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第三部 学校へ行こう
第百八十四話 入学式侵入阻止作戦!!②
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「以上が今回の作戦行動になりますわ。何か質問はあるかしら??」
主のいないシュリの部屋にひっそりと集まった面々に、水の精霊アリアはジュディスと一緒に練った作戦を伝え、メンバーの顔を見回した。
ジュディスと話し合った内容を、とにかくわかりやすいようにかみ砕いて説明をしたつもりである。
流石にこれで分からない者はいなかろうと口元に淡い笑みを浮かべると、まるでそれをあざ笑うかのように、
「すまぬ。質問があるんじゃが、よいかの?」
幼げな声が生真面目に問いかけてきた。
その声を聞いたアリアが、正直うんざりですと言った表情を、その美しい面に隠そうともせずに浮かべる。
「……また、あなたですの?炎の上位古龍。あのかみ砕いた説明は、いったい誰の為だと思っていますの??全部あなたの為なんですわよ?」
「いやぁ、すまんのう。どうも妾、おつむは弱くないのじゃが、理解力と言うものが足りておらんようでの。すまぬが、もちっと優しく説明して貰えると助かるのじゃ」
悪びれず、にっかりと笑うイルルを前に、アリアはがっくりと肩を落とす。
そんなアリアの周りに他の精霊が集まって、
「や、アリアは悪くないと思うよ?うん」
「うんうん。わかりやすい説明だったと思うなぁ?うちでもわかったもん」
「うむ。お前は頑張った。偉いぞ、アリア。ここで撤退しても誰も文句は言わん」
うつむいて震えているアリアに、口々に慰めの言葉をかける。
シュリ達が出かけてから全員でここに集まり、かれこれ五回目の説明だった。
説明の度にイルルが分からんと声を上げ、そのたびに更に分かりやすく説明をし続けていたのだが、流石にそろそろ時間も押し気味である。
このわからんちんを何とかしなければ、成功する作戦も時間切れで終わってしまうだろう。
アリアは深い深ぁ~いため息を漏らし、痛むこめかみを指先でもんだ。
愛するシュリの為の作戦で妥協するのはイヤだったが仕方がない。使えない駒は、外すしか無いだろう。
そう心を決めたアリアは、
「……もう良いですわ。あきらめました……で、炎の上位古龍に一つ提案なんですけれど」
悪気のない表情で自分を見上げているロリっ子へ、ため息混じりにそう話しかけた。
「ん?なんじゃ??あ、それから妾の事はイルルと呼んでくれていいんじゃぞ?我らはみな、シュリに想いを誓った仲間同士じゃからの」
遠慮せずに、どーんと気軽に呼んでくれと、無い胸を張るイルルを生暖かい目で見つめながら、
「……じゃあ、お言葉に甘えてイルルと呼びますわね。で、イルル。提案なのですけれど、作戦開始までもう時間もあまりありませんし、あなた、今回の作戦には参加しないでのんびりしていると言うのはどうですかしら?」
アリアはにっこり微笑みそう告げた。
「んむ??のんびり??どういうことなのじゃ??」
アリアの告げた、戦力外通知が理解しきれずに首を傾げるイルル。
そんなイルルの様子にため息をついたポチが、流石に放置仕切れずに横から補足説明をその耳元にこそこそっと加えてあげた。
「イルル様。今回の作戦はイルル様の手を借りるまでも無いって事みたいでありますよ?面倒な仕事はポチ達に任せて、イルル様はなにもせずにどーんとのんびりしていて欲しいのであります」
まずは遠回しにポチがなにもするなと伝える。一応、イルルをちょっと持ち上げておくことも忘れずに。
ここは流石、長年イルルの側に仕えていただけの事はある。イルルの扱いが中々うまい。
「ん~?そうか?妾はなんにもしないでもいいのか?だが、本当にそれでいいのかのぅ?流石に妾、みなに申し訳ない気持ちでいっぱいじゃぞ??」
そう言いながらイルルが周りの皆の顔を見回す。
だが、誰一人として余計なことを言う者はいなかった。
みんな努めてニコニコしながら、口々に気にしないで良いとの言葉を告げる。
その甲斐あって、う~ん、そうかのぅ?とイルルが半信半疑ながら頷こうとしたその時、最後の仕上げとばかりにイルルの耳元に唇を寄せる者がいた。
タマである。
「気にしないでいい。イルル様は、なにもしない方が役に立つ」
「んん?なんじゃ?なにもしない方が、役に立つ??それじゃあまるで、妾が役立たずのようではないか」
「たっ、たまっ!!」
タマが余計な事を吹き込むので、イルルはむっとしたように眉を寄せ、ポチが声を上げる。
ポチの声と視線に気づいたタマは明らかに、あっ、しまった、という顔をして、
「え~と、ちょっと間違えた。役立たずじゃなくて、イルル様はどっちかと言えば……え~っと……」
ちょっとうろたえ気味に、言葉を探すようにその両目をさまよわせた。
「どちらかと言えば、なんじゃというのじゃ!?」
「ちょっと待って。今、考えてるから……う~んと、どちらかと言えば……どちらかと言えば……あっ」
「ん?」
「そう、どちらかと言えば、邪魔者。いると邪魔になるから、大人しくしてて」
「じゃっ、じゃまもの!?妾は邪魔じゃというのか!?」
タマが苦し紛れにひねり出した、更なる余計な一言に、イルルはガーンとショックを受けた顔をし、ポチは片手で目を覆って天を仰いだ。
「わっ、妾は邪魔者じゃ無いのじゃ!役に立てる子なのじゃ!!の、のう?ポチ!そうじゃろ」
「え~っと、ハイ、ソウデスネ」
むきぃ~っとなったイルルに突然意見を求められ、うっかり棒読みのセリフを返してしまうポチ。
それが更に、イルルの苛立ちに油を注いだ。
「むぅぅぅ~~~っ!!みんなして妾をバカにしおって!!もういい!!休むのは無しじゃ!!妾、出来る女じゃと言うことを、お主等に見せつけてやるからの!?後で後悔しても遅いんじゃからの!?」
ぷんすかそう宣言するイルルに、一同はそろって肩を落とした。
こうして、イルルの作戦への参加は、覆しようの無い決定事項となってしまったのだった。
主のいないシュリの部屋にひっそりと集まった面々に、水の精霊アリアはジュディスと一緒に練った作戦を伝え、メンバーの顔を見回した。
ジュディスと話し合った内容を、とにかくわかりやすいようにかみ砕いて説明をしたつもりである。
流石にこれで分からない者はいなかろうと口元に淡い笑みを浮かべると、まるでそれをあざ笑うかのように、
「すまぬ。質問があるんじゃが、よいかの?」
幼げな声が生真面目に問いかけてきた。
その声を聞いたアリアが、正直うんざりですと言った表情を、その美しい面に隠そうともせずに浮かべる。
「……また、あなたですの?炎の上位古龍。あのかみ砕いた説明は、いったい誰の為だと思っていますの??全部あなたの為なんですわよ?」
「いやぁ、すまんのう。どうも妾、おつむは弱くないのじゃが、理解力と言うものが足りておらんようでの。すまぬが、もちっと優しく説明して貰えると助かるのじゃ」
悪びれず、にっかりと笑うイルルを前に、アリアはがっくりと肩を落とす。
そんなアリアの周りに他の精霊が集まって、
「や、アリアは悪くないと思うよ?うん」
「うんうん。わかりやすい説明だったと思うなぁ?うちでもわかったもん」
「うむ。お前は頑張った。偉いぞ、アリア。ここで撤退しても誰も文句は言わん」
うつむいて震えているアリアに、口々に慰めの言葉をかける。
シュリ達が出かけてから全員でここに集まり、かれこれ五回目の説明だった。
説明の度にイルルが分からんと声を上げ、そのたびに更に分かりやすく説明をし続けていたのだが、流石にそろそろ時間も押し気味である。
このわからんちんを何とかしなければ、成功する作戦も時間切れで終わってしまうだろう。
アリアは深い深ぁ~いため息を漏らし、痛むこめかみを指先でもんだ。
愛するシュリの為の作戦で妥協するのはイヤだったが仕方がない。使えない駒は、外すしか無いだろう。
そう心を決めたアリアは、
「……もう良いですわ。あきらめました……で、炎の上位古龍に一つ提案なんですけれど」
悪気のない表情で自分を見上げているロリっ子へ、ため息混じりにそう話しかけた。
「ん?なんじゃ??あ、それから妾の事はイルルと呼んでくれていいんじゃぞ?我らはみな、シュリに想いを誓った仲間同士じゃからの」
遠慮せずに、どーんと気軽に呼んでくれと、無い胸を張るイルルを生暖かい目で見つめながら、
「……じゃあ、お言葉に甘えてイルルと呼びますわね。で、イルル。提案なのですけれど、作戦開始までもう時間もあまりありませんし、あなた、今回の作戦には参加しないでのんびりしていると言うのはどうですかしら?」
アリアはにっこり微笑みそう告げた。
「んむ??のんびり??どういうことなのじゃ??」
アリアの告げた、戦力外通知が理解しきれずに首を傾げるイルル。
そんなイルルの様子にため息をついたポチが、流石に放置仕切れずに横から補足説明をその耳元にこそこそっと加えてあげた。
「イルル様。今回の作戦はイルル様の手を借りるまでも無いって事みたいでありますよ?面倒な仕事はポチ達に任せて、イルル様はなにもせずにどーんとのんびりしていて欲しいのであります」
まずは遠回しにポチがなにもするなと伝える。一応、イルルをちょっと持ち上げておくことも忘れずに。
ここは流石、長年イルルの側に仕えていただけの事はある。イルルの扱いが中々うまい。
「ん~?そうか?妾はなんにもしないでもいいのか?だが、本当にそれでいいのかのぅ?流石に妾、みなに申し訳ない気持ちでいっぱいじゃぞ??」
そう言いながらイルルが周りの皆の顔を見回す。
だが、誰一人として余計なことを言う者はいなかった。
みんな努めてニコニコしながら、口々に気にしないで良いとの言葉を告げる。
その甲斐あって、う~ん、そうかのぅ?とイルルが半信半疑ながら頷こうとしたその時、最後の仕上げとばかりにイルルの耳元に唇を寄せる者がいた。
タマである。
「気にしないでいい。イルル様は、なにもしない方が役に立つ」
「んん?なんじゃ?なにもしない方が、役に立つ??それじゃあまるで、妾が役立たずのようではないか」
「たっ、たまっ!!」
タマが余計な事を吹き込むので、イルルはむっとしたように眉を寄せ、ポチが声を上げる。
ポチの声と視線に気づいたタマは明らかに、あっ、しまった、という顔をして、
「え~と、ちょっと間違えた。役立たずじゃなくて、イルル様はどっちかと言えば……え~っと……」
ちょっとうろたえ気味に、言葉を探すようにその両目をさまよわせた。
「どちらかと言えば、なんじゃというのじゃ!?」
「ちょっと待って。今、考えてるから……う~んと、どちらかと言えば……どちらかと言えば……あっ」
「ん?」
「そう、どちらかと言えば、邪魔者。いると邪魔になるから、大人しくしてて」
「じゃっ、じゃまもの!?妾は邪魔じゃというのか!?」
タマが苦し紛れにひねり出した、更なる余計な一言に、イルルはガーンとショックを受けた顔をし、ポチは片手で目を覆って天を仰いだ。
「わっ、妾は邪魔者じゃ無いのじゃ!役に立てる子なのじゃ!!の、のう?ポチ!そうじゃろ」
「え~っと、ハイ、ソウデスネ」
むきぃ~っとなったイルルに突然意見を求められ、うっかり棒読みのセリフを返してしまうポチ。
それが更に、イルルの苛立ちに油を注いだ。
「むぅぅぅ~~~っ!!みんなして妾をバカにしおって!!もういい!!休むのは無しじゃ!!妾、出来る女じゃと言うことを、お主等に見せつけてやるからの!?後で後悔しても遅いんじゃからの!?」
ぷんすかそう宣言するイルルに、一同はそろって肩を落とした。
こうして、イルルの作戦への参加は、覆しようの無い決定事項となってしまったのだった。
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