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第一部 幼年期
第八十二話 父の敵
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(シュリ様、ご指示の通り、捕らわれの姫君は無事に保護しました。ご安心を)
(シュリ様。ただ今、討伐隊と共に盗賊団の拠点に到着しました。中からの合図がありしだい、盗賊共を残さず駆除いたします)
脳裏に響く、シャイナとジュディスの報告の声に、シュリはほっと息をつく。
キキは無事に救出され、盗賊団の命運もあとわずか。
(そして僕は、もうすぐ黒幕とご対面、か)
父の敵との対面を思い、表情を引き締めるシュリがいるのは籠の中。
盗賊団のアジトからザーズに連れ出された後、それなりの時間を馬に揺られて過ごしたが、今は馬から下ろされてザーズの手で運ばれているようだ。
今は建物の中に入ったようだが、籠の中なので周りの様子はまるでわからない。
時折、人の気配を感じるものの、その人数は屋敷の規模に比べるとかなり少ないように思えた。
恐らく、貴族か金持ちの別荘か何かなのだろう。
そんな中をザーズは我が物顔で、誰と言葉を交わすこともなく、迷いもせずに進んでいく。
この屋敷の構造にずいぶん慣れいているようだ。
今までにも幾度となくこの屋敷に足を運んでいるのだろう。
使用人達も、そんなザーズの姿を見慣れているに違いない。
そうでなければ、これほど怪しい風体の男を、屋敷に招き入れることなど、ありはしないだろうから。
そうこうしているうちに、目的地に着いたのか、少々乱暴なノックの音。
「坊ちゃん。俺でさ。ザーズです。例のモノを持ってきやしたぜ。入ってもいいですかい?」
「ザーズか。いいだろう。入ってこい」
割れ鐘のような声でザーズが問えば、室内からはどこか聞き覚えのあるような若い男の声が答えを返す。
ザーズは遠慮なく室内に入り、周囲に漂う妙に甘ったるい匂いがシュリの鼻腔を刺激した。
シュリは思わず鼻の付け根にしわを寄せ、くちゅんと小さなくしゃみをする。
すると、それを聞き咎めたのであろう若い男がバカにしたように鼻で笑い、
「可愛らしいくしゃみだな。それが例のモノか?」
「へい。念のため坊ちゃんに直接確認してもらおうと思って持ってきたんでさ」
「なるほどな。だが、僕も直接みたことがあるわけじゃないんだが。まあ、いい。一応確認しておくか。それにしてもザーズ……」
「へい、何でしょう、坊ちゃん」
「そろそろ、その坊ちゃんというの、やめないか?僕も大人だし、なんというか、むずがゆい」
「はあ。でも、俺にとっちゃあ、坊ちゃんは坊ちゃんなんで」
「ったく、仕方ないな。しかし、父上もよくお前のような者を僕の護衛に任命したもんだな。おかげで今は重宝しているが」
「まあ、あの頃はもう少しましな人間でしたからね。それにしても、俺を悪い道へそそのかした坊ちゃんに言われたかないですけどねぇ」
「そうだな。違いない。あの頃のお前はバカ真面目だったが、こっちの才能もあったんだろうな。どうだ?今の方が楽しいだろう?」
「まあ、そうとも言えやすかね」
二人のやりとりから察するに、二人はどうやら主従関係にあるようだ。それもかなり古くからの。
しかも、ザーズは若い男の指示で行動をしているようだが、なぜそれほど彼に忠義を示すのか。
シュリはそのことに疑問を抱きながらもとりあえずは脇に置き、今は話の続きに耳を澄ますことにした。
「最近の稼ぎはどうだ?」
「まあ、ぼちぼちといったところでしょうかねぇ。今回の上がりは、馬車の襲撃で金目のモノがそこそこ手に入ったんで、それなりに持ってきてやすが」
馬車の襲撃ーそのキーワードにシュリはぴくりと眉を動かした。
小さな籠の中の赤ん坊がしっかり話を理解しながら聞き耳をたてていることなど夢にも思っていない男達は、なんの警戒もなく事件についての会話を続ける。
「馬車の襲撃か。あれはご苦労だったな。よくぞカイゼル・ルバーノのお気に入りの弟を始末してくれたな。結構強いという噂だったから、大変だっただろう?」
「まあ、確かに苦労しやしたね。ですが、こっちにも元冒険者でそこそこ腕の立つ男が一人いやしてね。そいつが頑張ってくれやしたし、まあ、こっちには人数がいやしたから、囲んでしまえば、ねえ?」
「なるほど。大人数で囲んで始末したか。それは奴もさぞ無念だったことだろう。お前も悪だな」
「いえいえ、坊ちゃんこそ」
そんな悪代官と越後屋のようなやりとりをして、二人は悪い含み笑いを交わしあう。
だがすぐに、若い男の苦虫を噛み潰したような声が続いた。
「しかし、あれだな。あの時点でジョゼット・ルバーノが妻子連れだという情報が入っていれば、今回こんな手間をかける必要もなかったのだがな」
「ですねぇ。そのことを知ってりゃあ、何が何でも見つけて一緒に始末したんですがね」
「情報を仕入れる密偵も中々中枢には送り込めなくてな。最近やっと屋敷のメイドに一人、手の者を送り込んだが、こちらは中々成果を出すまでに至らんし、情報もそれほど送ってこない。今回はたまたま、カイゼルの元の下っ端役人が、シュリナスカがお供をつれて狩猟小屋に行くという情報をつかんでダメもとで動いてみたが、やってみるものだ。お前のおかげで大成功だよ」
屋敷にメイドを送り込んだーその言葉に、シュリはこの件の黒幕が誰なのか、わかった気がした。
無言でレーダーを起動し、自分の側にある赤い点をタップしてみる。
一つはもちろんザーズのもの。
そしてもう一つをタップして浮かび上がった名前、そこにはガナッシュ・クリマムの文字がはっきりと記されていた。
シャイナの元主で、シュリをねらっている男。
シュリの姉様達の婿の座を狙っていて、シャイナにヒドいことをしたゲス野郎。
そこに今、もう一つ情報が加わる。
ジョゼを殺す指示を出し、ミフィーを不幸にした人でなし、と。
(でも、やっぱりシャイナの他にも内通者がいたんだな)
シュリは冷たい怒りに瞳を凍り付かせながら思う。この事が片付いたら、一度徹底的に間者の捜索をする必要があるな、と。
奴の話しぶりからすると、中枢は別として末端にはかなりの間者が入り込んでいそうな感じが伺えた。
全てを探し出すことは難しいにしても、最低限、ジョゼがカイゼルを訪ねてくる件を漏らした奴だけは見逃すつもりはなかった。
そいつがいなければ、今もジョゼは生きていて、ミフィーとシュリの傍らに居たはずなのだから。
その機会を永遠に奪うきっかけを作った奴を、許せるはずもない。
なんとしてでも見つけだし、その罪を思い知らせてやるのだ。
シュリはぎゅっと唇をかみしめる。
それから再び、首を傾げた。
それにしてもなぜ、ザーズも数多くの間者も、ガナッシュのような男にこれほど思いを寄せ、従うのか。まるで何かで操られているようだ、と。
そこまで考えて、シュリははっとする。
思い出したのだ。彼が得ている恩寵を。
愛と美の女神の加護。
シュリが運命の女神の加護による恩恵を受けているように、ガナッシュも何かしら便利な恩恵を手に入れているはず。
それは恐らく、魅了系の能力ではないかと、シュリはふんでいた。
現にシャイナも魅了がかかっていたのだから恐らく間違いはないはずだ。
ザーズにも、どうやってだか魅了がかかっているのではないかと思うのだが、彼はシュリの愛の奴隷と言う訳じゃないからそう簡単に状態異常が確認出来る訳もない。
どうしたら分かるかなーそう思ったとき、あるスキルの名前がぽんと頭に浮かんだ。
こう言うときに使わないでいつ使うんだというそのスキルを、シュリは即座に使用する。
もちろん、ザーズに向かって。
名前[ザーズ]
年齢[49歳]
種族[半獣人]
状態[やや悪い]
病気[性病]
精神[洗脳(中)]
状態異常[空腹・魅了(強)]
でた情報はこんな感じ。
使ったスキルは、以前リアにも使ったことのあるスキル[状態診察]である。
あれ以来使ったことはなかったが、意外なところで役に立った。
しかし、ザーズよ。性病って……。
まあ、確かにこっちの世界、そういうのがワイルドな印象はあるし、避妊具なんてもんはないだろうけど。
まあ、それは置いておいて。
それより何より気になるのは、やはり魅了と洗脳の文字だろう。
魅了はもちろんガナッシュがかけているのだろうけど、洗脳ってのはなんだろうか。
(長いつき合いの中、ずーっと魅了され続けていたせいで、ガナッシュが望むような性格になってきちゃったってことなのかな?昔は真面目な性格だったって、さっきの二人の会話にもあったし……)
うーむと考え、自分なりに結論づける。
本当のところは分からない。
だが、ザーズが魅了されていようが洗脳されていようが、彼がやってしまったことは変わらないし、罪が減じられるはずもない。
日本なら、精神錯乱ということで減刑されてしまうのかもしれないが、ここは日本ではないのだ。
もちろんシュリも、魅了されていたからといって、ザーズを許してあげるつもりはなかった。
「さて、じゃあそろそろご対面といこうか」
そんなガナッシュの声が聞こえてきて、いよいよか、と籠の中で構える。
「じゃあ、そっちに持っていきやすよ」
ザーズのそんな言葉と共に、籠が再び動いてシュリの体が揺れた。
その揺れの中で、シュリはどうしても気になっている事について思考を巡らせた。
今までシュリは、ガナッシュは肉体関係を通じて魅了をしていると思っていた。シャイナの時がそんな感じだったからだ。
しかし、ザーズはどうなのか。彼は男で、ガナッシュも男である。
(これは、あれか?やっぱ、あれなのか?)
ちょっと鼻息が荒いのはご愛敬。
前世に、そっち好きの友人やら後輩から、少々薫陶を受けたことがあるためである。
念の為言っておくが、シュリ……瑞希はいうほどどっぷり浸かっていたわけではない。
はっきり言って初心者レベルである。
が、嫌いだったわけではないし、興味がないわけでもない。
自分が男になった今、自分自身で試してみようとは全く思いはしないのだが、他人のそれはちょっと気になる、そんな感じだ。
シュリは不意に戻ってきた前世の感覚のまま思う。
(これってやっぱりBL的な!?)
……と。
そしてとうとう移動が終わり、籠の縁から憎い敵の顔がのぞきこんだ瞬間、不覚にもシュリは思ってしまった。
ガナ×ザーかな、それともザー×ガナかな……と。
友人達に植え付けられた、腐女子的な思考のままに。
そして、そんな屈辱的な妄想の餌食になっているとも知らず、そこそこイケメン面のガナッシュは、
「やあ、初めまして、だね。シュリナスカ・ルバーノ。といっても、すぐにさよならする事になるだろうけどね」
そう言って、裏に腹黒さを隠したさわやか笑顔で、にっこりシュリに笑いかけるのだった。
(シュリ様。ただ今、討伐隊と共に盗賊団の拠点に到着しました。中からの合図がありしだい、盗賊共を残さず駆除いたします)
脳裏に響く、シャイナとジュディスの報告の声に、シュリはほっと息をつく。
キキは無事に救出され、盗賊団の命運もあとわずか。
(そして僕は、もうすぐ黒幕とご対面、か)
父の敵との対面を思い、表情を引き締めるシュリがいるのは籠の中。
盗賊団のアジトからザーズに連れ出された後、それなりの時間を馬に揺られて過ごしたが、今は馬から下ろされてザーズの手で運ばれているようだ。
今は建物の中に入ったようだが、籠の中なので周りの様子はまるでわからない。
時折、人の気配を感じるものの、その人数は屋敷の規模に比べるとかなり少ないように思えた。
恐らく、貴族か金持ちの別荘か何かなのだろう。
そんな中をザーズは我が物顔で、誰と言葉を交わすこともなく、迷いもせずに進んでいく。
この屋敷の構造にずいぶん慣れいているようだ。
今までにも幾度となくこの屋敷に足を運んでいるのだろう。
使用人達も、そんなザーズの姿を見慣れているに違いない。
そうでなければ、これほど怪しい風体の男を、屋敷に招き入れることなど、ありはしないだろうから。
そうこうしているうちに、目的地に着いたのか、少々乱暴なノックの音。
「坊ちゃん。俺でさ。ザーズです。例のモノを持ってきやしたぜ。入ってもいいですかい?」
「ザーズか。いいだろう。入ってこい」
割れ鐘のような声でザーズが問えば、室内からはどこか聞き覚えのあるような若い男の声が答えを返す。
ザーズは遠慮なく室内に入り、周囲に漂う妙に甘ったるい匂いがシュリの鼻腔を刺激した。
シュリは思わず鼻の付け根にしわを寄せ、くちゅんと小さなくしゃみをする。
すると、それを聞き咎めたのであろう若い男がバカにしたように鼻で笑い、
「可愛らしいくしゃみだな。それが例のモノか?」
「へい。念のため坊ちゃんに直接確認してもらおうと思って持ってきたんでさ」
「なるほどな。だが、僕も直接みたことがあるわけじゃないんだが。まあ、いい。一応確認しておくか。それにしてもザーズ……」
「へい、何でしょう、坊ちゃん」
「そろそろ、その坊ちゃんというの、やめないか?僕も大人だし、なんというか、むずがゆい」
「はあ。でも、俺にとっちゃあ、坊ちゃんは坊ちゃんなんで」
「ったく、仕方ないな。しかし、父上もよくお前のような者を僕の護衛に任命したもんだな。おかげで今は重宝しているが」
「まあ、あの頃はもう少しましな人間でしたからね。それにしても、俺を悪い道へそそのかした坊ちゃんに言われたかないですけどねぇ」
「そうだな。違いない。あの頃のお前はバカ真面目だったが、こっちの才能もあったんだろうな。どうだ?今の方が楽しいだろう?」
「まあ、そうとも言えやすかね」
二人のやりとりから察するに、二人はどうやら主従関係にあるようだ。それもかなり古くからの。
しかも、ザーズは若い男の指示で行動をしているようだが、なぜそれほど彼に忠義を示すのか。
シュリはそのことに疑問を抱きながらもとりあえずは脇に置き、今は話の続きに耳を澄ますことにした。
「最近の稼ぎはどうだ?」
「まあ、ぼちぼちといったところでしょうかねぇ。今回の上がりは、馬車の襲撃で金目のモノがそこそこ手に入ったんで、それなりに持ってきてやすが」
馬車の襲撃ーそのキーワードにシュリはぴくりと眉を動かした。
小さな籠の中の赤ん坊がしっかり話を理解しながら聞き耳をたてていることなど夢にも思っていない男達は、なんの警戒もなく事件についての会話を続ける。
「馬車の襲撃か。あれはご苦労だったな。よくぞカイゼル・ルバーノのお気に入りの弟を始末してくれたな。結構強いという噂だったから、大変だっただろう?」
「まあ、確かに苦労しやしたね。ですが、こっちにも元冒険者でそこそこ腕の立つ男が一人いやしてね。そいつが頑張ってくれやしたし、まあ、こっちには人数がいやしたから、囲んでしまえば、ねえ?」
「なるほど。大人数で囲んで始末したか。それは奴もさぞ無念だったことだろう。お前も悪だな」
「いえいえ、坊ちゃんこそ」
そんな悪代官と越後屋のようなやりとりをして、二人は悪い含み笑いを交わしあう。
だがすぐに、若い男の苦虫を噛み潰したような声が続いた。
「しかし、あれだな。あの時点でジョゼット・ルバーノが妻子連れだという情報が入っていれば、今回こんな手間をかける必要もなかったのだがな」
「ですねぇ。そのことを知ってりゃあ、何が何でも見つけて一緒に始末したんですがね」
「情報を仕入れる密偵も中々中枢には送り込めなくてな。最近やっと屋敷のメイドに一人、手の者を送り込んだが、こちらは中々成果を出すまでに至らんし、情報もそれほど送ってこない。今回はたまたま、カイゼルの元の下っ端役人が、シュリナスカがお供をつれて狩猟小屋に行くという情報をつかんでダメもとで動いてみたが、やってみるものだ。お前のおかげで大成功だよ」
屋敷にメイドを送り込んだーその言葉に、シュリはこの件の黒幕が誰なのか、わかった気がした。
無言でレーダーを起動し、自分の側にある赤い点をタップしてみる。
一つはもちろんザーズのもの。
そしてもう一つをタップして浮かび上がった名前、そこにはガナッシュ・クリマムの文字がはっきりと記されていた。
シャイナの元主で、シュリをねらっている男。
シュリの姉様達の婿の座を狙っていて、シャイナにヒドいことをしたゲス野郎。
そこに今、もう一つ情報が加わる。
ジョゼを殺す指示を出し、ミフィーを不幸にした人でなし、と。
(でも、やっぱりシャイナの他にも内通者がいたんだな)
シュリは冷たい怒りに瞳を凍り付かせながら思う。この事が片付いたら、一度徹底的に間者の捜索をする必要があるな、と。
奴の話しぶりからすると、中枢は別として末端にはかなりの間者が入り込んでいそうな感じが伺えた。
全てを探し出すことは難しいにしても、最低限、ジョゼがカイゼルを訪ねてくる件を漏らした奴だけは見逃すつもりはなかった。
そいつがいなければ、今もジョゼは生きていて、ミフィーとシュリの傍らに居たはずなのだから。
その機会を永遠に奪うきっかけを作った奴を、許せるはずもない。
なんとしてでも見つけだし、その罪を思い知らせてやるのだ。
シュリはぎゅっと唇をかみしめる。
それから再び、首を傾げた。
それにしてもなぜ、ザーズも数多くの間者も、ガナッシュのような男にこれほど思いを寄せ、従うのか。まるで何かで操られているようだ、と。
そこまで考えて、シュリははっとする。
思い出したのだ。彼が得ている恩寵を。
愛と美の女神の加護。
シュリが運命の女神の加護による恩恵を受けているように、ガナッシュも何かしら便利な恩恵を手に入れているはず。
それは恐らく、魅了系の能力ではないかと、シュリはふんでいた。
現にシャイナも魅了がかかっていたのだから恐らく間違いはないはずだ。
ザーズにも、どうやってだか魅了がかかっているのではないかと思うのだが、彼はシュリの愛の奴隷と言う訳じゃないからそう簡単に状態異常が確認出来る訳もない。
どうしたら分かるかなーそう思ったとき、あるスキルの名前がぽんと頭に浮かんだ。
こう言うときに使わないでいつ使うんだというそのスキルを、シュリは即座に使用する。
もちろん、ザーズに向かって。
名前[ザーズ]
年齢[49歳]
種族[半獣人]
状態[やや悪い]
病気[性病]
精神[洗脳(中)]
状態異常[空腹・魅了(強)]
でた情報はこんな感じ。
使ったスキルは、以前リアにも使ったことのあるスキル[状態診察]である。
あれ以来使ったことはなかったが、意外なところで役に立った。
しかし、ザーズよ。性病って……。
まあ、確かにこっちの世界、そういうのがワイルドな印象はあるし、避妊具なんてもんはないだろうけど。
まあ、それは置いておいて。
それより何より気になるのは、やはり魅了と洗脳の文字だろう。
魅了はもちろんガナッシュがかけているのだろうけど、洗脳ってのはなんだろうか。
(長いつき合いの中、ずーっと魅了され続けていたせいで、ガナッシュが望むような性格になってきちゃったってことなのかな?昔は真面目な性格だったって、さっきの二人の会話にもあったし……)
うーむと考え、自分なりに結論づける。
本当のところは分からない。
だが、ザーズが魅了されていようが洗脳されていようが、彼がやってしまったことは変わらないし、罪が減じられるはずもない。
日本なら、精神錯乱ということで減刑されてしまうのかもしれないが、ここは日本ではないのだ。
もちろんシュリも、魅了されていたからといって、ザーズを許してあげるつもりはなかった。
「さて、じゃあそろそろご対面といこうか」
そんなガナッシュの声が聞こえてきて、いよいよか、と籠の中で構える。
「じゃあ、そっちに持っていきやすよ」
ザーズのそんな言葉と共に、籠が再び動いてシュリの体が揺れた。
その揺れの中で、シュリはどうしても気になっている事について思考を巡らせた。
今までシュリは、ガナッシュは肉体関係を通じて魅了をしていると思っていた。シャイナの時がそんな感じだったからだ。
しかし、ザーズはどうなのか。彼は男で、ガナッシュも男である。
(これは、あれか?やっぱ、あれなのか?)
ちょっと鼻息が荒いのはご愛敬。
前世に、そっち好きの友人やら後輩から、少々薫陶を受けたことがあるためである。
念の為言っておくが、シュリ……瑞希はいうほどどっぷり浸かっていたわけではない。
はっきり言って初心者レベルである。
が、嫌いだったわけではないし、興味がないわけでもない。
自分が男になった今、自分自身で試してみようとは全く思いはしないのだが、他人のそれはちょっと気になる、そんな感じだ。
シュリは不意に戻ってきた前世の感覚のまま思う。
(これってやっぱりBL的な!?)
……と。
そしてとうとう移動が終わり、籠の縁から憎い敵の顔がのぞきこんだ瞬間、不覚にもシュリは思ってしまった。
ガナ×ザーかな、それともザー×ガナかな……と。
友人達に植え付けられた、腐女子的な思考のままに。
そして、そんな屈辱的な妄想の餌食になっているとも知らず、そこそこイケメン面のガナッシュは、
「やあ、初めまして、だね。シュリナスカ・ルバーノ。といっても、すぐにさよならする事になるだろうけどね」
そう言って、裏に腹黒さを隠したさわやか笑顔で、にっこりシュリに笑いかけるのだった。
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