♀→♂への異世界転生~年上キラーの勝ち組人生、姉様はみんな僕の虜~

高嶺 蒼

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第二部 少年期のはじまり

間話 エルフの隠れ里~三人娘の珍道中~②

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 「えーと、エルジャバーノ??この人達、なに??」

 「はあ。シュリの後を追ってきた、シュリの従者さん達です」

 「で、なんでここにいるのよ??」

 「シュリがいないので、せめてシュリの事を知る人から、少しでも多く新たなシュリの情報を手に入れたい、と。ですが、正直この里でシュリの話が出来る人物となると、私とあなたくらいしかいないもので……」

 「で、家庭教師のついでに連れてきた、と」

 「はあ、まあ」

 「……んで?本音は??」

 「私一人では手に余ります。どうか助けてプリーズ……はっ!!」

 「なるほど、ねぇ?」


 エルジャから、謎の美女三人についての情報を引き出したリリシュエーラは、頷きながら三人の方を見た。
 身内ではない相手に対する外面の良さを十二分に発揮した三人は、自分達の方を見ている美しいエルフに向かってにっこりと感じのいい笑顔を向けた。
 その笑顔を受けたリリシュエーラは、ちょっと面食らったような顔をして、それからちらりとエルジャバーノに視線をとばす。


 「ちょっと?ふつうに感じ良さそうだけど??」


 「……猫をかぶっているに決まってるでしょう??そんな事すら見抜けないとは」


 やれやれとばかりに肩をすくめて首を振るエルジャバーノ。
 そんな彼に、三人の笑顔が一斉に向けられる。


 「エルジャバーノ様はご冗談がお上手ですね。私達は、いつもシュリ様の従者に恥ずかしくないように努めているつもりですが」

 「猫をかぶっているもなにも、私達はいつも通りです」

 「そうですよ?まるで私達に表と裏があるみたいに。あ、リリシュエーラさん?大丈夫ですよ??私達、いつもこんな感じですから。怖くないですからね??」


 微笑みかけられたエルジャバーノの表情が強ばり、


 「え~、あ~、そうですね。私の勘違いです。きっと、たぶん……」


 ははは、と乾いた笑い声を漏らす。
 そんなエルジャバーノの様子と、シュリの従者だという三人の女性を見比べて、リリシュエーラは声に出さずに思う。
 ああ、確かにこの三人、ちょっと変わり者っぽいわ、と。
 だが、見事なポーカーフェイスでそれを隠し、にこやかに三人に話しかけた。


 「えーと、シュリの話が聞きたいのよね?」

 「「「はい、ぜひ!」」」

 「といっても、一緒にいた時間は一晩だけだし、話せることもほとんどないんだけど」

 「「「一晩!?」」」

 「ということは、シュリ様はお泊まりを!?」

 「つかぬ事をお聞きしますが、どちらの家に、どのような人数構成で夜を過ごしたのか、そこのところを詳しくお願いします」

 「ついでに言えば、どんなことがあったのか、も」


 三人のあまりの食いつきの良さに若干引きつつも、リリシュエーラはとりあえず彼女達の質問に答えていくことにした。


 「え、えーと、泊まった場所はこの家よ。シュリに聞きたいことがあったから泊まりに来てもらったの」

 「聞きたいこと?」

 「ああ。えーと、シュリが契約した精霊四人について、聞いてみたい事があって」

 「「「精霊と契約??シュリ様が??」」」

 「そうよ?エルジャバーノに聞いてない?まあ、精霊達とシュリの馴れ初めはエルジャバーノに聞いてくれる?私はそこのところはよくしらないから」

 「わかりました。ただ、一つだけ教えて下さい」

 「なに?」

 「その精霊は男性でしょうか、女性でしょうか?」

 「ああ、それなら分かるわ。四人とも女性だったわね」

 「「「やっぱり」」」


 三人は大きく頷き、また四人も増えたわね……とぼそぼそと互いに言葉を交わしあった後、再びリリシュエーラに向き直ると、


 「「「貴重な情報をありがとうございます。では、続きをお願いします」」」


 と声をそろえて先を促した。


 「あ、ハイ……っと、どこまで話したかしら?」

 「「「泊まった場所はここだというところまでです」」」

 「あ、そう。じゃ、次は人数構成、だっけ?」

 「「「はい!お願いします!!」」」

 「んーと、人数構成って言っても、精霊を除けば私とシュリ、だけよ」

 「「「二人きり!だった、と」」」

 「ま、まあ、そうね。二人きりだったわ」


 答えたリリシュエーラの目が若干泳ぎ、ほんのりと頬に血を昇らせたのを、三人は見逃さなかった。
 きらりと目を光らせて、無言のまま視線を交わしあう。
 絶対に、何かあったに違いない、と。


 「それで、二人きりの夜に、どんな事があったんですか??」


 暗黙の了解で、三人の中で一番人当たりのいいカレンが、にっこり笑ってズバリ問いかける。


 「な、なにが……って、その……」


 言いよどんだリリシュエーラの瞳がちらりとエルジャバーノの方を見る。
 どうやら、彼が居る前では言いにくいことの用だと、一瞬で察した三人は、


 「「「エルジャバーノ様、外でお待ちいただけますか?ちょっとガールズトークを致しますので」」」


 とにっこり笑ってエルジャバーノを部屋の中から追い出した。
 そして、しばし外の様子を伺い、


 「エルジャバーノ様の変態」

 「エルジャバーノ様は男色家」

 「エルジャバーノ様はシュリ様好き」


 口々にエルジャバーノの悪口(?)を口にして、さらにしばらく様子を見る。
 が、特にエルジャバーノが乱入してくることもなく、どうやら外で聞き耳を立てていることはないだろうと三人は顔を見合わせて頷き合った。


 「どうやら大丈夫そうね。でも、最後のカレンのは、あれ、悪口なの??」

 「あ~、なんだかうまい悪口が思い浮かばなくて、ですね。す、すみません」


 カレンは困った顔で笑う。
  そんなカレンを、ジュディスとシャイナは、仕方ないわねぇと呆れたように眺め、それから改めて三人でリリシュエーラに向き直った。


 「「「さ、どうぞ!」」」

 「ど、どうぞって、言われても……」


 戸惑うリリシュエーラの肩に、カレンがにっこり微笑んでぽんと手を置く。


 「大丈夫ですよ。女子会ですから。思う存分、ガールズトークをしましょう!」

 「ガールズトーク……って」


 更に戸惑うリリシュエーラに、


 「大丈夫。みんな性別は同じ。遠慮せず、赤裸々にお願いします!」


 シャイナが力強く頷き、ぐっと拳を握る。


 「せ、赤裸々にと言われても……」


 赤面するリリシュエーラの両肩を、ジュディスの両手ががしりと掴む。


 「さ、もう逃げられないわよ。観念して、洗いざらいぶちまけておしまいなさい!」


 ぎゅううううっと肩に食い込む指先に、リリシュエーラは逃げられそうもないと、とうとう諦めた。


 「えっと、その、一緒に寝てたら夢を見て……」

 「「「エッチな夢ですね?」」」

 「う……ま、まあ、そうなんだけど。で、目を覚ましたら、胸に違和感があって、で、見てみたら」

 「「「み、見てみたら??(ゴクリ)」」」

 「シュ、シュリに、その、おっぱい吸われてたのよ……そ、それだけよ。それだけ!!」


 所々つっこまれたり促されたりしながら、なんとか言い終えたリリシュエーラは顔を真っ赤にした。


 「シュリ様に……」

 「おっぱいを……」

 「吸われた……」

 「「「うらやましい……っっ!!」」」


 それを聞いた三人は、魂の叫びとも言えるような言葉をこぼし、その視線をリリシュエーラの胸元に注いだ。


 「な、なによ?」


 その視線に不穏なものを感じ、胸をかばうように両手を交差させたリリシュエーラに、三人がじりじりと迫る。


 「リリシュエーラさん、シュリ様が味わったおっぱいを、さわらせてもらえませんか?」

 「いえ、むしろ見せてもらえないですか?シュリ様がしゃぶったおっぱい」

 「で、できればちょっぴり舐めさせてもらえないでしょうか?シュリ君の吸ったおっぱい」

 「「あ、それいい!!シュリ様と間接おっぱい!!!」」


 最後の、カレンの主張に、残りの二人が乗っかる。


 「か、間接おっぱい……って。あなた達ねぇ」


 リリシュエーラは完全にどん引きだ。


 「「「お願いします!!ぜひ、シュリ様(君)と間接おっぱいを!!!」」」


 だが、リリシュエーラがどれだけ引こうとも、三人はどこまでも真剣だった。
 だが、三人がかりで拝み倒してもリリシュエーラがうんと言うことは無かった。
 最後には、頭から湯気を出したリリシュエーラにエルジャバーノ共々叩き出されて、三人はとぼとぼとエルジャバーノの家へと戻らざるを得なくなったのだった。





 「「「ああああ……シュリ様(君)と、間接おっぱい」」」


 三人は、本人達以外には訳の分からない嘆きを漏らし、エルジャの家のリビングのテーブルに仲良く突っ伏した。


 「だから、さっきから間接おっぱいって何なんですか。卑猥ですから、止めて下さい。品性を疑いますよ?」


 エルジャは苦虫を噛み潰したような顔をしつつも、三人のために入れたお茶をそれぞれの前に置いて、自らもイスに座った。


 「で?リリシュエーラから、シュリと精霊達のエピソードでも話してやれと言われましたが、聞く気はあるんですか?興味ないならいいですけど」

 「「「ぜひお願いします……はあ。間接おっぱい……」」」

 「だから、その単語は止めなさいといってるでしょう?止めないなら、話は終わりです」

 「「「う……や、めます」」」

 「よろしい。で?精霊とシュリの、どんな話が聞きたいと??」

 「「「精霊は、シュリ様(君)に気があるんでしょうか??」

 「……なんですか、それは」


 エルジャバーノは頭が痛いとばかりに額に手を当てた。話すのもバカらしいと思うものの、話さなければ終わらないだろうと思い直し、さっさと話して終わらせることにした。


 「……まあ、精霊とは我らとは全く違う存在ですから、その感情も私達と全く同じとは言えないかもしれません。ですが、彼女達の様子を見て、それを私達の感情に置き換えるとすると、アレは確かに、好意とか、恋慕とか、そういう類の感情のようには見えましたね」

 「「「精霊すらも虜にするなんて……さすが、シュリ様(君)」

 「虜、ですか。確かに、そうかもしれないですね。魔力の供給を、わざわざ唇を通して貰うほどの入れ込みようですし」

 「魔力の供給を唇から……?」

 「それは、ズバリ……」

 「あれ、ですよね……?」

 「「「シュリ様(君)とキス……うらやましすぎる」」」


 三人が再び、がっくりとテーブルに突っ伏す。
 エルジャは半眼でそんな三人を眺め、それから今の隙に逃げましょうとそーっとその場を離れようとした。
 だが、それを察知したシャイナの手ががっとエルジャの服を掴む。


 「質問……」

 「な、なんでしょう?」

 「舌は??」

 「は???」

 「舌は入ってた?」

 「はい??」


 シャイナから突きつけられた、突然の突拍子もない質問に、一瞬なにを問われているのか分からずに目を白黒させるエルジャ。
 そんな彼の服をもう一人の手が掴んで引き寄せた。


 「ディープなキスだったの?それろもくっつけるだけのキス?」


 ジュディスがもう少しわかりやすく、かみ砕いてエルジャに問いかける。


 「……そんな質問を、祖父である私にぶつけないで欲しいものですね。全く」


 ぶつぶつ言いながら、だが、答えねばいつまでたっても開放されないと理解しているエルジャは、その時の事を思い出す。
 孫のそんな場面を凝視するのは気恥ずかしく、更に少し離れていたためにしっかり見たわけではないが、音は聞こえてきた。
 音が聞こえた、ということは、恐らく……。


 「たぶん、深いほうだと、思いますが?」


 これでいいですか?とジュディスとシャイナの手を引き剥がしたエルジャの首元に、第三の刺客の手が伸びてきた。
 カレンである。


 「そ、その精霊さん達は、ど、どこへ??」

 「……彼女達はシュリの精霊ですから、もちろんシュリと一緒に行きましたけど?」


 カレンの血を吐くような質問に、さらりとエルジャが答えた。
 その答えを聞いたカレンが、ずるずると崩れ落ちる。
 それに続くように、ジュディスとシャイナも、力なく崩れ落ちた。
 そして、異口同音にのたまう。


 「「「ああ。シュリ様(君)との間接キスも無理なんて・・・・・・」」」


 そんな三人をエルジャバーノは呆れ果てたように眺め、それから今度こそ彼女達から逃げ出そうと踵を返した。
 さかさかと歩き、彼女達と距離を取りながら思う。


 (ああ、シュリ。早く彼女達を引き取りに来て下さい……)


 と。


 (このままでは、あなたの大事なおじー様の胃におっきな穴が空いちゃいます……)


 エルジャバーノは心の中で愛しい孫に語りかけ、少しでも早くお願いします、と心の底から祈った。
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