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第四部 王都の新たな日々
第474話 王都のとっても大変な1日④
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いつもこの作品を読んでいただいてありがとうございます。
今年こそは完結を目指しつつ、皆さんに楽しんでもらえる話をお届けできるように頑張ります。
この1年が皆様にとって良い1年でありますように。
*************************
YESの文字を押すと、次の選択肢が浮かび上がってきた。
・新たな眷属上位古龍を手に入れました。名前はシャナクサフィラです。名前を変えますか?YES/NO
ここはYESを選択しておく。続いて入力した名前はシャナ。
イルルが呼ぶサフィラという呼び方もあるが、ここは呼び慣れた方を選ばせてもらった。
イルルや、シャナの昔からの知り合いには悪いが、徐々に慣れてもらえばいいだろう。
そんな事をシュリが考えているうちに、作業は獣っ娘メイキングへと進んでいく。
・シャナの獣っ娘メイキングを開始します。シャナは人型の形態を持っているのでその姿をそのまま使用することも可能です。使用しますか?YES/NO
その文章と共に表示されたシャナの人型は、シュリが見慣れた蒼い髪に瞳のスレンダーな美人さん。
別にそのまま使っても良かったのだが、せっかくのシステムを使わないのももったいない、とNOを選択した。
するとついで現れるのは体のパーツに関する選択肢。
シュリはちょっと悩みつつもそれらを選択し、出来上がってきた人型の微調整を行い。
最後の画面でシャナの新たな姿を確認した後、終了の文字を押した。
獣っ娘メイキングを終え、消えたウィンドウの向こうに現れたのは、イルルよりも少しだけ身長の高い少女の姿。
サイドテールにまとめた髪は蒼で、瞳の色は龍の時の色に寄せた、黄金混じりの蒼。
顔立ちは、彼女の人型の時の顔立ちを幼くした感じ。
胸に関しては、少々悩んだが、イルルよりも少しだけ大きくしておいた。
胸の大きさを気にしているらしいシャナへの、せめてもの情けである。
「……これで私はあなたのもの、ですね。シュリ」
「うん。これからよろしくね」
「はい。この先、いつかあなたとの別れが訪れる日まで。私の全てはあなたのもの。あなたのために生き、あなたのために死にます」
「死ぬのはダメだよ。それが例え僕のためであったとしても。一緒に生きよう。ずっと」
「……はい。ずっと」
嬉しそうに頬を染めて、シャナが頷く。
その様子は、姿は子供なはずなのに妙に色香があって。
ちょっぴりドキッとしながら、イルルにはない色気だなぁ、とちょっと失礼なことを考えながら、シャナを見つめた。
その視線に、シャナはますます頬を熱くし。
なんだかいい雰囲気になってきた所で、
「おお~!! サフィラも妾と一緒で子供じゃな! お揃いなのじゃ」
空気を読まないイルルが横からシャナに抱きついた。
さっきまでのアダルトな姿ではなく、いつものお子様ボディーに戻って。
ほっぺたをぐりぐりすり付けるイルルの攻勢を、仕方ない子ですね、とでも言いたげな表情で受け止めるシャナの周囲の空気は穏やかだ。
さっきまでの物騒な空気が嘘のように。
「サフィラ、ではなく、シャナ、と。シュリがそう名付けてくれました。私もあなたのことを、今日からイルル、と呼びます」
「む、そうか。なら、今日からお主の事をシャナ、と呼ぶことにするかの。シュリに貰う名前は大事じゃからの~。これからよろしく頼むのじゃ、シャナ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。イルル」
仲良きことは美しきかな。
向かい合う2人を見ながら、うんうん、と頷く。
そんなシュリの耳に、アリアの声が届く。念話ではなく、直接に。
「色々無事に終わったようですわね、シュリ」
「あ、アリア」
振り向いたシュリの目に半透明に透けるようなアリアの姿が映った。。
実体化していない彼女達精霊の姿は、シュリの目にはこう見える。
この状態の彼女達は、一般の人達の目には映らないことがほとんどだ。
周囲に他の4人の姿はないから、みんなを代表してアリアが様子をうかがいに来たのだろう。
「シャナのブレスから、周囲を守ってくれてありがとう。被害は?」
「この広場の外に限って言うなら、皆無、ですわ」
「そっか。助かったよ。みんなも平気?」
「イグニスが目を回していますが、他は特に。少々魔力の残量が心許ないくらい、ですかしらね」
「イグニスは火属性だから、シャナのブレスと相性が悪かったよね。大丈夫かな?」
「殺しても死にませんから大丈夫ですわ。すぐに目を覚ましますわよ」
「なら良かった。イグニスが目を覚ましたら、ちゃんと魔力供給するから、もうちょっと待ってて」
「ええ。大丈夫。急ぎませんから、たっぷりお願いしますわね。濃厚なのを、たっぷりと」
「の、濃厚なのを?」
「ええ。濃厚なのを、ねっとりたっぷり」
「ぜ、善処します」
ははは……、と若干力なく笑うシュリの横から、シャナがひょいと顔をのぞかせる。
そして。
「あなたはシュリの精霊、ですね。この度はご迷惑をおかけしました」
深々と、頭を下げた。
「別に、気にしなくて良いですわ。眷属と絆を結ぶ時に戦闘はつきものですし、そこの駄龍の方が、シュリを危険にさらしましたし。まあ、今後はシュリを主とする者同士、協力してシュリを守っていきましょう。それでチャラ、でいいですわ」
そんなシャナに軽く肩をすくめて見せて、アリアはそう言い切った。
「ありがとう。感謝します。これからはよろしくお願いします」
感謝のまなざしと共に、シャナは再び頭を下げ、そんな彼女を見て軽く頷いた後、アリアは再びシュリの方へ視線を戻した。
「ところでシュリ?」
「ん? なぁに?」
小首を傾げたシュリに、アリアは言った。
結界の外で、シュリナスカ・ルバーノの安否を確かめる為に派遣された兵士が騒いでいる、と。
「さ、騒いでるの?」
「ええ。映像も音も遮断されましたから、中がどうなっているか分からず、かといって入る事もできなくて大騒ぎになってますわね」
「え、ええぇぇ~……」
どうしよう、と困った顔をしたシュリは、う~ん、と唸り、腕を組んで空を仰いだ。
全員で逃げてしまいたいところだが、それは却下だろう。
なぜか向こうは、ここにシュリナスカ・ルバーノがいたことは掴んでいる。
ならば、姿を隠してしまうのは得策ではない。
少なくとも、シュリはここに残って事情の説明をする必要がありそうだ。
非常に面倒ではあるけれど。
はー、と大きくため息を吐き出し、気持ちを切り替えたシュリは、イルルとシャナに向き直る。
この後の行動を指示するために。
「イルル」
「なんじゃ?」
「僕はここで事後処理をしなきゃいけないから、シャナをこっそりうちに連れ帰ってあげて。で、シャナの紹介と事情の説明を」
「うむ。任されたのじゃ」
「シャナ」
「はい」
「イルルと一緒に僕の部屋で待っててくれる? 帰ったらシャナの部屋を決めようね」
「分かりました。私が暴れたせいで、迷惑をかけます」
「いいんだよ。眷属のしたことの後始末も、ご主人様の仕事のうちだからね」
にっこり微笑み、
「シャナのことは妾に任せよ!」
と張り切った様子のイルルと、彼女に手を引かれて連れて行かれるシャナを見送って、イルルはジュディスに念話をつないだ。
『ジュディス?』
『シュリ様!! ご無事ですか? ナーザから聞いてイルルを救援に出そうとしたのですが、話を告げる前にイルルが飛び出しまして。イルルはそちらに行ったでしょうか?』
『うん。来てくれたし、事態も無事に収まったから安心して。ナーザにもありがとう、って伝えておいてね?』
『そうですか。よかった……。安心しました』
『僕は事後処理でもうちょっと帰りが遅くなるけど、イルルを僕の新しい眷属と一緒に帰したから仲良くしてあげて。僕が帰るまでは、僕の部屋で休ませておいてくれればいいから』
『分かりました。お任せ下さい』
『みんなにも、話を伝えておいて。対外的には、イルルやポチ・タマの冒険者仲間で、イルルの幼なじみ、ってことで』
『はい。そのように周知いたします』
『じゃあ、よろしく。また後でね?』
念話を切り、シュリは最後にアリアに向き直る。
「じゃあ、アリア。1分後に結界を解除してくれる? 結界を解除した後はみんな僕の中で休んでて。魔力供給は、後で色々落ち着いたら時間を作るよ。それで良いかな?」
「問題ありませんわ。では、みんなにそう伝えますわね」
「うん、よろしく」
うなずき微笑んだシュリの前から、アリアの姿がぱっと消える。
そうして、その場に1人残されたシュリは、周囲を見回して軽く肩を落とした。
あえて目を反らしていたが、お城の前の広場はひどい有様だった。
観光の目玉としてどーんと鎮座していた大きな噴水は見る影もないし、丁寧に整えられていた植木は芯まで凍りついていて、何とも言えずに寒々しい。
その氷のオブジェに、人型がない事だけが唯一の救いだった。
それらを見回し、シュリはそっと吐息を落とす。
これから恐らく、王様相手に色々説明しなきゃいけない訳なのだが……
「さて、どう説明したものかなぁ」
小さく呟き、その答えを探すように、雲1つない空を見上げるのだった。
今年こそは完結を目指しつつ、皆さんに楽しんでもらえる話をお届けできるように頑張ります。
この1年が皆様にとって良い1年でありますように。
*************************
YESの文字を押すと、次の選択肢が浮かび上がってきた。
・新たな眷属上位古龍を手に入れました。名前はシャナクサフィラです。名前を変えますか?YES/NO
ここはYESを選択しておく。続いて入力した名前はシャナ。
イルルが呼ぶサフィラという呼び方もあるが、ここは呼び慣れた方を選ばせてもらった。
イルルや、シャナの昔からの知り合いには悪いが、徐々に慣れてもらえばいいだろう。
そんな事をシュリが考えているうちに、作業は獣っ娘メイキングへと進んでいく。
・シャナの獣っ娘メイキングを開始します。シャナは人型の形態を持っているのでその姿をそのまま使用することも可能です。使用しますか?YES/NO
その文章と共に表示されたシャナの人型は、シュリが見慣れた蒼い髪に瞳のスレンダーな美人さん。
別にそのまま使っても良かったのだが、せっかくのシステムを使わないのももったいない、とNOを選択した。
するとついで現れるのは体のパーツに関する選択肢。
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最後の画面でシャナの新たな姿を確認した後、終了の文字を押した。
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胸の大きさを気にしているらしいシャナへの、せめてもの情けである。
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「うん。これからよろしくね」
「はい。この先、いつかあなたとの別れが訪れる日まで。私の全てはあなたのもの。あなたのために生き、あなたのために死にます」
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「……はい。ずっと」
嬉しそうに頬を染めて、シャナが頷く。
その様子は、姿は子供なはずなのに妙に色香があって。
ちょっぴりドキッとしながら、イルルにはない色気だなぁ、とちょっと失礼なことを考えながら、シャナを見つめた。
その視線に、シャナはますます頬を熱くし。
なんだかいい雰囲気になってきた所で、
「おお~!! サフィラも妾と一緒で子供じゃな! お揃いなのじゃ」
空気を読まないイルルが横からシャナに抱きついた。
さっきまでのアダルトな姿ではなく、いつものお子様ボディーに戻って。
ほっぺたをぐりぐりすり付けるイルルの攻勢を、仕方ない子ですね、とでも言いたげな表情で受け止めるシャナの周囲の空気は穏やかだ。
さっきまでの物騒な空気が嘘のように。
「サフィラ、ではなく、シャナ、と。シュリがそう名付けてくれました。私もあなたのことを、今日からイルル、と呼びます」
「む、そうか。なら、今日からお主の事をシャナ、と呼ぶことにするかの。シュリに貰う名前は大事じゃからの~。これからよろしく頼むのじゃ、シャナ」
「はい。こちらこそよろしくお願いします。イルル」
仲良きことは美しきかな。
向かい合う2人を見ながら、うんうん、と頷く。
そんなシュリの耳に、アリアの声が届く。念話ではなく、直接に。
「色々無事に終わったようですわね、シュリ」
「あ、アリア」
振り向いたシュリの目に半透明に透けるようなアリアの姿が映った。。
実体化していない彼女達精霊の姿は、シュリの目にはこう見える。
この状態の彼女達は、一般の人達の目には映らないことがほとんどだ。
周囲に他の4人の姿はないから、みんなを代表してアリアが様子をうかがいに来たのだろう。
「シャナのブレスから、周囲を守ってくれてありがとう。被害は?」
「この広場の外に限って言うなら、皆無、ですわ」
「そっか。助かったよ。みんなも平気?」
「イグニスが目を回していますが、他は特に。少々魔力の残量が心許ないくらい、ですかしらね」
「イグニスは火属性だから、シャナのブレスと相性が悪かったよね。大丈夫かな?」
「殺しても死にませんから大丈夫ですわ。すぐに目を覚ましますわよ」
「なら良かった。イグニスが目を覚ましたら、ちゃんと魔力供給するから、もうちょっと待ってて」
「ええ。大丈夫。急ぎませんから、たっぷりお願いしますわね。濃厚なのを、たっぷりと」
「の、濃厚なのを?」
「ええ。濃厚なのを、ねっとりたっぷり」
「ぜ、善処します」
ははは……、と若干力なく笑うシュリの横から、シャナがひょいと顔をのぞかせる。
そして。
「あなたはシュリの精霊、ですね。この度はご迷惑をおかけしました」
深々と、頭を下げた。
「別に、気にしなくて良いですわ。眷属と絆を結ぶ時に戦闘はつきものですし、そこの駄龍の方が、シュリを危険にさらしましたし。まあ、今後はシュリを主とする者同士、協力してシュリを守っていきましょう。それでチャラ、でいいですわ」
そんなシャナに軽く肩をすくめて見せて、アリアはそう言い切った。
「ありがとう。感謝します。これからはよろしくお願いします」
感謝のまなざしと共に、シャナは再び頭を下げ、そんな彼女を見て軽く頷いた後、アリアは再びシュリの方へ視線を戻した。
「ところでシュリ?」
「ん? なぁに?」
小首を傾げたシュリに、アリアは言った。
結界の外で、シュリナスカ・ルバーノの安否を確かめる為に派遣された兵士が騒いでいる、と。
「さ、騒いでるの?」
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「え、ええぇぇ~……」
どうしよう、と困った顔をしたシュリは、う~ん、と唸り、腕を組んで空を仰いだ。
全員で逃げてしまいたいところだが、それは却下だろう。
なぜか向こうは、ここにシュリナスカ・ルバーノがいたことは掴んでいる。
ならば、姿を隠してしまうのは得策ではない。
少なくとも、シュリはここに残って事情の説明をする必要がありそうだ。
非常に面倒ではあるけれど。
はー、と大きくため息を吐き出し、気持ちを切り替えたシュリは、イルルとシャナに向き直る。
この後の行動を指示するために。
「イルル」
「なんじゃ?」
「僕はここで事後処理をしなきゃいけないから、シャナをこっそりうちに連れ帰ってあげて。で、シャナの紹介と事情の説明を」
「うむ。任されたのじゃ」
「シャナ」
「はい」
「イルルと一緒に僕の部屋で待っててくれる? 帰ったらシャナの部屋を決めようね」
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「いいんだよ。眷属のしたことの後始末も、ご主人様の仕事のうちだからね」
にっこり微笑み、
「シャナのことは妾に任せよ!」
と張り切った様子のイルルと、彼女に手を引かれて連れて行かれるシャナを見送って、イルルはジュディスに念話をつないだ。
『ジュディス?』
『シュリ様!! ご無事ですか? ナーザから聞いてイルルを救援に出そうとしたのですが、話を告げる前にイルルが飛び出しまして。イルルはそちらに行ったでしょうか?』
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『僕は事後処理でもうちょっと帰りが遅くなるけど、イルルを僕の新しい眷属と一緒に帰したから仲良くしてあげて。僕が帰るまでは、僕の部屋で休ませておいてくれればいいから』
『分かりました。お任せ下さい』
『みんなにも、話を伝えておいて。対外的には、イルルやポチ・タマの冒険者仲間で、イルルの幼なじみ、ってことで』
『はい。そのように周知いたします』
『じゃあ、よろしく。また後でね?』
念話を切り、シュリは最後にアリアに向き直る。
「じゃあ、アリア。1分後に結界を解除してくれる? 結界を解除した後はみんな僕の中で休んでて。魔力供給は、後で色々落ち着いたら時間を作るよ。それで良いかな?」
「問題ありませんわ。では、みんなにそう伝えますわね」
「うん、よろしく」
うなずき微笑んだシュリの前から、アリアの姿がぱっと消える。
そうして、その場に1人残されたシュリは、周囲を見回して軽く肩を落とした。
あえて目を反らしていたが、お城の前の広場はひどい有様だった。
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それらを見回し、シュリはそっと吐息を落とす。
これから恐らく、王様相手に色々説明しなきゃいけない訳なのだが……
「さて、どう説明したものかなぁ」
小さく呟き、その答えを探すように、雲1つない空を見上げるのだった。
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