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第四部 王都の新たな日々
第444話 シルバのいない学院①
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「逃げてくれ、リューシュ。逃げて助けを求めて欲しい」
「そうだな。我らはともかく、お前はなにをされるか分からない。逃げた方がいい」
捕らわれの身となったとき、幼なじみで婚約者の優しい少年とその母親である女王はそう言った。
自分だけ逃げるわけにはいかないと首を振る彼女に、婚約者の少年が微笑みかける。
「大丈夫だ。ただ逃げる訳じゃない。助けを呼びに行くんだ」
彼はそう言ったが、どこに助けがいるというのだろうか。
国内の表だった味方はすでに捕らえられている。
探せば他にも味方はいるのかもしれないが、隠れ潜んでいる彼らをすぐに見つけ出せるとも思えない。
素直にそう伝えると、彼はいたずらっ子のような顔でにっと笑った。
「救いは国の外だ。俺の留学先のドリスティアは分かるよな? 助けを求める先は、俺がドリスティアの王立学院で得た友人だ。名前はシュリナスカ・ルバーノ。俺が知る他の誰よりも頼れる男だ。彼に会って、俺の名前を出し、助けを求めるんだ。きっと、力になってくれる」
彼の言葉にリューシュは渋々頷いた。
全員で捕まったままでいるよりはましなはず、そう思えたから。
でも、本当なら彼か彼の母親に逃げてほしかった。
リューシュにとって2人は、この世の何にも代え難い大切な人達だったから。
でも、身分の高い彼らが逃げ出せば、敵は血眼になって探すはず。
その点、リューシュであれば、そこまで必死に探されないだろう、という予想が出来た。
だから。
リューシュは監視の隙をついて逃げ出した。
牢獄に入れられる前に、彼と彼の母親を陽動に使って。
そして今も逃げ続けている。
夜の闇を味方に、己の獣身の敏捷さを最大限に利用して。
ただ月の輝きすらも反射する真白の毛皮だけは困りものなので、地面を転がって出来る限り汚しておいた。
彼女の獣身は、比較的小柄な雪白の豹。
ただ、輝く白い毛皮は今は薄汚れ、闇に潜むにふさわしい様子となっていたが。
森の木々に身を隠しながら、彼女は走る。
もうしばらく進めば森は途切れて草原となり、その草原の先は山岳地帯。
正規のルートで出国することは難しいと理解する彼女は、その山岳地帯を抜けて国から脱出するつもりだった。
しかし。
森を抜けて視界が開けたところで、追っ手に見つかってしまった。
獣の姿で逃げるリューシュの足は速い。
だが追っ手の乗る馬の方が持久力は上だった。
徐々につまる距離に焦りを感じるリューシュの前に現れたのは深い渓谷。
この大地の裂け目沿いにしばらく走れば吊り橋があるのは分かっていた。
それを渡り、しばらく進めば山に突き当たり、そこを越えていけば国を出られることも。
けれど、リューシュの体力がそれを許してくれそうになかった。
でも捕まるわけにはいかない。
捕まってしまえば、もう逃げ出すことなんて出来ないだろうから。
ならば、一か八か。
決意したリューシュの足が大地を蹴る。
その白い小さな体は渓谷の下の深い川に吸い込まれるように落ちていった。
◆◇◆
夏の休暇が終わり。
シュリの元へ学生としての生活が戻ってきた。
日々王立学院で学びながら、入学前の約束通り高等魔術学園や冒険者養成学校へも通い始めたシュリの日々は、なんだかんだいって忙しい。
だが、そんな忙しい毎日の中で、シュリには気になっていることがあった。
夏期休暇の半ば過ぎに、獣王国へ里帰りするといって旅だったシルバが、まだ学院へ戻ってこない。
あの時の彼の口振りだと、ちゃんと学院の授業が始まるまでには帰ってくるつもりのようだったが、そうできないようなトラブルでも起きたのだろうか?
新学期が始まって1週間がすぎ、さすがに心配になってきたシュリは、昨日、シャイナとオーギュストを獣王国へと送り出した。
シャイナは獣王国で何が起こっているかの情報収集、オーギュストはシャイナの戻りの足として。
さらに、オーギュストにはもし獣王国に移動するならどこに移動するのがいいか、前もって見ておいてもらう、という目的もあった。
もし、何かが起こっていてシルバがシュリの助けを必要としていたら、すぐに助けにいけるように。
昨夜のうちに、オーギュストのどこでも○○な黒もやで、2人は獣王国との国境近くまで移動した。
そこから先は情報収集しながら動くことになるだろうから、彼らが戻るまで少し時間はかかるだろう。
そんなことを思っていたその日の夜、彼らはシュリの予想を裏切ってあっさり帰還した。
傷ついた、白い獣を伴って。
◆◇◆
「……国境の様子がものものしいですね」
「ふむ。どうやら、獣王国は出入国を制限しているようだな。獣王国に向かう予定の商人が何組か、足止めを食らって騒いでいる」
「政変でも、起こったんでしょうか?」
「可能性はあるな」
「正規のルートでの入国は難しそうですね」
「そうだな」
「仕方ありません。こっそり秘密裏に入り込むことにしましょう」
言いながら、シャイナは懐から地図を取り出して広げた。
シャイナはその地図に記された川を指し示す。
「この川は獣王国からドリスティアに向かって流れています。深い渓谷となっているので、監視の目もないでしょう。普通はあまり選ばないルートですが、我らの身体能力なら問題ないはずです。山越えのルートもありますが、そちらは遠回りですからね。早く情報収集を終えてシュリ様にお褒めいただく為に、川ルートでちゃちゃっと侵入しちゃいましょう」
「シュリのご褒美……ああ。異論はない。だがその前に」
シャイナの提案に頷いたオーギュストは、懐に手を入れなにやらカチューシャのようなものを2つ取り出した。
そしてその片方をシャイナに向かって差し出す。
「これを装備しておけ」
「これは……猫耳、ですか?」
「そうだ。国境を抜けた先は獣人の王国、なのだろう? 獣人の姿をしていなければ目立つ。これより我らは猫獣人の兄と妹だ」
「確かに。了解しました」
頷いたシャイナは、早速カチューシャを装備した。
「おかしくないですか?」
「ふむ。問題ない。思っていたより自然な仕上がりで、俺は非常に満足している。しっぽ装備はあちらに行ってから支給しよう。リアルさを追求したらつい重くなってしまって、慣れるまではバランスをとるのが難しいからな。普通に国境を越えるならともかく、足場が悪いところでのデビューには不安が残る」
「しっぽも、ですか」
「ああ、もちろんだ。しっぽのない獣人はいないだろう?」
「そう、ですね。分かりました。では、あちらに行ってから」
「うむ。全体の仕上がりを見るのが楽しみだ。急拵えだが、力作だ」
「そう、ですか」
「獣王国の平民が着ていそうな服装も準備してあるから安心していい」
「服も……」
「自然に獣王国の国民にとけ込むためだ」
「確かに、服は重要です。助かります」
小声で言葉を交わしながら、猫耳をつけた2人は渓谷へと向かい、切り立った崖の淵へ立った。
足下の小石が、からーん、ころーん、と崖を転がり落ちていく。
のぞき込むと、遙か下の方に流れる川が見えた。
「深いな」
「もう少し下流になるとここまでじゃないんですが、そっちまで行くのは遠回りですから。降りられますよね?」
「問題ないな」
「じゃあ、降りましょうか」
「そうだな」
2人はちょっとその辺りまで散歩に行くようなノリの会話を交わし、ほぼ垂直の崖に向かってその身を投じた。
といっても、決死の覚悟で川に飛び込む、という訳ではない。
2人は有り余るほどの身体能力を有効活用して、垂直の崖のわずかな足場を使いながら谷底へ向かって降りていく。
そして程なく、谷底を流れる川の側へと降り立った。
後は、この川をさかのぼって獣王国へ向かい、国境を越えた後にまたぴょんぴょんと崖を上るだけである。
上ったらオーギュストが用意してくれた猫獣人装備をフルで身につけ、国内を旅する猫獣人の兄と妹を装って手頃な集落に入り、情報をあつめるだけ。
誰でも出来る、簡単なお仕事である。
「さ。さっさとお仕事を終わらせて、シュリ様に甘やかしてもらわないと」
「そうだな。存分にいちゃいちゃしてもらわないとな」
意気揚々と歩き出した2人はそう進まないうちに足を止めた。
川岸に倒れている、濡れそぼった白い獣を見つけたからである。
「シュリの友人の獣王国の王子は確か……」
「銀色の狼の姿をお持ちのはずです」
2人は言葉を交わし、倒れたままの獣に近づいた。
「狼、ではなさそうだな」
「そうですね。どちらかというと猫科の獣のように見えます」
「シュリの友人ではないのは残念だが、まだ息はありそうだぞ?」
「ですね。助けないと」
獣は探し人ではなかったが、2人は当然のように見知らぬ獣救助の為に動き出す。
彼らの敬愛する主ならば絶対にそうするはず、と分かっていたからだ。
そしてそんなシュリの精神は、シュリを主と仰ぐ者達にしっかりとしみこんでいた。
たとえ主の目がなくとも、弱き者を見捨てるという発想がかけらも浮かばないくらいには。
オーギュストが火をおこし、シャイナは獣を抱き上げて火の側へ。
乾いた布で毛皮を拭いつつ全身をこすってあげると、それが刺激になったのか獣は軽くせき込んで飲み込んでいた水を少し吐き出した。
そしてそのまま、うわ言のような言葉をもらした。
獣のうなり声でなく、人と同じ言葉を。
「いか、ないと。ドリ、スティアへ」
「ドリスティアへ? どうしてですか?」
「た、助けを、よば、ないと」
「助け?」
「たす、けて。シルバを。おね、がいです。シュリ、様」
シャイナとオーギュストは顔を見合わせた。
そして。
「シュリ様の元へ戻りましょう。オーギュスト。礼のアレをお願いします」
「了解した」
シャイナが白い獣をそっと抱き上げ、オーギュストが黒いもやもやを作り出す。
そして2人はいそいそとそのもやをくぐり抜け、手柄を立てて得意顔のわんこの如く、愛しい主の元へと帰って行くのだった。
「そうだな。我らはともかく、お前はなにをされるか分からない。逃げた方がいい」
捕らわれの身となったとき、幼なじみで婚約者の優しい少年とその母親である女王はそう言った。
自分だけ逃げるわけにはいかないと首を振る彼女に、婚約者の少年が微笑みかける。
「大丈夫だ。ただ逃げる訳じゃない。助けを呼びに行くんだ」
彼はそう言ったが、どこに助けがいるというのだろうか。
国内の表だった味方はすでに捕らえられている。
探せば他にも味方はいるのかもしれないが、隠れ潜んでいる彼らをすぐに見つけ出せるとも思えない。
素直にそう伝えると、彼はいたずらっ子のような顔でにっと笑った。
「救いは国の外だ。俺の留学先のドリスティアは分かるよな? 助けを求める先は、俺がドリスティアの王立学院で得た友人だ。名前はシュリナスカ・ルバーノ。俺が知る他の誰よりも頼れる男だ。彼に会って、俺の名前を出し、助けを求めるんだ。きっと、力になってくれる」
彼の言葉にリューシュは渋々頷いた。
全員で捕まったままでいるよりはましなはず、そう思えたから。
でも、本当なら彼か彼の母親に逃げてほしかった。
リューシュにとって2人は、この世の何にも代え難い大切な人達だったから。
でも、身分の高い彼らが逃げ出せば、敵は血眼になって探すはず。
その点、リューシュであれば、そこまで必死に探されないだろう、という予想が出来た。
だから。
リューシュは監視の隙をついて逃げ出した。
牢獄に入れられる前に、彼と彼の母親を陽動に使って。
そして今も逃げ続けている。
夜の闇を味方に、己の獣身の敏捷さを最大限に利用して。
ただ月の輝きすらも反射する真白の毛皮だけは困りものなので、地面を転がって出来る限り汚しておいた。
彼女の獣身は、比較的小柄な雪白の豹。
ただ、輝く白い毛皮は今は薄汚れ、闇に潜むにふさわしい様子となっていたが。
森の木々に身を隠しながら、彼女は走る。
もうしばらく進めば森は途切れて草原となり、その草原の先は山岳地帯。
正規のルートで出国することは難しいと理解する彼女は、その山岳地帯を抜けて国から脱出するつもりだった。
しかし。
森を抜けて視界が開けたところで、追っ手に見つかってしまった。
獣の姿で逃げるリューシュの足は速い。
だが追っ手の乗る馬の方が持久力は上だった。
徐々につまる距離に焦りを感じるリューシュの前に現れたのは深い渓谷。
この大地の裂け目沿いにしばらく走れば吊り橋があるのは分かっていた。
それを渡り、しばらく進めば山に突き当たり、そこを越えていけば国を出られることも。
けれど、リューシュの体力がそれを許してくれそうになかった。
でも捕まるわけにはいかない。
捕まってしまえば、もう逃げ出すことなんて出来ないだろうから。
ならば、一か八か。
決意したリューシュの足が大地を蹴る。
その白い小さな体は渓谷の下の深い川に吸い込まれるように落ちていった。
◆◇◆
夏の休暇が終わり。
シュリの元へ学生としての生活が戻ってきた。
日々王立学院で学びながら、入学前の約束通り高等魔術学園や冒険者養成学校へも通い始めたシュリの日々は、なんだかんだいって忙しい。
だが、そんな忙しい毎日の中で、シュリには気になっていることがあった。
夏期休暇の半ば過ぎに、獣王国へ里帰りするといって旅だったシルバが、まだ学院へ戻ってこない。
あの時の彼の口振りだと、ちゃんと学院の授業が始まるまでには帰ってくるつもりのようだったが、そうできないようなトラブルでも起きたのだろうか?
新学期が始まって1週間がすぎ、さすがに心配になってきたシュリは、昨日、シャイナとオーギュストを獣王国へと送り出した。
シャイナは獣王国で何が起こっているかの情報収集、オーギュストはシャイナの戻りの足として。
さらに、オーギュストにはもし獣王国に移動するならどこに移動するのがいいか、前もって見ておいてもらう、という目的もあった。
もし、何かが起こっていてシルバがシュリの助けを必要としていたら、すぐに助けにいけるように。
昨夜のうちに、オーギュストのどこでも○○な黒もやで、2人は獣王国との国境近くまで移動した。
そこから先は情報収集しながら動くことになるだろうから、彼らが戻るまで少し時間はかかるだろう。
そんなことを思っていたその日の夜、彼らはシュリの予想を裏切ってあっさり帰還した。
傷ついた、白い獣を伴って。
◆◇◆
「……国境の様子がものものしいですね」
「ふむ。どうやら、獣王国は出入国を制限しているようだな。獣王国に向かう予定の商人が何組か、足止めを食らって騒いでいる」
「政変でも、起こったんでしょうか?」
「可能性はあるな」
「正規のルートでの入国は難しそうですね」
「そうだな」
「仕方ありません。こっそり秘密裏に入り込むことにしましょう」
言いながら、シャイナは懐から地図を取り出して広げた。
シャイナはその地図に記された川を指し示す。
「この川は獣王国からドリスティアに向かって流れています。深い渓谷となっているので、監視の目もないでしょう。普通はあまり選ばないルートですが、我らの身体能力なら問題ないはずです。山越えのルートもありますが、そちらは遠回りですからね。早く情報収集を終えてシュリ様にお褒めいただく為に、川ルートでちゃちゃっと侵入しちゃいましょう」
「シュリのご褒美……ああ。異論はない。だがその前に」
シャイナの提案に頷いたオーギュストは、懐に手を入れなにやらカチューシャのようなものを2つ取り出した。
そしてその片方をシャイナに向かって差し出す。
「これを装備しておけ」
「これは……猫耳、ですか?」
「そうだ。国境を抜けた先は獣人の王国、なのだろう? 獣人の姿をしていなければ目立つ。これより我らは猫獣人の兄と妹だ」
「確かに。了解しました」
頷いたシャイナは、早速カチューシャを装備した。
「おかしくないですか?」
「ふむ。問題ない。思っていたより自然な仕上がりで、俺は非常に満足している。しっぽ装備はあちらに行ってから支給しよう。リアルさを追求したらつい重くなってしまって、慣れるまではバランスをとるのが難しいからな。普通に国境を越えるならともかく、足場が悪いところでのデビューには不安が残る」
「しっぽも、ですか」
「ああ、もちろんだ。しっぽのない獣人はいないだろう?」
「そう、ですね。分かりました。では、あちらに行ってから」
「うむ。全体の仕上がりを見るのが楽しみだ。急拵えだが、力作だ」
「そう、ですか」
「獣王国の平民が着ていそうな服装も準備してあるから安心していい」
「服も……」
「自然に獣王国の国民にとけ込むためだ」
「確かに、服は重要です。助かります」
小声で言葉を交わしながら、猫耳をつけた2人は渓谷へと向かい、切り立った崖の淵へ立った。
足下の小石が、からーん、ころーん、と崖を転がり落ちていく。
のぞき込むと、遙か下の方に流れる川が見えた。
「深いな」
「もう少し下流になるとここまでじゃないんですが、そっちまで行くのは遠回りですから。降りられますよね?」
「問題ないな」
「じゃあ、降りましょうか」
「そうだな」
2人はちょっとその辺りまで散歩に行くようなノリの会話を交わし、ほぼ垂直の崖に向かってその身を投じた。
といっても、決死の覚悟で川に飛び込む、という訳ではない。
2人は有り余るほどの身体能力を有効活用して、垂直の崖のわずかな足場を使いながら谷底へ向かって降りていく。
そして程なく、谷底を流れる川の側へと降り立った。
後は、この川をさかのぼって獣王国へ向かい、国境を越えた後にまたぴょんぴょんと崖を上るだけである。
上ったらオーギュストが用意してくれた猫獣人装備をフルで身につけ、国内を旅する猫獣人の兄と妹を装って手頃な集落に入り、情報をあつめるだけ。
誰でも出来る、簡単なお仕事である。
「さ。さっさとお仕事を終わらせて、シュリ様に甘やかしてもらわないと」
「そうだな。存分にいちゃいちゃしてもらわないとな」
意気揚々と歩き出した2人はそう進まないうちに足を止めた。
川岸に倒れている、濡れそぼった白い獣を見つけたからである。
「シュリの友人の獣王国の王子は確か……」
「銀色の狼の姿をお持ちのはずです」
2人は言葉を交わし、倒れたままの獣に近づいた。
「狼、ではなさそうだな」
「そうですね。どちらかというと猫科の獣のように見えます」
「シュリの友人ではないのは残念だが、まだ息はありそうだぞ?」
「ですね。助けないと」
獣は探し人ではなかったが、2人は当然のように見知らぬ獣救助の為に動き出す。
彼らの敬愛する主ならば絶対にそうするはず、と分かっていたからだ。
そしてそんなシュリの精神は、シュリを主と仰ぐ者達にしっかりとしみこんでいた。
たとえ主の目がなくとも、弱き者を見捨てるという発想がかけらも浮かばないくらいには。
オーギュストが火をおこし、シャイナは獣を抱き上げて火の側へ。
乾いた布で毛皮を拭いつつ全身をこすってあげると、それが刺激になったのか獣は軽くせき込んで飲み込んでいた水を少し吐き出した。
そしてそのまま、うわ言のような言葉をもらした。
獣のうなり声でなく、人と同じ言葉を。
「いか、ないと。ドリ、スティアへ」
「ドリスティアへ? どうしてですか?」
「た、助けを、よば、ないと」
「助け?」
「たす、けて。シルバを。おね、がいです。シュリ、様」
シャイナとオーギュストは顔を見合わせた。
そして。
「シュリ様の元へ戻りましょう。オーギュスト。礼のアレをお願いします」
「了解した」
シャイナが白い獣をそっと抱き上げ、オーギュストが黒いもやもやを作り出す。
そして2人はいそいそとそのもやをくぐり抜け、手柄を立てて得意顔のわんこの如く、愛しい主の元へと帰って行くのだった。
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