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アクアマリンの章
1.プロローグ
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とある王国の執務室で複数の人が集まって口論をしていた。
「貴殿は分かっておられるのか、このような異端の娘を手元に置く事が貴殿の国にとってどれ程危険な事かと言う事を、妾は何度も貴殿に申したはず、この娘の事は諦めよと、后を娶り新しい命を育むが宜しかろう、そう何度も進言していると言うのに何故貴殿は耳を貸さぬのです」
老いた女性の声が部屋に響く、怒りを宿したその声に同意するように別の男性の声も響いていく。
「預言者様の言う通りです、王よ、どうかお考え直しください、貴方はまだ若いのです、姫君の事は我等とて心痛む事ではございますが后を迎え新たな卵が生まれれば貴方様の心労も少しは休まるのではないでしょうか、我等一同貴方様のお心が少しでも安らげるように考えているのです、なにとぞ我等の願いを聞き届けてはくださいませんか」
そう言って家臣達は椅子に座っている主を必死に説得していく。
「王にとって姫君の存在は王位を揺るがすものなのです」
ですからと続けようとする家臣の言葉を遮るようにして王は声を荒げていく。
「良い加減にしろ、俺は何度も言っている筈だ。お前達の要求に応えるつもりはないしこれからも応えない。俺にとってルゼリアは希望であり生き甲斐だ、だからこそ俺はこの地の王で居られるのだ、そうでなければ俺はとっくの昔にこの国など捨てている!!!預言者殿、そろそろその口を閉ざして頂きたい、お前達も俺を王と言うのであればこれ以上この話をしてくれるな!」
ぴしゃりと言った王の言葉に間を置く事無く預言者と呼ばれた女性の声が響いていく。
「生き甲斐などと何故言われるのか、この娘は決してこの世界に居てはならぬ存在、絶対にあってはならない罪の証。一国の王が罪を育てるなどこの水竜の国全てが他国から侮られる事にも繋がりましょう、今すぐにその娘、『忌むべき滅び姫』を妾に預ければ貴殿の罪は消えるのです」
「王よ、どうかお聞き届けください」
「口を慎め、お前達は俺が何者か分かってその口を開いているのか、俺はこのアルヴァーニ王国の国王だぞ」
ゴゴゴゴゴっと地響きがし体に震動が伝わっている。声を荒げた王の力だろうか、地響きは更に大きくなりその様子を静観してた別の男性が静かに王に言葉を掛ける。
「兄上、お止めください。そう苛烈な魔力を放出しては泣き疲れた姫が目を覚ましてしまいますよ、泣かせ怯えられたくなければ魔力を抑えて落ち着いてください」
大人達が言い争いを続ける声が耳の奥に木霊している。
普段は深みのある優しい声が今はとても荒々しくて肌にピリピリとした痛みを感じる程だ、それでも膝の上に抱き上げ背中を撫でてくれるその手は声とは裏腹にとても優しい、良い子だと呟く暖かくて優しい手、別の手も良い子ですねと優しく語りかけながら頭を撫でているのはわかる。
だがどうしても意識が眠りへと誘われている、散々泣いた為だろう、泣き疲れてしまった体は力を失い意識はゆっくりと消えていく。
「ルゼリア……其方は何も怯える必要もない、大丈夫、大丈夫だ」
耳に残る『大丈夫だ』と言う声と温かな手の温もりを感じながら、言い争いの原因ともなっている幼い姫はゆっくりと眠りに付いた_______________
「貴殿は分かっておられるのか、このような異端の娘を手元に置く事が貴殿の国にとってどれ程危険な事かと言う事を、妾は何度も貴殿に申したはず、この娘の事は諦めよと、后を娶り新しい命を育むが宜しかろう、そう何度も進言していると言うのに何故貴殿は耳を貸さぬのです」
老いた女性の声が部屋に響く、怒りを宿したその声に同意するように別の男性の声も響いていく。
「預言者様の言う通りです、王よ、どうかお考え直しください、貴方はまだ若いのです、姫君の事は我等とて心痛む事ではございますが后を迎え新たな卵が生まれれば貴方様の心労も少しは休まるのではないでしょうか、我等一同貴方様のお心が少しでも安らげるように考えているのです、なにとぞ我等の願いを聞き届けてはくださいませんか」
そう言って家臣達は椅子に座っている主を必死に説得していく。
「王にとって姫君の存在は王位を揺るがすものなのです」
ですからと続けようとする家臣の言葉を遮るようにして王は声を荒げていく。
「良い加減にしろ、俺は何度も言っている筈だ。お前達の要求に応えるつもりはないしこれからも応えない。俺にとってルゼリアは希望であり生き甲斐だ、だからこそ俺はこの地の王で居られるのだ、そうでなければ俺はとっくの昔にこの国など捨てている!!!預言者殿、そろそろその口を閉ざして頂きたい、お前達も俺を王と言うのであればこれ以上この話をしてくれるな!」
ぴしゃりと言った王の言葉に間を置く事無く預言者と呼ばれた女性の声が響いていく。
「生き甲斐などと何故言われるのか、この娘は決してこの世界に居てはならぬ存在、絶対にあってはならない罪の証。一国の王が罪を育てるなどこの水竜の国全てが他国から侮られる事にも繋がりましょう、今すぐにその娘、『忌むべき滅び姫』を妾に預ければ貴殿の罪は消えるのです」
「王よ、どうかお聞き届けください」
「口を慎め、お前達は俺が何者か分かってその口を開いているのか、俺はこのアルヴァーニ王国の国王だぞ」
ゴゴゴゴゴっと地響きがし体に震動が伝わっている。声を荒げた王の力だろうか、地響きは更に大きくなりその様子を静観してた別の男性が静かに王に言葉を掛ける。
「兄上、お止めください。そう苛烈な魔力を放出しては泣き疲れた姫が目を覚ましてしまいますよ、泣かせ怯えられたくなければ魔力を抑えて落ち着いてください」
大人達が言い争いを続ける声が耳の奥に木霊している。
普段は深みのある優しい声が今はとても荒々しくて肌にピリピリとした痛みを感じる程だ、それでも膝の上に抱き上げ背中を撫でてくれるその手は声とは裏腹にとても優しい、良い子だと呟く暖かくて優しい手、別の手も良い子ですねと優しく語りかけながら頭を撫でているのはわかる。
だがどうしても意識が眠りへと誘われている、散々泣いた為だろう、泣き疲れてしまった体は力を失い意識はゆっくりと消えていく。
「ルゼリア……其方は何も怯える必要もない、大丈夫、大丈夫だ」
耳に残る『大丈夫だ』と言う声と温かな手の温もりを感じながら、言い争いの原因ともなっている幼い姫はゆっくりと眠りに付いた_______________
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