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第二部 少年期のはじまり

SS ただいまの翌日は大忙し!?③

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・15:00pm

 イルル達を屋敷へ連れ帰り、自室に貼って準備しておいたタペストリーハウスで休ませたシュリは、おやつがありますからいらっしゃいませんかというマチルダの声に誘われて、屋敷内のマチルダとリアの部屋に来ていた。
 今はリアと並んでいすに座り、山と盛られたお菓子をありがたく頂いているところである。


 「美味しい?シュリ君??」


 にこにこと微笑みながら問うマチルダに、シュリはこっくりと頷く。
 そのお菓子は、今、アズベルグで人気のあるお菓子のようで、マチルダがシュリとリアの為にわざわざ買い求めてきてくれたらしい。
 ちょっともっさりして水気が足りないが、味は申し分なく、シュリはリアと競うようにお菓子に手を伸ばした。
 その様子を、マチルダがにこにこしながら幸せそうに見つめるのだった。
 シュリはもちゃもちゃとお菓子を食べながら、一緒に用意されてた果実の絞り汁を飲む。


 (う~ん。これも美味しいけど、こういうお菓子にはコーヒーとかミルクとかを合わせるのが好みだなぁ……)


 内心そんな無い物ねだりをしつつ、シュリは果実の絞り汁にコクコクとのどを鳴らした。
 コーヒーは、この世界にはないんだろうなぁ、と思いつつ。


 (あ、でもミルク……牛乳はどうかな??牛ってこっちの世界でもポピュラーなのかな??見たこと無いけど……でも、牛乳自体は、確かフィー姉様のところでリメラから分けて貰ったよね。でも、他のお店とかであんまり見たことないし、あんまりメジャーじゃないんだろうなぁ……まあ、牛じゃなくても、ミルクを絞れる動物は探せばいそうな気もするけど。あ~、でも、そう思うと、ますますミルクが飲みたくなってきた……)


 シュリは果実の絞り汁を飲み干した後のコップをじっと見つめた。
 そんなシュリを見つめながら、マチルダが首を傾げる。


 「シュリ君??どうしたの??もっと飲むのかしら??」

 「……ミルク、飲みたいなぁ」

 「え?」

 「あ!」


 マチルダの問いかけに、思わず本音がこぼれてしまった。
 それを聞いて、首の傾きを深くするマチルダと、しまったと口を押さえるシュリ。


 「あの、シュリ君?ミルク、飲みたいの??」

 「あ、えっと、その、ね?」

 「……ミルク……流石に、もう……」

 「あ、うん。分かってる。ちゃんと分かってるから!」

 「……でも、頑張ればもしかしたら……そうね。シュリ君が我が侭を言うなんて滅多にないし。家を離れてたから寂しかったのかもしれないし。乳母なんだから、シュリ君の為に頑張らないとダメよね」

 「や、その、マチルダ??ミルクってのは、その……」


 違うんだよ?そうじゃなくてね?と説明を試みるも、マチルダはすっかり誤解をしてしまったようだ。シュリが母乳を飲みたがっているというように。
 マチルダはほっぺたを赤くして、熱いまなざしをシュリに注ぐと、


 「シュリ君、ちょっと待っててね??私、頑張ってみるわね」


 彼女はそう言ってそそくさともう一つの部屋の方へと行ってしまった。
 シュリが誤解をとく間もなく。


 (が、頑張ってみる……って。なにをどう頑張ると??母乳って、頑張って出るもんでもないと思うけどな……)


 そんな風に思いながら、マチルダを見送り、シュリはほっぺたを指先で掻いた。


 「まだおっぱいが欲しいなんて、シュリはまだまだ子供ね」


 はふぅっと大げさなため息と共に、冷たい響きの可愛らしい声がすぐ横から突き刺さるように投げかけられた。
 シュリは額に冷や汗を浮かべ、ぎぎぎっと自分の横に座る女の子へと顔を向ける。
 そこには、シュリと同じく五歳になったマチルダの娘のリアが居て、呆れたような眼差しでシュリを見ていた。


 「ち、ちがうよ?今のは、おっぱいが欲しいって言ったんじゃなくて、ミルクが飲みたいって言ったんだよ??」


 そんな苦しい言い訳に、リアは、はあ?なに馬鹿なこといってんの??と言わんばかりの表情を浮かべ、


 「ミルクっていったらお母さんのおっぱいのことでしょ。それ以外のミルクなんて、私は知らないけど」


 やれやれと肩をすくめられた。


 「あ、あるよ!おっぱい以外のミルクだって!!ほら、動物だって、赤ちゃんを産めばミルクを出すし、僕が言ってたミルクって、そっちの方の事で……」

 「……お母さんのおっぱいだけじゃ飽きたらず、動物のおっぱいも飲もうっていうの?うわ、変態がいる。どんだけおっぱい好き??」


 シュリの精一杯の説明は当然の事ながらリアには伝わらず、リアは大げさにシュリの側から身を引いた。


 「ち、ちがうってば。そうじゃなくて。とにかく、僕は変態じゃないから!!」


 なんとか誤解をとかねばと手を伸ばせば、


 「触らないで、変態」


 リアはイスからするりと降りて、シュリの手の届かないところへ逃げてしまう。
 突き刺さる、変態という言葉に、ダメージを受けたシュリはうぐっと呻き、だが、あきらめずにリアを追いかけた。


 「だから、違うんだよ~、リア。ちょっと待ってよ!!」

 「いや!寄らないで、変態」

 「ううう~~」


 ちょっぴり涙目になったシュリをみるリアは、なんだか楽しそうだ。
 昔から、リアはシュリをいじめて泣かせるのがとにかく好きなのだ。
 出会い方が悪かったのかもしれない。
 初対面の時、髪を引っ張られ、ほっぺたをつねられ、盛大に泣いてしまったときのことを、シュリは鮮明に覚えていた。


 「泣いたの?シュリ??」


 立ち止まったシュリの側に歩み寄り、リアはシュリの顔をのぞき込んでくる。楽しそうに。
 ちょっとうっとりしてるように見えるのは、気のせいだろうか??


 「なっ、泣いてないよ!!」

 「うそ。ちょっと涙が出てる」

 「泣いてないってば!!」


 泣いてないと言い張るシュリに、リアはちょっと不満そうに唇を尖らせる。
 そして、すっと手を伸ばすと、おもむろにシュリのほっぺたを掴んで引っ張った。
 シュリのほっぺがむにぃっと伸びて、大して痛いわけでも無いのに条件反射の様に目から涙がにじみ出る。
 それを見たリアが満足そうに笑うのが分かった。


 「ほら、泣いてる」

 「うっさい!泣いてない!!」


 シュリが反射的に言い返せば、リアの目が不機嫌そうにすっと細められる。


 「素直じゃない悪い子は、髪をむしるよ?」


 冗談には聞こえないその言葉に、シュリはひぃっと体を震わせて、両手で頭を押さえた。
 シュリのそんな慌てた様子をまじまじと見つめ、リアはくすりと笑った。面白くて仕方がないと言うように。


 「冗談、だよ。本気で怖がっちゃって。か~わいいの」


 どこがつぼだったのか、シュリにはぜんぜん分からないが、くすくすと楽しそうにリアは笑い、やっとシュリを解放してくれた。
 う~、と呻きながらほっぺたを撫でていると、再びリアの手が伸びてきたので思わずびくりと震えてしまう。
 そんなシュリを見つめ、五歳児とは思えない蠱惑的な笑みを口元に浮かべたリアは、手のひらで優しく、自分がさっきまでつねっていたシュリの頬を撫でた。
 そして、そのまま顔を寄せ、シュリのほっぺたをぺろりと舐めると、


 「もうお腹いっぱい。私、ミリシアお姉ちゃんと遊んでくるから、お母さんにはそう言っておいて」


 そんな言葉を残して、さっさと部屋を出て行ってしまった。
 残されたシュリは、リアに舐められたほっぺを手で押さえ、呆然と彼女を見送るのだった。


・15:30pm

 「シュリ君、お待たせしました……って、あら??リアは??」


 しばらくして、ほんのり上気した顔で奥の部屋から出てきたマチルダは、娘の姿が無いことに気づいておっとりと首を傾げた。
 シュリは疲れたようにテーブルに突っ伏していたが、マチルダの声を受けて顔を上げると、


 「ミー姉様と遊ぶって出て行ったよ……」


 律儀にリアの伝言をマチルダに告げた。


 「そうですか……でっ、でも、この後の事を考えると、その方が良かったかもしれないわね」


 マチルダは、ぶつぶつと独り言の様にそう言って、ちらりとシュリの方を伺うように見つめる。
 その視線を受けて、ん?と小首を傾げて見返せば、マチルダはもじもじしながらシュリに近づいてきて、


 「あの、準備ができたので、一緒にあっちへ行きましょう??」


 彼女はそう言って、シュリをそうっと抱き上げた。
 誤解なんだけどなぁ~、と思いつつ、リアとのやりとりにすっかり疲れてしまったシュリは、もぞもぞとマチルダの胸に身を寄せる。
 そんなシュリの甘えた仕草にきゅんとしながら、


 (いつもはそんなに甘えないシュリ様がこんなに甘えて……やっぱり寂しかったのね)


 マチルダは更に誤解を深めつつ、シュリを奥の部屋へと連れて行った。
 その部屋は、いつもは親子の寝室として使っている様で、ベッドが二つ並んでいる。
 マチルダは、その片方に腰を下ろし、シュリを一旦ベッドに座らせると、手早く服の胸元をくつろげた。
 そして再びシュリを抱き上げると、シュリの口元へ自分の胸をそっと差し出した。


 (誤解、なんだけどなぁ)


 目の前に突きつけられた見事なおっぱいと乳首を見ながら、シュリはもう一度思う。
 だが、何とか母乳を出そうと努力したためか、その先端はすっかり充血して張りつめていた。
 その様子がなんだか健気に思えて、


 (……まあ、たまにはマチルダに甘えるのもいいか)


 流れにあらがうことなく、シュリの為に準備された目の前の突起に、はぷっと吸いついた。


 (五歳にもなって、流石に恥ずかしいなぁ)


 幼い頃からお世話になってきた、なじみ深いマチルダの乳首をちゅうちゅう吸いながら、シュリは思う。


 (でも、なんていうか、ミフィーとマチルダのおっぱいって、なんか和むんだよなぁ)


 思いながら、容赦なくちゅ~ちゅ~吸う。
 残念ながら、マチルダの努力は実らず、今のところ母乳が出てくる兆しは見られない。
 だが、何とも言えずにリラックスしながら、シュリは条件反射の様にマチルダのおっぱいを吸い続けた。もちろん、痛くないように気を付けながら。
 その絶妙な刺激にマチルダが、あっとか、んんっとか、甘い声を出しているのを聞き流しながら、シュリは良く赤ちゃん動物がするように、吸いながらもみもみとおっぱいを刺激する。強すぎず、弱すぎず。母乳が出るのを促すように。
 半ば無意識の行為だったが、それが効いたのだろうか?
 気がついたら舌先に懐かしい味わいが触れていた。

 最初はほんの少し。
 だが、徐々にその量は増えて、口いっぱいに広がるその味を楽しみながら、シュリは夢中でのどを鳴らした。
 決しておいしい液体ではないと思う。
 でも、何とも落ち着く味なのだ。いつまでも、飲んでいたいと思わせるような。


 「んっ……で、でたかしら??美味しいですか?シュリ様??」


 シュリがのどを鳴らす様子を見て、マチルダがほっとしたように問いかける。
 シュリは上目遣いで彼女を見つめながら、こくこくと頷いた。
 そんなシュリを見つめながら、マチルダは嬉しそうに微笑む。


 「そう、よかった……シュリ様?遠慮せずにいっぱい飲んでくださいね??マチルダのおっぱいはもう、シュリ様専用なんですから」

 (まあ、ねぇ。リアは流石にもう飲まないだろうしなぁ。このおっぱいを飲むのは僕だけだろうから、きちんと飲んであげないと)


 せっかく出してくれたんだしね!!と妙な使命感に駆られつつ、一生懸命飲んでいると、それは不意にやってきた。


・母乳マッサージの技術が上達し、[母乳マスター]の称号を得ました!


 表示された文字列を見ながら思う。
 マチルダの乳首と僕って、相性悪いのかな……と。
 以前、予期せずにゲットした[乳首マスター]なる妙ちくりんな称号を手に入れたときも確か、マチルダのおっぱいと戯れている時だった。
 そして、今度は[母乳マスター]……。


 ([母乳マスター]ってなんなんだよ!?僕の称号付与機能って壊れてるんじゃないの!?)


 遠い目をしながら、半ば条件反射のようにステータス画面を開く。
 そこにはこう記されていた。


・[母乳マスター]女性の胸をマッサージし、母乳を出させる技術を極めた者に与えられる称号。胸をマッサージすることで、任意の女性の母乳の排出を促すことが出来る。性欲上昇(小)精力上昇(小)の補正が付く。母乳を一定量摂取することにより、対象の固有スキルを手に入れられる事が稀にある。


 (どんな女の人のおっぱいからも母乳を噴出させる技術なんて、僕は欲しくなかったよ……)


 僕よりもっとそれを必要としている人もいるだろうに、なぜ!?……どよんとしながらそんな事を思う。
 更に言えば性欲も精力も、今のところそんなに必要性も感じないし、[乳首マスター]同様、全くありがたく無い称号だった。


 (もっとさ~……まともな称号ってないのかなぁ)


 心の中で深く深ぁ~くため息をつきながら、シュリは思った。
 世の中、もっとまともで素晴らしい称号を得る人は沢山居るはずだ。なのに、なんで僕だけ……としょんぼりしながら、シュリはマチルダのおっぱいを吸う。
 そこからあふれ出る母性に、癒しを求めて。
 [母乳マスター]の影響か、さっきよりも母乳の出がよろしいようだ。
 一吸いごとに口の中に広がるほの甘い味に目を細めつつ、シュリは思う。


 (もういいや……今はなにも考えないで、とりあえず、飲もう……)


 と。
 頭をなでる、マチルダの優しい手の感触にちょっぴり癒されつつ、シュリはやけ酒ならぬやけおっぱいに興じた。
 その結果、今日もまた、マチルダの腰が抜けてしまうまでそのおっぱいを可愛がってしまう事となり、ふにゃふにゃになってしまったマチルダを前に深く反省することになるのは、もう少し先の話である。
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