようとしてくれるヴィクター様に、興奮しないわけがない。
一つ息を吐いて、冷静さを何とか保つ。焦るな、怖がらせては駄目だ、誰よりも愛しい目の前の人を逃してはならない。
「……痛くは、ありませんか」
「ん……」
「無理をしてはいませんか」
「……うん」
掌で包むようにして頬に触れて、ことさら穏やかな声を心掛けた。ヴィクター様はその手に頬を擦り寄せると、柔らかく目を細めてくれる。それに安心して唇を重ねた。
「……動きますね」
小さく頷いてくれたのを確認して、ゆっくりと腰を揺らす。その間も、ヴィクター様は眉間に皺を寄せて、少し苦しそうな顔をしていた。どうにか気持ちよくなって欲しくて、乳輪をなぞるように舌を這わせて少し強めに吸い上げる。
「んんっ……胸やめろ、触るな……っ」
「でも、好きですよね? 舐めると、中も一緒に締まりますよ」
本番はしない代わりに、それ以外の奉仕行為はさせてもらっていた。その中でも、真っ赤に腫れた胸を愛撫するのが好きで、そのせいかヴィクター様の性感帯の一つになってしまったみたいだ。初めは慎ましやかにつんっと立っていただけだったが、俺が舐めたり齧ったりするせいで今は空気に触れるだけで真っ赤になってしまう。俺がこうしたのだと思うと、余計に可愛く見えてしまうのは仕方がないことだろう。
ああ、かわいい。
みっともないくらい荒い呼吸が抑えられない。興奮により滲み出した先走りのせいか動きやすくなり、ぱちゅぱちゅと濡れた音を響かせながら腰を揺らす。それが良いところを掠めるのか、ヴィクター様の眉間の皺も徐々に解けていった。
「んぅ……っ、ふっ、あ、んんっ」
動く度にとろけた粘膜が絡みついてきて、ひどく気持ちがいい。この世に、こんなに気持ちがいい事があるなんて知らなかった。ヴィクター様に出会わなければ一生知らないままだったかも知れない。
ヴィクター様の中は柔らかく濡れて熱く、俺を優しく包み込んでくれている。触れ合いも幸せを与えてくれたが、これはそれの比ではなかった。泣きたいほどの充足感を感じて、ぎゅうっとヴィクター様を抱き締めた。繋がりが深くなり、ほのかに色づいた身体が腕の中でビクリと跳ねる。
「んっ、んんっ、はぁ、エド……? どうした?」
「ヴィクターさ、ま……」
宝石のような瞳を丸くさせ、戸惑いの滲む声でヴィクター様は俺に手を伸ばした。ぽたぽたと零れ落ちた涙が、ヴィクター様の頬を濡らしていく。彼はポカンとしていたが、じわじわとその顔に喜色を滲ませていく。そうして眉を垂らすようにして柔らかく笑った。
「……馬鹿だなあ、そんなに喜ぶことか」
「ヴィクターさま……好きです、ずっと好きです」
夢中でキスをすると、ヴィクター様も唇を開けて応えてくれた。頬を包まれて、顔を引き寄せられる。
「ああ……知ってる」
唇が重なる前に、「俺も」と囁くように言われて歓喜に身が震えてしまう。
俺は初めてあった時から、ヴィクター様に惹かれていた。傲慢な態度の裏に隠れた脆さが、愛おしくて堪らなかった。突けば崩れ落ちてしまいそうなほど柔いのに、危ういまでのプライドがそれを許さない。それを優しく引き剥がして、甘やかす時間が堪らなく好きだ。
お互いに舌を絡ませながら、とんとんと優しく奥を叩く。ヴィクター様は、その度に甘い喘ぎを零した。
「ぁっ、ん、んぅ……ふ……っ」
心底感じ入っている声を聞きながら、徐々に腰の動きを早めていく。ヴィクター様は真っ白な肌を淡く染めて、ぷるぷると打ち震えている。それを揺さぶりながらも食い入る様に見つめていると、恥ずかしくなったのか腕で顔を隠してしまった。声だけでも充分に色っぽいが、やはり顔を見てしたい。
「顔を見せてください……お願いします」
「あっ、エド、やめろ……っ」
指の間に指を差しこむようにして絡めて、顔を隠せないように優しく抑え込んだまま激しく腰を揺らす。繋がった場所から濁った音が立ち、その度にヴィクター様は瞳を蕩けさせて俺の名前を呼んでくれた。
「大丈夫。ここには俺とヴィクター様しかいないんです。どんな恥ずかしい姿でも声でも俺しか見ていませんよ」
「あっ、ああ……っ、はぁ……っ」
腰を押しつける度に響く水音と、普段では聞くことのないヴィクター様の甘い声が、鼓膜から脳天を突き抜けて背筋がビリビリと痺れるような感覚がある。湧き上がる射精感に、腰の動きが早くなる。ヴィクター様の中が、気持ち良すぎて止められない。
「やらっ、やあっ……やっ、おくむり、だめ……ッ」
呂律すら回らなくなるくらい乱れに乱れたヴィクター様の痴態に、脳がガンガンと刺激に揺れる。締めつけが一際強くなり、ヴィクター様の目の焦点も合わなくなってきた。爪先がぴんっと伸び、太腿が震えている。きゅうきゅうと絶え間なく刺激してくる中は柔らかく、しかし搾り取るような動きで俺の性器を愛撫した。
ヴィクター様も限界が近いのだろうか。びくびくと爪先を震わせながら、必死で俺の手を握り返してくれる。
「はっ、ぁっ、あぅっ……エドぉ……助けて、怖い……っ」
「……っ。ヴィクター様っ、ヴィクター様っ……愛しています……」
「あっ、ああぅっ、俺も……おれもすき……ッ」
すき。その言葉の意味を理解した途端、一気に快感が脳天をぶち抜いた。強請るように蠢く動きに逆らうことなく、勢いよく欲を最奥へと叩きつける。その衝撃でヴィクター様も達したらしく、先端から液を飛ばしてガクガクと太腿を震わせた。
「ぁっ、あっ……お腹、あつい……」
「はぁ……っ、ヴィクターさ、ま……」
薄い肩を抱くように肌を密着させて、最後の一滴まで注ぎ込む。ヴィクター様は、そんな俺の腰に足を絡ませて受け入れてくれた。そんな風にぴたりとくっついていると、ヴィクター様が俺の首に腕を回して唇を重ねてくれた。熱い舌が唇を割って入ってきて、その熱さに酔ってしまう。
ちゅっ、ちゅっと吸うようなキスを繰り返して、ゆっくりと顔を離す。目元を赤く染め、とろんと蕩けた瞳で見上げられると、馬鹿な俺のものは直ぐに硬さを取り戻した。挿れたままなので、それは直ぐにヴィクター様にも伝わってしまったのだろう。彼は頬を赤くすると、僅かに目を伏せた。がっついているみたいで恥ずかしくなったが、そんな俺に向けてヴィクター様は眦を和らげてくれる。
「エドも、きもちいの?」
「……は、はい、すごく……ずっとこうしていたいです」
「それなら、エドの好きに動いて……俺も、もっと欲しい……」
ヴィクター様の言葉は、糸も容易く俺の理性を打ち砕いた。優しくしなければと考えていたのに、腰を掴んで乱暴に打ち付けてしまう。甘い声が響いて余計に煽られた。
初めてだったので一回で済まそうと考えていたのに、ヴィクター様との行為が予想以上に気持ち良すぎて脳が機能しない。結局、正常位と背面で一回ずつ中に出して、今は騎乗位してもらっているのだから初めの考えは全く役に立っていなかった。
「んっ……は、あっ、エド……っ」
ずるるっと抜けそうなほど腰を上げられてから落とされると、ビリビリと電流に似た痺れが駆け抜ける。ヴィクター様が俺の上で動く度に、中に出した精液がぐぽぐぽと卑猥な音を立てるのが余計に快感を煽ってくる。
「ヴィクター様の中……とろとろで気持ちいいです……」
「ははっ……そうか、んっ……」
柔らかそうな頬を撫でたくなって手を伸ばすと、指を口に含まれる。指の間を舌が擽り、先端を吸われると、まるでフェラされてるような感覚に陥り脳が痺れた。
「エド……これからも俺がしてやるから、他の奴のところには行くな……んっ、貴様は俺の、ものなんだから……あっ、あっ、んんぅっ」
ああ、とヴィクター様が積極的に求めてくれている理由に思い至る。そういえば、誤解を解かないまま行為に縺れ混んでしまったんだった。俺を繋ぎ止めようと必死になって腰を振るヴィクター様は可愛いが、不安にさせたいわけではないので説明しなければと口を開く。
「っ、ヴィクター様……俺、ぜんぶ貴方が初めてです」
「んっ、はぁっ……ぁっ、エド?」
「恋も愛も友情も親愛も、こんなに欲しいと思ったのも……こんな気持ちいいことしたのも全部貴方だけです」
どうでもいいと思っていた世界に、未だに価値を見出すことは出来ない。けれど、その中でヴィクター様だけが何時も色彩を纏う。きらきらと星が瞬くみたいに、ヴィクター様はどんな場所でも鮮やかに光ってみえた。
「俺の初めて貰ってもらえて嬉しいです」
「……香水臭かったのは、どうしてだ」
「以前の上司と街中で鉢合わせて、娼館に連れていかれたんです。でも、誓って性交はしていません。……俺には貴方様だけですから」
どんな感情も、ヴィクター様が色を付けてくれなければ何かも良く分からないほど微弱なものだ。俺の人らしい部分を、ヴィクター様だけが引き出してくれる。
ヴィクター様はきょとんとした後、小さく肩を震わせた。ふふっと微かに漏れる笑い声には安堵が感じられて、俺も嬉しくなった。
「それもそうか。貴様は俺にしか興味ないからな」
「はい」
俺が頷くと、ヴィクター様の笑みが深くなる。そっと頬を撫でられて、俺はよく躾けられた犬のように擦り寄った。
「でも、紛らわしい真似はするなよ。少し……不安になっただろ」
俺のことで不安にさせて申し訳ないと感じる一方で、ヴィクター様の中で俺がそれなりの位置を占めているのだと確認できて嬉しくもある。それが顔に出ていたのか、両頬を力任せに引っ張られた。
「俺を試すなんて、貴様は何時からそんなに偉くなったんだ?」
「ふひません」
「はっ、何言ってるか分からないぞ。……今日の貴様はただの棒だ。動くなよ」
ヴィクター様が、俺の胸に手を置いて腰を上げる。締めつけられながらされると、背骨に電流が走ったような快感に襲われた。
「……っん、ヴィクター様っ」
「はっ、んんっ、ふぁっ……あっ、これきもちい……良いとこ擦れて……っ」
白い肌を淡く染めて、熱に浮かされたような顔でヴィクター様はうっとりと言った。心底感じ入っている様子に、ずくんと腰が重くなる。
「ヴィクター様っ、動きたいです……」
「んっ……駄目だって言ってるだろ」
「動きたいです。貴方が欲しい……っ」
「あっ、こら」
腰を掴んで下から突きあげると、ヴィクター様はとろんと表情を蕩けさせた。あっ、あっ、と断続的に響く喘ぎにゾクゾクする。
欲しい、欲しいと浮かされたように強請るとヴィクター様は小さく息をついてから許してくれた。ソファに仰向けにして、ヴィクター様の足を肩に掛けて夢中になって腰を押しつける。指先を絡めて手を握ると、ヴィクター様も優しく握り返してくれた。
「すみませんっ、俺っ、我慢できなくて……痛くは、ないですか……?」
「うんっ、ぅん、きもちい」
ああ、かわいい。駄目だ、可愛くて止まらない。
衝動のまま行き止まりを強く押し上げた。ひゃあああっ、と一際大きな声を上げて、先端から透明な液を噴き出す。それと同時に後ろが締まり、俺も強請るような動きに誘われるままヴィクター様の中に欲を注いだ。
「あっ……ふぁ……ああ……」
「ヴィクター様……っ」
ぶるぶると震える身体を抱きしめて、離すまいと力を込めた。繋がったまま唇を重ねて、腕の中の熱に酔う。
「ヴィクター様……これからも、ずっと一緒に居ましょうね」
絶対に守ってみせる。貴方が執心する魔術塔も、技師という地位も何もかも。ヴィクター様が願う全ての物は、俺が必ず守ってみせる。
「んっ、エド……くすぐったい」
愛称が鼓膜を揺らし、ゾクゾクと背に痺れが走った。恥ずかしがり屋な彼は、あまり名前を呼んでくれない。歓喜が満ち溢れて、胸を熱くさせる。
「もっと呼んでください」
逃げられないように、優しく優しく腕の中に囲い込む。焦げつくような欲望を笑みの下に抑え込んで、余裕振った顔でヴィクター様をソファに寝かせた。そうして彼の足を、大きく開かせる。彼は恥ずかしそうに顔を俯けはしたものの止めろとは言わなかった。
「嫌になったら言ってくださいね」
「ん……わかった」
嫌だと言われて止まれるかは別として、一応はそう伝えておく。
内腿に唇を触れさせて、それを下ろしていく。触れた先から幸福が湧いてくるような感覚に、自然と息が熱くなった。きめ細かな白い肌の中で、そこだけが薄桃色に色づいている。思わず感嘆の息を漏らすと、掛かったのかヴィクター様は擽ったそうに身動いだ。
「……そんなところ、あまり見るな」
「綺麗です。ヴィクター様は本当にどこも綺麗で」
「う、うるさい。いちいち恥ずかしい奴だな……ふ、ぅっ」
後孔に舌を這わせると、太腿が大きく震えるのが分かった。恥ずかしいのだろうか。見上げた彼は首筋まで赤くして、そっぽを向いてしまっている。穴の周りを舐めて少し解れた所で、尖らせた舌をゆっくりと差し込んだ。抜き差しする度に、内腿が小さく震える。濡れてきたところで指に変えた。
「ひっ」
「大丈夫ですよ」
引きかけた腰を優しく抱き寄せて、一度、後孔から指を引き抜いた。そうして、ぴったりと肌を重ねたまま何もしないで抱き締めていると、ヴィクター様は強張った顔を徐々に緩めてくれる。
「今日は止めておきますか?」
「……いや、続きをしろ。……俺だって、お前が欲しい」
「畏まりました」
跳びかけた理性を手繰り寄せて、首や胸に唇を触れさせながら解れた後孔に指を差し込む。ゆっくりと回すようにして解しつつ、ヴィクター様の気持ちがいい所を探っていく。指を入れてから、明らかに緊張しているヴィクター様にキスをしたり、脇腹を優しく擦ったりして徐々に強張りを解いていった。
「ヴィクター様、好きです。愛しています」
「……う、うるさい奴だな」
そう言いつつもキスに応えてくれるヴィクター様は、素直じゃなくて可愛い。
舌を絡めながらも、指で左右や上下を押してみたりと探っていたらヴィクター様の肩が大きく跳ねた。
「あ……っ」
顔を離すと、目をぱちくりと瞬かせているヴィクター様と目が合う。初めての感覚だったのか、頻りに首を傾げている彼は幼子みたいな愛らしさがあった。
指先に当たるしこりを優しく擦ってやると、ヴィクター様は唇を噛み締めて仰け反った。爪先が布を蹴って、俺の腕から逃げようとする。強くなり過ぎないように腕を掴んで、引き戻した。
「はっ、はぁっ……何だ、これ……」
「大丈夫、俺が傍にいますよ」
「んっ……あ、ああ……」
反応があった一点を狙って、撫でたり押したりを繰り返す。ヴィクター様は口の端から唾液を垂らして身を捩った。顔には戸惑いが滲んでいるが、反応がある箇所を執拗に撫でれば快感に変わっていく。
「んぅ、ふぁっ、んっ、んっ……」
「……そろそろいいか」
いい加減に限界だった。反り返った自分の物を、充分に解した後孔に押し当てる。ひと思いに突き入れたいのを堪えて、ヴィクター様を安心させるために触れるだけのキスをした。
「……挿れても良いですか?」
「ゆ、ゆっくりな」
早まるなよ、と制止され、犯罪者になったような気になる。笑いながら頷けば、ヴィクター様も僅かに口元を緩めてくれた。
ゆっくりと腰を進めると、ヴィクター様は唇を噛み締めた。眉を寄せ、背に縋りつきながらも、俺の事を受け入れようとしてくれている。額には汗が滲み、とても苦しそうだ。だが、それに酷く煽られた。苦痛を堪えてでも俺を受け入れようとしてくれるヴィクター様に、興奮しないわけがない。
一つ息を吐いて、冷静さを何とか保つ。焦るな、怖がらせては駄目だ、誰よりも愛しい目の前の人を逃してはならない。
「……痛くは、ありませんか」
「ん……」
「無理をしてはいませんか」
「……うん」
掌で包むようにして頬に触れて、ことさら穏やかな声を心掛けた。ヴィクター様はその手に頬を擦り寄せると、柔らかく目を細めてくれる。それに安心して唇を重ねた。
「……動きますね」
小さく頷いてくれたのを確認して、ゆっくりと腰を揺らす。その間も、ヴィクター様は眉間に皺を寄せて、少し苦しそうな顔をしていた。どうにか気持ちよくなって欲しくて、乳輪をなぞるように舌を這わせて少し強めに吸い上げる。
「んんっ……胸やめろ、触るな……っ」
「でも、好きですよね? 舐めると、中も一緒に締まりますよ」
本番はしない代わりに、それ以外の奉仕行為はさせてもらっていた。その中でも、真っ赤に腫れた胸を愛撫するのが好きで、そのせいかヴィクター様の性感帯の一つになってしまったみたいだ。初めは慎ましやかにつんっと立っていただけだったが、俺が舐めたり齧ったりするせいで今は空気に触れるだけで真っ赤になってしまう。俺がこうしたのだと思うと、余計に可愛く見えてしまうのは仕方がないことだろう。
ああ、かわいい。
みっともないくらい荒い呼吸が抑えられない。興奮により滲み出した先走りのせいか動きやすくなり、ぱちゅぱちゅと濡れた音を響かせながら腰を揺らす。それが良いところを掠めるのか、ヴィクター様の眉間の皺も徐々に解けていった。
「んぅ……っ、ふっ、あ、んんっ」
動く度にとろけた粘膜が絡みついてきて、ひどく気持ちがいい。この世に、こんなに気持ちがいい事があるなんて知らなかった。ヴィクター様に出会わなければ一生知らないままだったかも知れない。
ヴィクター様の中は柔らかく濡れて熱く、俺を優しく包み込んでくれている。触れ合いも幸せを与えてくれたが、これはそれの比ではなかった。泣きたいほどの充足感を感じて、ぎゅうっとヴィクター様を抱き締めた。繋がりが深くなり、ほのかに色づいた身体が腕の中でビクリと跳ねる。
「んっ、んんっ、はぁ、エド……? どうした?」
「ヴィクターさ、ま……」
宝石のような瞳を丸くさせ、戸惑いの滲む声でヴィクター様は俺に手を伸ばした。ぽたぽたと零れ落ちた涙が、ヴィクター様の頬を濡らしていく。彼はポカンとしていたが、じわじわとその顔に喜色を滲ませていく。そうして眉を垂らすようにして柔らかく笑った。
「……馬鹿だなあ、そんなに喜ぶことか」
「ヴィクターさま……好きです、ずっと好きです」
夢中でキスをすると、ヴィクター様も唇を開けて応えてくれた。頬を包まれて、顔を引き寄せられる。
「ああ……知ってる」
唇が重なる前に、「俺も」と囁くように言われて歓喜に身が震えてしまう。
俺は初めてあった時から、ヴィクター様に惹かれていた。傲慢な態度の裏に隠れた脆さが、愛おしくて堪らなかった。突けば崩れ落ちてしまいそうなほど柔いのに、危ういまでのプライドがそれを許さない。それを優しく引き剥がして、甘やかす時間が堪らなく好きだ。
お互いに舌を絡ませながら、とんとんと優しく奥を叩く。ヴィクター様は、その度に甘い喘ぎを零した。
「ぁっ、ん、んぅ……ふ……っ」
心底感じ入っている声を聞きながら、徐々に腰の動きを早めていく。ヴィクター様は真っ白な肌を淡く染めて、ぷるぷると打ち震えている。それを揺さぶりながらも食い入る様に見つめていると、恥ずかしくなったのか腕で顔を隠してしまった。声だけでも充分に色っぽいが、やはり顔を見てしたい。
「顔を見せてください……お願いします」
「あっ、エド、やめろ……っ」
指の間に指を差しこむようにして絡めて、顔を隠せないように優しく抑え込んだまま激しく腰を揺らす。繋がった場所から濁った音が立ち、その度にヴィクター様は瞳を蕩けさせて俺の名前を呼んでくれた。
「大丈夫。ここには俺とヴィクター様しかいないんです。どんな恥ずかしい姿でも声でも俺しか見ていませんよ」
「あっ、ああ……っ、はぁ……っ」
腰を押しつける度に響く水音と、普段では聞くことのないヴィクター様の甘い声が、鼓膜から脳天を突き抜けて背筋がビリビリと痺れるような感覚がある。湧き上がる射精感に、腰の動きが早くなる。ヴィクター様の中が、気持ち良すぎて止められない。
「やらっ、やあっ……やっ、おくむり、だめ……ッ」
呂律すら回らなくなるくらい乱れに乱れたヴィクター様の痴態に、脳がガンガンと刺激に揺れる。締めつけが一際強くなり、ヴィクター様の目の焦点も合わなくなってきた。爪先がぴんっと伸び、太腿が震えている。きゅうきゅうと絶え間なく刺激してくる中は柔らかく、しかし搾り取るような動きで俺の性器を愛撫した。
ヴィクター様も限界が近いのだろうか。びくびくと爪先を震わせながら、必死で俺の手を握り返してくれる。
「はっ、ぁっ、あぅっ……エドぉ……助けて、怖い……っ」
「……っ。ヴィクター様っ、ヴィクター様っ……愛しています……」
「あっ、ああぅっ、俺も……おれもすき……ッ」
すき。その言葉の意味を理解した途端、一気に快感が脳天をぶち抜いた。強請るように蠢く動きに逆らうことなく、勢いよく欲を最奥へと叩きつける。その衝撃でヴィクター様も達したらしく、先端から液を飛ばしてガクガクと太腿を震わせた。
「ぁっ、あっ……お腹、あつい……」
「はぁ……っ、ヴィクターさ、ま……」
薄い肩を抱くように肌を密着させて、最後の一滴まで注ぎ込む。ヴィクター様は、そんな俺の腰に足を絡ませて受け入れてくれた。そんな風にぴたりとくっついていると、ヴィクター様が俺の首に腕を回して唇を重ねてくれた。熱い舌が唇を割って入ってきて、その熱さに酔ってしまう。
ちゅっ、ちゅっと吸うようなキスを繰り返して、ゆっくりと顔を離す。目元を赤く染め、とろんと蕩けた瞳で見上げられると、馬鹿な俺のものは直ぐに硬さを取り戻した。挿れたままなので、それは直ぐにヴィクター様にも伝わってしまったのだろう。彼は頬を赤くすると、僅かに目を伏せた。がっついているみたいで恥ずかしくなったが、そんな俺に向けてヴィクター様は眦を和らげてくれる。
「エドも、きもちいの?」
「……は、はい、すごく……ずっとこうしていたいです」
「それなら、エドの好きに動いて……俺も、もっと欲しい……」
ヴィクター様の言葉は、糸も容易く俺の理性を打ち砕いた。優しくしなければと考えていたのに、腰を掴んで乱暴に打ち付けてしまう。甘い声が響いて余計に煽られた。
初めてだったので一回で済まそうと考えていたのに、ヴィクター様との行為が予想以上に気持ち良すぎて脳が機能しない。結局、正常位と背面で一回ずつ中に出して、今は騎乗位してもらっているのだから初めの考えは全く役に立っていなかった。
「んっ……は、あっ、エド……っ」
ずるるっと抜けそうなほど腰を上げられてから落とされると、ビリビリと電流に似た痺れが駆け抜ける。ヴィクター様が俺の上で動く度に、中に出した精液がぐぽぐぽと卑猥な音を立てるのが余計に快感を煽ってくる。
「ヴィクター様の中……とろとろで気持ちいいです……」
「ははっ……そうか、んっ……」
柔らかそうな頬を撫でたくなって手を伸ばすと、指を口に含まれる。指の間を舌が擽り、先端を吸われると、まるでフェラされてるような感覚に陥り脳が痺れた。
「エド……これからも俺がしてやるから、他の奴のところには行くな……んっ、貴様は俺の、ものなんだから……あっ、あっ、んんぅっ」
ああ、とヴィクター様が積極的に求めてくれている理由に思い至る。そういえば、誤解を解かないまま行為に縺れ混んでしまったんだった。俺を繋ぎ止めようと必死になって腰を振るヴィクター様は可愛いが、不安にさせたいわけではないので説明しなければと口を開く。
「っ、ヴィクター様……俺、ぜんぶ貴方が初めてです」
「んっ、はぁっ……ぁっ、エド?」
「恋も愛も友情も親愛も、こんなに欲しいと思ったのも……こんな気持ちいいことしたのも全部貴方だけです」
どうでもいいと思っていた世界に、未だに価値を見出すことは出来ない。けれど、その中でヴィクター様だけが何時も色彩を纏う。きらきらと星が瞬くみたいに、ヴィクター様はどんな場所でも鮮やかに光ってみえた。
「俺の初めて貰ってもらえて嬉しいです」
「……香水臭かったのは、どうしてだ」
「以前の上司と街中で鉢合わせて、娼館に連れていかれたんです。でも、誓って性交はしていません。……俺には貴方様だけですから」
どんな感情も、ヴィクター様が色を付けてくれなければ何かも良く分からないほど微弱なものだ。俺の人らしい部分を、ヴィクター様だけが引き出してくれる。
ヴィクター様はきょとんとした後、小さく肩を震わせた。ふふっと微かに漏れる笑い声には安堵が感じられて、俺も嬉しくなった。
「それもそうか。貴様は俺にしか興味ないからな」
「はい」
俺が頷くと、ヴィクター様の笑みが深くなる。そっと頬を撫でられて、俺はよく躾けられた犬のように擦り寄った。
「でも、紛らわしい真似はするなよ。少し……不安になっただろ」
俺のことで不安にさせて申し訳ないと感じる一方で、ヴィクター様の中で俺がそれなりの位置を占めているのだと確認できて嬉しくもある。それが顔に出ていたのか、両頬を力任せに引っ張られた。
「俺を試すなんて、貴様は何時からそんなに偉くなったんだ?」
「ふひません」
「はっ、何言ってるか分からないぞ。……今日の貴様はただの棒だ。動くなよ」
ヴィクター様が、俺の胸に手を置いて腰を上げる。締めつけられながらされると、背骨に電流が走ったような快感に襲われた。
「……っん、ヴィクター様っ」
「はっ、んんっ、ふぁっ……あっ、これきもちい……良いとこ擦れて……っ」
白い肌を淡く染めて、熱に浮かされたような顔でヴィクター様はうっとりと言った。心底感じ入っている様子に、ずくんと腰が重くなる。
「ヴィクター様っ、動きたいです……」
「んっ……駄目だって言ってるだろ」
「動きたいです。貴方が欲しい……っ」
「あっ、こら」
腰を掴んで下から突きあげると、ヴィクター様はとろんと表情を蕩けさせた。あっ、あっ、と断続的に響く喘ぎにゾクゾクする。
欲しい、欲しいと浮かされたように強請るとヴィクター様は小さく息をついてから許してくれた。ソファに仰向けにして、ヴィクター様の足を肩に掛けて夢中になって腰を押しつける。指先を絡めて手を握ると、ヴィクター様も優しく握り返してくれた。
「すみませんっ、俺っ、我慢できなくて……痛くは、ないですか……?」
「うんっ、ぅん、きもちい」
ああ、かわいい。駄目だ、可愛くて止まらない。
衝動のまま行き止まりを強く押し上げた。ひゃあああっ、と一際大きな声を上げて、先端から透明な液を噴き出す。それと同時に後ろが締まり、俺も強請るような動きに誘われるままヴィクター様の中に欲を注いだ。
「あっ……ふぁ……ああ……」
「ヴィクター様……っ」
ぶるぶると震える身体を抱きしめて、離すまいと力を込めた。繋がったまま唇を重ねて、腕の中の熱に酔う。
「ヴィクター様……これからも、ずっと一緒に居ましょうね」
絶対に守ってみせる。貴方が執心する魔術塔も、技師という地位も何もかも。ヴィクター様が願う全ての物は、俺が必ず守ってみせる。
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https://www.pixiv.net/artworks/98346398
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