203 / 545
第三部 学校へ行こう
第百八十四話 入学式侵入阻止作戦!!②
しおりを挟む
「以上が今回の作戦行動になりますわ。何か質問はあるかしら??」
主のいないシュリの部屋にひっそりと集まった面々に、水の精霊アリアはジュディスと一緒に練った作戦を伝え、メンバーの顔を見回した。
ジュディスと話し合った内容を、とにかくわかりやすいようにかみ砕いて説明をしたつもりである。
流石にこれで分からない者はいなかろうと口元に淡い笑みを浮かべると、まるでそれをあざ笑うかのように、
「すまぬ。質問があるんじゃが、よいかの?」
幼げな声が生真面目に問いかけてきた。
その声を聞いたアリアが、正直うんざりですと言った表情を、その美しい面に隠そうともせずに浮かべる。
「……また、あなたですの?炎の上位古龍。あのかみ砕いた説明は、いったい誰の為だと思っていますの??全部あなたの為なんですわよ?」
「いやぁ、すまんのう。どうも妾、おつむは弱くないのじゃが、理解力と言うものが足りておらんようでの。すまぬが、もちっと優しく説明して貰えると助かるのじゃ」
悪びれず、にっかりと笑うイルルを前に、アリアはがっくりと肩を落とす。
そんなアリアの周りに他の精霊が集まって、
「や、アリアは悪くないと思うよ?うん」
「うんうん。わかりやすい説明だったと思うなぁ?うちでもわかったもん」
「うむ。お前は頑張った。偉いぞ、アリア。ここで撤退しても誰も文句は言わん」
うつむいて震えているアリアに、口々に慰めの言葉をかける。
シュリ達が出かけてから全員でここに集まり、かれこれ五回目の説明だった。
説明の度にイルルが分からんと声を上げ、そのたびに更に分かりやすく説明をし続けていたのだが、流石にそろそろ時間も押し気味である。
このわからんちんを何とかしなければ、成功する作戦も時間切れで終わってしまうだろう。
アリアは深い深ぁ~いため息を漏らし、痛むこめかみを指先でもんだ。
愛するシュリの為の作戦で妥協するのはイヤだったが仕方がない。使えない駒は、外すしか無いだろう。
そう心を決めたアリアは、
「……もう良いですわ。あきらめました……で、炎の上位古龍に一つ提案なんですけれど」
悪気のない表情で自分を見上げているロリっ子へ、ため息混じりにそう話しかけた。
「ん?なんじゃ??あ、それから妾の事はイルルと呼んでくれていいんじゃぞ?我らはみな、シュリに想いを誓った仲間同士じゃからの」
遠慮せずに、どーんと気軽に呼んでくれと、無い胸を張るイルルを生暖かい目で見つめながら、
「……じゃあ、お言葉に甘えてイルルと呼びますわね。で、イルル。提案なのですけれど、作戦開始までもう時間もあまりありませんし、あなた、今回の作戦には参加しないでのんびりしていると言うのはどうですかしら?」
アリアはにっこり微笑みそう告げた。
「んむ??のんびり??どういうことなのじゃ??」
アリアの告げた、戦力外通知が理解しきれずに首を傾げるイルル。
そんなイルルの様子にため息をついたポチが、流石に放置仕切れずに横から補足説明をその耳元にこそこそっと加えてあげた。
「イルル様。今回の作戦はイルル様の手を借りるまでも無いって事みたいでありますよ?面倒な仕事はポチ達に任せて、イルル様はなにもせずにどーんとのんびりしていて欲しいのであります」
まずは遠回しにポチがなにもするなと伝える。一応、イルルをちょっと持ち上げておくことも忘れずに。
ここは流石、長年イルルの側に仕えていただけの事はある。イルルの扱いが中々うまい。
「ん~?そうか?妾はなんにもしないでもいいのか?だが、本当にそれでいいのかのぅ?流石に妾、みなに申し訳ない気持ちでいっぱいじゃぞ??」
そう言いながらイルルが周りの皆の顔を見回す。
だが、誰一人として余計なことを言う者はいなかった。
みんな努めてニコニコしながら、口々に気にしないで良いとの言葉を告げる。
その甲斐あって、う~ん、そうかのぅ?とイルルが半信半疑ながら頷こうとしたその時、最後の仕上げとばかりにイルルの耳元に唇を寄せる者がいた。
タマである。
「気にしないでいい。イルル様は、なにもしない方が役に立つ」
「んん?なんじゃ?なにもしない方が、役に立つ??それじゃあまるで、妾が役立たずのようではないか」
「たっ、たまっ!!」
タマが余計な事を吹き込むので、イルルはむっとしたように眉を寄せ、ポチが声を上げる。
ポチの声と視線に気づいたタマは明らかに、あっ、しまった、という顔をして、
「え~と、ちょっと間違えた。役立たずじゃなくて、イルル様はどっちかと言えば……え~っと……」
ちょっとうろたえ気味に、言葉を探すようにその両目をさまよわせた。
「どちらかと言えば、なんじゃというのじゃ!?」
「ちょっと待って。今、考えてるから……う~んと、どちらかと言えば……どちらかと言えば……あっ」
「ん?」
「そう、どちらかと言えば、邪魔者。いると邪魔になるから、大人しくしてて」
「じゃっ、じゃまもの!?妾は邪魔じゃというのか!?」
タマが苦し紛れにひねり出した、更なる余計な一言に、イルルはガーンとショックを受けた顔をし、ポチは片手で目を覆って天を仰いだ。
「わっ、妾は邪魔者じゃ無いのじゃ!役に立てる子なのじゃ!!の、のう?ポチ!そうじゃろ」
「え~っと、ハイ、ソウデスネ」
むきぃ~っとなったイルルに突然意見を求められ、うっかり棒読みのセリフを返してしまうポチ。
それが更に、イルルの苛立ちに油を注いだ。
「むぅぅぅ~~~っ!!みんなして妾をバカにしおって!!もういい!!休むのは無しじゃ!!妾、出来る女じゃと言うことを、お主等に見せつけてやるからの!?後で後悔しても遅いんじゃからの!?」
ぷんすかそう宣言するイルルに、一同はそろって肩を落とした。
こうして、イルルの作戦への参加は、覆しようの無い決定事項となってしまったのだった。
主のいないシュリの部屋にひっそりと集まった面々に、水の精霊アリアはジュディスと一緒に練った作戦を伝え、メンバーの顔を見回した。
ジュディスと話し合った内容を、とにかくわかりやすいようにかみ砕いて説明をしたつもりである。
流石にこれで分からない者はいなかろうと口元に淡い笑みを浮かべると、まるでそれをあざ笑うかのように、
「すまぬ。質問があるんじゃが、よいかの?」
幼げな声が生真面目に問いかけてきた。
その声を聞いたアリアが、正直うんざりですと言った表情を、その美しい面に隠そうともせずに浮かべる。
「……また、あなたですの?炎の上位古龍。あのかみ砕いた説明は、いったい誰の為だと思っていますの??全部あなたの為なんですわよ?」
「いやぁ、すまんのう。どうも妾、おつむは弱くないのじゃが、理解力と言うものが足りておらんようでの。すまぬが、もちっと優しく説明して貰えると助かるのじゃ」
悪びれず、にっかりと笑うイルルを前に、アリアはがっくりと肩を落とす。
そんなアリアの周りに他の精霊が集まって、
「や、アリアは悪くないと思うよ?うん」
「うんうん。わかりやすい説明だったと思うなぁ?うちでもわかったもん」
「うむ。お前は頑張った。偉いぞ、アリア。ここで撤退しても誰も文句は言わん」
うつむいて震えているアリアに、口々に慰めの言葉をかける。
シュリ達が出かけてから全員でここに集まり、かれこれ五回目の説明だった。
説明の度にイルルが分からんと声を上げ、そのたびに更に分かりやすく説明をし続けていたのだが、流石にそろそろ時間も押し気味である。
このわからんちんを何とかしなければ、成功する作戦も時間切れで終わってしまうだろう。
アリアは深い深ぁ~いため息を漏らし、痛むこめかみを指先でもんだ。
愛するシュリの為の作戦で妥協するのはイヤだったが仕方がない。使えない駒は、外すしか無いだろう。
そう心を決めたアリアは、
「……もう良いですわ。あきらめました……で、炎の上位古龍に一つ提案なんですけれど」
悪気のない表情で自分を見上げているロリっ子へ、ため息混じりにそう話しかけた。
「ん?なんじゃ??あ、それから妾の事はイルルと呼んでくれていいんじゃぞ?我らはみな、シュリに想いを誓った仲間同士じゃからの」
遠慮せずに、どーんと気軽に呼んでくれと、無い胸を張るイルルを生暖かい目で見つめながら、
「……じゃあ、お言葉に甘えてイルルと呼びますわね。で、イルル。提案なのですけれど、作戦開始までもう時間もあまりありませんし、あなた、今回の作戦には参加しないでのんびりしていると言うのはどうですかしら?」
アリアはにっこり微笑みそう告げた。
「んむ??のんびり??どういうことなのじゃ??」
アリアの告げた、戦力外通知が理解しきれずに首を傾げるイルル。
そんなイルルの様子にため息をついたポチが、流石に放置仕切れずに横から補足説明をその耳元にこそこそっと加えてあげた。
「イルル様。今回の作戦はイルル様の手を借りるまでも無いって事みたいでありますよ?面倒な仕事はポチ達に任せて、イルル様はなにもせずにどーんとのんびりしていて欲しいのであります」
まずは遠回しにポチがなにもするなと伝える。一応、イルルをちょっと持ち上げておくことも忘れずに。
ここは流石、長年イルルの側に仕えていただけの事はある。イルルの扱いが中々うまい。
「ん~?そうか?妾はなんにもしないでもいいのか?だが、本当にそれでいいのかのぅ?流石に妾、みなに申し訳ない気持ちでいっぱいじゃぞ??」
そう言いながらイルルが周りの皆の顔を見回す。
だが、誰一人として余計なことを言う者はいなかった。
みんな努めてニコニコしながら、口々に気にしないで良いとの言葉を告げる。
その甲斐あって、う~ん、そうかのぅ?とイルルが半信半疑ながら頷こうとしたその時、最後の仕上げとばかりにイルルの耳元に唇を寄せる者がいた。
タマである。
「気にしないでいい。イルル様は、なにもしない方が役に立つ」
「んん?なんじゃ?なにもしない方が、役に立つ??それじゃあまるで、妾が役立たずのようではないか」
「たっ、たまっ!!」
タマが余計な事を吹き込むので、イルルはむっとしたように眉を寄せ、ポチが声を上げる。
ポチの声と視線に気づいたタマは明らかに、あっ、しまった、という顔をして、
「え~と、ちょっと間違えた。役立たずじゃなくて、イルル様はどっちかと言えば……え~っと……」
ちょっとうろたえ気味に、言葉を探すようにその両目をさまよわせた。
「どちらかと言えば、なんじゃというのじゃ!?」
「ちょっと待って。今、考えてるから……う~んと、どちらかと言えば……どちらかと言えば……あっ」
「ん?」
「そう、どちらかと言えば、邪魔者。いると邪魔になるから、大人しくしてて」
「じゃっ、じゃまもの!?妾は邪魔じゃというのか!?」
タマが苦し紛れにひねり出した、更なる余計な一言に、イルルはガーンとショックを受けた顔をし、ポチは片手で目を覆って天を仰いだ。
「わっ、妾は邪魔者じゃ無いのじゃ!役に立てる子なのじゃ!!の、のう?ポチ!そうじゃろ」
「え~っと、ハイ、ソウデスネ」
むきぃ~っとなったイルルに突然意見を求められ、うっかり棒読みのセリフを返してしまうポチ。
それが更に、イルルの苛立ちに油を注いだ。
「むぅぅぅ~~~っ!!みんなして妾をバカにしおって!!もういい!!休むのは無しじゃ!!妾、出来る女じゃと言うことを、お主等に見せつけてやるからの!?後で後悔しても遅いんじゃからの!?」
ぷんすかそう宣言するイルルに、一同はそろって肩を落とした。
こうして、イルルの作戦への参加は、覆しようの無い決定事項となってしまったのだった。
0
お気に入りに追加
2,136
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる