シーフな魔術師

極楽とんぼ

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卒業後

340 星暦553年 黄の月 24日 ちょっと趣味に偏った依頼(22)

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「今日で最後かぁ。
本当に惜しいよ。まだまだやって貰いたいことは山ほどあるのに」
頼まれた作業を終えてテントに訪れたら、ツァレスが待ち構えていた。
そして・・・名残惜しげに俺たちを見てため息をついた。

う~ん、そこは俺たちがいなくなることが哀しいと、お世辞だとしても言うべきじゃ無いか?
やってもらいたい作業が沢山残っているから名残惜しいだなんて、正直すぎるぞ。

「はっきり言って、このサイズの遺跡だと固定化の術を掛けたり、遺跡物の発見を手伝ったり、魔道具に映像を記録したり、やることが尽きないですからね。
例え僕らがここに残って更に作業していたとしても、一年やそこらで終わる作業量ではないですよね?」
苦笑しながらアレクが答えた。

「まあ、1つの文明をその街の遺跡から解析しようとしているんだ。
やるべき事は本当に尽きないよね!」
悪びれずにツァレスが合意する。
と言うか、自分が言ったことがちょっと自己中すぎると言うことに思い至っていないようだな。

この人も、自分に正直すぎるよね~。

「どうしても魔術師を使いたい場面が出てきて、ベルダ氏の都合が付かないようでしたら、時々ウィルが遊びに来るでしょうからその際に捕まえてこき使ったら良いですよ。
発掘に必要な作業だったらきっとシェイラも協力してくれるでしょうし」
シャルロが笑いながら提案した。

おい。
酷いじゃ無いか。
しかも、反論できないところが哀しい。
俺ってシェイラに良いように利用されてる??

「駄目よ、ウィルは私達の時間を一緒に過ごすために来るんだから。
二人で何か作業をするというのならまだしも、ツァレスさんの為に何か作業をするために来るんじゃ無いのよ」
シェイラが口を挟んできた。

一見、俺を守ってくれているような口ぶりだが、良く聞いてみるとシェイラに作業を任せるなら俺をこき使って良いと言っているよね??
「ちょっと。俺をこき使うことを前提で皆で好きなように話し合わないでくれよ」

俺の苦情に皆して笑い出した。

「まあ、それはともかく。
何か、使えそうな魔術か魔道具は見つかったかい?
歴史学会としても、定期的な収入が入るとしたらとても嬉しいんだが」
ツァレスが少し真面目な顔になって聞いてきた。

とは言え、下心満載な台詞だけど。

「この街の家の殆どに、太陽の光と熱を日中にため込んで、夜に使える魔道具が設置されていたんですよ。
殆どが壊れていましたが、幾つかを組み合わせて使ってみたらほぼ問題無く起動出来たので、それを魔術院で登録します」

光と熱をため込むためにそれなりの容量の魔石が必要だが、天気さえ良ければ照明や暖房の魔石を毎日充填出来るので、中々経済的な魔道具だ。

真夏にため込んだエネルギーを冬に使うことが出来るのかのテストはまだ出来ていないが、大きな魔石があればそれも可能だろう。

他にも中々興味深そうな魔術陣や魔道具があったが、今でも起動している魔術陣はどうも全て樹木霊の協力が必要なタイプなのようだ。樹木霊の補助を受けていない魔術陣は破損しているので解析にもう少し時間が掛る。

魔道具も、他のは起動しているが現在の方がより効率的な魔道具があったり、正しく起動していないのかやっていることが微妙に不明だったりで、更なる研究が必要だ。

それらの研究を遺跡の傍で行って、空いた時間や気分転換に発掘作業を手伝おうかとも3人で話し合ったのだが、取り敢えず魔術院での登録やその後のやり取りにそれなりに時間が掛るし、邪魔が入らず集中できる環境でちゃんと研究した方が効率が良いだろうと言うことになって、契約期間の終了と共に帰ることにした。

『ウィルがどうしても残りたいと言うのなら、僕たちだけで戻っても良いけど?』とシャルロにニヤニヤ笑いながら提案されたが。

別にそこまで特別扱いして貰わなくても、ちゃんと二人の時間は作れる。
それに、長期的にこれからの付き合いを考えたら、変にシェイラを優先して俺の生活を変えるのは良くないだろう。

と言うことで、今日でこちらの作業は終わりだ。

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