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第三→四部 旅路、そして新たな生活
第276話 新生活への旅立ち②
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なんだか、旅立ちの挨拶をする前から色々と疲れてしまったが、どうにかこうにか部屋を脱出できたシュリは、安堵の吐息を漏らす。
今は色々と荷物を詰め込んだ馬車の前で、今にも男泣きをはじめそうに目を潤ませたカイゼルの前に立っていた。
そのカイゼルの右側には、シュリを誇らしそうに見つめてくれるおじい様とおばあ様の姿。
出来ればカイゼルにも毅然として送り出して欲しかったとは思うが、まあ、多くは望むまい。
おじい様達の反対どなりにはエミーユをはじめ、ミフィーや三人の姉様達、一歩下がってマチルダとリアが、カイゼル同様潤んだ瞳でシュリを見つめている。
まあ、リアに関しては気のせいかもしれない。
彼女がシュリとの別れを惜しんで泣き出すなど、ちょっと想像が出来なかった。
そんな中、シュリへの別れの挨拶のため、最初に進み出たのはバステスとハルシャだった。
「シュリ、せっかく王都に行くんじゃ。楽しんでたくさん学んでおいで。お前の生活が落ち着いたら、おじい様もおばあ様もお前の顔を見に王都に足を伸ばすことにしよう」
「ええ。必ずあなたの顔を見に行きますから、身体に気をつけて過ごしてちょうだいね? 困ったことがあったらすぐに頼るんですよ? おじい様もおばあ様も、王都でのツテはそれなりに持っていますからね」
バステスは豪快に笑いながらシュリの頭を撫で、ハルシャは優しく微笑みながらシュリの頬を撫でる。
「はい、おじい様、おばあ様。王都で会えるのを楽しみにしてます。お二人が来るまでに、楽しい場所とかおいしいご飯のお店とか、色々探しておきますね!!」
ごく常識的な二人の様子にシュリは、こうでなくちゃなぁ、と微笑んで、順番にバステスとハルシャに抱きつき、別れを惜しんだ。
次に進み出てきたのはエミーユと三人の姉様達。
カイゼルはどうやら最後に挨拶をするつもりらしい。
「シュリ、王都は危険が多いから気をつけるのよ? 特に学校の行き帰りは、十分に注意しなさい。貴族には、美しい少年を愛でるのが趣味という奥方は掃いて捨てるほどいるわ。なかでも、大貴族と呼ばれる類の人種は、自分達より身分が低い人を、人と思っていない傾向があるから危険ね。もし、身の危険を感じたら、なんとしてでも助けるから、必ず連絡して。国王陛下にねじ込んででも、相手貴族に喧嘩を売ってでも、どうにかして助け出してみせるわ」
「う、うん。気をつけます」
がっと肩を捕まれ、怖いくらいに真面目な顔で忠告される。
シュリは気圧されたように頷き、それを確かめてやっと、エミーユは顔を緩めた。
「王都は遠いから、目が届かなくて心配だわ。ジュディス、シャイナ、カレン。シュリの事、よろしく頼むわね」
「「「はい、奥様」」」
「シュリの事ならなんでも、出来るだけ事細かに報告してちょうだいね?」
「「「……はい、奥様」」」
「本当、心配だわ。でも、仕方ないわね。シュリは勉強の為に王都に行くんですもの。邪魔なんて出来ないわね……じゃあ、シュリ」
「はい、おば様」
なにやらもの言いたげな眼差しは向けられたものの、流石に夫のいる前なので自重したようだ。
いつもの、名前で呼んで欲しいという主張はエミーユの喉の奥に引っ込んだままだった。
その代わりと言うわけでもないだろうが、エミーユはシュリの方へ顔を寄せて妖艶に微笑む。
「おば様に、お別れのキスをしてちょうだい」
「はい。いってきます、おば様」
エミーユの求めに快く応じて、シュリは彼女の顔にそっと顔を寄せ、その頬にちゅっと唇で挨拶をする。
お別れのキスならこんなもんだろう、という認識のもと。
だが、顔を話して微笑んでみせたシュリを迎えたのは、不満そうなエミーユの顔だった。
あれ?、と首を傾げる間もなく、エミーユの手がガッとシュリの頬へと伸びる。
「長いお別れになるんだから、そんなキスじゃだめよ。もっとしっかりしなきゃ。ね?」
彼女は婉然と微笑み、有無を言わせずにシュリの唇を容赦なく奪った。
唇を割って入ってくるエミーユの舌を感じながら、
(カイゼル……は今更として、おじい様とおばあ様も見てるのに、これってオッケーなの!?)
シュリは目だけを動かして周囲の状況を確認する。
夫であるカイゼルは、嫉妬の目を向けていた。
シュリにではなく、エミーユに。
え、そっち?、とシュリが若干引いていると、今度は物欲しげな視線をシュリに向けてきたので、自然に目をそらし、その流れでバステスとハルシャの様子もそっと伺ってみる。
が、バステスもハルシャも、おやおやまあまあ、と非常に微笑ましそうにシュリと息子の嫁のキスシーンを見守っている。
それでいいのか!?、と思いはするものの、
(ま、まあ、怒ってないならいいか)
と、シュリはおとなしくエミーユからの大変濃厚なお別れのキスをお受けした。
無事にお別れの挨拶を終え、うっとりした顔のエミーユの前から離れると、次に進み出てきたのはルバーノ四姉妹・次女のリュミスだった。
「シュリ、私も出来るだけ早く王都に行く。来年にはきっと。出来るなら今年中に」
「え~と、あ、あんまり周りに無茶言ったらダメだよ?」
「大丈夫。私の場合、本来ならもうとっくに王都へ行っていてもおかしくない状況だった。それをただ遅らせていただけだから。アズベルグにシュリがいないなら、これ以上王都行きを遅らせる意味はない。一番早いスケジュールで高等魔術学院の入学試験を受けるつもり」
リュミスは胸を張り、ふんすと鼻から息を吐き出す。
なんというか、やる気満々といった感じである。
シュリの事以外では、いつも力半分で生きている感のあるリュミスにしては珍しい事だった。
まあ、今回の件もシュリの事といえばシュリの事ではあるけれど。
理由がどうであれ、やる気があるのは良いことだ。
シュリはそう思い、にっこり微笑む。
「そっか。じゃあ、リュミ姉様が王都へ来るの、楽しみに待ってるね」
「頑張る。シュリも、王都は誘惑が多いから気をつけて」
「誘惑?? そうかなぁ?? でも、うん。気をつけるよ」
「本当に気をつけて? フィリアにも気を許しちゃだめ」
「え? フィー姉様にも??」
「そう。夜のお泊まりなんてもっての他。フィリアだって、そろそろ野獣のお年頃だから、気をつけるにこしたことはないと思う」
「や、野獣?」
「そう。人には、性欲が野獣のように暴走するお年頃がある。フィリアはそろそろ危ないと思う」
「そ、そっかぁ。う、うん。気をつけるよ」
なんだか、初めて一人暮らしをする年頃の娘さんにするようなアドバイスだ……、とシュリはちょっぴりひきつった笑みを浮かべつつ頷く。
普通、年頃になると野獣化するのは、男の子の特権だと思っていたが、こちらの世界では違うのだろうか。
まあ、女性陣のシュリへのアプローチから思うに、こちらの女性の方が積極的かもしれない。
そんなことを考えて己を納得させようとしたシュリの脳裏に、ふと前世の記憶がよみがえる。
子犬がいるから見に来ませんかと部屋に誘われ唇を襲われそうになり、ウサギを抱っこしませんかと部屋に誘われ服を脱がされそうになり、子猫を拾ったから里親探しを手伝って下さいと部屋に誘われ貞操を奪われそうになり……。
思い返せば、あちらの女性もかなりアグレッシブだった。
(そっかぁ。積極的なのは、こっちの女の人だけじゃないってことか。女の人って、どこの世界でも肉食系なものなんだなぁ)
しみじみとそんなことを思うシュリは気づいていない。
すべての女性がすべからく肉食系なわけではないということ。
シュリが肉食女子製造機なのか、彼女達が元々肉食系なのかは分からないが、とにかく、シュリの周囲にだけ異様に積極的な女性が多いだけなのだという事実に。
まあ、気づかない方が幸せだとは思うけれど。
リュミスにもがっつりお別れのキスを奪われている間もぼんやり考えていたシュリの前に、今度はアリスが進み出る。
「シュリ、アタシ、頑張るからな!」
「うん? う、うん! 頑張って」
勢いのいい決意表明に気圧されたように、彼女がなにを頑張るのか分からないまま頷き、応援の言葉を返す。
その言葉に、アリスはとても嬉しそうに笑い、
「リュミス姉ほど早くは追いつけないだろうけど、アタシも出来るだけ早く王都に行く。今よりもっと強くなって会いに行くから、シュリも頑張れ。王都の強い奴らに負けるんじゃないぞ!」
力強く、己の決意を表明してくれた。
(アリスってば、相変わらず脳筋だなぁ)
と微笑ましく思いつつ、シュリはにっこり微笑み頷く。
シュリの周囲には色ボケな空気が常に漂っているので、アリスのような単純明快な脳筋さんを見ていると、なんだか胸がほっこりする。
(まあ、昔は色々引っ張り回されて苦労したけどねぇ)
今よりもっと小さな頃は、アリスの遊びにつきあわされて半べそをかくこともよくあったものだが、最近はそういうことも無くなった。
時々、木剣を使って手合わせすることはあるけど、もうアリスから一方的に叩きのめされる事はない。
むしろ今は、アリスに気づかれないように気をつけながら、シュリの方が手加減をしてあげていた。
まあ、アリスはそれに薄々気づいているようで、最近はシュリ以外の相手と稽古をする頻度が多くなっていたりするのだが。
そんな脳筋なアリスだが、やはり恋する乙女でもあるようで。
「で、あの、その、な? えっと、シュリ。アタシにも、その、お別れの、キ、キ、キ……」
モジモジしながら照れくさそうに、ほっぺたをリンゴのように真っ赤にしてシュリを熱っぽい眼差しで見つめる。
その様子は、肉食系のお姉様のお相手をつとめる事の多いシュリの目から見ると、大変初々しくて可愛らしく。
シュリは口元を柔らかく微笑ませ、アリスのまだ幼さの残る頬に手を滑らせる。その指先に引っかかりを感じて目を凝らして見てみれば、そこには治りかけの傷が残っており。
(全く、アリス姉様はやんちゃだなぁ。女の子なのに、自分の身体が傷つくことにはほんと無頓着なんだから)
思わず苦笑をこぼし、シュリはまずはそのアリスのほっぺたの傷跡に小さな舌を這わせた。
そして、
「ひゃうっ」
アリスの唇から漏れた可愛らしい悲鳴ごと、その唇を優しく塞ぐ。
紳士らしく、触れるだけのキスにしようと思ったのだが、頭を引こうとしたシュリの後頭部を、アリスの手ががっと掴んで逃がしてくれなかった。
シュリから触れたことでたがが外れたように、シュリの唇を割ってアリスの舌が入り込み、シュリの中を荒々しく蹂躙する。
そんな男前な口づけを受けながらシュリは思う。
(うん。アリスも立派に肉食系だった)
と。
(よく考えれば、いつも普通にキスはしてるしねぇ)
多分、アリスはただ単に、改まってキスをおねだりするのが恥ずかしかっただけなのだろう。
思い返せば、いつものアリスは有無をいわせずに唇を奪う男らしいタイプだから、きっと受け身というのが苦手なんだろうな、とシュリはほんのり苦笑し、アリス主導のキスを受けきった。
満足そうなアリスが下がった後は、いそいそとミリシアが進み出てきた。
彼女はまずぎゅううっとシュリを抱きしめて、そのまま至近距離でシュリの瞳をのぞき込んだ。潤んだ愛らしい瞳で。
シュリがミリーのファンなら、これでイチコロだろう。
しかし、シュリはそんなミリーのあざとすぎるくらいの愛らしさに慣れていたので、うろたえることなく彼女の攻撃を受けきった。
シュリと別れるのが寂しいと、綺麗すぎるくらい綺麗な泣き顔を披露する彼女の頭をよしよしと撫で、
「うん。僕もみんなと離れるのは寂しい。でも、頑張ってくるね!」
ぎゅうっと彼女を抱きしめ返す。
「私も、シュリに負けないように頑張る。頑張って、少しでも早く王都に行くから待っててね? 私をおいて、大人になっちゃわないで?」
シュリの初めては私がもらうから、どこの馬の骨か分からない女にくれてやるな、と言外に告げられる。
可愛らしい言葉で装飾されていたが、そういう意味合いで間違い無いはずだ。
「うん。待ってるね」
まあ、当分その予定もないし、とシュリは気軽に頷きを返す。
とはいえ、シュリの初めてがミリーになる確率は、かなり低いとは思うが。
正直、シュリが大人な行為を致せる身体状況になったら、壮絶な争奪戦が起きるに違いない。
その戦に最初に名乗りを上げるのは、恐らく愛の奴隷の三人だろうし、彼女達は出来るだけ長くシュリの秘密を秘匿したいともくろむだろう。
だがしかし、流石に雇用主の妻であるエミーユには報告せざるを得ない為、情報は確実にルバーノ家に流れるはずだ。
が、そのエミーユも娘達に即座に教える事はしないかもしれないし、そう考えるとミリーの元へシュリ関連の情報が届くまでには大分時間ロスがある。
結果、ミリーのシュリの初めて争奪戦への参戦はかなり出遅れるという事になるだろう。
そんな諸々の理由から、シュリの初めての相手がミリーになる可能性は至って低い訳だが、シュリは大人だからわざわざそんなことを指摘したりしなかった。
シュリの返事に満足したようにミリーは微笑み、シュリのほっぺたに可愛らしいキスを落とす。
そして、その頬をほんのり赤くして、
「シュリからも、して?」
「うん?」
「しばらく離れ離れだから、きちんとしたキスじゃなきゃダメよ?」
あざといまでの可愛らしさを見事に演出しつつ、そうおねだりされた。
エミーユ、リュミス、アリスと、三人続けてキスをぶちかましておいて、ここで断るわけにもいかないだろう。
シュリはそう思い、覚悟を決める。
(……今日は、後何回キスをすればいいのかな~)
脳裏にそんな考えがよぎるが、それを感じさせない完璧な笑顔でシュリはミリーのお誘いを謹んでお受けした。
彼女の頬にそっと手を添えて、ゆっくり顔を近づけていく。
そして、ロックオンした愛らしい唇に己のそれを優しく重ねた。
舌を入れるなんて無粋なことはせず、角度を変えて触れあわせ、唇で唇を愛撫する。
それなりに長い時間丁寧に、シュリが思うところのきちんとしたキスを行い、さてそろそろ終わろうかと思った瞬間、じれたように唇の隙間から小さな舌がねじ込まれた。
シュリの渾身のきちんとしたキスは、ミリーからするとじらされているようにしか思えなかったらしい。
飢えたように口腔を動き回るミリーの舌を己のそれでなだめながらシュリは思う。
(きちんとしたキスをしたつもりだけど、なんか、失敗したみたいだねぇ)
そんな風にのほほんと。
もし、シュリが異性経験の少ないお坊ちゃまなら大いにうろたえた事だろうが、普段から海千山千の女傑を相手に鍛えられているシュリにとっては、ミリーの精一杯のキスもまだまだ可愛らしいものだった。
鼻息荒くキスに没頭するミリーをシュリは余裕であやしきり、腰砕けになった彼女をメイドさんの手にゆだねると、次に進み出てきたのは乳母のマチルダだった。
シュリとの別れが辛くて泣いて過ごしていたのだろう。
赤く泣きはらした目のまま、彼女はシュリを心配させまいと健気に微笑んだ。
「シュリ様、王都ではくれぐれもお体に気をつけて過ごして下さいね? マチルダはシュリ様の王都でのご活躍を信じお祈りしております」
「ありがとう、マチルダ。マチルダも元気でね? それでたまには母様と一緒に王都へ遊びに来て?」
シュリも微笑み、マチルダの顔を見上げる。
その笑顔にあてられたように頬を赤く染め、躊躇しながらも口を開こうとする彼女の様子に、てっきりキスをお願いされると思いきや、
「あの、これからしばらくシュリ様を抱っこできませんから、少しだけ抱っこさせて頂けませんか?」
マチルダの唇から出たのは、キスのおねだりでは無かった。
正直、そろそろ赤ちゃんのように抱っこされるのは恥ずかしいお年頃だが、いつも優しくお世話になっているマチルダのおねだりを断るなんて選択肢は無く。
シュリは快く頷いて、彼女の方へ腕を差し伸べた。抱っこをおねだりするように。
ぱっと顔を輝かせたマチルダは、いそいそとシュリを抱き上げ、愛おしそうにその頬に頬をすり寄せる。
そんな彼女の愛情深い包容を受けつつ、シュリはふとその視線を彼女の胸の辺りへとさまよわせた。
赤ちゃん時代から何度と無くお世話になったこのおっぱいともお別れかぁ、と思うとなんとも感慨深い。
シュリの人生の前半戦で、一番親しんだおっぱいは誰のものかと問われれば、母親のミフィーのものを除けば、ダントツでマチルダのおっぱいと答える他ないだろう。
そう考えると、そんなおっぱいとの別れは何とも名残惜しかった。
とはいえ、流石にもう、おっぱいを飲みたいと思うお年頃でもなかったが。
だが、そんなシュリの視線に気づいたマチルダはぽっと頬を染め、少しだけ困った顔をし、それから周囲をきょろきょろ伺った後、
「あの、シュリ様。おっぱい、飲みますか?」
そんなとんでもない提案をぶちかまし、いそいそと胸元をはだけようとした。
「いやいやいやいや! ちょ、ちょっと落ち着こうか、マチルダ!!」
このままでは、破壊力抜群のマチルダおっぱいが飛び出してしまう、とシュリは慌てて彼女の手を押さえる。
マチルダは、どうしてそうされたのか分からず、きょとんとした顔でシュリを見た。
そういうちょっと抜けたところも可愛いシュリの大事な乳母さんだが、公衆の面前で恥ずかしげもなくおっぱいをさらしてしまうのは流石にまずいだろう。
シュリは、マチルダの暴挙を止めるため、
「おっぱいは、その……今度、二人きりの時に。ね?」
「二人きりの時に、ですか?」
「うん。だってほら、みんなに見られてると、ちょっと恥ずかしいしさ」
「そう、ですか? シュリ様がそう言うなら、今度、二人きりの時に思い切り吸っていただけるように、ちゃんと準備しておきますね」
とっさにそんな苦肉の提案をしてしまう。
そんなシュリの提案に、マチルダは一瞬不思議そうな顔をしたものの、すぐに納得したように頷き、
「……離れている間におっぱいが枯れちゃわないように、おっぱいマッサージはきちんと続けておかないと。二人きりで飲んでもらうときに、たくさん飲んでもらえるように」
独り言のようにそんなつぶやきを漏らす。
準備ってそれ!? と思いつつ、シュリは何ともいえない表情を浮かべた。
いいお年頃になり、ミフィーのお母さんおっぱいからはどうにか卒業させてもらえたが、マチルダの乳母おっぱいからは未だに卒業させてもらえないでいる。
マチルダの母性と無意識の恋心が相まって、シュリを己のおっぱいから離したくないという独占欲がそうさせているのだろう。
恐らく本人は無自覚なのだろうけれど。
そうやって、定期的にシュリに授乳している為、マチルダのおっぱいは枯れる事を知らない。
まあ、シュリがうっかり手に入れてしまった称号[母乳マスター]の影響もたぶんにあるとは思うけれど。
更に、総合栄養ドリンクな母乳は慣れてしまえば、牛乳よりも人であるシュリの身体に優しく、それを飲むのがすっかり癖になってしまったシュリにも原因はある、のかもしれない。
ミフィーとマチルダの母乳に違いがあったように、母乳は人によって味の差があるらしく、みんなの母乳がどんな味なのか興味はあるが、まだ誰彼かまわず母乳を吹き出させるような事はしていないし、そこまで堕ちてはいない。
これからも、堕ちることはないだろう。ない、はずだ。たぶん。
最近、愛の奴隷三人が、シュリに授乳をしたがっている事実から目をそらし、シュリは拳を握る。
彼女達からすると、流れるように自然におっぱいをしゃぶってもらえる授乳行為は、とても魅力的に見えるらしい。
しかし、シュリは断じて出産経験のない女性からおっぱいを吹き出させて喜ぶような変態さんではないのだ。
たとえそれを容易に実現できる能力があるとしても、である。
(僕だって本当は、そろそろおっぱいを飲むことから卒業したいとは思ってるんだけどなぁ)
シュリが健全な成長を促したいと思っている身長に効果的な栄養素をとるだけなら、牛の乳で事足りる。
なにも母乳を飲み続ける必要など無いわけだが、それを言ってしまうとマチルダがものすごく悲しそうな顔をするのだ。
前に一度試みてみたことはあるが、その時のマチルダの余りに切なそうな顔に、つい前言を撤回してしまい今に至る。
いつかはマチルダのおっぱい離れを実現したいと思っていたので、今回の王都行きはいい機会だった。
離れている間に、気づいてくれればいいなと思うのだ。
シュリくらいのお年頃の子供にいつまでもおっぱいを飲ませるのは、少々普通とは違う行為なのだという現実に。
とはいえ、今までずっと、実の娘の冷えきった眼差しに耐え続けたマチルダでは、その可能性は低いかもしれないけれど。
そんなことを色々考えていてちょっぴり上の空なシュリに、
「シュリ様、王都への旅の安全をお祈りしています」
そう告げ、そっと白い液体の入った容器を手渡すと、マチルダはすっと身を引き、娘にその場所を譲った。
これってもしかして、と押しつけられた容器に目を落としていると、
「……変態」
「うぐぅっ!?」
シュリの正面にたったリアから、非常に鋭く突き刺さる言葉をプレゼントされた。
思わず呻いて取り落としそうになった白い液体を、シャイナが横からさっと拾い上げ、抜かりなく馬車に積み込む。
リアの冷たい眼差しなどものともせずに。
シュリは、ちょっぴりひきつってしまった笑みをリアに向け、
「えっと、リア。行ってくるね!」
どうにか仕切り直したいと元気な声でそう告げたが、
「シュリが変態すぎて、王都に送り出すのが心配だわ。王都で誰彼かまわず変態行為を働いて捕まらないようにね」
クールな声音でぺしょんと叩き潰される。
(ぼ、僕は変態なんかじゃないもん。ただちょっと、人と違うだけだもん)
心の中で言い訳しつつ、唇を尖らせた。
口に出していわないのは、何を言ってもリアの鋭い弁舌でぺっしょり潰される事を身を持って知っているからである。
「……シュリ? ちゃんと聞いてる?」
「きっ、聞いてるよ? うん、ちゃんと聞いてる」
すぅっとリアの目が細くなり、その右手がウズウズするように動くのを見たシュリは、慌ててぴっと背筋を伸ばす。
が、流石のリアも、これだけの観衆の中でシュリのほっぺたをねじり上げる勇気は無いようだ。
勇気がないのではなく、理性がきちんと働いているって事かもしれないけど。
「そう?」
「うん」
頷くシュリの頬にリアの手が伸びる。一瞬身構えたシュリだが、リアの手は優しくシュリの頬を撫でただけだった。
「シュリはついついいじめたくなる顔をしてるから、王都でいじめられないように気をつけてね? 私も出来るだけ早く王都の学校へ行けるように頑張るけど、お金も貯めなきゃいけないからアリスお姉様やミリーお姉様より時間がかかるかもしれないから」
「リア? リアの王都での学費と生活費くらいなら僕が……」
ジュディスのおかげでそれなりに小金を稼いでいるシュリは、リアへの援助を申し出ようとした。
だが、リアはきっぱり首を横に振る。
「いい。自分の力だけでシュリを追いかける。シュリに変な借りは作りたくないし。私が側にいない間、他の奴にいじめられちゃダメだからね?」
リアはシュリの顔を目に焼き付けるようにじっと見つめ、その手の平は大切なものに触れるように優しくシュリの頬を撫で続けている。
今までこんなにリアから大切に扱われたことあったかなぁ、とぼんやりリアの顔を見つめていると、その顔が急に近づいてきた。
視界をリアの顔で埋め尽くされた瞬間、唇に柔らかなにかが触れ、離れていく。
「え、えっと……い、今のって」
「お別れのキス、でしょ? 初めてだけど、シュリにあげるわ。だから、シュリも私以外にいじめられちゃだめよ? シュリをいじめていいのは私だけなんだから」
「う、うん。分かった」
「ならいいわ。じゃあ、いってらっしゃい」
「い、いってきます」
今まで、シュリにキスをしたいそぶりすら見せてこなかったリアからのキスに、シュリは初めてキスをしたお年頃の少年のようにドギマギしてしまう。
反して、リアは冷静そのものだ。
頬はほんのり色づいているようにも見えるのだが、その態度は普段そのもの。
え、リアって僕のこと本当に好きなのかな?、と疑ってしまうレベルである。
とまあ、ちょっと釈然としないものを感じつつも、シュリはリアの送り出しの言葉に返事を返す。
それを聞いたリアは、その口元を優しく微笑ませ、最後にもう一度シュリの頬を撫でてから後ろへ下がり、母親の隣に並んだ。
そうして一通りの挨拶が終わり、満を持して最後に進み出てきたのはルバーノ家の当主・カイゼルである。
今日のために念入りに手入れをした口ひげも凛々しく、彼は男らしく微笑んだ。
「とうとうシュリをこの家から送り出す日が来てしまったな。いつか来るとは思っていたが、まさかこんなに早く来るとは思っていなかった。優秀なお前を誇る反面、少々寂しくもある。だが、折角王都で学ぶ機会を得たのだ。思う存分、やりたいように、たくさんの経験を得て多くのことを学び、いつかまた、このアズベルグへ戻ってきて欲しい。ここはお前の家だ。いつだってシュリの帰りを待っているぞ」
「はい、おじさま」
「では、アレだな。ワシも、その、お別れのキスをだな……」
「それでは行って参ります! おじさまもお体にお気をつけて」
「いや、だからな? ワシともキスを……」
「盛大なお見送り、ありがとうございました!」
「き、きすがダメなら、熱い包容でもいいんだぞ? ぎゅーっとさせてくれ、ぎゅーっと! ほんのちょっとでもいいから」
キスのおねだりをさりげなく無視していたら、我慢しきれなくなったカイゼルが抱きついてこようとしたので、シュリは華麗にそれをかわし、
「みんな、今日は見送りに来てくれてありがとう。行ってきます!!」
集まってくれた家族ににっこり笑顔を残して、軽やかな足取りで馬車へ乗り込んだ。
愛の奴隷達もそれに続き、あきらめ悪く追いかけようとしたカイゼルの目の前で、無情にもバタンと馬車の扉は閉められた。
カイゼルが肩を落とし、馬車はそんなカイゼルを置き去りに走り始める。
「シュリ~! いってらっしゃぁい!!」
ミフィーのそんな声を皮切りに、みんなが遠ざかる馬車へ送り出しの言葉をかける。
ルバーノ家の面々は、その馬車が道の向こうに見えなくなるまでずっと、その場に立って見送った。
みんなそれなりに濃厚にシュリとの別れをすませたので不満そうな顔は無かったが、ただカイゼルの背中だけが煤けていた。
今は色々と荷物を詰め込んだ馬車の前で、今にも男泣きをはじめそうに目を潤ませたカイゼルの前に立っていた。
そのカイゼルの右側には、シュリを誇らしそうに見つめてくれるおじい様とおばあ様の姿。
出来ればカイゼルにも毅然として送り出して欲しかったとは思うが、まあ、多くは望むまい。
おじい様達の反対どなりにはエミーユをはじめ、ミフィーや三人の姉様達、一歩下がってマチルダとリアが、カイゼル同様潤んだ瞳でシュリを見つめている。
まあ、リアに関しては気のせいかもしれない。
彼女がシュリとの別れを惜しんで泣き出すなど、ちょっと想像が出来なかった。
そんな中、シュリへの別れの挨拶のため、最初に進み出たのはバステスとハルシャだった。
「シュリ、せっかく王都に行くんじゃ。楽しんでたくさん学んでおいで。お前の生活が落ち着いたら、おじい様もおばあ様もお前の顔を見に王都に足を伸ばすことにしよう」
「ええ。必ずあなたの顔を見に行きますから、身体に気をつけて過ごしてちょうだいね? 困ったことがあったらすぐに頼るんですよ? おじい様もおばあ様も、王都でのツテはそれなりに持っていますからね」
バステスは豪快に笑いながらシュリの頭を撫で、ハルシャは優しく微笑みながらシュリの頬を撫でる。
「はい、おじい様、おばあ様。王都で会えるのを楽しみにしてます。お二人が来るまでに、楽しい場所とかおいしいご飯のお店とか、色々探しておきますね!!」
ごく常識的な二人の様子にシュリは、こうでなくちゃなぁ、と微笑んで、順番にバステスとハルシャに抱きつき、別れを惜しんだ。
次に進み出てきたのはエミーユと三人の姉様達。
カイゼルはどうやら最後に挨拶をするつもりらしい。
「シュリ、王都は危険が多いから気をつけるのよ? 特に学校の行き帰りは、十分に注意しなさい。貴族には、美しい少年を愛でるのが趣味という奥方は掃いて捨てるほどいるわ。なかでも、大貴族と呼ばれる類の人種は、自分達より身分が低い人を、人と思っていない傾向があるから危険ね。もし、身の危険を感じたら、なんとしてでも助けるから、必ず連絡して。国王陛下にねじ込んででも、相手貴族に喧嘩を売ってでも、どうにかして助け出してみせるわ」
「う、うん。気をつけます」
がっと肩を捕まれ、怖いくらいに真面目な顔で忠告される。
シュリは気圧されたように頷き、それを確かめてやっと、エミーユは顔を緩めた。
「王都は遠いから、目が届かなくて心配だわ。ジュディス、シャイナ、カレン。シュリの事、よろしく頼むわね」
「「「はい、奥様」」」
「シュリの事ならなんでも、出来るだけ事細かに報告してちょうだいね?」
「「「……はい、奥様」」」
「本当、心配だわ。でも、仕方ないわね。シュリは勉強の為に王都に行くんですもの。邪魔なんて出来ないわね……じゃあ、シュリ」
「はい、おば様」
なにやらもの言いたげな眼差しは向けられたものの、流石に夫のいる前なので自重したようだ。
いつもの、名前で呼んで欲しいという主張はエミーユの喉の奥に引っ込んだままだった。
その代わりと言うわけでもないだろうが、エミーユはシュリの方へ顔を寄せて妖艶に微笑む。
「おば様に、お別れのキスをしてちょうだい」
「はい。いってきます、おば様」
エミーユの求めに快く応じて、シュリは彼女の顔にそっと顔を寄せ、その頬にちゅっと唇で挨拶をする。
お別れのキスならこんなもんだろう、という認識のもと。
だが、顔を話して微笑んでみせたシュリを迎えたのは、不満そうなエミーユの顔だった。
あれ?、と首を傾げる間もなく、エミーユの手がガッとシュリの頬へと伸びる。
「長いお別れになるんだから、そんなキスじゃだめよ。もっとしっかりしなきゃ。ね?」
彼女は婉然と微笑み、有無を言わせずにシュリの唇を容赦なく奪った。
唇を割って入ってくるエミーユの舌を感じながら、
(カイゼル……は今更として、おじい様とおばあ様も見てるのに、これってオッケーなの!?)
シュリは目だけを動かして周囲の状況を確認する。
夫であるカイゼルは、嫉妬の目を向けていた。
シュリにではなく、エミーユに。
え、そっち?、とシュリが若干引いていると、今度は物欲しげな視線をシュリに向けてきたので、自然に目をそらし、その流れでバステスとハルシャの様子もそっと伺ってみる。
が、バステスもハルシャも、おやおやまあまあ、と非常に微笑ましそうにシュリと息子の嫁のキスシーンを見守っている。
それでいいのか!?、と思いはするものの、
(ま、まあ、怒ってないならいいか)
と、シュリはおとなしくエミーユからの大変濃厚なお別れのキスをお受けした。
無事にお別れの挨拶を終え、うっとりした顔のエミーユの前から離れると、次に進み出てきたのはルバーノ四姉妹・次女のリュミスだった。
「シュリ、私も出来るだけ早く王都に行く。来年にはきっと。出来るなら今年中に」
「え~と、あ、あんまり周りに無茶言ったらダメだよ?」
「大丈夫。私の場合、本来ならもうとっくに王都へ行っていてもおかしくない状況だった。それをただ遅らせていただけだから。アズベルグにシュリがいないなら、これ以上王都行きを遅らせる意味はない。一番早いスケジュールで高等魔術学院の入学試験を受けるつもり」
リュミスは胸を張り、ふんすと鼻から息を吐き出す。
なんというか、やる気満々といった感じである。
シュリの事以外では、いつも力半分で生きている感のあるリュミスにしては珍しい事だった。
まあ、今回の件もシュリの事といえばシュリの事ではあるけれど。
理由がどうであれ、やる気があるのは良いことだ。
シュリはそう思い、にっこり微笑む。
「そっか。じゃあ、リュミ姉様が王都へ来るの、楽しみに待ってるね」
「頑張る。シュリも、王都は誘惑が多いから気をつけて」
「誘惑?? そうかなぁ?? でも、うん。気をつけるよ」
「本当に気をつけて? フィリアにも気を許しちゃだめ」
「え? フィー姉様にも??」
「そう。夜のお泊まりなんてもっての他。フィリアだって、そろそろ野獣のお年頃だから、気をつけるにこしたことはないと思う」
「や、野獣?」
「そう。人には、性欲が野獣のように暴走するお年頃がある。フィリアはそろそろ危ないと思う」
「そ、そっかぁ。う、うん。気をつけるよ」
なんだか、初めて一人暮らしをする年頃の娘さんにするようなアドバイスだ……、とシュリはちょっぴりひきつった笑みを浮かべつつ頷く。
普通、年頃になると野獣化するのは、男の子の特権だと思っていたが、こちらの世界では違うのだろうか。
まあ、女性陣のシュリへのアプローチから思うに、こちらの女性の方が積極的かもしれない。
そんなことを考えて己を納得させようとしたシュリの脳裏に、ふと前世の記憶がよみがえる。
子犬がいるから見に来ませんかと部屋に誘われ唇を襲われそうになり、ウサギを抱っこしませんかと部屋に誘われ服を脱がされそうになり、子猫を拾ったから里親探しを手伝って下さいと部屋に誘われ貞操を奪われそうになり……。
思い返せば、あちらの女性もかなりアグレッシブだった。
(そっかぁ。積極的なのは、こっちの女の人だけじゃないってことか。女の人って、どこの世界でも肉食系なものなんだなぁ)
しみじみとそんなことを思うシュリは気づいていない。
すべての女性がすべからく肉食系なわけではないということ。
シュリが肉食女子製造機なのか、彼女達が元々肉食系なのかは分からないが、とにかく、シュリの周囲にだけ異様に積極的な女性が多いだけなのだという事実に。
まあ、気づかない方が幸せだとは思うけれど。
リュミスにもがっつりお別れのキスを奪われている間もぼんやり考えていたシュリの前に、今度はアリスが進み出る。
「シュリ、アタシ、頑張るからな!」
「うん? う、うん! 頑張って」
勢いのいい決意表明に気圧されたように、彼女がなにを頑張るのか分からないまま頷き、応援の言葉を返す。
その言葉に、アリスはとても嬉しそうに笑い、
「リュミス姉ほど早くは追いつけないだろうけど、アタシも出来るだけ早く王都に行く。今よりもっと強くなって会いに行くから、シュリも頑張れ。王都の強い奴らに負けるんじゃないぞ!」
力強く、己の決意を表明してくれた。
(アリスってば、相変わらず脳筋だなぁ)
と微笑ましく思いつつ、シュリはにっこり微笑み頷く。
シュリの周囲には色ボケな空気が常に漂っているので、アリスのような単純明快な脳筋さんを見ていると、なんだか胸がほっこりする。
(まあ、昔は色々引っ張り回されて苦労したけどねぇ)
今よりもっと小さな頃は、アリスの遊びにつきあわされて半べそをかくこともよくあったものだが、最近はそういうことも無くなった。
時々、木剣を使って手合わせすることはあるけど、もうアリスから一方的に叩きのめされる事はない。
むしろ今は、アリスに気づかれないように気をつけながら、シュリの方が手加減をしてあげていた。
まあ、アリスはそれに薄々気づいているようで、最近はシュリ以外の相手と稽古をする頻度が多くなっていたりするのだが。
そんな脳筋なアリスだが、やはり恋する乙女でもあるようで。
「で、あの、その、な? えっと、シュリ。アタシにも、その、お別れの、キ、キ、キ……」
モジモジしながら照れくさそうに、ほっぺたをリンゴのように真っ赤にしてシュリを熱っぽい眼差しで見つめる。
その様子は、肉食系のお姉様のお相手をつとめる事の多いシュリの目から見ると、大変初々しくて可愛らしく。
シュリは口元を柔らかく微笑ませ、アリスのまだ幼さの残る頬に手を滑らせる。その指先に引っかかりを感じて目を凝らして見てみれば、そこには治りかけの傷が残っており。
(全く、アリス姉様はやんちゃだなぁ。女の子なのに、自分の身体が傷つくことにはほんと無頓着なんだから)
思わず苦笑をこぼし、シュリはまずはそのアリスのほっぺたの傷跡に小さな舌を這わせた。
そして、
「ひゃうっ」
アリスの唇から漏れた可愛らしい悲鳴ごと、その唇を優しく塞ぐ。
紳士らしく、触れるだけのキスにしようと思ったのだが、頭を引こうとしたシュリの後頭部を、アリスの手ががっと掴んで逃がしてくれなかった。
シュリから触れたことでたがが外れたように、シュリの唇を割ってアリスの舌が入り込み、シュリの中を荒々しく蹂躙する。
そんな男前な口づけを受けながらシュリは思う。
(うん。アリスも立派に肉食系だった)
と。
(よく考えれば、いつも普通にキスはしてるしねぇ)
多分、アリスはただ単に、改まってキスをおねだりするのが恥ずかしかっただけなのだろう。
思い返せば、いつものアリスは有無をいわせずに唇を奪う男らしいタイプだから、きっと受け身というのが苦手なんだろうな、とシュリはほんのり苦笑し、アリス主導のキスを受けきった。
満足そうなアリスが下がった後は、いそいそとミリシアが進み出てきた。
彼女はまずぎゅううっとシュリを抱きしめて、そのまま至近距離でシュリの瞳をのぞき込んだ。潤んだ愛らしい瞳で。
シュリがミリーのファンなら、これでイチコロだろう。
しかし、シュリはそんなミリーのあざとすぎるくらいの愛らしさに慣れていたので、うろたえることなく彼女の攻撃を受けきった。
シュリと別れるのが寂しいと、綺麗すぎるくらい綺麗な泣き顔を披露する彼女の頭をよしよしと撫で、
「うん。僕もみんなと離れるのは寂しい。でも、頑張ってくるね!」
ぎゅうっと彼女を抱きしめ返す。
「私も、シュリに負けないように頑張る。頑張って、少しでも早く王都に行くから待っててね? 私をおいて、大人になっちゃわないで?」
シュリの初めては私がもらうから、どこの馬の骨か分からない女にくれてやるな、と言外に告げられる。
可愛らしい言葉で装飾されていたが、そういう意味合いで間違い無いはずだ。
「うん。待ってるね」
まあ、当分その予定もないし、とシュリは気軽に頷きを返す。
とはいえ、シュリの初めてがミリーになる確率は、かなり低いとは思うが。
正直、シュリが大人な行為を致せる身体状況になったら、壮絶な争奪戦が起きるに違いない。
その戦に最初に名乗りを上げるのは、恐らく愛の奴隷の三人だろうし、彼女達は出来るだけ長くシュリの秘密を秘匿したいともくろむだろう。
だがしかし、流石に雇用主の妻であるエミーユには報告せざるを得ない為、情報は確実にルバーノ家に流れるはずだ。
が、そのエミーユも娘達に即座に教える事はしないかもしれないし、そう考えるとミリーの元へシュリ関連の情報が届くまでには大分時間ロスがある。
結果、ミリーのシュリの初めて争奪戦への参戦はかなり出遅れるという事になるだろう。
そんな諸々の理由から、シュリの初めての相手がミリーになる可能性は至って低い訳だが、シュリは大人だからわざわざそんなことを指摘したりしなかった。
シュリの返事に満足したようにミリーは微笑み、シュリのほっぺたに可愛らしいキスを落とす。
そして、その頬をほんのり赤くして、
「シュリからも、して?」
「うん?」
「しばらく離れ離れだから、きちんとしたキスじゃなきゃダメよ?」
あざといまでの可愛らしさを見事に演出しつつ、そうおねだりされた。
エミーユ、リュミス、アリスと、三人続けてキスをぶちかましておいて、ここで断るわけにもいかないだろう。
シュリはそう思い、覚悟を決める。
(……今日は、後何回キスをすればいいのかな~)
脳裏にそんな考えがよぎるが、それを感じさせない完璧な笑顔でシュリはミリーのお誘いを謹んでお受けした。
彼女の頬にそっと手を添えて、ゆっくり顔を近づけていく。
そして、ロックオンした愛らしい唇に己のそれを優しく重ねた。
舌を入れるなんて無粋なことはせず、角度を変えて触れあわせ、唇で唇を愛撫する。
それなりに長い時間丁寧に、シュリが思うところのきちんとしたキスを行い、さてそろそろ終わろうかと思った瞬間、じれたように唇の隙間から小さな舌がねじ込まれた。
シュリの渾身のきちんとしたキスは、ミリーからするとじらされているようにしか思えなかったらしい。
飢えたように口腔を動き回るミリーの舌を己のそれでなだめながらシュリは思う。
(きちんとしたキスをしたつもりだけど、なんか、失敗したみたいだねぇ)
そんな風にのほほんと。
もし、シュリが異性経験の少ないお坊ちゃまなら大いにうろたえた事だろうが、普段から海千山千の女傑を相手に鍛えられているシュリにとっては、ミリーの精一杯のキスもまだまだ可愛らしいものだった。
鼻息荒くキスに没頭するミリーをシュリは余裕であやしきり、腰砕けになった彼女をメイドさんの手にゆだねると、次に進み出てきたのは乳母のマチルダだった。
シュリとの別れが辛くて泣いて過ごしていたのだろう。
赤く泣きはらした目のまま、彼女はシュリを心配させまいと健気に微笑んだ。
「シュリ様、王都ではくれぐれもお体に気をつけて過ごして下さいね? マチルダはシュリ様の王都でのご活躍を信じお祈りしております」
「ありがとう、マチルダ。マチルダも元気でね? それでたまには母様と一緒に王都へ遊びに来て?」
シュリも微笑み、マチルダの顔を見上げる。
その笑顔にあてられたように頬を赤く染め、躊躇しながらも口を開こうとする彼女の様子に、てっきりキスをお願いされると思いきや、
「あの、これからしばらくシュリ様を抱っこできませんから、少しだけ抱っこさせて頂けませんか?」
マチルダの唇から出たのは、キスのおねだりでは無かった。
正直、そろそろ赤ちゃんのように抱っこされるのは恥ずかしいお年頃だが、いつも優しくお世話になっているマチルダのおねだりを断るなんて選択肢は無く。
シュリは快く頷いて、彼女の方へ腕を差し伸べた。抱っこをおねだりするように。
ぱっと顔を輝かせたマチルダは、いそいそとシュリを抱き上げ、愛おしそうにその頬に頬をすり寄せる。
そんな彼女の愛情深い包容を受けつつ、シュリはふとその視線を彼女の胸の辺りへとさまよわせた。
赤ちゃん時代から何度と無くお世話になったこのおっぱいともお別れかぁ、と思うとなんとも感慨深い。
シュリの人生の前半戦で、一番親しんだおっぱいは誰のものかと問われれば、母親のミフィーのものを除けば、ダントツでマチルダのおっぱいと答える他ないだろう。
そう考えると、そんなおっぱいとの別れは何とも名残惜しかった。
とはいえ、流石にもう、おっぱいを飲みたいと思うお年頃でもなかったが。
だが、そんなシュリの視線に気づいたマチルダはぽっと頬を染め、少しだけ困った顔をし、それから周囲をきょろきょろ伺った後、
「あの、シュリ様。おっぱい、飲みますか?」
そんなとんでもない提案をぶちかまし、いそいそと胸元をはだけようとした。
「いやいやいやいや! ちょ、ちょっと落ち着こうか、マチルダ!!」
このままでは、破壊力抜群のマチルダおっぱいが飛び出してしまう、とシュリは慌てて彼女の手を押さえる。
マチルダは、どうしてそうされたのか分からず、きょとんとした顔でシュリを見た。
そういうちょっと抜けたところも可愛いシュリの大事な乳母さんだが、公衆の面前で恥ずかしげもなくおっぱいをさらしてしまうのは流石にまずいだろう。
シュリは、マチルダの暴挙を止めるため、
「おっぱいは、その……今度、二人きりの時に。ね?」
「二人きりの時に、ですか?」
「うん。だってほら、みんなに見られてると、ちょっと恥ずかしいしさ」
「そう、ですか? シュリ様がそう言うなら、今度、二人きりの時に思い切り吸っていただけるように、ちゃんと準備しておきますね」
とっさにそんな苦肉の提案をしてしまう。
そんなシュリの提案に、マチルダは一瞬不思議そうな顔をしたものの、すぐに納得したように頷き、
「……離れている間におっぱいが枯れちゃわないように、おっぱいマッサージはきちんと続けておかないと。二人きりで飲んでもらうときに、たくさん飲んでもらえるように」
独り言のようにそんなつぶやきを漏らす。
準備ってそれ!? と思いつつ、シュリは何ともいえない表情を浮かべた。
いいお年頃になり、ミフィーのお母さんおっぱいからはどうにか卒業させてもらえたが、マチルダの乳母おっぱいからは未だに卒業させてもらえないでいる。
マチルダの母性と無意識の恋心が相まって、シュリを己のおっぱいから離したくないという独占欲がそうさせているのだろう。
恐らく本人は無自覚なのだろうけれど。
そうやって、定期的にシュリに授乳している為、マチルダのおっぱいは枯れる事を知らない。
まあ、シュリがうっかり手に入れてしまった称号[母乳マスター]の影響もたぶんにあるとは思うけれど。
更に、総合栄養ドリンクな母乳は慣れてしまえば、牛乳よりも人であるシュリの身体に優しく、それを飲むのがすっかり癖になってしまったシュリにも原因はある、のかもしれない。
ミフィーとマチルダの母乳に違いがあったように、母乳は人によって味の差があるらしく、みんなの母乳がどんな味なのか興味はあるが、まだ誰彼かまわず母乳を吹き出させるような事はしていないし、そこまで堕ちてはいない。
これからも、堕ちることはないだろう。ない、はずだ。たぶん。
最近、愛の奴隷三人が、シュリに授乳をしたがっている事実から目をそらし、シュリは拳を握る。
彼女達からすると、流れるように自然におっぱいをしゃぶってもらえる授乳行為は、とても魅力的に見えるらしい。
しかし、シュリは断じて出産経験のない女性からおっぱいを吹き出させて喜ぶような変態さんではないのだ。
たとえそれを容易に実現できる能力があるとしても、である。
(僕だって本当は、そろそろおっぱいを飲むことから卒業したいとは思ってるんだけどなぁ)
シュリが健全な成長を促したいと思っている身長に効果的な栄養素をとるだけなら、牛の乳で事足りる。
なにも母乳を飲み続ける必要など無いわけだが、それを言ってしまうとマチルダがものすごく悲しそうな顔をするのだ。
前に一度試みてみたことはあるが、その時のマチルダの余りに切なそうな顔に、つい前言を撤回してしまい今に至る。
いつかはマチルダのおっぱい離れを実現したいと思っていたので、今回の王都行きはいい機会だった。
離れている間に、気づいてくれればいいなと思うのだ。
シュリくらいのお年頃の子供にいつまでもおっぱいを飲ませるのは、少々普通とは違う行為なのだという現実に。
とはいえ、今までずっと、実の娘の冷えきった眼差しに耐え続けたマチルダでは、その可能性は低いかもしれないけれど。
そんなことを色々考えていてちょっぴり上の空なシュリに、
「シュリ様、王都への旅の安全をお祈りしています」
そう告げ、そっと白い液体の入った容器を手渡すと、マチルダはすっと身を引き、娘にその場所を譲った。
これってもしかして、と押しつけられた容器に目を落としていると、
「……変態」
「うぐぅっ!?」
シュリの正面にたったリアから、非常に鋭く突き刺さる言葉をプレゼントされた。
思わず呻いて取り落としそうになった白い液体を、シャイナが横からさっと拾い上げ、抜かりなく馬車に積み込む。
リアの冷たい眼差しなどものともせずに。
シュリは、ちょっぴりひきつってしまった笑みをリアに向け、
「えっと、リア。行ってくるね!」
どうにか仕切り直したいと元気な声でそう告げたが、
「シュリが変態すぎて、王都に送り出すのが心配だわ。王都で誰彼かまわず変態行為を働いて捕まらないようにね」
クールな声音でぺしょんと叩き潰される。
(ぼ、僕は変態なんかじゃないもん。ただちょっと、人と違うだけだもん)
心の中で言い訳しつつ、唇を尖らせた。
口に出していわないのは、何を言ってもリアの鋭い弁舌でぺっしょり潰される事を身を持って知っているからである。
「……シュリ? ちゃんと聞いてる?」
「きっ、聞いてるよ? うん、ちゃんと聞いてる」
すぅっとリアの目が細くなり、その右手がウズウズするように動くのを見たシュリは、慌ててぴっと背筋を伸ばす。
が、流石のリアも、これだけの観衆の中でシュリのほっぺたをねじり上げる勇気は無いようだ。
勇気がないのではなく、理性がきちんと働いているって事かもしれないけど。
「そう?」
「うん」
頷くシュリの頬にリアの手が伸びる。一瞬身構えたシュリだが、リアの手は優しくシュリの頬を撫でただけだった。
「シュリはついついいじめたくなる顔をしてるから、王都でいじめられないように気をつけてね? 私も出来るだけ早く王都の学校へ行けるように頑張るけど、お金も貯めなきゃいけないからアリスお姉様やミリーお姉様より時間がかかるかもしれないから」
「リア? リアの王都での学費と生活費くらいなら僕が……」
ジュディスのおかげでそれなりに小金を稼いでいるシュリは、リアへの援助を申し出ようとした。
だが、リアはきっぱり首を横に振る。
「いい。自分の力だけでシュリを追いかける。シュリに変な借りは作りたくないし。私が側にいない間、他の奴にいじめられちゃダメだからね?」
リアはシュリの顔を目に焼き付けるようにじっと見つめ、その手の平は大切なものに触れるように優しくシュリの頬を撫で続けている。
今までこんなにリアから大切に扱われたことあったかなぁ、とぼんやりリアの顔を見つめていると、その顔が急に近づいてきた。
視界をリアの顔で埋め尽くされた瞬間、唇に柔らかなにかが触れ、離れていく。
「え、えっと……い、今のって」
「お別れのキス、でしょ? 初めてだけど、シュリにあげるわ。だから、シュリも私以外にいじめられちゃだめよ? シュリをいじめていいのは私だけなんだから」
「う、うん。分かった」
「ならいいわ。じゃあ、いってらっしゃい」
「い、いってきます」
今まで、シュリにキスをしたいそぶりすら見せてこなかったリアからのキスに、シュリは初めてキスをしたお年頃の少年のようにドギマギしてしまう。
反して、リアは冷静そのものだ。
頬はほんのり色づいているようにも見えるのだが、その態度は普段そのもの。
え、リアって僕のこと本当に好きなのかな?、と疑ってしまうレベルである。
とまあ、ちょっと釈然としないものを感じつつも、シュリはリアの送り出しの言葉に返事を返す。
それを聞いたリアは、その口元を優しく微笑ませ、最後にもう一度シュリの頬を撫でてから後ろへ下がり、母親の隣に並んだ。
そうして一通りの挨拶が終わり、満を持して最後に進み出てきたのはルバーノ家の当主・カイゼルである。
今日のために念入りに手入れをした口ひげも凛々しく、彼は男らしく微笑んだ。
「とうとうシュリをこの家から送り出す日が来てしまったな。いつか来るとは思っていたが、まさかこんなに早く来るとは思っていなかった。優秀なお前を誇る反面、少々寂しくもある。だが、折角王都で学ぶ機会を得たのだ。思う存分、やりたいように、たくさんの経験を得て多くのことを学び、いつかまた、このアズベルグへ戻ってきて欲しい。ここはお前の家だ。いつだってシュリの帰りを待っているぞ」
「はい、おじさま」
「では、アレだな。ワシも、その、お別れのキスをだな……」
「それでは行って参ります! おじさまもお体にお気をつけて」
「いや、だからな? ワシともキスを……」
「盛大なお見送り、ありがとうございました!」
「き、きすがダメなら、熱い包容でもいいんだぞ? ぎゅーっとさせてくれ、ぎゅーっと! ほんのちょっとでもいいから」
キスのおねだりをさりげなく無視していたら、我慢しきれなくなったカイゼルが抱きついてこようとしたので、シュリは華麗にそれをかわし、
「みんな、今日は見送りに来てくれてありがとう。行ってきます!!」
集まってくれた家族ににっこり笑顔を残して、軽やかな足取りで馬車へ乗り込んだ。
愛の奴隷達もそれに続き、あきらめ悪く追いかけようとしたカイゼルの目の前で、無情にもバタンと馬車の扉は閉められた。
カイゼルが肩を落とし、馬車はそんなカイゼルを置き去りに走り始める。
「シュリ~! いってらっしゃぁい!!」
ミフィーのそんな声を皮切りに、みんなが遠ざかる馬車へ送り出しの言葉をかける。
ルバーノ家の面々は、その馬車が道の向こうに見えなくなるまでずっと、その場に立って見送った。
みんなそれなりに濃厚にシュリとの別れをすませたので不満そうな顔は無かったが、ただカイゼルの背中だけが煤けていた。
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