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第二章 未知なる大地
南へ 6
しおりを挟む障壁を砕けるようになった……が、ルリへの攻撃は未だに絶望的だ。
強制的な死の因果は弱体化され、精々大ダメージぐらいに収まっている。
即死で無い以上、癒し手である彼女を倒し切ることは難しい。
現人神であり、命運を司るルリに即死以外の勝ち方は不可能だ──普通の方法では。
「──『吸死の黒霧』」
「目晦ましかしら?」
「それはこれからさ──『万照の陽光』!」
「「目が、目がぁ~!」」
暗くなった視界が、突然強烈な光で一気に刺激される。
回復魔法で癒せるだろうが、俺もルリもお決まりの台詞を言うことを忘れない。
そんなボケをやっている間も、霧は舞台を覆い──ルリに触れる。
ただの呪いの霧なら、ルリの後光的な物で払われただろう。
「っ……力が」
「冥界の禍々しい霧だ。触れたが最期、神でも力を奪われるぞ」
冥界の深層に眠る死の力。
それを更に『死天』が強化することで、一時的にだがルリの神の力を封じられた。
もちろん、時間経過で耐性やら命運の力やらで復活することは想定済み。
だからこそ、短期決戦で勝負をつけなければならない。
「──『轢殺の車輪』、『溺死の水泡』」
「あら、ファンタジーね」
周囲に車輪を並べて、頭が入るぐらいの大きなシャボン玉が浮かぶ光景は、たしかに幻想的ではあるだろう……ならば、もっとそれらしくしてやろうじゃないか。
「──『死電の雷撃』、『永眠の万雪』」
「……ちょっと、不味いかしら?」
「──『焦熱の死焔』、『死闘の舞台』」
雷が、雪が降り注ぎ、焔がすべてを焼き尽くす舞台が形成された。
脱出には死ぬか互いが了承するか……俺が認めるわけがないので、死あるのみだ。
「来い、メカドラ!」
『ギャウッ!』
「あら、可愛い」
「今回は、ふんだんに使ってやるからな──『極龍砲光:死導の絶弾』!」
メカドラは願望機の一体であり、もともとは『プログレス』の基盤となったシステムを搭載している。
だからだろうか、『プログレス』を有している相手に若干だが強く出れるのだ。
そして、籠めた弾丸は『死天』謹製の特殊アイテム……メカドラはその力を強化する。
必要なのは大量の魔石、そしてそれは星の主である俺にとっていくらでも手に入れられるような代物──たらふく食わせており、その性能も一気に向上した。
引き金を引き、弾丸を射出。
膨大な光が銃の形を模していたメカドラの口の部分から放出され、勢いよくルリの下へ飛んでいく。
ルリも危険だと思ったのだろう、防ぐのではなく初めて回避を選択。
真っすぐ飛んでいった光の線は、あっさりと避けられて──
『ギュウッ!』
「っ……くぅ!」
俺、そしてメカドラがその方向を捻じ曲げることで強引に命中させた。
これでようやく、対等ぐらいには戦えるようになったな。
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