27 / 74
五章
「情報と影響と熱気」その⑤
しおりを挟む「じゃあ先に入らせてもらおうかな。二人は部屋に戻って休んでていいよ。出たら声かけるから」
脱衣所へ行きリュックから着替えとバスタオル、ボディタオルを取り出す。てか自分の出さなくても棚にタオルとかいっぱい置いてある。使っていいみたいだし、これはありがたいね。
裸になって風呂場に入ったらまず頭と体を洗った。この世界にちゃんとした石鹸やシャンプーがあって良かった。バトルや旅で汚れていたので凄く気持ちいい。しかし使うたびに魔法の便利さには驚かされる。温度が調整されたシャワーが使えるんだもん。風呂場のランプ照明も当然魔法であり、少し薄暗く設定されている。
「さてと、お湯につかるか」
銭湯のように大きな湯船で思い切り手足を伸ばしリラックスした。因みに湯船の深さは少し浅めだ。
ここは南の暖かい国だからシャワーだけで終わらせるのが普通で湯舟がない家も多い。本当にこの家は当たりだ。やっぱり日本人はお湯につからないと。
「おおぉぉっ、い~湯加減……最高だな」
「えぇ、お風呂は最高ですね」
えっ⁉ すぐ隣から声が。
「おわっ⁉ セっ、セセ、セバスチャン⁉」
ビックリした。声がするまでまったく気付かなかった。何故にセバスチャンがここに居るんだよ。しかも当然、全裸でお湯につかってるし。っていつからだよ。気配しなかったんだけど、やはり植物だからか?
「お湯に入って大丈夫なの?」
まだ驚きで心臓がバクバクしている。頼むからBL的流れはやめてくれよ。
「はい。問題ありません。わたくし、お茶と同じぐらいお風呂も大好きなんです」
「そ、そう」
ちょっとセバスチャン、喋りながら近付いてくるのやめて。いやホンとガチムチのマッチョと美形男子が裸で近付いてきたら超怖いからね。
「マスターもお風呂が大好きで、よく一緒に入っていました」
なるほど、だから南国の家なのに立派な風呂があるんだな。そのマスターは北の寒い地方の出身かもしれない。
「今日は久しぶりに誰かと入れて嬉しいです。ここにマスターが居ればもっと楽しかったのですが、本当に残念です。アキト殿、早くマスターを見付けてくださいね」
「分かってるって。さっき情報屋にロイって奴のこと頼んできたから」
「それはありがたい。どうやらアキト殿は仕事が早いできる男のようですね。好きですよ、わたくしはそういう人」
「そ、そう」
だから怖いっての。超美形のその顔で少女漫画風のキラキラオーラ全開でそういうセリフ止めて。
また近付いてるんですけど。あと数センチしか離れてないからね。でも気になっていることを確かめるチャンスだ。それは謎の植物で人間の姿をしているセバスチャンの股間がどうなっているかだ。
パンツの上からは外人級に盛り上がってたけどその中はどうなってんだか。かなり怖いが好奇心に押され、恐る恐るセバスチャンの股間をチラ見する。
ってやっぱあるぅぅぅぅぅっ‼
超立派なのついてるぅぅぅぅぅっ‼
でも毛は無くてツルツルぅぅぅぅぅっ‼
もう完全に人間だよ。ロイって奴はどこまでリアルに造ってんだ。職人根性は凄いけど、何故女の子にしなかったバカヤローが‼
しかしロイ・グリンウェルって奴は天才だ。ここまで人間そっくりな生命体を作ってしまうとは。
「どうかなさいましたか、アキト殿。なにやら動揺しているように見えますが」
「ははっ、べ、別に大丈夫だけど」
けっして自分のと比べて動揺したわけじゃないからね。羨ましくないんだからね。
「お疲れのようですね。ではわたくしめがマッサージをいたしましょう」
「マ、マッサージ」
「はい、マッサージです」
「いやいやいやいや、ぜんっぜん疲れてないし」
「まあそう言わずに、身を任せてみてください。こう見えてセバスは色々と得意ですから」
色々って何が得意なの、ただただ怖いんですけどぉ。とか思ってる間に後ろに回られて抱き締められてるぅぅぅっ‼
「おわっ⁉ やっ、やめろっての」
セバスチャンは透かさず手の平で俺の上半身を舐めるように優しくまさぐる。
「あふぅ……」
ってコラぁぁぁっ‼ 変な声出してしまったじゃねぇかよ。絶妙なタッチやめろ‼ このままじゃ未知なる世界へ連れて行かれる。なんとか回避しなければ。
で、逃げようとしてもがくと肘が偶然セバスチャンの頭にヒットする。
鈍い音がしたと同時にセバスチャンの腕の力が抜けたので、跳ねるように湯船から出て脱衣所まで逃げた。一瞬だけ振り返って確認したが、超人パワーを食らったセバスチャンはお湯に倒れ浮いていた。
浅いし植物だから大丈夫だろ。このタイミングで助ける気にはならない。もしも成仏したならそれまでだ。
急いで白のTシャツに黒のボクサーパンツを穿いて、荷物をウエストポーチの魔法空間に入れて自分の部屋へ逃げる。
でもやはり気になるので、風呂に戻ってそっとドアを開けて大きな湯船を見ると、セバスチャンは目を回して仰向けで湯船にプカプカ浮かんでいた。
よし、まだ生きてる。このまま放置でもよさそう。頭にデカいたんこぶできてるだろうけど大丈夫そうだ。
「あっぶねぇ。もう少しで覚醒させられるところだった。異世界恐るべし」
部屋に戻り安心したら、誰に言うでもなく独り言を発していた。
「そうだ、脱ぎたてパンツをスカーレットにあげる約束だった」
鞄の魔法空間からパンツを取り出しスカーレットの部屋に向かう。
スカーレットは無頓着なタイプなので部屋のドアは開けっ放しであり、ノックだけしてそのまま部屋に入った。
「スカーレット、約束のパンツ持ってきたぞい」
「あわわわわっ、ご、ご主人のパ、パンツ」
スカーレットは赤面し、壊れたぜんまい仕掛けのおもちゃのようにオタオタと同じ動きを繰り返している。
「さあ、思う存分クンクンするがいいさ」
パンツを手渡すとスカーレットはブルブルと震えながら慌てふためく。まあ落ち着けっての。
きっと今晩はクンクンした後、パンツを抱き締めて寝るんだろうな。
「風呂に入ってこいよ。疲れとれるぞ。湯船に変な植物浮いてるかもしれないけど気にしないように」
いまだパンツを握り締め挙動不審状態の愛犬を放置して、次はクリスの部屋へ向かう。
クリスの部屋に入ると、体操服と赤色のブルマ、白の靴下と上履き風シューズを既に着ていた。
「見て見てご主人様、ピッタリなのにゃ。裁縫道具も家にあったので尻尾の穴も上手くできたのにゃ」
やはりクリスの裁縫の腕前は本物だったようだ。ってそんな事はどうだっていいんだよ。その姿だよ姿、超絶萌えるぅぅぅっ、なんなのもうこの可愛い生物は‼
幻想生物と絶滅種のコラボレーションの破壊力たるや、もう表現できないぐらい凄い。それにブルマってスゲー。昔はこれを体育の時間に女子が全員普通に穿いてたんだよな。ムチムチの太もも丸出しなんですけど。
「気に入ったようだな。似合ってるぞ、クリス」
「にゃは。ご主人様に褒めてもらえてクリスチーナは嬉しいのにゃ。下着もご主人様に買ってもらったのを穿いているのにゃ」
クリスはいきなりブルマを膝の辺りまで下げて下着を見せてくれた。
「おおっ⁉ 一番派手なヒョウ柄Tバックかよ」
出やがったな、天才いいね職人が。いくらでもいいねつけてやんよ。ってこのムラムラどうしてくれんだよまったく。
「も、もう分かったから、クリスもお風呂に入ってこい。それで今日はベッドでゆっくり寝て、旅の疲れをとろう」
「はいにゃ」
用事を済ませた後は自分の部屋へ帰り、ふかふかベッドに寝転がった。
セバスチャンがやったのかは分からないが、全ての部屋が本当に綺麗でベッドメイキングまでされており、すぐに寝れる状態だ。
「え~っと、家の中で履く用のサンダルが必要だな。クロックスみたいなの売ってるかなぁ」
家で靴を履きっぱなしというのは物凄く疲れる。でもこの家は西洋風だし裸足で生活するのは変だ。だから学校みたいに上履きに履き替えるようにしよう。そしたら泥や土で汚れないし。
「三人分、買わないと……」
相変わらず色々ありすぎて疲れていたのもあり急激に眠たくなってくる。この時、走馬灯のように異世界に来てからの事を思い出す。まだ数日なのに摩訶不思議なことばかりだった。
「ははっ、ついこの間まで引きこもりだったのに、なにやってんだろ」
そんな独り言を小さく発した後、深い眠りに落ちた。
0
お気に入りに追加
131
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話
妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』
『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』
『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』
大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる