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第1章 開拓村と死霊術師
第8話 血の病
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さて、件のけが人をとりあえず清潔で安全な場所へと移動させるため。
彼を教会へと運んび、回復魔法をかける流れとなった。
本当は嫌だが、それでも発見者兼魔導士としては、この人を見捨てるわけにもいかず。
いくつかの霊薬や薬草などと併用してこのけが人を治療することになった。
「……いや、おまえ、あの魔術使うのに教会に入って大丈夫なのか?」
「大丈夫に決まってるだろ。
まぁ当然いつもの魔術はうまく使えないし、使う気もないけど」
そうして、さっそく彼に詠唱とともに、自分の体内の魔力を切り替える。
陰の魔力を陽の魔力へと変換し、聖句とともに祈りを捧げる。
すると、教会全体の魔力が呼応し、彼の体へと神聖なる奇跡が発現する。
「いや、お前これ、詳しくはないが信仰系の魔法だろ!?
おまえ、神官だったのか!?」
横でこの様子御見ていたシルグレットが驚きの声を上げる。
「いや?
でも死霊術師的には、覚えている人はそれなりに多いよ。
使えたほうが外から文句を言われにくいし」
「お、おお、そ、そうなのか」
驚きと関心の声を上げながら、シルグレットはこちらの奇跡の光と患者の様子をじっくりと観察する。
「……にしても、意外と回復速度は遅いんだな。
もっとこう、ぱっと傷をふさげないのか?」
「私は本職の聖職者じゃないし信仰神の教会でもないから、仕方ないでしょ。
文句を言うくらいなら、さっさとそこの布と薬草を貸して。
とりあえず傷口をふさぐから」
「お、おう!すまん」
自分の声を受けて、シルグレットは急いでこちらにその治療道具を渡してくれた。
清潔な水で傷口を洗い流し、霊薬をふりかけ、薬草で覆い、綺麗な布で傷口をふさぐ。
仕上げとばかりに、奇跡を発動させ、治癒速度を促進させる。
一応これだけすれば、よっぽどのことがない限り死にはしないだろうが、なぜか患者の様子がおかしい。
むしろ魔力や体力が、どんどん低下しているのが分かる。
これはもしや……
「……はぁ、はぁ、ここは……!!」
「お、おお!き、気が付いたかエドガー!
ここはギャレン村だ。
こんなに怪我をして!いったい何があったんだ!?」
苦悶の声を上げつつ、顔を上げようとしたその患者にシルグレットが声をかける。
「すまん、本当はここに来るべきではなかったんだが……。
それでもこれだけは伝えなきゃいけなく……。
シルグレット!ストロング村はもうだめだ!
あそこはもう盗賊によって滅ぼされてしまった!ほとんどの村人は殺されてしまったんだ!」
「な、なんだとぉ!?」
シルグレットは驚きの声を上げる。
しかし、そんなシルグレットの様子を無視して、その患者はさらに言葉を続ける。
「そして、私も何とか逃げ出そうとしたんだが……。
途中で、あいつに襲われ……うぐ!!」
苦しそうにうめくエドガーに、シルグレットは不安げに声をかける。
そして、その時エドガーの身に変化が訪れた。
「お、おい、どうしたエドガー?」
突然エドガーの全身からあふれ出す陰の魔力、跳ね飛ぶ体に、ちぎれる布。
まるで逆再生のようにふさがる傷と、その逆に出血がまず傷が混在する。
その肌や肉が若返り、あるいはしわがれ、新生と老化を繰り返す。
「うぎ、うぎ、あがががが!」
肌の色が変わり、周囲に冷気が溢れる。
彼の口が大きく開かれ、犬歯が伸び、そして、文字通りの意味で、眼の色が変化する。
「あ、あ、ああ……」
そうして、重症なはずなのに、全身から血を流しているのに立ち上がったそのエドガーであったものは、ゆっくりとこちらを見やる。
そして、その鋭い牙をこちらへと突き立てようとして……。
「ホーリー☆ボルト★パンチ」
「ぐぎゃああぁあああ!!!!」
「え、えどがぁあああああ!!!!」
そして、その不埒者の顔面に向かって、全力で拳を叩きこむのであった。
「安心して、峰パンチだよ」
「拳に峰もくそもねぇよ!
それよりもおま、今の一撃雷が出ていたよな??
どう考えても、やり過ぎじゃねぇか!?」
なお、今回この元エドガーを殴ったのはいいが、今の私はただの可愛い女死霊術師故力なんぞカスみたいなものだ。
だからこそ、陽の魔力とちょっとした電気の魔法で威力を底上げしていたわけが、おかげでそこそこの威力は出てくれたようだ。
「大丈夫大丈夫、一応聖なる一撃だから。
邪悪な者以外は死んでいないはずから」
「ぜんっぜん!信用できないんだが!?
見ろよこの悲惨な姿を!?
全身黒焦げになってるじゃねぇか!これ、本当に生きているんだよな?」
もっとも、予想よりもちょっと威力が高かったのが本音ではある。
おそらく原因は、ここが教会内部、しかも神罰系の神を祭っている教会だったからだろう。
不浄なものの存在を神は許しはしない、はっきりわかんだね。
「それに、相手は【吸血鬼】なんだから。
このぐらいはしなきゃ、無効化できないだろ」
「……!!」
その言葉にシルグレットはびくりと体の動きを止める。
「つまり、このエドガーの急変は……」
おそらく彼も、この急変とその原因に心当たりがあったのだろう。
真剣な表情でこちらをゆっくりと見やる。
「おそらく、吸血鬼になりかけて、その上回復とはいえ、神聖魔術を喰らったからだろうね。
体内の陰の魔力が一気に削られ、吸血鬼として活性化。
そして、こちらの体に宿る血と魔力を求めて……という感じだろうね」
「……」
吸血鬼。
それはこの世界でも有名な魔物の一つ。
闇に堕ちた人間がなる姿といわれ、人の生き血を求め、それをすすり、仮初の不死と力を得る。
様々な特徴を持つとされるが、その有名な特徴の一つとして、噛みついた相手への魅了や眷属化などがある。
「つまりこいつは、もう吸血鬼になって手遅れだったってことか……」
「……」
シルグレットは倒れ伏す、エドガーの体に触れる。
「わかっていたさ、こいつがすでに化け物になってるとは。
手遅れだっていうのは。
この辺じゃ、この程度の悲劇は全然珍しくもない……」
「……」
シルグレットの声が震え、拳を強く握っている。
「だが、だが、だが……!!
なぜ、なぜこいつがこんな目に……!!
神様、どうしてだよぉ!」
そうして教会の中ながら、シルグレットは世の理不尽とこの悲劇について叫び声をあげるのであった。
「いや、まだその男の治療中だから早くどいてね?
でないと、治せるものも治せないから」
「え、あ、はい」
なお、混乱しているシルグレットは放置して、治療は続行。
黒焦げと吸血鬼化、どちらの症状も直すのにはそれなり以上に苦労はした。
が、それでも、とりあえずは、小康状態までもっていくことには成功したのでした。
彼を教会へと運んび、回復魔法をかける流れとなった。
本当は嫌だが、それでも発見者兼魔導士としては、この人を見捨てるわけにもいかず。
いくつかの霊薬や薬草などと併用してこのけが人を治療することになった。
「……いや、おまえ、あの魔術使うのに教会に入って大丈夫なのか?」
「大丈夫に決まってるだろ。
まぁ当然いつもの魔術はうまく使えないし、使う気もないけど」
そうして、さっそく彼に詠唱とともに、自分の体内の魔力を切り替える。
陰の魔力を陽の魔力へと変換し、聖句とともに祈りを捧げる。
すると、教会全体の魔力が呼応し、彼の体へと神聖なる奇跡が発現する。
「いや、お前これ、詳しくはないが信仰系の魔法だろ!?
おまえ、神官だったのか!?」
横でこの様子御見ていたシルグレットが驚きの声を上げる。
「いや?
でも死霊術師的には、覚えている人はそれなりに多いよ。
使えたほうが外から文句を言われにくいし」
「お、おお、そ、そうなのか」
驚きと関心の声を上げながら、シルグレットはこちらの奇跡の光と患者の様子をじっくりと観察する。
「……にしても、意外と回復速度は遅いんだな。
もっとこう、ぱっと傷をふさげないのか?」
「私は本職の聖職者じゃないし信仰神の教会でもないから、仕方ないでしょ。
文句を言うくらいなら、さっさとそこの布と薬草を貸して。
とりあえず傷口をふさぐから」
「お、おう!すまん」
自分の声を受けて、シルグレットは急いでこちらにその治療道具を渡してくれた。
清潔な水で傷口を洗い流し、霊薬をふりかけ、薬草で覆い、綺麗な布で傷口をふさぐ。
仕上げとばかりに、奇跡を発動させ、治癒速度を促進させる。
一応これだけすれば、よっぽどのことがない限り死にはしないだろうが、なぜか患者の様子がおかしい。
むしろ魔力や体力が、どんどん低下しているのが分かる。
これはもしや……
「……はぁ、はぁ、ここは……!!」
「お、おお!き、気が付いたかエドガー!
ここはギャレン村だ。
こんなに怪我をして!いったい何があったんだ!?」
苦悶の声を上げつつ、顔を上げようとしたその患者にシルグレットが声をかける。
「すまん、本当はここに来るべきではなかったんだが……。
それでもこれだけは伝えなきゃいけなく……。
シルグレット!ストロング村はもうだめだ!
あそこはもう盗賊によって滅ぼされてしまった!ほとんどの村人は殺されてしまったんだ!」
「な、なんだとぉ!?」
シルグレットは驚きの声を上げる。
しかし、そんなシルグレットの様子を無視して、その患者はさらに言葉を続ける。
「そして、私も何とか逃げ出そうとしたんだが……。
途中で、あいつに襲われ……うぐ!!」
苦しそうにうめくエドガーに、シルグレットは不安げに声をかける。
そして、その時エドガーの身に変化が訪れた。
「お、おい、どうしたエドガー?」
突然エドガーの全身からあふれ出す陰の魔力、跳ね飛ぶ体に、ちぎれる布。
まるで逆再生のようにふさがる傷と、その逆に出血がまず傷が混在する。
その肌や肉が若返り、あるいはしわがれ、新生と老化を繰り返す。
「うぎ、うぎ、あがががが!」
肌の色が変わり、周囲に冷気が溢れる。
彼の口が大きく開かれ、犬歯が伸び、そして、文字通りの意味で、眼の色が変化する。
「あ、あ、ああ……」
そうして、重症なはずなのに、全身から血を流しているのに立ち上がったそのエドガーであったものは、ゆっくりとこちらを見やる。
そして、その鋭い牙をこちらへと突き立てようとして……。
「ホーリー☆ボルト★パンチ」
「ぐぎゃああぁあああ!!!!」
「え、えどがぁあああああ!!!!」
そして、その不埒者の顔面に向かって、全力で拳を叩きこむのであった。
「安心して、峰パンチだよ」
「拳に峰もくそもねぇよ!
それよりもおま、今の一撃雷が出ていたよな??
どう考えても、やり過ぎじゃねぇか!?」
なお、今回この元エドガーを殴ったのはいいが、今の私はただの可愛い女死霊術師故力なんぞカスみたいなものだ。
だからこそ、陽の魔力とちょっとした電気の魔法で威力を底上げしていたわけが、おかげでそこそこの威力は出てくれたようだ。
「大丈夫大丈夫、一応聖なる一撃だから。
邪悪な者以外は死んでいないはずから」
「ぜんっぜん!信用できないんだが!?
見ろよこの悲惨な姿を!?
全身黒焦げになってるじゃねぇか!これ、本当に生きているんだよな?」
もっとも、予想よりもちょっと威力が高かったのが本音ではある。
おそらく原因は、ここが教会内部、しかも神罰系の神を祭っている教会だったからだろう。
不浄なものの存在を神は許しはしない、はっきりわかんだね。
「それに、相手は【吸血鬼】なんだから。
このぐらいはしなきゃ、無効化できないだろ」
「……!!」
その言葉にシルグレットはびくりと体の動きを止める。
「つまり、このエドガーの急変は……」
おそらく彼も、この急変とその原因に心当たりがあったのだろう。
真剣な表情でこちらをゆっくりと見やる。
「おそらく、吸血鬼になりかけて、その上回復とはいえ、神聖魔術を喰らったからだろうね。
体内の陰の魔力が一気に削られ、吸血鬼として活性化。
そして、こちらの体に宿る血と魔力を求めて……という感じだろうね」
「……」
吸血鬼。
それはこの世界でも有名な魔物の一つ。
闇に堕ちた人間がなる姿といわれ、人の生き血を求め、それをすすり、仮初の不死と力を得る。
様々な特徴を持つとされるが、その有名な特徴の一つとして、噛みついた相手への魅了や眷属化などがある。
「つまりこいつは、もう吸血鬼になって手遅れだったってことか……」
「……」
シルグレットは倒れ伏す、エドガーの体に触れる。
「わかっていたさ、こいつがすでに化け物になってるとは。
手遅れだっていうのは。
この辺じゃ、この程度の悲劇は全然珍しくもない……」
「……」
シルグレットの声が震え、拳を強く握っている。
「だが、だが、だが……!!
なぜ、なぜこいつがこんな目に……!!
神様、どうしてだよぉ!」
そうして教会の中ながら、シルグレットは世の理不尽とこの悲劇について叫び声をあげるのであった。
「いや、まだその男の治療中だから早くどいてね?
でないと、治せるものも治せないから」
「え、あ、はい」
なお、混乱しているシルグレットは放置して、治療は続行。
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