龍は暁に啼く

高嶺 蒼

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第二部 旅のはじまり~水魔の村編~

水魔の村編 第二十九話

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 気がつくと、薄暗い部屋の中にいた。
 部屋、というより小屋だろうか。それなりに広い空間だ。
 外に続いているだろうドアの隙間からはうっすらと光が入ってきている。


 (ここは、どこなのかしら?)


 まだすっきりしない頭で、セイラは周囲をゆっくりと見回し、考える。
 窓はあるが、外から板で打ち付けられているようだ。
 室内は、薄暗くほこり臭い。普段はあまり使われない場所なのだろう。見回す室内に人の姿はない。


 (逃げ・・・・・・られそうも無いわね) 


 動こうと軽く身じろぎをしてため息をつく。
 思った以上に体の自由が利かず、両手も縛られている。
 薬を飲まされたとかではないだろうが、手も足も、自分の思い通りに動かなかった。

 小さく息をつき、セイラは体の力を抜く。
 今は体力を温存して、逃げる機会を伺うつもりだった。
 それに、雷砂はきっと、助けに来てくれる。
 その時に足手まといにならないようにしなければと、セイラは堅い床に頭を預けた。


 「おや、目が覚めたんだね」


 そんな声と共に、小屋の出入り口のドアが開く。
 まぶしい光と共に入ってきたのは、酒宴の席で一度見ただけの男。この村の村長だ。
 彼はニヤニヤしながらセイラに近づき、床に膝をついて彼女の顔を見つめた。その手が彼女の髪をなで、頬をたどる。
 セイラは男の血走った目を睨みつけ、その手から逃れるように顔を背けた。


 「さぁて、そろそろ客人を迎える準備をしておこう」


 にたぁっと、それなりに整った顔を歪めて笑い、村長は上の方で何か作業をはじめる。
 そしてまたすぐにセイラの前にしゃがみ込み、彼女の手を1つに縛っている縄に別の縄を縛り付けた。
 それから、その細い身体のどこにそんな力があるのかと思うほどの力で、天井からつり下がっていた縄を引き、セイラの身体をつり上げていく。
 セイラのつま先がやっと床に触れる程度まで彼女の身体を引き上げてから、彼は壁の突起に持っていた縄を括り付けた。

 彼女の身体は宙に固定され、村長はそんな彼女の身体を無遠慮になめ回すように眺める。
 その視線に言いようのない嫌悪感を感じながら、それでも気丈にセイラは目の前の男を睨んだ。


 「客人って、誰よ」

 「分かってるだろう?あの小生意気な子供の事だよ」

 「雷砂をここにおびき寄せて、どうしようって言うの?」


 セイラの言葉に、男の口元が三日月を描いた。


 「決まってる。ねじ伏せて、捕まえて、目の前で大切にしている相手が壊されるところを見せつけてやろうと思ってねぇ。私は、生意気な子供が嫌いなんだ」


 言いながら、男のシミの浮いた手がセイラの髪を撫でる。
 その手はそのまま彼女の首筋を撫で、ゆっくりとその胸元に降りてくる。
 手のひらが胸の膨らみを包み、容赦ない力でぎゅっと握った。
 セイラの顔がかすかに歪み、小さく身じろぎをする。その様子を見て、男があざ笑うかのように口元を歪めた。


 「さあ、邪魔者が到着するまで、少しだけ楽しませて貰おうか」

 「・・・・・・雷砂は、あんたなんかに負けないわよ」

 「いいねぇ。私は、気の強い女をねじ伏せるのが、たまらなく好きなんだよ」


 男の顔が、セイラの首筋に埋まる。
 逃げたいが逃げられる訳もなく、セイラは顔を背けて目を閉じる。
 たとえ雷砂が間に合わず、身体を汚されたとしても、心だけは屈するつもりはなかった。

 そんなセイラの様子を楽しそうに眺めながら、男はセイラの身体をなめ回す。執拗に、ねちっこい舌使いで。
 その手がセイラの胸元に迫り、彼女の纏う服を、軽々と切り裂いた。鋭く尖った、己の爪で。
 それは人の爪とは言い難く、獣の爪よりも長く鋭利だった。

 服を裂かれ大きく開いた胸元から、白い双球がまろび出る。
 男は熱に浮かされた様なまなざしでそれを見つめ、先端の桜色の蕾に舌を這わせた。
 本能のままに乳房をつかみ、鋭い爪が彼女の肌を傷つける。
 爪の先がぷつりと皮膚を突き破り、赤い血が、ゆっくりと白い肌を汚していくのを感じながら、セイラはただ唇をかみしめた。

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