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第4章 師弟関係と死霊術師

第47話 偏に教育に悪い

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「というわけで、今日からあなたの名前はクッコロ!
 よろしくね!」

『ふざけんな!そんなふざけた名前など……んがぁあああ!!!
 ほわ、ほわ、おほおおおおぉぉぉぉぉ♡♡』

『わたひのなまへは、くっおほぉ♪ですふぅぅ♡
 よろひくお願いひまひゅうぅぅぅぅぅ♪♪』

というわけで、死霊術師とし新しく加わった元女騎士系女盗賊。
罪霊故に名前も剝奪され、元の地位も失う。
まぁ、かわいそうと思わないわけではないが、それでも記憶や人格まではそこまで剥奪されていないわけで。
さらには、真に彼女に同情するのならば、それこそ彼女の罪を軽くさせるべくできるだけたっぷり働かせてやるべきなのだろう。

「で、クッコロ、元罪深き女盗賊よ。
 結局お前は何ができるんだ?」

『ひゃ、ひゃぃぃ……♡
 わ、わらひは、馬に乗ってぇ、戦うことができまふぅ♡
 もちろん馬以外にも、亜竜や陸鳥もぉ、あ!男に乗ってだまし討ちなんかもできまふぅぅ♪♪
 あはははははは!あへへへへへ♪♪』

う~ん、なんというブラックジョーク。
霊体なのに、全身から汁という汁を出しながら、下ネタ混じりに特技を報告してくる女騎士亡霊という実にひどい見た目にうんざりしつつ、操魂術による手綱は外さないでおく。

「……師匠、師匠って、やっぱりそういう趣味なんですか?」

「そういう趣味があるのは否定しないけど。
 私がこんなマニアックな光景を見たいがために、こんなことしていると思う?」

「ごめんなさい、師匠」

分かればよろしい。
一般的に本人の意に反する操魂をする場合、ある程度の副作用というか、痛みやらなんやらが生じたり、または生じさせて操りやすくするのが一般的ではある。
で、その時に相手の魂の性質を見抜き、またはその用途に合わせてどんなふうに操るか、どうすれば効率的に操れるかが操魂術の腕前が問われるところではあるのだ。
そして、今回の女騎士モドキであるクッコロはどうやら生前に戦闘訓練を受けてい体勢で、痛みやストレスに対してはそれなり以上の耐性やら、むしろ痛みを受けすぎると強く反発する性格であるとわかった。

「だからこそ、その逆に快楽や誘惑に耐える訓練は、特にされてないみたいでな。
 そういう方向で操れば、少ない魔力でも、こんな風に簡単に操れちゃうわけだ」

空中で頬を染めながら腰を怪しげにくねらせている変質者霊は無視して、あくまで授業の一環であるかのようにアリスにそう説明した。

「……というか、まぁ、堕落して盗賊始めるような性格の霊が、快楽に弱くないわけないですよね」

「それな」

アリスちゃんも目の前にいる変質者亡霊が、あくまで効率化のためだとわかってくれたようでなにより。
まぁ、快楽による操魂制御を生きた人間に対して使うのは、陰の魔力由来の術ゆえに使うのが困難なのがまだ救いといえるだろう。

『う~ん、こわい。
 しかし、それでも心さえ強ければ問題ないのだろう?
 なら私には聞かないだろうから無問題だな!』

「あ、お父さんは絶対気を付けてくださいね?
 というか、元々村で複数の女性とそういうことしているお父さんこそ、この術で一発だと思うので。
 あの花びら大回転?とやらをしている姿、正直私嫌いなんですよね」

『!!!?!?!?』

どうやら、弟子とその保護者の間で絆破壊が起きたようだが、流石に家庭事情に深くかかわる気もないので今回はスルー。
というわけで、アリスに死霊術の恐ろしさの教材として、軽い資料になってもらった後に、さっそくこのクッコロをどのように運用するかについて考えることにした。

「で、どうすればいいと思う?
 実際に殺し合ったんでしょ?
 この人の強さはどのくらいだった?」

「えっと、その……それはそこにかつてのあの盗賊の亡霊がいるってことでいいの?」

というわけでまず初めに聞きに行ったのは、ヴァルター。
一応ヴァルターはコイツを正面から倒したがゆえに、こいつの戦闘力について詳しいだろう

「まぁ、あくまで結構強う方って印象かな?
 あの時は、半分くらい怒りで剣にしろ槍にしろどっちも鈍っていたけど、それでもその殺意や刃速はかなりの物。
 とりあえず、並の守衛程度相手なら問題なく無双できるんじゃないかな?」

「特に、騎乗の戦いのうまさはかなりのものだね!
 なんなら、並の騎士相手でも無理なく打ち倒せるくらいなんじゃないかな?」

「え?僕やトガちゃん相手?
 ははは、まぁ、足止めくらいにはなるんじゃないかな」

う~ん、このなかなかの自信っぷり。
とはいうものの、実際ヴァルターの剣士としての強さは折り紙付きであり、少なくともこの村に来てから、まともに打ち合いで負けた光景など見たこともない。

「でもまぁ、僕やトガちゃんとも流派の違う剣だったからね!
 実際模擬戦もしたほうが、イオちゃんもわかりやすいだろうし、実際今ここで一線やってみるかい?」

提案はありがたいけど、流石に今回それは遠慮しておく。
流石にまだ制御が甘いせいで、万が一の殺さないような手加減は、機械的な動きのくそ雑魚か、アヘ顔絶頂剣のどちらかという実にひどい状態になりかねない。
まぁ、それでも死霊術の危険性を周知させておくのなら、ある意味では好都合かもしれないが、それでも流石にこの危険性は方向性が違いすぎるだろう。

「とりあえず、対人戦だとぼちぼちよさげだということはわかった。
 でも、対獣や対魔は?」

「さぁ、流石にそこまではわからないけど……さすがにあれぐらいの腕があって、全く歯が立たないってことはないんじゃないかな?」

まぁ、それはそうだろう。

「で、どうなの?」

『はぁ!な、なぜ私が貴様にそんなことを言う必要が……。
 あっ、あっ、あーあーあー♡♡
 で、できまひゅ、やりまひゅうぅぅぅ♪♪やらへてくだはぁぁい♡♡
 だから、もっと、もっとご褒美をぉぉぉ♡♡』

できるようだ。
でもまぁ、本人申告ほど信用できないものはないため、適当な依頼でたしかめる必要があるだろう。
というわけで、さっそく私はこの新人ならぬ新霊の強さを確認するために、久々に酒場に冒険者のための依頼を受注しに行くのでしたとさ。
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