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第三部 学校へ行こう
第二百九話 おうちに帰る、その前に①
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さて、馬車の扉を閉めて、御者台にハンスが腰を下ろして、いよいよ馬車を出そうとした時、馬車の扉を誰かが叩いた。
イルルをお膝に抱っこしたまま、シュリは誰だろうと首を傾げる。
「む?シュリ、客人のようじゃぞ?」
「そう、だねぇ??」
二人して顔を見合わせていると、客人に気がついたハンスが動いてくれたようだ。
馬車の外で、なにやら人が話している声が聞こえ、その後再び馬車のドアが叩かれた。
「シュリ様。なにやらご学友がたずねておいでですが」
聞こえてきたのはハンスの声だ。どうやら客人の招待はシュリの学校の生徒らしい。
誰かなぁとシュリは首を傾げつつ、
「ありがとう、ハンス。じゃあ、入ってもらって??」
シュリはとりあえずそう答えた。
するとすぐに扉が開き、
「一体何事ですの!?シュリナスカ・ルバーノ」
そう言って、飛び込んできたのはさっきお別れしたはずのエリザベス。
「何事って……何事??」
なにやら血相を変えて飛び込んできたエリザベスをきょとんと見上げ、シュリは訳が分からないと目をぱちくりさせる。
「何事って、それは、あれですわよ!貴方が誰かを馬車に連れ込んだのがたまたま見えて……あら?貴方、イルルじゃなくて?」
どうやら、彼女はシュリがイルルを抱っこして馬車へ連れて行くのを見て、これは何事かと駆けつけてきたらしい。
ご苦労な事である。
そんな彼女は、イルルを見て驚いたような顔をした。
どうしてだか二人は顔見知りであるらしい。
「うぬ?お主は……」
「あれ?イルルとエリザベスって知り合いだったの??」
イルルが首を傾げ、シュリも首を傾げた。
「ええ。知り合いですわ。入学式の日に……」
「んむ~?そ、そうじゃのう。見覚えのあるような無いような……」
エリザベスは胸を張って答えるが、反対にイルルは実に自身の無い言葉で答える。
それを聞いたエリザベスが目をむいた。
「な!?えええぇ~~~!?お、覚えてないんですの!?ワ、ワタクシですわよ?ほ、ほら、迷子になっていた貴方を案内してあげたじゃありませんの!」
エリザベスはそう言うと、シュリの膝にちょこんと座ったままのイルルの肩をつかんで、がっくんがっくんと揺さぶった。
「お、おおおお~~!?ま、まて!待つのじゃ~~~!?の、脳が、味噌が揺れるのじゃぁぁ~~~~」
馬車の中にエリザベスの必死な声とイルルの悲鳴が響いて非常にうるさい。
それを間近で聞く羽目になったシュリは、イルルを抱っこしている為に耳を押さえることも出来ずに、微妙に顔をしかめた。
そして、己の耳を守るために、そっと提案してみる。
「えっと、つもる話もありそうだし、エリザベス、良かったら、イルル、持って行く?」
僕は二人の話が終わるまでここで待ってるから、と言外にうるさいから外で話してこいと伝えてみる。
が、相手はイルルとエリザベス。
遠回しな言葉が、上手に伝わるわけもなく、
「ふおおおおっ、しゅ、しゅりぃ!?なんということを言うのじゃ!!妾は頭のてっぺんから足の先までシュリのものなんじゃからの!だから、絶対に他の相手にお持ち帰りされたりなんかしないのじゃ!!」
「ん?や、そういう問題じゃなくてさ」
ちょっとうるさいから外でお話をつけてきて欲しいだけなんだけど……と続けようとしたが、振り向いてがばりと抱きついてきたイルルの叫びに遮られてしまう。
「そう言う問題じゃ無いってなんなのじゃ~~~!?わ、妾はいらない子なのか?もしや、いらなくなったからよその子にしてしまうつもりじゃなかろうの!?そんなことされたら、さすがの妾も泣いてしまうのじゃぞ!?」
「イルル、ち、ちが……」
「いやじゃ、いやじゃあぁぁ。妾はずーっとシュリと一緒がいいのじゃ!わがままは三回に一回くらいで我慢するから、側において欲しいのじゃあぁぁ!!!」
そうじゃないと否定しようとするのだが、イルルの勢いがすごくて、言葉を挟めない。
っていうか、三回に一回って、そこは嘘でもいいからわがままは言わないって言っておこうよ、とバカ正直なイルルを一周回ってちょっぴり愛おしく思いつつ、シュリは再度否定の言葉を述べようとした。
が、それも横入りしてきた別の人物に遮られてしまう。
「ちょっと。少し頭が悪そうでわがままだからって、人を簡単に他人に譲り渡そうとするなんて趣味が悪いんじゃないかしら、シュリナスカ・ルバーノ」
「え、え~っと……」
あ、ここにも遠回しな表現が伝わらない人がいた、と思いつつ、真面目にそう注意されてシュリは思わず言葉に詰まってしまう。
「さすがに、その子が可哀想ですわ」
「あ~、その、ご、ごめんなさい?」
非難の眼差しで続けられ、シュリの唇から謝罪の言葉が思わずこぼれ出た。
それを聞いたエリザベスは、仕方ないですわねと言わんばかりに肩をすくめ、それからシュリに捨てられないようにぎゅっと抱きついたままえぐえぐしているイルルの肩にぽんと手を置いた。
「ほら、もう大丈夫ですわよ?だから、もう泣くのはおやめなさいな」
「うっ、うむっ!た、助かったのじゃ。お主、いいやつじゃのぅ」
「……お主じゃなくて、エリザベスですわ。っていうか、本当にワタクシのこと、覚えてないんですのね……」
そう言って、エリザベスはちょっとしょんぼりしてしまう。
それを見たイルルが、わたわたしながらエリザベスの方へと向き直る。
「うぬっ、ち、違うのじゃ。ちゃ、ちゃんとお主に見覚えはあるのじゃ。な、なんとなくじゃが……ほれっ、特にその、くるくるした髪には何とも言えぬ愛着があるような、ないような……」
そんな苦しい言い訳じみた言葉を絞り出しつつ、何とかしてくれと言わんばかりに、ちらっ、ちらっとシュリに視線を投げかけてくる。
が、二人の間の事情を知らないシュリに、イルルを助けてあげられるわけもなく。
「う~……その、どうしても名前は思いだせんのじゃ。すまぬ」
結局イルルはしょぼんとして素直に謝った。
シュリは黙って、その頭を撫でてあげる。
イルルのそう言う素直な部分は賞賛できると、そう思ったから。
「……もういいですわ。よく考えてみれば、入学式の時も、ワタクシが何度名乗っても名前では呼んでくれませんでしたし。ずーっとクルクルって呼ばれてましたし」
「くるくる……おお~~!!お主、クルクルじゃったのか!!なんじゃ、最初からそう名乗ってくれれば良かったのじゃ。エリザベスとかなんとか、小難しく名乗るから、ぜんぜん分からなかったのじゃ。なんじゃ~、クルクルじゃったのか。気付くのが遅れて悪かったの?許せ、クルクル」
「で、ですから。ワタクシの名前はクルクルじゃないと何度言わせれば気が済むんですの……はぁ……まあ、いいですわ。ワタクシの存在を思い出して下さっただけでも良しとします。貴方に多くを求めても、なんだか無駄な気がしますもの……」
そう言って、エリザベスはほんのりと遠い目をした。
そんなエリザベスを見てシュリは思う。
うちの子がバカで、ほんっと~にごめん!……と。
だが、エリザベスは意外とその事を引きずらなかったようで、気持ちを切り替えたように再びイルルに視線を戻すと、
「それにしても、あなた、今日は学校に来てたんですの?我が家の従者にに頼んでこっそり探させましたけど、どのクラスにも見あたらなかったと……」
そんな何とも答え辛い質問をしてきた。
途端にイルルは挙動不審になり、そのつるんと丸い額に冷や汗を浮かべた。
「うにゅ!?そ、それには、なんといったらいいかの……深いようで浅い、複雑な事情があってじゃな……」
「深いようで浅い、複雑な事情……ですの?」
「う、うむ。そうなのじゃ。なんというか、詳しい説明は難しいのじゃが……とにかく、妾は学校へは通わんのじゃ!」
「入学式には来ましたのに?」
「そ、そうじゃ。入学式は、その……ちょっと興味があったのじゃ。で、どうしても見てみたくて潜り込んだんじゃが、後でシュリにすっごく怒られて、今はとっても反省してるのじゃ……」
「そうなんですのね……せっかくお友達になれたのに残念ですわね」
言いながら、エリザベスの視線がシュリに飛ぶ。
訳が分からないから、もうちょっときちんとした説明はありませんの?と言わんばかりに。
そりゃ、そうなるよなぁと思いつつ、シュリは小さなため息と共に肩を落とす。
でも、なんと説明したらいいのだろうか?
イルルはあくまでも僕のペットだから、学校へは通わせられません……ってのはダメだと思う。
なんだか盛大な誤解を受けそうだ。
じゃあ、イルルは人間じゃないので、というのはどうだろう?
でも、じゃあ、人間じゃないならなんなんだと問われると弱い。
正直に古の龍ですと答えたところで、信じてもらえる自身はないし、バカ正直にイルルを元の姿に戻して披露したら、もの凄い騒ぎになるに違いない。
これも却下だ。
なら、どう説明するのが一番いいのか。
シュリは頭を捻った。
そして……
「え~っと、その、イルルは年齢がね?学校に通うのにはちょっとね??」
そう、正直に答えた。ちょっぴり言葉を濁して。
決して嘘はついていない。
「ああ、なるほど。まだ、年が足りていないという事ですのね。確かに見た目はともかく、中身はだいぶワタクシ達と比べて幼そうですものね」
だが、エリザベスは勝手にそう誤解をしてくれた。
シュリの狙い通りである。
イルルの年齢が学校に通うにそぐわないのは本当だ。
ただし、もちろん幼すぎるからではない。
むしろ、初等学校に通える年齢制限を軽く飛び越してしまっている方なのだが、それを言っても信じては貰えないので、シュリは黙って賢く微笑むに止めたのだった。
イルルをお膝に抱っこしたまま、シュリは誰だろうと首を傾げる。
「む?シュリ、客人のようじゃぞ?」
「そう、だねぇ??」
二人して顔を見合わせていると、客人に気がついたハンスが動いてくれたようだ。
馬車の外で、なにやら人が話している声が聞こえ、その後再び馬車のドアが叩かれた。
「シュリ様。なにやらご学友がたずねておいでですが」
聞こえてきたのはハンスの声だ。どうやら客人の招待はシュリの学校の生徒らしい。
誰かなぁとシュリは首を傾げつつ、
「ありがとう、ハンス。じゃあ、入ってもらって??」
シュリはとりあえずそう答えた。
するとすぐに扉が開き、
「一体何事ですの!?シュリナスカ・ルバーノ」
そう言って、飛び込んできたのはさっきお別れしたはずのエリザベス。
「何事って……何事??」
なにやら血相を変えて飛び込んできたエリザベスをきょとんと見上げ、シュリは訳が分からないと目をぱちくりさせる。
「何事って、それは、あれですわよ!貴方が誰かを馬車に連れ込んだのがたまたま見えて……あら?貴方、イルルじゃなくて?」
どうやら、彼女はシュリがイルルを抱っこして馬車へ連れて行くのを見て、これは何事かと駆けつけてきたらしい。
ご苦労な事である。
そんな彼女は、イルルを見て驚いたような顔をした。
どうしてだか二人は顔見知りであるらしい。
「うぬ?お主は……」
「あれ?イルルとエリザベスって知り合いだったの??」
イルルが首を傾げ、シュリも首を傾げた。
「ええ。知り合いですわ。入学式の日に……」
「んむ~?そ、そうじゃのう。見覚えのあるような無いような……」
エリザベスは胸を張って答えるが、反対にイルルは実に自身の無い言葉で答える。
それを聞いたエリザベスが目をむいた。
「な!?えええぇ~~~!?お、覚えてないんですの!?ワ、ワタクシですわよ?ほ、ほら、迷子になっていた貴方を案内してあげたじゃありませんの!」
エリザベスはそう言うと、シュリの膝にちょこんと座ったままのイルルの肩をつかんで、がっくんがっくんと揺さぶった。
「お、おおおお~~!?ま、まて!待つのじゃ~~~!?の、脳が、味噌が揺れるのじゃぁぁ~~~~」
馬車の中にエリザベスの必死な声とイルルの悲鳴が響いて非常にうるさい。
それを間近で聞く羽目になったシュリは、イルルを抱っこしている為に耳を押さえることも出来ずに、微妙に顔をしかめた。
そして、己の耳を守るために、そっと提案してみる。
「えっと、つもる話もありそうだし、エリザベス、良かったら、イルル、持って行く?」
僕は二人の話が終わるまでここで待ってるから、と言外にうるさいから外で話してこいと伝えてみる。
が、相手はイルルとエリザベス。
遠回しな言葉が、上手に伝わるわけもなく、
「ふおおおおっ、しゅ、しゅりぃ!?なんということを言うのじゃ!!妾は頭のてっぺんから足の先までシュリのものなんじゃからの!だから、絶対に他の相手にお持ち帰りされたりなんかしないのじゃ!!」
「ん?や、そういう問題じゃなくてさ」
ちょっとうるさいから外でお話をつけてきて欲しいだけなんだけど……と続けようとしたが、振り向いてがばりと抱きついてきたイルルの叫びに遮られてしまう。
「そう言う問題じゃ無いってなんなのじゃ~~~!?わ、妾はいらない子なのか?もしや、いらなくなったからよその子にしてしまうつもりじゃなかろうの!?そんなことされたら、さすがの妾も泣いてしまうのじゃぞ!?」
「イルル、ち、ちが……」
「いやじゃ、いやじゃあぁぁ。妾はずーっとシュリと一緒がいいのじゃ!わがままは三回に一回くらいで我慢するから、側において欲しいのじゃあぁぁ!!!」
そうじゃないと否定しようとするのだが、イルルの勢いがすごくて、言葉を挟めない。
っていうか、三回に一回って、そこは嘘でもいいからわがままは言わないって言っておこうよ、とバカ正直なイルルを一周回ってちょっぴり愛おしく思いつつ、シュリは再度否定の言葉を述べようとした。
が、それも横入りしてきた別の人物に遮られてしまう。
「ちょっと。少し頭が悪そうでわがままだからって、人を簡単に他人に譲り渡そうとするなんて趣味が悪いんじゃないかしら、シュリナスカ・ルバーノ」
「え、え~っと……」
あ、ここにも遠回しな表現が伝わらない人がいた、と思いつつ、真面目にそう注意されてシュリは思わず言葉に詰まってしまう。
「さすがに、その子が可哀想ですわ」
「あ~、その、ご、ごめんなさい?」
非難の眼差しで続けられ、シュリの唇から謝罪の言葉が思わずこぼれ出た。
それを聞いたエリザベスは、仕方ないですわねと言わんばかりに肩をすくめ、それからシュリに捨てられないようにぎゅっと抱きついたままえぐえぐしているイルルの肩にぽんと手を置いた。
「ほら、もう大丈夫ですわよ?だから、もう泣くのはおやめなさいな」
「うっ、うむっ!た、助かったのじゃ。お主、いいやつじゃのぅ」
「……お主じゃなくて、エリザベスですわ。っていうか、本当にワタクシのこと、覚えてないんですのね……」
そう言って、エリザベスはちょっとしょんぼりしてしまう。
それを見たイルルが、わたわたしながらエリザベスの方へと向き直る。
「うぬっ、ち、違うのじゃ。ちゃ、ちゃんとお主に見覚えはあるのじゃ。な、なんとなくじゃが……ほれっ、特にその、くるくるした髪には何とも言えぬ愛着があるような、ないような……」
そんな苦しい言い訳じみた言葉を絞り出しつつ、何とかしてくれと言わんばかりに、ちらっ、ちらっとシュリに視線を投げかけてくる。
が、二人の間の事情を知らないシュリに、イルルを助けてあげられるわけもなく。
「う~……その、どうしても名前は思いだせんのじゃ。すまぬ」
結局イルルはしょぼんとして素直に謝った。
シュリは黙って、その頭を撫でてあげる。
イルルのそう言う素直な部分は賞賛できると、そう思ったから。
「……もういいですわ。よく考えてみれば、入学式の時も、ワタクシが何度名乗っても名前では呼んでくれませんでしたし。ずーっとクルクルって呼ばれてましたし」
「くるくる……おお~~!!お主、クルクルじゃったのか!!なんじゃ、最初からそう名乗ってくれれば良かったのじゃ。エリザベスとかなんとか、小難しく名乗るから、ぜんぜん分からなかったのじゃ。なんじゃ~、クルクルじゃったのか。気付くのが遅れて悪かったの?許せ、クルクル」
「で、ですから。ワタクシの名前はクルクルじゃないと何度言わせれば気が済むんですの……はぁ……まあ、いいですわ。ワタクシの存在を思い出して下さっただけでも良しとします。貴方に多くを求めても、なんだか無駄な気がしますもの……」
そう言って、エリザベスはほんのりと遠い目をした。
そんなエリザベスを見てシュリは思う。
うちの子がバカで、ほんっと~にごめん!……と。
だが、エリザベスは意外とその事を引きずらなかったようで、気持ちを切り替えたように再びイルルに視線を戻すと、
「それにしても、あなた、今日は学校に来てたんですの?我が家の従者にに頼んでこっそり探させましたけど、どのクラスにも見あたらなかったと……」
そんな何とも答え辛い質問をしてきた。
途端にイルルは挙動不審になり、そのつるんと丸い額に冷や汗を浮かべた。
「うにゅ!?そ、それには、なんといったらいいかの……深いようで浅い、複雑な事情があってじゃな……」
「深いようで浅い、複雑な事情……ですの?」
「う、うむ。そうなのじゃ。なんというか、詳しい説明は難しいのじゃが……とにかく、妾は学校へは通わんのじゃ!」
「入学式には来ましたのに?」
「そ、そうじゃ。入学式は、その……ちょっと興味があったのじゃ。で、どうしても見てみたくて潜り込んだんじゃが、後でシュリにすっごく怒られて、今はとっても反省してるのじゃ……」
「そうなんですのね……せっかくお友達になれたのに残念ですわね」
言いながら、エリザベスの視線がシュリに飛ぶ。
訳が分からないから、もうちょっときちんとした説明はありませんの?と言わんばかりに。
そりゃ、そうなるよなぁと思いつつ、シュリは小さなため息と共に肩を落とす。
でも、なんと説明したらいいのだろうか?
イルルはあくまでも僕のペットだから、学校へは通わせられません……ってのはダメだと思う。
なんだか盛大な誤解を受けそうだ。
じゃあ、イルルは人間じゃないので、というのはどうだろう?
でも、じゃあ、人間じゃないならなんなんだと問われると弱い。
正直に古の龍ですと答えたところで、信じてもらえる自身はないし、バカ正直にイルルを元の姿に戻して披露したら、もの凄い騒ぎになるに違いない。
これも却下だ。
なら、どう説明するのが一番いいのか。
シュリは頭を捻った。
そして……
「え~っと、その、イルルは年齢がね?学校に通うのにはちょっとね??」
そう、正直に答えた。ちょっぴり言葉を濁して。
決して嘘はついていない。
「ああ、なるほど。まだ、年が足りていないという事ですのね。確かに見た目はともかく、中身はだいぶワタクシ達と比べて幼そうですものね」
だが、エリザベスは勝手にそう誤解をしてくれた。
シュリの狙い通りである。
イルルの年齢が学校に通うにそぐわないのは本当だ。
ただし、もちろん幼すぎるからではない。
むしろ、初等学校に通える年齢制限を軽く飛び越してしまっている方なのだが、それを言っても信じては貰えないので、シュリは黙って賢く微笑むに止めたのだった。
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