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本編
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あたたかなシーツに包まるのは気持ちがいい。暗くなった森はひんやりとしていて、くっついていたとはいえ肌寒かった。ただいつまでも見飽きないほど綺麗な夜空だったから俺としてはもう少し見上げていたかったのだが、くしゃみをしたのが悪かったのか慌てて家に戻されてしまった。とはいえ、まだ森の中に着陸したままなので、窓に手をつけば外を眺めていられる。今日は、このまま此処で過ごすのだろうか。そう思うと、旅行みたいでわくわくと胸が弾む。
目を閉じると、昼間のことが瞼の裏に浮かんだ。未だ弾む気持ちのままベッドに転がると、少し身体が揺れる。両手をついて上半身を起こすと、旦那様がベッド脇に腰を掛けていた。のそのそとシーツを引っ張りながら彼の方に寄っていき、そっと肩を触れさせる。すると、彼は鋭い瞳を和らげてくれた。
「っ、ん……」
硬い尾が、太腿を優しく撫でながら脇腹まで擦りあげてくる。ひやりとした感触に反して、腹の奥からじわじわと熱が沁みだしてきて腰が震えた。最近、こうして触れられるだけで身体が反応するようになっている気がする。いつも行為の始まりにされているから、脳に染みついてしまったのだろうか。
彼は大きな掌で後頭部を包むようにして持ち上げると、そっと顔を寄せてくれた。唇に触れた冷たさが、俺の熱を受けて徐々に温もりを宿していく。そのたびに穏やかな気持ちが身体中に広がっていくようで、とろりと瞳が蕩けた。
「あ……だん、なさま……」
ゆっくりと離れていくのを名残惜しく思ってしまう。こつんと額が重なり、吐息が混じるほどの距離で見つめ合った。穏やかに見える赤の瞳には俺だけしか映っていない。ぞくりとしたものが腰を震わせ、下腹が燃えるように熱くなった。甘く疼く感覚を誤魔化すように内腿を擦り合わせる。
分厚い掌が、布越しに胸を覆った。平べったい胸に揉むところなど殆どないだろうに、大きな掌で包むようにして下から持ち上げられる。やわやわと揉みしだかれると、背骨に微弱の電流が走ったみたいに肩が跳ねた。硬い指が先端に触れるたび、意図せず甘い吐息が漏れる。次第に硬くなって、痺れが全身に広がっていくようだ。ぷっくりと膨れたそれが布を小さく押し上げているのが自分でも見て取れて、熱くなった顔を逸らした。
「ぁ……っ」
彼は宥めるように頭を撫でながらも、服の裾を持ち上げて胸に触れてきた。直に触れた掌の熱さに、思わず息を呑む。そうして胸を揉みながらも、別の手が下腹をなぞるようにして中心へと下ろされていく。そこは既に立ち上がり、期待に濡れていた。震えるそれを下から撫で上げられ、ゾクゾクとした痺れに腰が浮いてしまう。
「ふっ、ぅ……だんなさま……っ」
両頬を掌で包まれて、彼を見上げるような体勢を取らされる。そのまま性器を扱かれると堪えられない。太い指で挟むようにして上下に抜かれたかと思えば、同じ手で袋ごと揉みしだかれる。跳ねる腰を押さえつけられたまま与えられる刺激に唇を噛み締めた。けれど、唇をなぞった親指に優しく抉じ開けられる。
「っ……ふ、ぁ……ん゛、あっあ゛っ……っう……」
視界が滲み、口の端からはだらしなく涎が垂れる。拭うほどの余裕もなく、顔を固定されているから隠すこともできない。みっともなく汚れた顔を見られているのだと思うと、頬どころか耳先まで熱くなった。指先でくすぐるように耳朶を撫でられ、ゾクゾクとした痺れが背骨を這いあがってくる。
「ん、んぅ゛……ふ、ぁっあっあ゛あっ……!」
くにくにと性器の先端を、硬い親指で捏ね回される。強烈な刺激に視界が弾け、勝手に出てきた涙が頬を濡らした。それでも彼は止めてくれなくて、それどころかより一層激しく責め立ててくる。腰が浮いて勝手に痙攣まで始めた。赤く鋭い瞳が、成す術もなく善がる姿を焼きつけるように見つめてくる。強い視線に煽られ、眦がじわりと熱くなった。旦那様の輪郭が朧げになってしまうほど、恥ずかしさやら気持ちよさに涙が溢れていく。羞恥や興奮がぐちゃぐちゃに絡まり合って、それらが余計に震えを酷くさせた。
「はぁっ……はっ……ぁ゛、だめ……っ、だめ……やっ、あ゛っでちゃ……ぅあ゛、ああああッ」
ついにバチッと視界が白く飛んで、強い快感が脳天を貫く。彼の両手首に爪を立てて、込み上げてくる快感に身を任せた。性器の先端が一段と熱くなった瞬間、ぴゅるるっと今まで塞き止められていたものが一気に溢れだす。視界がぼんやりと霞み掛かって、意識が返ってくる頃には抱き締められていた。仮面の冷たさが頬に触れて、小さく肩が震える。
「ん……だんなさま……?」
ふくらはぎの辺りに熱く濡れた感触がある。達したばかりで気怠い身体を動かして下を見ると、そこには既に硬くそそり立つペニスがあった。擦りつけられるたびにぬるぬると滑り、その感触に頬が熱を持つ。初めは受け入れることなんて考えもしなかったのに、今では見ただけで先を想って腹の奥が疼いてしまう。
いつものように喉元が晒され、震える手を優しく添わせた。脆く柔らかな鱗に唇を触れさせて、舌先でなぞるようにして撫でていく。それに応えるように尾がゆったりと上下に叩きつけられ、振動に合わせて身体が跳ねた。そうされると今からするのだという実感が湧いてきて、下腹が甘く締めつけられる。先端からとぷっと透明な液が漏れて、股の間を濡らしていった。
「ん……っ」
硬い指先が、尻穴に触れた。濡れた穴は表面をくすぐられるだけで、くちゅくちゅと恥ずかしい音を立てる。思わず瞼を硬く瞑ると、そっと頭を撫でられた。子をあやすような柔らかな触れ方に、こんな時だというのに力が抜けてしまう。
「ん、ん……ぅ……っ」
ゆっくりと指が挿しこまれ、粘膜を押しながら奥へと進んでくる。本来、濡れることのない場所が水音を立てるたび全身が熱くなった。意識を逸らそうとしてくれているのか。親指が唇をなぞり、そのまま口内に潜りこんでくる。舌先に触れる指の感触と鱗のひやりとした熱に、とろりと思考が蕩けていくようだ。その間にも指は増やされ圧迫感は増していくが、裏顎をくすぐられたり優しく舌を揉まれていると違和感が薄れていく。
「ふ、ぁ゛……あ……っ、うぁ゛……っ」
ゴツゴツとした太い指が腹の裏側を引っ掻くたび、脳天を突き抜けるような衝撃に襲われる。達したばかりで膨れたしこりを強く擦られ、甘えるような声が口から飛び出した。手足の先から力が抜けているのに、何故か痙攣が止まらなくて。性器は震えながら淫液を漏らして、股の間を更に濡らしていく。
「は……はぁ……っ」
目の奥が優しく弾けて、全身が勝手に跳ねる。そんな俺を、彼は落ち着くまで抱き寄せたままでいてくれたらしい。ぼやけていた思考も、後頭部を包む温かさと頬に触れるむっちりとした柔らかさに引き寄せられるようにして徐々に帰ってくる。
全身が痺れるような快感に、視界が揺れていた。それでも何とか頭を動かして、先走りを垂らしながら焦れったそうに跳ねるペニスへと目を向ける。相変わらず、いつも収まっているのが不思議なほどに太く長い。それでも最初に感じていた恐怖は遠く、真上から圧し掛かられただけで、みっともないくらい期待に震えてしまう。今も脚を合わせただけで、くちゅりと濡れた音がした。硬い指で掻き回された穴が早く欲しいと疼いて、熱を持った奥がむず痒くなる。
「は……っ、は……っ」
いっぱい突いて、カリ首で強く引っ掻いて。余計なことが吹っ飛ぶくらい頭をめちゃくちゃにしてほしい。けれど、俺はいつもして彼に強請ってばかりで。飛ぶほどの快感や抱き締められる安堵感を、同じくらい彼に返せているのだろうか。
ドクンドクンと強く脈打つペニスを見つめる。皮膚と同じ色のそれは先走りに濡れて、ぬめぬめと黒光りして見えた。亀頭にまで血管を浮かばせ、激しく脈動する様は恐ろしいとも言える。自分のものと見比べてみても、とても同じようには見えない。
でも……俺も少しくらいなら……。
薄っぺらい腹の上で跳ねるペニスに、そっと優しく手を添える。頭上から息を詰める音がしたが咎められはしない。それを許可と受け取って、恐る恐る指を這わせた。他人のものなんて触りたいと考えた事はなかったが、軽く撫でただけでびくっと大きく跳ねるのが可愛いと思えてしまうのは何故だろう。
太く浮かんだ血管を辿るようにして指先を滑らせると、上から熱い息遣いが響く。それに心臓が跳ねるのを感じつつも、大きく膨れ上がった亀頭にちゅっと軽く唇を触れさせた。
「ん……ぅ……」
思っていたよりも弾力があって、けれど芯の部分は硬い。ぎこちなくも両手で根本を揉み、亀頭を優しく舐め回した。力強く浮かんだ血管を舌先でなぞるようにして、やんわりと刺激する。そうしていると頭上からくぐもった熱っぽい吐息が降ってきて、じわりと腰の奥が熱を帯びた。
「ん……ん……っ……ふっ、ぅ……」
俺と同じくらい、それ以上に気持ちよくなってほしくて、ちろちろと舌を小刻みに動かす。知識といえば友達に誘われて見たAV程度のもので、実際にされたこともしたこともないので今一わからない。取り敢えずぺろぺろと飴玉でも舐めるみたいに自分が感じる割れ目をくすぐり、両手を使って竿部分を擦る。そうしているうちに舌先に触れる苦味が増してきて、表面に浮かぶ血管が濃く太くなってきた。
「っ……ふ、ぁ……ん、んぅ……ふ……ぅっ」
彼は苦しげに息を荒げながらも、髪を梳くように優しく撫でてくれた。それが褒めてくれているように思えて、痺れた舌を懸命に動かす。彼のものは大きく亀頭を咥えるだけでも顎が疲れてしまうので、横から竿を舐めたり唇で食んだりと休みながら思いつく限りの刺激を与えてみる。
次第に先走りが増してきて、じゅぷじゅぷと大きな水音が部屋中に響くほどになってきた。苦くてしょっぱい味は慣れないものだが、それが気持ちよくなっている証だと思うと嬉しくて。口内に溜まった先走りを唾液と共に飲みながら、亀頭を咥えてぎこちなく頭を揺らす。上から降ってくる吐息が徐々に短くなってきて、ちゅうっと少し強めに吸い上げた。
「んぶ……っ」
放たれた精液が口内に叩きつけられて、その勢いのまま喉奥へと流し込まれていく。受け止めるには量が多すぎて、途中で顔を背けてしまった。唇から溢れ出た白濁は、胸元を濡らしながら床に垂れ落ちる。それでも勢いは止まらず額や頬だけでなく顔の至るところに掛かり、どろりとした粘液が伝っていく感覚に小さく身震いした。
初めての口淫だというのに、不思議なほど嫌悪感はなかった。ただ自分の拙い奉仕で彼が気持ちよくなってくれたのだと思うと、達成感のような満足感のような不可思議な感覚が胸を震わせる。
「っ、だん、な゛さま……」
精液が喉に絡まって、少し掠れた声が出た。それでも彼は俺を抱き上げて、労るように顔を寄せてくれる。頬に触れた冷たさが心地よく思えて自然と目が細まった。凹凸と波打つうなじを指先でくすぐりながら、仮面に唇を触れさせる。慣れた硬い感触と冷えた熱に頭がふわふわして、心地よさが頬を緩ませた。
抱き締められたまま、ゆっくりと背からベッドに下ろされる。膝裏を持ち上げられて、頭上に太い腕が置かれた。全身に影が落とされて、圧倒的な体格差に息を呑む。自分が自分でなくなるような強烈な快感を思い出して震えてしまうが、その先にあるものを思うと待ち遠しくも感じてしまって。ただ息を呑んで、その時を待つことしかできない。
「はぁ……は……っ、あ……ぁ゛、う……」
ペニスが尻穴をくすぐり、くちゅくちゅと濡れた音を立てた。慣らしてもらった穴は期待に震え入ってくるのを待っているのに、亀頭は焦らすように縁をなぞり、物欲しそうにひくつく表面を擦るだけだ。そのたびに熱い吐息が漏れて、それが自分のものか彼のものか浮かされた頭では判別すらできない。
「あっ……あ゛っ……だんなさま、だんなさまぁ゛……っ」
強請るような甘い声が出て恥ずかしいと思うのに、先の快感が欲しくて震える手を伸ばす。息を詰める音がしたかと思えば、旦那様がぐっと上体を倒してくれた。先端が入口部分を少しだけ押し広げる。その感覚だけで、爪先がぴくりと小さく跳ねた。
「ん……っ、んん……ぅあ゛……っ」
広い胸板に頬を寄せると、それだけで安心してしまい身体から力が抜けた。期待に蕩けてぐずぐずになった粘膜は、焦れったく思えるほどにゆっくりと押し入ってくる熱にきつく絡みつく。息を弾ませながらも力を抜こうとするが、意思に反してペニスにしゃぶりついて快感を得ようとしてしまう。それに耳の先まで熱くなり、顔を隠すように胸板に額を擦り寄せた。
こんな身体ではなかったはずなのに回数を重ねれば重ねるほど、慣れるどころか敏感になっていく気がする。嫌がられてはいないだろうかと少し不安に思うほどに。けれど、慈しむように優しく頬を撫でられ、彼を受け入れた下腹部が震えた。
「あ゛……それ、は……っ、ぁ゛、だめ……っ」
小刻みに腰を揺らされて背が反り上がる。張り出したカリ首を前立腺に引っ掛けるようにして浅いところを抉られて、あふれるような熱が脳を焼いた。常に電流が走っているように背が引き攣り、体勢を戻すこともできない。視界が飛ぶたび腹に濡れた感触があって、ふわふわと浮く快感が脳を痺れさせる。
「あ゛っあっふ、ぁっあ゛っああっ」
まだ半分程度だというのに、律動に合わせて腹が微かに膨らむ。その状態で圧し掛かられ、ゆっくりと押し込まれると亀頭が結腸の壁に引っ掛かって爪先が跳ねた。
「あ゛っああっ、ぅあ゛っ……ん、んぅ゛……っ」
先端が、くぽっくぽっと肉の輪を弄ぶ。そのたびに腰が震え、全身が痺れたように爪先まで快感が駆け抜けた。跳ねる腰を掴んだまま、旦那様は執拗に結腸を亀頭でほぐしていく。びくびくと腰が跳ね上がり、目の奥で幾度となく火花が散る。激しい動きではなく、ゆったりとした優しいものなのに、呼吸もままならずに引っ切り無しに声が溢れた。
「ぅ、あ゛……!」
ぐぽっと異様な音が響いて、重たい衝撃が全身を襲った。視界が白く飛び、性器の先端が一気に熱くなる。意識が戻る頃には下半身はピタリと重なり、結合部の隙間さえ見えない。間近で見た、あの長大なペニスが全て入っているのだと思うと信じられない気持ちになる。けれど、貧弱な腹を力強く押し上げ、皮膚越しに亀頭が透けて見えそうなほど膨れた様を見れば疑うことは出来なかった。
「ん……だん、なさま……の……」
ぼんやりとした頭で、優しく腹を撫で擦る。ドクドクと強く脈打つのが掌に伝わってきて、余計に思考が蕩けてしまう。頬が緩むのを自覚しつつも彼を見上げれば、強い視線とぶつかってきゅんと下腹が甘く疼いた。
「あ゛、ぅ……っ」
膝裏をぐっと頭の方に持ち上げられて、ごりゅっと強く最奥を抉られる。熱い息遣いが上から響き、それだけで期待に爪先が震えた。
「あっあ゛あっ、ふあ゛っんあっあ゛……!」
粘膜を引き摺りながら入口まで引かれたかと思えば、次の瞬間には深くまで叩き落される。その状態のまま腰を回すように押しつけられれば、最奥を強く抉られる刺激で視界が何度も弾け飛ぶ。きゅうっと指先に力を込めてしがみつきながらも、膝裏を持ち上げられたまま真上からの突きに唇を噛み締めた。それでも隙間から甘い吐息が押し出されてしまう。
「あ゛っ、ん……ふ、あっ、あ゛あっあっ、だ、んなさ、ま゛……ぁ゛……っ」
腹の底から込み上げてくる熱に粘膜がぐずぐずに蕩けて、浅ましく旦那様のものにしゃぶりつく。彼は短く息を詰めると、更に激しく腰をぶつけてきた。
「う、ぁあ゛……っ、ひぁっ、ぅ……あ゛あ……!」
激しい動きに先走りが泡立ち、卑猥な音が鼓膜さえも犯してくる。慣れた質量と熱に身体は戦慄き、きゅうきゅうと腹の奥が甘く疼いた。無いはずのものが歓喜するようにペニスを強請り、突かれるたびに性器は震えながら少量の淫液を撒き散らす。
「あ゛ぁっ、ごめ……っ、な、さ……あ゛っあっあ゛ああッ」
ぼやけた頭で謝ろうとするが、彼はそんなこと気にするなとばかりに突き上げるのを止めない。膝裏を拘束されたまま真上からの圧し掛かられて、逃げ場もなく与えられる刺激に泣き続ける。きもちいい、おかしくなる、もっとして。信じられない言葉たちが忙しなく巡り、視界もチカチカと瞬いて訳が分からない。だんなさま、と呂律の回らない口で呼びながら縋るように指先に力を込めると、一際強く最奥を貫かれた。突き上げに合わせて腹が大きく膨れ、限界まで皮膚が伸ばされる。
「ぁ゛――~~ッッ!!」
意識がふっと浮きあがり、声にならない絶叫が喉奥から迸った。腹の底が熱く燃えて、その熱は瞬く間に全身へと広がっていく。頭の天辺から爪先まで快感に犯され、身体が小刻みに揺れる。絶頂は深く、収まりきらずに溢れ出した精液の感触にすら指先が小さく跳ねた。心地良い痺れが背を震わせ、思考がふわふわと酩酊する。
「はぁ……、は……ぁ゛……っ」
余韻に浸りながらも、引き抜かれていく感覚に甘い吐息がもれる。亀頭が前立腺を押し潰しながら抜けていき、衝撃に背が反り上がった。ぴゅっと申し訳程度に淫液が飛び、彼の肌を濡らしまう。
「ん、あ……っ」
快感がなかなか引かず、全身が甘い痺れに覆われている。優しく頬を撫でる指先すら今は刺激として捉えてしまって、びくびくと重い腰が跳ねた。彼は震える俺を抱き締めて、労るように頭を撫でてくれる。のろのろと見上げた先で、赤い瞳が甘く蕩けているように見えたから、俺の頬も気付けば緩んでいた
自分は今、どんな顔をしているのだろうか。確かめることは出来ないが、きっと甘えきった情けのない顔をしているのだろう。けれど、構わないと思えた。彼なら、受け止めてくれると知っているから。
「だんなさま……」
彼の冷たい仮面に手を伸ばし、そっと指先を滑らせる。触れたいな、と思う前に身体が動いていた。そうするのが当然のように仮面に唇を重ねる。それは硬く、冷たい。けれど、触れた温度に反して、胸は温かくなっていく。その心地良さを感じていたくて、俺は熱に浮かされたまま何度も唇を寄せた。
振り返ると、緑や土の香りがした。もう都市の方に戻らなければならないらしく、この景色も暫くは見納めだ。楽しかった思い出に後ろ髪を引かれつつも、少し先で待っていてくれる彼に駆け寄る。傍に寄ると、そっと四本の腕が伸ばされた。それに笑いながら太い腕に手を添えて、自分からも身体を寄せる。そして、太い首に腕を回し、ひやりとしたうなじに掌を添わせた。
「連れてきてくれてありがと。また来ようね」
一緒に楽しみたいと思ってくれたこと、その相手に俺を選んでくれたこと。そのどちらもが嬉しくて、冷たい仮面に頬を擦り寄せた。彼はくすぐったそうに目を細めながらも、しっかりと抱き留めてくれる。歩くたびに伝わってくる振動に笑みを深め、俺もまた指先に力を込めた。
目を閉じると、昼間のことが瞼の裏に浮かんだ。未だ弾む気持ちのままベッドに転がると、少し身体が揺れる。両手をついて上半身を起こすと、旦那様がベッド脇に腰を掛けていた。のそのそとシーツを引っ張りながら彼の方に寄っていき、そっと肩を触れさせる。すると、彼は鋭い瞳を和らげてくれた。
「っ、ん……」
硬い尾が、太腿を優しく撫でながら脇腹まで擦りあげてくる。ひやりとした感触に反して、腹の奥からじわじわと熱が沁みだしてきて腰が震えた。最近、こうして触れられるだけで身体が反応するようになっている気がする。いつも行為の始まりにされているから、脳に染みついてしまったのだろうか。
彼は大きな掌で後頭部を包むようにして持ち上げると、そっと顔を寄せてくれた。唇に触れた冷たさが、俺の熱を受けて徐々に温もりを宿していく。そのたびに穏やかな気持ちが身体中に広がっていくようで、とろりと瞳が蕩けた。
「あ……だん、なさま……」
ゆっくりと離れていくのを名残惜しく思ってしまう。こつんと額が重なり、吐息が混じるほどの距離で見つめ合った。穏やかに見える赤の瞳には俺だけしか映っていない。ぞくりとしたものが腰を震わせ、下腹が燃えるように熱くなった。甘く疼く感覚を誤魔化すように内腿を擦り合わせる。
分厚い掌が、布越しに胸を覆った。平べったい胸に揉むところなど殆どないだろうに、大きな掌で包むようにして下から持ち上げられる。やわやわと揉みしだかれると、背骨に微弱の電流が走ったみたいに肩が跳ねた。硬い指が先端に触れるたび、意図せず甘い吐息が漏れる。次第に硬くなって、痺れが全身に広がっていくようだ。ぷっくりと膨れたそれが布を小さく押し上げているのが自分でも見て取れて、熱くなった顔を逸らした。
「ぁ……っ」
彼は宥めるように頭を撫でながらも、服の裾を持ち上げて胸に触れてきた。直に触れた掌の熱さに、思わず息を呑む。そうして胸を揉みながらも、別の手が下腹をなぞるようにして中心へと下ろされていく。そこは既に立ち上がり、期待に濡れていた。震えるそれを下から撫で上げられ、ゾクゾクとした痺れに腰が浮いてしまう。
「ふっ、ぅ……だんなさま……っ」
両頬を掌で包まれて、彼を見上げるような体勢を取らされる。そのまま性器を扱かれると堪えられない。太い指で挟むようにして上下に抜かれたかと思えば、同じ手で袋ごと揉みしだかれる。跳ねる腰を押さえつけられたまま与えられる刺激に唇を噛み締めた。けれど、唇をなぞった親指に優しく抉じ開けられる。
「っ……ふ、ぁ……ん゛、あっあ゛っ……っう……」
視界が滲み、口の端からはだらしなく涎が垂れる。拭うほどの余裕もなく、顔を固定されているから隠すこともできない。みっともなく汚れた顔を見られているのだと思うと、頬どころか耳先まで熱くなった。指先でくすぐるように耳朶を撫でられ、ゾクゾクとした痺れが背骨を這いあがってくる。
「ん、んぅ゛……ふ、ぁっあっあ゛あっ……!」
くにくにと性器の先端を、硬い親指で捏ね回される。強烈な刺激に視界が弾け、勝手に出てきた涙が頬を濡らした。それでも彼は止めてくれなくて、それどころかより一層激しく責め立ててくる。腰が浮いて勝手に痙攣まで始めた。赤く鋭い瞳が、成す術もなく善がる姿を焼きつけるように見つめてくる。強い視線に煽られ、眦がじわりと熱くなった。旦那様の輪郭が朧げになってしまうほど、恥ずかしさやら気持ちよさに涙が溢れていく。羞恥や興奮がぐちゃぐちゃに絡まり合って、それらが余計に震えを酷くさせた。
「はぁっ……はっ……ぁ゛、だめ……っ、だめ……やっ、あ゛っでちゃ……ぅあ゛、ああああッ」
ついにバチッと視界が白く飛んで、強い快感が脳天を貫く。彼の両手首に爪を立てて、込み上げてくる快感に身を任せた。性器の先端が一段と熱くなった瞬間、ぴゅるるっと今まで塞き止められていたものが一気に溢れだす。視界がぼんやりと霞み掛かって、意識が返ってくる頃には抱き締められていた。仮面の冷たさが頬に触れて、小さく肩が震える。
「ん……だんなさま……?」
ふくらはぎの辺りに熱く濡れた感触がある。達したばかりで気怠い身体を動かして下を見ると、そこには既に硬くそそり立つペニスがあった。擦りつけられるたびにぬるぬると滑り、その感触に頬が熱を持つ。初めは受け入れることなんて考えもしなかったのに、今では見ただけで先を想って腹の奥が疼いてしまう。
いつものように喉元が晒され、震える手を優しく添わせた。脆く柔らかな鱗に唇を触れさせて、舌先でなぞるようにして撫でていく。それに応えるように尾がゆったりと上下に叩きつけられ、振動に合わせて身体が跳ねた。そうされると今からするのだという実感が湧いてきて、下腹が甘く締めつけられる。先端からとぷっと透明な液が漏れて、股の間を濡らしていった。
「ん……っ」
硬い指先が、尻穴に触れた。濡れた穴は表面をくすぐられるだけで、くちゅくちゅと恥ずかしい音を立てる。思わず瞼を硬く瞑ると、そっと頭を撫でられた。子をあやすような柔らかな触れ方に、こんな時だというのに力が抜けてしまう。
「ん、ん……ぅ……っ」
ゆっくりと指が挿しこまれ、粘膜を押しながら奥へと進んでくる。本来、濡れることのない場所が水音を立てるたび全身が熱くなった。意識を逸らそうとしてくれているのか。親指が唇をなぞり、そのまま口内に潜りこんでくる。舌先に触れる指の感触と鱗のひやりとした熱に、とろりと思考が蕩けていくようだ。その間にも指は増やされ圧迫感は増していくが、裏顎をくすぐられたり優しく舌を揉まれていると違和感が薄れていく。
「ふ、ぁ゛……あ……っ、うぁ゛……っ」
ゴツゴツとした太い指が腹の裏側を引っ掻くたび、脳天を突き抜けるような衝撃に襲われる。達したばかりで膨れたしこりを強く擦られ、甘えるような声が口から飛び出した。手足の先から力が抜けているのに、何故か痙攣が止まらなくて。性器は震えながら淫液を漏らして、股の間を更に濡らしていく。
「は……はぁ……っ」
目の奥が優しく弾けて、全身が勝手に跳ねる。そんな俺を、彼は落ち着くまで抱き寄せたままでいてくれたらしい。ぼやけていた思考も、後頭部を包む温かさと頬に触れるむっちりとした柔らかさに引き寄せられるようにして徐々に帰ってくる。
全身が痺れるような快感に、視界が揺れていた。それでも何とか頭を動かして、先走りを垂らしながら焦れったそうに跳ねるペニスへと目を向ける。相変わらず、いつも収まっているのが不思議なほどに太く長い。それでも最初に感じていた恐怖は遠く、真上から圧し掛かられただけで、みっともないくらい期待に震えてしまう。今も脚を合わせただけで、くちゅりと濡れた音がした。硬い指で掻き回された穴が早く欲しいと疼いて、熱を持った奥がむず痒くなる。
「は……っ、は……っ」
いっぱい突いて、カリ首で強く引っ掻いて。余計なことが吹っ飛ぶくらい頭をめちゃくちゃにしてほしい。けれど、俺はいつもして彼に強請ってばかりで。飛ぶほどの快感や抱き締められる安堵感を、同じくらい彼に返せているのだろうか。
ドクンドクンと強く脈打つペニスを見つめる。皮膚と同じ色のそれは先走りに濡れて、ぬめぬめと黒光りして見えた。亀頭にまで血管を浮かばせ、激しく脈動する様は恐ろしいとも言える。自分のものと見比べてみても、とても同じようには見えない。
でも……俺も少しくらいなら……。
薄っぺらい腹の上で跳ねるペニスに、そっと優しく手を添える。頭上から息を詰める音がしたが咎められはしない。それを許可と受け取って、恐る恐る指を這わせた。他人のものなんて触りたいと考えた事はなかったが、軽く撫でただけでびくっと大きく跳ねるのが可愛いと思えてしまうのは何故だろう。
太く浮かんだ血管を辿るようにして指先を滑らせると、上から熱い息遣いが響く。それに心臓が跳ねるのを感じつつも、大きく膨れ上がった亀頭にちゅっと軽く唇を触れさせた。
「ん……ぅ……」
思っていたよりも弾力があって、けれど芯の部分は硬い。ぎこちなくも両手で根本を揉み、亀頭を優しく舐め回した。力強く浮かんだ血管を舌先でなぞるようにして、やんわりと刺激する。そうしていると頭上からくぐもった熱っぽい吐息が降ってきて、じわりと腰の奥が熱を帯びた。
「ん……ん……っ……ふっ、ぅ……」
俺と同じくらい、それ以上に気持ちよくなってほしくて、ちろちろと舌を小刻みに動かす。知識といえば友達に誘われて見たAV程度のもので、実際にされたこともしたこともないので今一わからない。取り敢えずぺろぺろと飴玉でも舐めるみたいに自分が感じる割れ目をくすぐり、両手を使って竿部分を擦る。そうしているうちに舌先に触れる苦味が増してきて、表面に浮かぶ血管が濃く太くなってきた。
「っ……ふ、ぁ……ん、んぅ……ふ……ぅっ」
彼は苦しげに息を荒げながらも、髪を梳くように優しく撫でてくれた。それが褒めてくれているように思えて、痺れた舌を懸命に動かす。彼のものは大きく亀頭を咥えるだけでも顎が疲れてしまうので、横から竿を舐めたり唇で食んだりと休みながら思いつく限りの刺激を与えてみる。
次第に先走りが増してきて、じゅぷじゅぷと大きな水音が部屋中に響くほどになってきた。苦くてしょっぱい味は慣れないものだが、それが気持ちよくなっている証だと思うと嬉しくて。口内に溜まった先走りを唾液と共に飲みながら、亀頭を咥えてぎこちなく頭を揺らす。上から降ってくる吐息が徐々に短くなってきて、ちゅうっと少し強めに吸い上げた。
「んぶ……っ」
放たれた精液が口内に叩きつけられて、その勢いのまま喉奥へと流し込まれていく。受け止めるには量が多すぎて、途中で顔を背けてしまった。唇から溢れ出た白濁は、胸元を濡らしながら床に垂れ落ちる。それでも勢いは止まらず額や頬だけでなく顔の至るところに掛かり、どろりとした粘液が伝っていく感覚に小さく身震いした。
初めての口淫だというのに、不思議なほど嫌悪感はなかった。ただ自分の拙い奉仕で彼が気持ちよくなってくれたのだと思うと、達成感のような満足感のような不可思議な感覚が胸を震わせる。
「っ、だん、な゛さま……」
精液が喉に絡まって、少し掠れた声が出た。それでも彼は俺を抱き上げて、労るように顔を寄せてくれる。頬に触れた冷たさが心地よく思えて自然と目が細まった。凹凸と波打つうなじを指先でくすぐりながら、仮面に唇を触れさせる。慣れた硬い感触と冷えた熱に頭がふわふわして、心地よさが頬を緩ませた。
抱き締められたまま、ゆっくりと背からベッドに下ろされる。膝裏を持ち上げられて、頭上に太い腕が置かれた。全身に影が落とされて、圧倒的な体格差に息を呑む。自分が自分でなくなるような強烈な快感を思い出して震えてしまうが、その先にあるものを思うと待ち遠しくも感じてしまって。ただ息を呑んで、その時を待つことしかできない。
「はぁ……は……っ、あ……ぁ゛、う……」
ペニスが尻穴をくすぐり、くちゅくちゅと濡れた音を立てた。慣らしてもらった穴は期待に震え入ってくるのを待っているのに、亀頭は焦らすように縁をなぞり、物欲しそうにひくつく表面を擦るだけだ。そのたびに熱い吐息が漏れて、それが自分のものか彼のものか浮かされた頭では判別すらできない。
「あっ……あ゛っ……だんなさま、だんなさまぁ゛……っ」
強請るような甘い声が出て恥ずかしいと思うのに、先の快感が欲しくて震える手を伸ばす。息を詰める音がしたかと思えば、旦那様がぐっと上体を倒してくれた。先端が入口部分を少しだけ押し広げる。その感覚だけで、爪先がぴくりと小さく跳ねた。
「ん……っ、んん……ぅあ゛……っ」
広い胸板に頬を寄せると、それだけで安心してしまい身体から力が抜けた。期待に蕩けてぐずぐずになった粘膜は、焦れったく思えるほどにゆっくりと押し入ってくる熱にきつく絡みつく。息を弾ませながらも力を抜こうとするが、意思に反してペニスにしゃぶりついて快感を得ようとしてしまう。それに耳の先まで熱くなり、顔を隠すように胸板に額を擦り寄せた。
こんな身体ではなかったはずなのに回数を重ねれば重ねるほど、慣れるどころか敏感になっていく気がする。嫌がられてはいないだろうかと少し不安に思うほどに。けれど、慈しむように優しく頬を撫でられ、彼を受け入れた下腹部が震えた。
「あ゛……それ、は……っ、ぁ゛、だめ……っ」
小刻みに腰を揺らされて背が反り上がる。張り出したカリ首を前立腺に引っ掛けるようにして浅いところを抉られて、あふれるような熱が脳を焼いた。常に電流が走っているように背が引き攣り、体勢を戻すこともできない。視界が飛ぶたび腹に濡れた感触があって、ふわふわと浮く快感が脳を痺れさせる。
「あ゛っあっふ、ぁっあ゛っああっ」
まだ半分程度だというのに、律動に合わせて腹が微かに膨らむ。その状態で圧し掛かられ、ゆっくりと押し込まれると亀頭が結腸の壁に引っ掛かって爪先が跳ねた。
「あ゛っああっ、ぅあ゛っ……ん、んぅ゛……っ」
先端が、くぽっくぽっと肉の輪を弄ぶ。そのたびに腰が震え、全身が痺れたように爪先まで快感が駆け抜けた。跳ねる腰を掴んだまま、旦那様は執拗に結腸を亀頭でほぐしていく。びくびくと腰が跳ね上がり、目の奥で幾度となく火花が散る。激しい動きではなく、ゆったりとした優しいものなのに、呼吸もままならずに引っ切り無しに声が溢れた。
「ぅ、あ゛……!」
ぐぽっと異様な音が響いて、重たい衝撃が全身を襲った。視界が白く飛び、性器の先端が一気に熱くなる。意識が戻る頃には下半身はピタリと重なり、結合部の隙間さえ見えない。間近で見た、あの長大なペニスが全て入っているのだと思うと信じられない気持ちになる。けれど、貧弱な腹を力強く押し上げ、皮膚越しに亀頭が透けて見えそうなほど膨れた様を見れば疑うことは出来なかった。
「ん……だん、なさま……の……」
ぼんやりとした頭で、優しく腹を撫で擦る。ドクドクと強く脈打つのが掌に伝わってきて、余計に思考が蕩けてしまう。頬が緩むのを自覚しつつも彼を見上げれば、強い視線とぶつかってきゅんと下腹が甘く疼いた。
「あ゛、ぅ……っ」
膝裏をぐっと頭の方に持ち上げられて、ごりゅっと強く最奥を抉られる。熱い息遣いが上から響き、それだけで期待に爪先が震えた。
「あっあ゛あっ、ふあ゛っんあっあ゛……!」
粘膜を引き摺りながら入口まで引かれたかと思えば、次の瞬間には深くまで叩き落される。その状態のまま腰を回すように押しつけられれば、最奥を強く抉られる刺激で視界が何度も弾け飛ぶ。きゅうっと指先に力を込めてしがみつきながらも、膝裏を持ち上げられたまま真上からの突きに唇を噛み締めた。それでも隙間から甘い吐息が押し出されてしまう。
「あ゛っ、ん……ふ、あっ、あ゛あっあっ、だ、んなさ、ま゛……ぁ゛……っ」
腹の底から込み上げてくる熱に粘膜がぐずぐずに蕩けて、浅ましく旦那様のものにしゃぶりつく。彼は短く息を詰めると、更に激しく腰をぶつけてきた。
「う、ぁあ゛……っ、ひぁっ、ぅ……あ゛あ……!」
激しい動きに先走りが泡立ち、卑猥な音が鼓膜さえも犯してくる。慣れた質量と熱に身体は戦慄き、きゅうきゅうと腹の奥が甘く疼いた。無いはずのものが歓喜するようにペニスを強請り、突かれるたびに性器は震えながら少量の淫液を撒き散らす。
「あ゛ぁっ、ごめ……っ、な、さ……あ゛っあっあ゛ああッ」
ぼやけた頭で謝ろうとするが、彼はそんなこと気にするなとばかりに突き上げるのを止めない。膝裏を拘束されたまま真上からの圧し掛かられて、逃げ場もなく与えられる刺激に泣き続ける。きもちいい、おかしくなる、もっとして。信じられない言葉たちが忙しなく巡り、視界もチカチカと瞬いて訳が分からない。だんなさま、と呂律の回らない口で呼びながら縋るように指先に力を込めると、一際強く最奥を貫かれた。突き上げに合わせて腹が大きく膨れ、限界まで皮膚が伸ばされる。
「ぁ゛――~~ッッ!!」
意識がふっと浮きあがり、声にならない絶叫が喉奥から迸った。腹の底が熱く燃えて、その熱は瞬く間に全身へと広がっていく。頭の天辺から爪先まで快感に犯され、身体が小刻みに揺れる。絶頂は深く、収まりきらずに溢れ出した精液の感触にすら指先が小さく跳ねた。心地良い痺れが背を震わせ、思考がふわふわと酩酊する。
「はぁ……、は……ぁ゛……っ」
余韻に浸りながらも、引き抜かれていく感覚に甘い吐息がもれる。亀頭が前立腺を押し潰しながら抜けていき、衝撃に背が反り上がった。ぴゅっと申し訳程度に淫液が飛び、彼の肌を濡らしまう。
「ん、あ……っ」
快感がなかなか引かず、全身が甘い痺れに覆われている。優しく頬を撫でる指先すら今は刺激として捉えてしまって、びくびくと重い腰が跳ねた。彼は震える俺を抱き締めて、労るように頭を撫でてくれる。のろのろと見上げた先で、赤い瞳が甘く蕩けているように見えたから、俺の頬も気付けば緩んでいた
自分は今、どんな顔をしているのだろうか。確かめることは出来ないが、きっと甘えきった情けのない顔をしているのだろう。けれど、構わないと思えた。彼なら、受け止めてくれると知っているから。
「だんなさま……」
彼の冷たい仮面に手を伸ばし、そっと指先を滑らせる。触れたいな、と思う前に身体が動いていた。そうするのが当然のように仮面に唇を重ねる。それは硬く、冷たい。けれど、触れた温度に反して、胸は温かくなっていく。その心地良さを感じていたくて、俺は熱に浮かされたまま何度も唇を寄せた。
振り返ると、緑や土の香りがした。もう都市の方に戻らなければならないらしく、この景色も暫くは見納めだ。楽しかった思い出に後ろ髪を引かれつつも、少し先で待っていてくれる彼に駆け寄る。傍に寄ると、そっと四本の腕が伸ばされた。それに笑いながら太い腕に手を添えて、自分からも身体を寄せる。そして、太い首に腕を回し、ひやりとしたうなじに掌を添わせた。
「連れてきてくれてありがと。また来ようね」
一緒に楽しみたいと思ってくれたこと、その相手に俺を選んでくれたこと。そのどちらもが嬉しくて、冷たい仮面に頬を擦り寄せた。彼はくすぐったそうに目を細めながらも、しっかりと抱き留めてくれる。歩くたびに伝わってくる振動に笑みを深め、俺もまた指先に力を込めた。
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