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第2章 神様と死霊術師

第22話 夜鷹の群れ

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金の力は偉大である。

先日から始めたアリスの修業という名のキノコ養殖により、結構な数手に入れた資金源。
それにより、当然自分の懐はそれなりに温かくなることになり、食卓や衣服、さらには時間にもそれなりに余裕ができることになった。

「ところでこれって、いろんな意味で大丈夫?
 こんなクソ田舎で一人だけ儲けを出して、村人から晒上げにされたりしない?」

「いやおまえ、連日のミサの後に別口で働いているのに、それで文句を言う奴なんているわけがないだろ。
 むしろ最近だと、感謝している奴のほうが多いぞ」

「そうなの?」

村の情報に詳しいシルグレットに詳細を尋ねると、どうやら最近この村は小規模ながらかなりの好景気とのことだ。
具体的には、自分が希少なキノコの売買やらミサをやるおかげで、この村には頻繁に旅商が来るように。
そして、その旅商がこの地にやってきて、宿屋酒場などで散財することによって、地元に還元。
かくして、このギャレン村全体がそれなりに裕福になってきているそうだ。

「だよねぇ。最近だと護衛依頼も増えて、報酬もかなりいいし。
 やっと鍛冶屋やらもできてきたし!
 ようやく、ただの集落から、街になったって感じがするよね!」

村に来た当初は不満ばかりであったヴァルターも、最近では上機嫌なことも多くなった。
ベネちゃんも、毛皮などがいい値段で取引されるし、少なくとも買いたいものがあっても数日我慢すればすぐに買いに行けるようになった現状に、それなりに満足しているそうだ。

「それに村長の話では我が村にもとうとうギルドがやってくるからな!」

「おお!ギルドとは目出度い!で、何ギルド?魔導士ギルド?それとも商人系ギルド?」

「娼婦ギルド」

「……はい」

「娼婦ギルド」

「いや、二回言わなくてもいいよ」

まぁ、ある意味では当然の流れともいえる。
金がある、物流のおかげで安定した食事もある、医療施設である教会が1個半もある。
ならば、今一番この街に求められているのはそういう需要であるのは間違いない。

「それに、街に娼館があるかないかで、わりと冒険者の来る来ないも関係するからな。
 度々お前たちも新しい冒険者が来てくれって言ってただろ?
 なら、その第一歩としてこれは大事なことなんだ。
 だから決して卑しい思いや他意があるわけじゃないんだ」

「別に早口で言わなくてもわかるから、安心して」

「というか、村の男性陣は賛成するだろうけど、良く村の女性人や子供が反対しなかったね」

「それに関しては、昔オッタビィアが反対していたっていったら、一発だったぜ」

こんなことに利用されるとは、可哀そうなオッタビィア。
ひとえに、てめぇの過去の驕り高ぶりのせいだが。

「もっとも、向こうも初めは様子見程度らしいからな。
 あくまで数人のプロの娼婦がこの村に在住するって話だ。
 だからかまぁ、彼女達がこの村に来たら、仲良くしてやってくれ」



「この、存在が営業妨害がぁあああ!!!!」

「えぇ~……」

かくして、娼婦ギルドから娼婦がやってきて数日後。
なぜか、私は件の娼婦から目の敵にされてしまった。
個人的には、性的な意味では男よりも女が好きなため、彼女たちとは肉体関係とまではいかずとも、仲良くはなりたかった。
それなのになぜ……。

「それは、アンタがあんまりにもスタイルが良すぎるし、声も雰囲気もドエロすぎるせいだよ!!!
 くっそ!!お前のせいで、こちとら商売あがったりなんだ!
 もうちょっと、その色気を抑えろよ!」

「いや、そんなこと言われましても…」

今現在、自分に向かってそのように文句を言えっているのは当然娼婦。
娼婦ギルドからやってきた自称ベテラン娼婦であり、且つ娼婦たちのまとめ役の女傑ともいうべき女性であった。

「でも、ブロンさんもとってもかわいく、美しいじゃないですか!」

「そうだろう、そうだろう!」

「ただちょっと、ブロンの体格と容姿では……。
 イオさんの説法の後に、色々と貯まった人が求めている需要とは別方面で……」

「うがぁああ!!!!」

しかし、残念ながら、件の娼婦リーダーことブロンさんはツルペタストンといった体系であったのだ。
見た目的には完全に子供とか、まぁ美しいけどお人形さんみたいとか、そういう誉め言葉が似合いそうな女性。
それゆえに、この村で大人の快楽を求めて娼婦を買う人には、いろんな意味で向いてなさそうな娼婦であった。

「というか、ブロンさん……ブロンちゃんは何歳?
 大丈夫?実はお偉いさんの娘で、身分を偽って娼婦をしてるとかそういう流れじゃない?」

「あほか!こちとら、生まれついての娼婦だ!
 それに年齢も、ゆうに25を超えてるわ!」

「にしては見た目が若すぎるよね。
 大丈夫?飴ちゃんいる?」

「馬鹿にするな!
 見た目が幼いのは、ちょっと魔族の血が混ざってるからだ!
 別にそれぐらい珍しいことでもないだろ!」

自分の仲間や周りにいるガヤから、子ども扱いされて威嚇するかのように起こるブロン嬢。
もっとも、彼女が怒っても、顔がいいうえに、見た目が幼いせいで、恐ろしさは微塵も感じず。
むしろ、愛らしさを感じるのは、いろんな意味で才能ある娼婦ではあるのだろうが。

「お前らからも何とか言ってやれ!」

ブロンは、彼女の同僚である他の娼婦へと助けと援護を求める。

「うわぁ~、すごいおっぱい!
 ちょっと触っていいですか?」

「これは……植物系の油に、焼いた香木。
 さらにはマニ茸とラベンダーの香り?
 いい香油使ってるわね~」

「あ~!おまえらな~!」

が、そんな彼女の同僚の娼婦は、今現在私相手に全力で取り巻き中であった。
こちらとしても、勝手に触られたり、匂いを嗅がれたりするのは思うところがないわけでもないが、普通にかわいい娘相手だから無問題です。

「え~?でもリーダー。
 どう考えても、開拓地に飛ばされる程度の私達じゃ勝ち目はありませんよこの人」

「そうですよ!だからせめてここは、イイ感じに仲良くなって!
 病除けの祈祷や加護をちゃんと分けてもらって!
 あ、あとできれば、司祭様が今使ってる香油、少しでいいから分けてほしいな~って!
 あ、お値段ならちゃんと払うよ?」

「うぐ、うぐぐぐぐぐ!」

なお、ブロンとは違い、この残り2人の娼婦は片方は胸こそないが、身長はそこそこあるスレンダータイプであり、もう一人は結構スタイルがいい娼婦である。
だからこそ、彼女たちは旅商や村の若者相手にそこそこ客をとれているそうで、危機感とか対抗心はないそうだ。
いや、娼婦相手に対抗心持たれても……その、困る。

「まぁ、まぁ、ブロンちゃん。
 そもそも私は死霊術師であると同時に兄弟神の司祭でもあります。
 それにこれからは同じ村の仲間になるんでしょう?
 だから、これから仲良くしていきましょうね~」

「んぎぃぃ!!
 勝手に頭をなでるな!」

あ~、かわいい。
この娘、かわいい。
頭を撫でられるのを嫌がりながらも、こちらを気遣ってうまく払いのけられない性根の優しさが、こっちの荒れた心によくしみる。
自分よりも年上だそうだが、これほどかわいいなら関係ないよね!
なぜか、我が弟子アリスや最近冒険神の信徒として目覚めた子がこちらの方をにらんでいるが、今回はスルーで!

「こ、今回はこの辺にしといてやるが……。
 だが!そこの魔性おっぱい!
 お前の天下も間もなく終わるぞ!」

いや、誰が魔性おっぱいやねん。
まぁ、ブロンちゃんはかわいい故、その程度の暴言は許しちゃうが。

「実は、お前の圧倒的戦力差を見て、それをギルド本部に連絡したからな!
 ギルド本部の威厳をかけて、新たなおっぱい娼婦がこの村にやってくる!
 その時がお前のバスト天下の最後だ!
 覚悟するがいい!!!」

高笑いするブロン、あきれ顔の娼婦と女性陣、そして、沸き立つ村の男性陣。
かくして、そのバカ騒ぎに苦笑しつつ、私はゆっくりとアリスたちを慰めに行くのでしたとさ。

☆★☆★

なお、それからしばらく後。

「すまない、本部から依頼した娼婦たちが、この村に来る途中で盗賊につかまってしまったそうだ。
 悪いけど、誰か助けに行ってくれないか?」

かくして、私達は久しぶりに村から出ての依頼を行うことになるのでしたとさ。


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