10 / 19
九
しおりを挟む
九
優奈と隼丸の残念会は、試合の翌日に開かれた。メンバーは、優奈、隼丸、狗彦、そして私だった。月子はともかく、小李も呼ぼうかとも思ったが、二人は何か、雑用で時間が取れないらしかった。
私は、試合の最後に泰平が「やるね、本堂さん」と呟いたのを微かに聞いたが、その理由は残念会の前夜に、分かった。本当はその時に残念会を予定していたが、隼丸が徹底的に破壊されたため、その修理のことを考えて、延期したのだ。
そう、その修理なのだが、それは一晩で済んでしまった。
「あれは、なかなか、優奈の判断が冴えていたよ」
例のパーティールームで、隼丸がそう言ったので、私は思わず苦笑した。
「優奈、そういうところ、しぶといよね」
「しぶといよねえ、じゃないわよ」優奈が疲れた顔で言った。「こっちは必死だって言うのに」
隼丸が一晩で修理で来た理由は、体をバラバラに刻まれたのに、ギアが無傷だったことが大きな要素だった。それは優奈の操作だったのだと、さっきの隼丸の言葉は、そういう意味だ。それはすごいことだった。あの光の瞬きにしか見えない泰平の攻撃を、優奈は見切っていたのである。
「あのねぇ、そんなにすごいことじゃないのよ」
優奈がかすかに笑いながら、言う。
「泰平の操糸の位置を把握して、そこからの動きを即座に予測すれば、簡単なの。問題は回避できない、ってことね。あれは一種の虚糸だから、受けることもできないし」
「何か、対抗策はないの?」
私が尋ねると、優奈は首を捻った。
「うーん、距離を取るか、取らないか、でも違うかな」
隼丸が続きを引き受ける。
「距離を取れば、見切ることはできるが、線が面になって、避ける方法がなくなる。その一方で、距離を詰めれば見切るのは難しいが、線を避ける目がある、ってことだな」
「距離を詰めながら、その様子を遠くから見ることが出来たら良いんだけどな。それはもう、カメラを別に使わない限り、無理か」
狗彦が言うと、優奈と隼丸が笑う。
「試験では、マリオネットとマスターしか、戦闘に参加できないのよ。まぁ、マスターがマリオネットそっちのけで、カメラを積んだ模型のヘリコプターでも飛ばせばいいかもしれないけど、そんなの、無理だね」
「狗彦、お前、試験を舐めているだろ。こうなんだぞ、こう」
隼丸が狗彦に服の袖をめくって、腕にある生々しい傷跡を見せた。狗彦が嫌そうな顔をする。
「食べ物がまずくなるから、あまり見せるなよ。真利阿、何か、策はあるか?」
私は、少し考えてから、言った。
「当たって砕けろ、かな」
その言葉を聞いた三人が、ぽかんとした顔になり、それからそれぞれの顔になった。優奈は困った顔、隼丸はどこかうろたえた顔、そして狗彦は、怒りの表情だった。
「おい、真利阿。お前、勝つんじゃないのかよ」
狗彦がそう言って、こちらを見た。その瞳に、私は少し、身をこわばらせた。それくらい、力のある視線だった。
「か、勝つよ。勝つって」
「それが、当たって砕けろ、なんて言うかよ」
狗彦はまさにそう吐き捨てると、立ち上がった。足が当たったテーブルが揺れて、私のコップから、コーラが波打って、少しだけビシャリとこぼれた。
「真利阿、お前、やる気あるのかよ」
狗彦が私を見下ろして言う。
「あ、あるよ。当り前でしょ」
「だったら、もっと貪欲になれよ」
う、と私は言葉に詰まる。狗彦がこちらを睨みつけてくる。
「真利阿、勝つんだよな?」
「か、勝つ……よ」
私の返事は、なぜかすんなりと出なかった。それは狗彦に睨まれていたせいなのか、それとも別の理由からかは、はっきりしなかった。
私は、怖気づいていたのかもしれない。
負けることに。
戦う前から、負けを考えていた。
狗彦は、こちらを強く睨むと、「ふざけるなよ」と言って、ドアに向かうと勢いよく押しあけ、外へ出て行ってしまった。
「真利阿、追いかけなよ」
優奈が即座に言ったが、私は動けなかった。視線をドアと、優奈の間を行ったり来たりさせるしかできない。考えがまとまらなかった。自分の事も、狗彦の事も。そんな私を見て、優奈が隼丸に視線を向けると、彼が狗彦の後を追って、部屋を出て行った。私は視線を床に向けた。
「真利阿」優奈が言った。「敗北しても、守れるものはある」
「それは、そうだけど……」
「負けちゃいけないことなんて、そんなにないのよ。ただ、自分に負けなければいいの」
優奈のその言葉は、私にはよく理解できなかった。私の世界では、負けてしまえば全てを失うし、多くの物事では勝つことが求められていた。そして、自分に負ける、ということが、酷く身近に感じられて、恐ろしかった。
私は、自分に勝ったことが、あるだろうか。これから、私は自分に勝てるだろうか。
この自分の内側の、冷たい感覚に。
「優奈、私、どうしたらいいのかな……」
そんな力のこもらない私の言葉を、優奈は、黙って待ってくれた。
「私、狗彦を、死なせちゃうかもしれない」
「夢路のことを思い出しているの?」
夢路。その言葉は、私の体をこわばらせた。ゆっくりうなずくと、優奈が私の肩に手を置いた。
「大丈夫。夢路は、あなたのために死んだんじゃないわよ。あの子は、あの子のために、死んだの」
夢路というのは、中等部で、私のパートナーだったマリオネットの名前だ。
中等部の最後の試験で、彼女は私の操作に従い、敗北し、そしてギアを致命的に破壊され、活動を停止した。死んでしまったのだ。
私は足の震えを感じた。
「優奈、私、もう、誰にも死んでほしくないの……。泰平は、本気になれば、狗彦なんて、寸刻みに出来る力がある。そんな相手に、勝てるわけがない」
「真利阿、真剣に考えれば、何か、勝ち目があるかもしれないわよ。そうでしょ? 泰平の過去の戦闘についても、学校のデータベースに映像が残っているし、私も意見を言うわ。まだ試合は始まっていないのよ。休みを挟んで、あと三日はある。大丈夫だって」
私は寒気さえも感じながら、床を見つめていた。
「おい、狗彦!」
俺は隼丸の声に、落胆しつつ、しかし歩調を緩めなかった。足音が近づいてきて、俺の肩に手が触れた。
「待てよ、狗彦」
「ほっとけよ、隼丸」
俺は肩の手を振り払いながら、歩き続けた。隼丸が横に並ぶ二人で、夜の闇を街灯が薄める中を、歩いていく。
「狗彦、何も、真利阿だって、本気で言ったんじゃないさ。昨日の俺たちの試合を見れば、誰だって、不安になる」
「それでも、あいつは自分が学校をやめるくらい、それくらい次の試合には、色々とかかっているんだぞ。それを、あんな簡単に言いやがって」
「狗彦、真利阿を信用しろ」
俺は黙って歩き続けた。隼丸もついてくる。二人で歩く夜の学園内の道には、通りかかる人もいなかった。
「狗彦、お前、俺の姿を見て、ビビったか?」
唐突に隼丸がそう言ったので、俺は思わず足を止めて、そちらを見た。やはり歩みを止めた隼丸は斜め上、夜空を見ているようだった。
「ビビる?」
「そうだ。俺の体が切り刻まれて、自分はああなりたくない、って、そう思ったか?」
「そりゃ、思うだろ」
隼丸が頷く。しかし視線は夜空に向いたままだった。
「俺は今まで、結構、派手な損傷を負ってきた。まぁ、優奈とも長い付き合いだけど、優奈だって最初から、Bランクの腕があったわけではないし、そりゃ、試合にだって散々負けた時期もある。ついでに、ああ見えて、優奈は結構、容赦ないからな、勝負のために腕の一本くらい、平気で捨てるんだ。肉を切らせて骨を断つ、なんて言えば格好は良いが、肉を切られる時点で、結構、痛いんだよな、これがまた」
「何の話だよ」
「お前、真利阿に八つ当たりしたんじゃないか? ビビって」
さすがに俺は言葉を詰まらせたが、しかし、その一瞬の静寂が、俺を冷静にさせた。
「確かに、そういう面もあるかもしれない。でも、真利阿の言葉は、どうなんだ? あれがあいつの本心なら、俺は、どうしたらいいんだよ」
「それでも戦うのが、マリオネットだよ。そして、それでも信頼し合うのが、マリオネットとマスターだ。違うか?」
俺にはよく分からなかった。隼丸が肩をふっと持ち上げた。
「マリオネットになって長くないお前には、分からないか」
「そう言うなよ。でも……、確かに、そうかもな」
「真利阿と、仲直りできるな?」
その言葉に俺は、思いものを感じながら、即座に返事しなかった。
「狗彦」
「すまん、隼丸。今は、何も言えない」
「……そうか」
隼丸は、返事を即座に出させようとはしなかった。ただ、腕を持ち上げると、空の一点を指出した。
「あそこを見ろ、あの星座が見えるか?」
「どれだ?」
「強い光の星が、コの字になっているあたりだ。あそこに、弓使いの星座がある。あれが俺は大好きだ」
まっすぐに空を指差す隼丸の視線を負ったが、星座は良く分からなかった。隼丸は俺に言い聞かせるように言った。
「あの弓使い座が、俺と優奈の信頼の証だ。もし会えなくなっても、二人で、同じ時間に、あの星座を見上げることになっている」
「どこのロマンチックな恋人同士だよ」
俺が笑うと、隼丸がにやりと笑う。
「笑ったな? それで良いんだよ。お前は、笑って真利阿の隣にいろ」
「星座の話、本当かよ?」
隼丸は、俺の質問に、首をかくりと曲げてから言った。
「冗談に決まっているだろ? 俺が天体観測しているの、見たことあるか? お前こそ、結構、ロマンチストだな」
(続く)
優奈と隼丸の残念会は、試合の翌日に開かれた。メンバーは、優奈、隼丸、狗彦、そして私だった。月子はともかく、小李も呼ぼうかとも思ったが、二人は何か、雑用で時間が取れないらしかった。
私は、試合の最後に泰平が「やるね、本堂さん」と呟いたのを微かに聞いたが、その理由は残念会の前夜に、分かった。本当はその時に残念会を予定していたが、隼丸が徹底的に破壊されたため、その修理のことを考えて、延期したのだ。
そう、その修理なのだが、それは一晩で済んでしまった。
「あれは、なかなか、優奈の判断が冴えていたよ」
例のパーティールームで、隼丸がそう言ったので、私は思わず苦笑した。
「優奈、そういうところ、しぶといよね」
「しぶといよねえ、じゃないわよ」優奈が疲れた顔で言った。「こっちは必死だって言うのに」
隼丸が一晩で修理で来た理由は、体をバラバラに刻まれたのに、ギアが無傷だったことが大きな要素だった。それは優奈の操作だったのだと、さっきの隼丸の言葉は、そういう意味だ。それはすごいことだった。あの光の瞬きにしか見えない泰平の攻撃を、優奈は見切っていたのである。
「あのねぇ、そんなにすごいことじゃないのよ」
優奈がかすかに笑いながら、言う。
「泰平の操糸の位置を把握して、そこからの動きを即座に予測すれば、簡単なの。問題は回避できない、ってことね。あれは一種の虚糸だから、受けることもできないし」
「何か、対抗策はないの?」
私が尋ねると、優奈は首を捻った。
「うーん、距離を取るか、取らないか、でも違うかな」
隼丸が続きを引き受ける。
「距離を取れば、見切ることはできるが、線が面になって、避ける方法がなくなる。その一方で、距離を詰めれば見切るのは難しいが、線を避ける目がある、ってことだな」
「距離を詰めながら、その様子を遠くから見ることが出来たら良いんだけどな。それはもう、カメラを別に使わない限り、無理か」
狗彦が言うと、優奈と隼丸が笑う。
「試験では、マリオネットとマスターしか、戦闘に参加できないのよ。まぁ、マスターがマリオネットそっちのけで、カメラを積んだ模型のヘリコプターでも飛ばせばいいかもしれないけど、そんなの、無理だね」
「狗彦、お前、試験を舐めているだろ。こうなんだぞ、こう」
隼丸が狗彦に服の袖をめくって、腕にある生々しい傷跡を見せた。狗彦が嫌そうな顔をする。
「食べ物がまずくなるから、あまり見せるなよ。真利阿、何か、策はあるか?」
私は、少し考えてから、言った。
「当たって砕けろ、かな」
その言葉を聞いた三人が、ぽかんとした顔になり、それからそれぞれの顔になった。優奈は困った顔、隼丸はどこかうろたえた顔、そして狗彦は、怒りの表情だった。
「おい、真利阿。お前、勝つんじゃないのかよ」
狗彦がそう言って、こちらを見た。その瞳に、私は少し、身をこわばらせた。それくらい、力のある視線だった。
「か、勝つよ。勝つって」
「それが、当たって砕けろ、なんて言うかよ」
狗彦はまさにそう吐き捨てると、立ち上がった。足が当たったテーブルが揺れて、私のコップから、コーラが波打って、少しだけビシャリとこぼれた。
「真利阿、お前、やる気あるのかよ」
狗彦が私を見下ろして言う。
「あ、あるよ。当り前でしょ」
「だったら、もっと貪欲になれよ」
う、と私は言葉に詰まる。狗彦がこちらを睨みつけてくる。
「真利阿、勝つんだよな?」
「か、勝つ……よ」
私の返事は、なぜかすんなりと出なかった。それは狗彦に睨まれていたせいなのか、それとも別の理由からかは、はっきりしなかった。
私は、怖気づいていたのかもしれない。
負けることに。
戦う前から、負けを考えていた。
狗彦は、こちらを強く睨むと、「ふざけるなよ」と言って、ドアに向かうと勢いよく押しあけ、外へ出て行ってしまった。
「真利阿、追いかけなよ」
優奈が即座に言ったが、私は動けなかった。視線をドアと、優奈の間を行ったり来たりさせるしかできない。考えがまとまらなかった。自分の事も、狗彦の事も。そんな私を見て、優奈が隼丸に視線を向けると、彼が狗彦の後を追って、部屋を出て行った。私は視線を床に向けた。
「真利阿」優奈が言った。「敗北しても、守れるものはある」
「それは、そうだけど……」
「負けちゃいけないことなんて、そんなにないのよ。ただ、自分に負けなければいいの」
優奈のその言葉は、私にはよく理解できなかった。私の世界では、負けてしまえば全てを失うし、多くの物事では勝つことが求められていた。そして、自分に負ける、ということが、酷く身近に感じられて、恐ろしかった。
私は、自分に勝ったことが、あるだろうか。これから、私は自分に勝てるだろうか。
この自分の内側の、冷たい感覚に。
「優奈、私、どうしたらいいのかな……」
そんな力のこもらない私の言葉を、優奈は、黙って待ってくれた。
「私、狗彦を、死なせちゃうかもしれない」
「夢路のことを思い出しているの?」
夢路。その言葉は、私の体をこわばらせた。ゆっくりうなずくと、優奈が私の肩に手を置いた。
「大丈夫。夢路は、あなたのために死んだんじゃないわよ。あの子は、あの子のために、死んだの」
夢路というのは、中等部で、私のパートナーだったマリオネットの名前だ。
中等部の最後の試験で、彼女は私の操作に従い、敗北し、そしてギアを致命的に破壊され、活動を停止した。死んでしまったのだ。
私は足の震えを感じた。
「優奈、私、もう、誰にも死んでほしくないの……。泰平は、本気になれば、狗彦なんて、寸刻みに出来る力がある。そんな相手に、勝てるわけがない」
「真利阿、真剣に考えれば、何か、勝ち目があるかもしれないわよ。そうでしょ? 泰平の過去の戦闘についても、学校のデータベースに映像が残っているし、私も意見を言うわ。まだ試合は始まっていないのよ。休みを挟んで、あと三日はある。大丈夫だって」
私は寒気さえも感じながら、床を見つめていた。
「おい、狗彦!」
俺は隼丸の声に、落胆しつつ、しかし歩調を緩めなかった。足音が近づいてきて、俺の肩に手が触れた。
「待てよ、狗彦」
「ほっとけよ、隼丸」
俺は肩の手を振り払いながら、歩き続けた。隼丸が横に並ぶ二人で、夜の闇を街灯が薄める中を、歩いていく。
「狗彦、何も、真利阿だって、本気で言ったんじゃないさ。昨日の俺たちの試合を見れば、誰だって、不安になる」
「それでも、あいつは自分が学校をやめるくらい、それくらい次の試合には、色々とかかっているんだぞ。それを、あんな簡単に言いやがって」
「狗彦、真利阿を信用しろ」
俺は黙って歩き続けた。隼丸もついてくる。二人で歩く夜の学園内の道には、通りかかる人もいなかった。
「狗彦、お前、俺の姿を見て、ビビったか?」
唐突に隼丸がそう言ったので、俺は思わず足を止めて、そちらを見た。やはり歩みを止めた隼丸は斜め上、夜空を見ているようだった。
「ビビる?」
「そうだ。俺の体が切り刻まれて、自分はああなりたくない、って、そう思ったか?」
「そりゃ、思うだろ」
隼丸が頷く。しかし視線は夜空に向いたままだった。
「俺は今まで、結構、派手な損傷を負ってきた。まぁ、優奈とも長い付き合いだけど、優奈だって最初から、Bランクの腕があったわけではないし、そりゃ、試合にだって散々負けた時期もある。ついでに、ああ見えて、優奈は結構、容赦ないからな、勝負のために腕の一本くらい、平気で捨てるんだ。肉を切らせて骨を断つ、なんて言えば格好は良いが、肉を切られる時点で、結構、痛いんだよな、これがまた」
「何の話だよ」
「お前、真利阿に八つ当たりしたんじゃないか? ビビって」
さすがに俺は言葉を詰まらせたが、しかし、その一瞬の静寂が、俺を冷静にさせた。
「確かに、そういう面もあるかもしれない。でも、真利阿の言葉は、どうなんだ? あれがあいつの本心なら、俺は、どうしたらいいんだよ」
「それでも戦うのが、マリオネットだよ。そして、それでも信頼し合うのが、マリオネットとマスターだ。違うか?」
俺にはよく分からなかった。隼丸が肩をふっと持ち上げた。
「マリオネットになって長くないお前には、分からないか」
「そう言うなよ。でも……、確かに、そうかもな」
「真利阿と、仲直りできるな?」
その言葉に俺は、思いものを感じながら、即座に返事しなかった。
「狗彦」
「すまん、隼丸。今は、何も言えない」
「……そうか」
隼丸は、返事を即座に出させようとはしなかった。ただ、腕を持ち上げると、空の一点を指出した。
「あそこを見ろ、あの星座が見えるか?」
「どれだ?」
「強い光の星が、コの字になっているあたりだ。あそこに、弓使いの星座がある。あれが俺は大好きだ」
まっすぐに空を指差す隼丸の視線を負ったが、星座は良く分からなかった。隼丸は俺に言い聞かせるように言った。
「あの弓使い座が、俺と優奈の信頼の証だ。もし会えなくなっても、二人で、同じ時間に、あの星座を見上げることになっている」
「どこのロマンチックな恋人同士だよ」
俺が笑うと、隼丸がにやりと笑う。
「笑ったな? それで良いんだよ。お前は、笑って真利阿の隣にいろ」
「星座の話、本当かよ?」
隼丸は、俺の質問に、首をかくりと曲げてから言った。
「冗談に決まっているだろ? 俺が天体観測しているの、見たことあるか? お前こそ、結構、ロマンチストだな」
(続く)
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
少年神官系勇者―異世界から帰還する―
mono-zo
ファンタジー
幼くして異世界に消えた主人公、帰ってきたがそこは日本、家なし・金なし・免許なし・職歴なし・常識なし・そもそも未成年、無い無い尽くしでどう生きる?
別サイトにて無名から投稿開始して100日以内に100万PV達成感謝✨
この作品は「カクヨム」にも掲載しています。(先行)
この作品は「小説家になろう」にも掲載しています。
この作品は「ノベルアップ+」にも掲載しています。
この作品は「エブリスタ」にも掲載しています。
この作品は「pixiv」にも掲載しています。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!
仁徳
ファンタジー
あらすじ
リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。
彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。
ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。
途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。
ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。
彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。
リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。
一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。
そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。
これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

~最弱のスキルコレクター~ スキルを無限に獲得できるようになった元落ちこぼれは、レベル1のまま世界最強まで成り上がる
僧侶A
ファンタジー
沢山のスキルさえあれば、レベルが無くても最強になれる。
スキルは5つしか獲得できないのに、どのスキルも補正値は5%以下。
だからレベルを上げる以外に強くなる方法はない。
それなのにレベルが1から上がらない如月飛鳥は当然のように落ちこぼれた。
色々と試行錯誤をしたものの、強くなれる見込みがないため、探索者になるという目標を諦め一般人として生きる道を歩んでいた。
しかしある日、5つしか獲得できないはずのスキルをいくらでも獲得できることに気づく。
ここで如月飛鳥は考えた。いくらスキルの一つ一つが大したことが無くても、100個、200個と大量に集めたのならレベルを上げるのと同様に強くなれるのではないかと。
一つの光明を見出した主人公は、最強への道を一直線に突き進む。
土曜日以外は毎日投稿してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる