花と散る

ひのま

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5 新たな一歩

衝突

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「ただいま」
『だからもうそんなことをするな!』
『だって、あなたがあなたがあの時そばにいてくれたら・・・』
『元々はお前のせいで別居することになったんだろう!』

 帰ってきて早々、口論している2人の声が聞こえる。
 いつになったら「おかえり」と、暖かく出迎えてくれるのだろうか。
 でももう、俺は1人じゃない。
 だから、ちゃんと向き合うんだ。
 勇気を振り絞り、リビングのドアを開けた。

「ただいま」
「か、かあくん!おかえりなさい!」
「また喧嘩してるの?」
「翔、すまない」
「父さんは悪くない」
「かあくん、かあくんはお母さんの味方でしょう?」

 味方?なんだよそれ。母さんは俺の味方どころか見向きもしなかった癖に。

「葵はいないよ」
「かあ、くん?」
「葵はもう、いないんだよ」
「かあくん、何言ってるの!」

 ああ、この目だ。
 俺はこの目が怖くて怖くて仕方がなかった。
 この先を、どう言えばいいのか、とためらっていると、父さんがそっと俺の肩に手を乗せてくれた。
 大丈夫、俺もついている。そう言ってくれている気がした。

「・・・葵は死んだ」
「かあくん、嘘はやめて!!」
「葵は死んだんだよっ!!!」
「・・・・・・」

 しばらく沈黙が続く。
 母さんは俯いたまま動かない。
 身体中に変な汗が出て来たのがわかる。

「は、ははは・・・」

 母さんが急に笑い出した。
 その笑い声は次第に大きくなって、きゃっきゃっきゃと、幼稚園の頃に見た昔話の山姥のように笑い、取り乱れ始めた。

「きゃははははははははは・・・
 おい、ふざけんなよ!あおくんが死ぬわけないだろ!お前が殺した、お前らがあおくんを殺したんだよっ!返せ、返せ、返せ、返せええええっ!!!!」
「恵!やめろ!翔、急いで病院に電話だ!」

 怖い。
 怖い。
 怖い。
 ・・・・・・助けて。

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感想 3

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みんなの感想(3件)

pepe☆
2016.01.28 pepe☆

す、すいません!さっき感想書いたばっかりなのに、うれしくてまたコメしちゃいました!
ありがとうございます!こんな私が力になっていると思うと嬉しいです!(≧∇≦)テレテレ

無理はしすぎず、頑張ってくださいねー!( ´ ▽ ` )ノ

解除
pepe☆
2016.01.28 pepe☆
ネタバレ含む
解除
pepe☆
2016.01.27 pepe☆
ネタバレ含む
解除

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