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第二章「無法都市陥落編」
第8話「無法都市ノベルド」
しおりを挟むガタンガタンと列車は揺れている。
その揺れが心地よいのかドミはすーすーと息をしながら私にもたれかかっている。
ドラグレッドはパンフレットをこちらに見せながら
「あるじ!! これ面白そう!!」
「えーと。なになに。コロシアム? あなたの腕前を試さないか? なんでもアリのタイマン勝負」
さすが無法都市。イベントが物騒だな。ドラグレッドは尻尾をブンブン振ってこちらを見ている。
「ドラグコレ出る!!」
「龍の姿になっちゃダメだよ」
ドラグレッドはブンブンと縦に首を振る。ドラグレッドは烈火龍なだけあって血の気が多いようだ。
「あるじ撫でて!! 撫でて!!」
ドラグレッドは前のめりな姿勢になる。
私はわしゃわしゃと頭を撫でる。
「えへへへへ」
ドラグレッドは嬉しそうだ。なんか犬みたい。可愛い。
『次はノベルド~ノベルド」
窓から見える景色がファンタジーなものから灰色のコンクリートの建築物がそびえたつ街へと変わっていく。工場の煙で空が暗雲に覆われており、その隙間から赤い空が見えている。
空が赤い。濃い魔力を感じる。何者かが魔力結界でも張っているのだろうか。
ドミは魔力を感じ目覚める。
「魔力が濃いなあぁ。これじゃまともに魔力が練れない」
ドラグレッドは手のひらを広げて魔力を練る。しかし魔力はうまくまとまらずに分散してしまう。
「あるじも気付いた? 魔力が制御しずらい。なかなかの手間と技量がいる。アタシは使えるけど」
ドラグレッドは鼻をすんすん動かして
「濃い龍族の匂いがする。ここに五大龍の一人がいる可能性が高いね」
「その龍が魔力結界を張ってる感じ?」
「多分そう」
魔力結界。シャロンさんが教えてくれた知識の一つ。膨大な魔力を持つ者のみに許されし御業大気中に魔力を流し、領域内の物の魔力を乱す。魔法を使用不可にさせる結界術。言うなれば魔力禁止エリアのようなものだ。それが国全体を覆っている。
列車の揺れが止まり停車する。着いたようだ。
私たちは列車を降り、プラットホームに足を踏み入れる
私は背伸びをして
「ふぁーーー!! 着いたーー!!」
ドミは目を擦って
「ここがノベルドかぁ~」
なんだか人がゾロゾロこっちへやってくる。歓迎してくれるのだろうか?
男たちは近づいてきて
「おい嬢ちゃん。死にたくなきゃ金品と食糧置いてきな」
盗賊の男たちが街への入り口を塞ぐ。
でたー!! 無法地帯名物「金品くれおじさん」!! 面倒だなぁ。
「邪魔。どいて」
「おっとここは通せねぇな」
めんどくさい通り越してウザい
「覚悟はできてるよなぁ」
盗賊の男は私の首にナイフを押し当てる。
「ドミ。変身だ」
「わかったご主人!!」
ドミはベルトに姿を変え、腰に巻き付く。
『ライズドミネーター』
私はポケットからキーを取り出し、ベルトに深く差し込む。
……
何も起こらない。
『ご主人!! 魔力結界のせいで変身術式が使えない』
「旅人ちゃん知らねぇのか? ここはあのお方の領域内。アーティファクトは使えな」
ドラグレッドは尻尾を伸ばし男の首を切り落とす。
男だったものが地面に倒れる。断面から血が溢れ出す。
「あるじに触れるな」
刺すような視線が男たちを襲う。
「ま、待ってくれ。命だけは」
男は腰を抜かし後退りする。
ドラグレッドは尻尾で男たちの胸を突き刺す。服が赤く染まっていく。血が滴り落ち、地面にシミをつくる。
「ありがとう。ドラグレッド」
「いえいえ~。あるじのためならアタシなんでもする!!」
ドラグレッドはニコッと笑う。
「さぁ。ここからどうすっかな~。国家転覆するためにまず龍を倒す。って言っても龍がどこにいるかわからない。情報収集かな?」
私はポケットから黒いキーを取り出して
「コイツも試したい」
ドラグレッドはパンフレットを開いて
「ならあるじもコレ出る!! アタシとあるじどっちが強いか勝負しよー!!」
ドラグレッドはコロシアムのページを指さしている。
確かにコロシアムに出れば情報が集められる。しかもキーも試せる。しかもしかも五大龍が裏で手を引いてるかも。これは乗るしか。
「ふと気になることがあってさ。五大龍ってなに?」
ドミとドラグレッドは声を合わせて
『がっ!? 知らないの!?』
ドミは少し焦りながら
「シャロン団長が説明してたよね」
「ねー」
ドラグレッドは相槌を打つ。
「え? してたっけ。え?」
私は話を長々と聞くのが苦手だ。
モニターがたくさんある部屋で少年はニヤリと笑う。
「お。キタキタ。被験体くんたちが。さぁて。ボクを楽しませてくれよ~」
薄暗い部屋の壁にはベルトのようなものがたくさん取り付けられている。
「ネオン様。準備が整いました」
メイドのような格好をした女性がお辞儀をする。
ネオンと呼ばれた少年は白衣の裾を触りながら。
「さぁ。ドミネーターくん。実験開始だよ」
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